犬と猫と鳥と兎とその他諸々の生活 クリス・ルノー&ヤーロー・チーニー 『ペット』
夏休み中もっともヒットした邦画といえばご存知『シン・ゴジラ』ですが、洋画はといえばこちらになるのかな… ユニバーサル傘下のCGアニメの雄、イルミネーション・スタジオが送る最新作『ペット』、ご紹介します。
大都会NYで暮らす小型犬マックスは、大好きな飼い主のケイティと日々幸せな毎日を送っていた。だがある日その幸せは突然終わりを迎える。ケイティが保健所からもう一匹新しい犬を引き取ってきたのだ。態度が大きくぬけめない新入りのデュークに、マックスは苛立ちを募らせる。そして二匹の争いは散歩の途中ピークに達し、激しくやりあっているうちにリードが外れ見知らぬところへ迷い込んでしまう。果たしてマックスとデュークは無事ケイティのもとへ帰れるのだろうか。
これまでミニオンとかロラックスおじさんとか謎の物体をメインに作品を作ってきたイルミネーション・スタジオ。しかし今回はぐっと現実的にわたしたちの身近にいる動物を題材にしてきやがりました。ただ身近な動物といってもそこはイルミネーションさんなのでまっとうに描かれるはずもなく、ミニオンも顔負けのヘンテコ軍団として大活躍します。中心となっているのはマックスとデュークのコンビなんですが、彼らをめぐってマックスのアパートのペットチームと、ペットを目の敵にするNYのレジスタンス動物たちが激しいチェイスやバトルをえんえんと繰り広げるという構図になっております。
そんなドタバタの中にさりげなくこめられているのは、「他者を受け入れる」というテーマ。はじめは角突き合わせていたマックスとデュークも、旅の途中助け合っているうちに次第にお互いを仲間と見るようになっていきます。人間とペットたちを敵視していたギャングのボスのウサギ(この辺の設定が爆笑もんですが)も、敵意を捨てることにより真の幸せを得ることになります。そしてこの点で最も懐が広いのは、二匹の飼い主のケイティ。出番は決して多くはないんですが、行き場のなかった二匹を迷わずひきとり、部屋をちらかされても苦笑するだけで怒ったりしない。この世の中には…まだこんな聖母のような女性が存在するのでしょうか? きっとこの子はいいお母さんになると思います。
どちらかといえばテーマよりもバカバカしさに重きを置いているイルミネーションさんですが、この「自分の容量を広くしよう」というメッセージは一貫して訴えてきたことかもしれませんね。「女も子供も嫌いだ!」と言っていたグルーさんはその苦手意識を克服して幸福な家庭を得ましたし、『ロラックスおじさん』はある意味壮大な「許し」の話でありましたし。『イースターラビットのキャンディ工場』はすいません。観てません。
ただそんな暖かなメッセージもスノーボールのあまりのインパクトに伝わりにくくなってるかな、という気はします。このウサギ、見かけはかわいいのに凶暴で狡猾で過激で衝動的で… かと思えば突然ころっといいやつにもなったりして。正直主役を食うほどのキャラ立ちぶりでありました(^_^; 本当、このとんでもねえウサギのためだけにも『ペット』は観る価値があると思います。
『ペット』はさすがに息切れしてきましたがまだまだ全国の映画館で大ヒット公開中。正直「こんなノンシリーズで普通の動物が主人公のアニメなんて売れんだろ」とおもってました。ごめんなさい。これがイルミネーション・スタジオの力なのか… 『シン・ゴジラ』もそうでしたが、ますます勘があたらなくなっている今日この頃です。
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