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October 20, 2016

君の偽名は。 ポール・グリーングラス 『ジェイソン・ボーン』

012昨年下半期はスパイ映画が花盛りでしたが、今年はこれ一本。波がありすぎだろ! そんなある意味おいしいとも言えるその作品は、9年ぶりにマット・デイモン復帰となる人気シリーズ『ジェイソン・ボーン』。ご紹介します。

ジェイソン・ボーンが姿を消して数年後。CIAはこりずにまたさらなる陰謀を企てていた。かつてボーンの仲間だった元エージェントのニッキーは、その悪事を暴くためボーンに助力を請う。彼らと再び対峙するのを渋っていたボーンだったが、その計画のファイルに自分の「真の過去」が秘められているのを知り、戦う決意を固める。

続編ものの醍醐味というのはなじみ深いキャラクターにまた再会できた、というところにあります。この『ボーン』シリーズ、実は007よりミッション・インポッシブルより思い入れが深く、マット演じるボーン君に久々に会えるのを心待ちにしていました。しかしこの度のボーン君はなんだか以前よりさらに憔悴していて、やさぐれているというか、あらぶっているというか、そんな印象。前の彼は仕方なく敵を殺めてしまった時はよくメソメソしていましたが、新作では進んでバリバリ殺るってほどではないにせよ、けっこう気持ちの切り替えが早い感じです。「ボーン君、どうしちゃったの? ビタミン足りてる? 一緒に温泉いく?」といろいろ気遣ってあげたくなりました。

実は今回の『ジェイソン・ボーン』、脚本が1~4作目まで関わっていたトニー・ギルロイから、ポール監督とクリストファーなんちゃらという人に変わっています。ボーンの性格が微妙に変わってしまったのは、この交代によるものか、それとも年食って苦労してぐれちゃったせいか… できれば後者と考えたいです。生活に疲れて人生の曲がり角に来てるおじさんとしては、色々うなずける部分もあったので。

一概には言えませんが、実際の記憶喪失の患者さんの場合、失いたての時は汚れなきピュアボーイみたいなのに、段々と元の性格に近付いていく…という例もあるとか。ボーン君もあんなに暴力を忌避していたのに、地下格闘技で生計を立てていたりとか、自分の中に眠る「戦う本能」を押えがたく感じている模様。そんな様子からCIAの新人さんに「かれは諜報員に戻りたがっているのでは?」と推測されてしまいます。ほんで組織の方も「それもありか」と意外な対応を見せたりします。「え… いままであんなに激しくやりあってたのに…」とも思いますが、小説のスパイではチャーリー・マフィンという先例もありますし、腐敗を苦々しく思いボーンを助けるかわいこちゃんもいるので、本当にボーンくんが正社員に復帰しちゃう可能性もないでもない。最終的にボーン君がどう決断するのか、その辺もこの映画の見どころのひとつです。なんせボーン君口数が少ないうえに始終むっつり顔なんで何考えてるのかわかりませんからね。

以下、若干ラストのネタバレにもなりますが、『ボーン・アルティメイタム』の時に書いたことを再掲させてもらいます。「好きなあるマンガのセリフを借りるなら、『彼の心はまだ血を流して』います。その傷が完全でなくても癒されて、彼が(1作目ラストのように)心の底から笑えるようになって、初めてこの物語は『終れる』と思うのですが、どうでしょう」 今回評判いまいちのようですが、その笑顔を見られる時までシリーズを続けてほしいものです。できればギルロイさんにも復帰していただいて。

As20160819000737_commlそんなわけで『ジェイソン・ボーン』は現在全国で公開中。1週目は2位、2週目は3位と地味な見かけにしては健闘している模様。ボーンシリーズも日本でだいぶ浸透してきたということですかねー


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Comments

伍一くん☆
ボーンくんと温泉行けたらいいよね~
浴衣が似合いそう♪
ボーンも恋人を殺されてからやさぐれちゃったんでしょうね、すっかり。
そして心の底から笑えるラストにいつか辿り着くのでしょうか・・・?

Posted by: ノルウェーまだ~む | October 20, 2016 at 11:50 PM

>ノルウェーまだ~むさん

どうも。熱海に住んでいながらいまだに普通のお風呂と温泉のちがいがよくわかりません。まだ~むもまたぜひおいでませ
そうねえ。ボーン君、はやくまた新しい恋人みつけてほしいですね。って人の心配してる立場じゃねえんだ…

Posted by: SGA屋伍一 | October 22, 2016 at 11:06 PM

ボーンさんは亀の島に行って、一人っきりになった方が本人の為にもCIAの為にもいいんじゃないですかねえ。衛星使って探されそうだけど。

Posted by: ふじき78 | October 23, 2016 at 10:04 PM

>ふじき78さん

どこにいっても隠れ場のない落ち着かない世界になりましたねえ。ボーン君、火星で遭難しても全国ネットで生中継されてたし

Posted by: SGA屋伍一 | October 31, 2016 at 09:30 PM

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