もうひとつの『真田丸』? 堤幸彦 『真田十勇士』
最近全然ドラマの感想書いてませんが、『真田丸』、面白いですねえ。その大河と呼応するように?絶妙のタイミングで懐かしの講談のキャラクターたちが帰ってまいりました。『真田十勇士』、ご紹介します。
時は関ヶ原の戦いからほどなくして。九度山に蟄居の身となっていた真田幸村は抜け忍の猿飛佐助と知り合い、彼を配下に加える。世間を相手にでっかいことをやりたくてうずうずしていた佐助は、雪村のもとに豪傑たちを集め、自分たちの名を天下に知らしめようとする。折しも徳川家康は幕府の支配を盤石のものとするべく、大阪城に向けて進軍を始めようとしていた。幸村と配下の豪傑たちは淀君の要請を受け豊臣方に加わり、幕府の大軍を迎え撃つことになるのだが…
こうやって書くと実にオーソドックスな時代劇のように思えますが、冒頭の勇士たちが集まるくだりはなぜか今風のアニメだったりするのでなかなか面喰らいます。ロケのシーンを増やすより、アニメでやっちゃった方が予算の節約になると考えたのでしょうか。あとこちら、一応原作はマキノノゾミ脚本による舞台とのこと。だからか演技も構図もいかにも舞台調でありました。そこへ堤幸彦監督(舞台では演出)お得意の微妙なギャグが入ったりするので、さらに調子が狂います。まあこの映画では『SPEC』劇場版ほどひどくありませんでしたが、どうして彼はコテコテの浪花節と、わけのわからんオチャラケを交互に繰り出したりするのでしょうね… そりゃシリアスなドラマでも多少のユーモアはあったほうがいいと思いますが、それにしたってちょうどいい量ってもんがあると思います。あるいはコメディがやりたいなら「泣かせ」の場面は最低限にしてもっとテンポをよくするとかね~
ただ、その辺はおおむね想定内でありました。ではなぜ観に行ったかといえば、それは意外と映像化に乏しい真田十勇士の活躍が見たかったからにほかなりません。十勇士といえばお調子者の猿飛佐助とクールな霧隠才蔵あたりはひろく知られてるし、いろんな小説・漫画にも顔を出していますが、他の八人はえらい影が薄いのが実情。ウィキペディアを見ますとそのキャラ付けとか情報量の差はあまりにも歴然としています。というわけで「その他大勢」的な皆さんがどんな風に描かれているのかが気になったのですね。その点の個性の描き分けはなかなか面白かったです。ざっと紹介してみますと
三好清海・伊三…荒くれ者の兄弟
由利鎌之助…歴戦の武人
筧十蔵…元役者のオカマ
真田大助…幸村の嫡男。おぼっちゃん
望月六郎…大助の執事
海野六郎…財政担当
根津陣八…口だけ君
といった感じ。講談では「穴山小助」というキャラクターもいるのですが、今回は大助君と交換された模様。
これらの凸凹した面々が楽しそうに暴れているのを見てるとそれなりに愛着もわいてくるのですが、こちらは大坂の陣の結果を知ってるがゆえに「果たしてどれだけ生き残れるか…」と心配にもなるわけです。
個人的に小気味よかったのは面々が「十」という数字にこだわるあたりですね。その理由は単に「語呂がいいから」「かっこいいから」というものでしたが、確かに「九勇士」や「十一勇士」ではいまひとつぱっとしない(『サイボーグ009』のことはおといて)。そんなくだらないこだわりが上手にいかされるシーンもあり、全体的に「もとはとったかな」という気分にさせられました。まあ人にすすめられるかといえば… 「自分で判断してください」としか言いようがありませんけどね(^_^;
『真田十勇士』は現在全国の映画館で上映中ですが、いまひとつお客さんが入ってないようなので終了も間近いかも。どうも大河ドラマと相乗効果で…とはいかなかったようです。映画も合戦も成功させるのは難しいものですね!
Comments
三谷版で真田十勇士作ったら、その一人にきりちゃんが入りそうです(いや、下手な武将より役に立つと思うけど)。
Posted by: ふじき78 | October 10, 2016 10:37 PM
>ふじき78さん
うん。実は三谷さんのことだから十勇士出してくれるんじゃないかと期待してたんですが、さすがになさそうですね…
Posted by: SGA屋伍一 | October 11, 2016 09:38 PM