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August 09, 2016

やばいサンゴと礁 ジャウム・コレット=セラ 『ロスト・バケーション』

51naqv7c2qlあ~、やっと資格試験終わった。結果はどうあれ(笑) というわけでようやっとわたしも夏本番です。夏といえばビーチ! ビキニ! そして人食いザメ! 今日はその三つの魅力がぎっしりつまった『ロスト・バケーション』、ご紹介します。

とあることがきっかけで、母との思い出のビーチにやってきた医大生のナンシー。軽快に波乗りを楽しんでいた彼女だったが、その入り江に人食いザメがやってきたからさあ大変。命からがら、彼女は干潮の時だけ顔を出す「礁」にたどり着く。陸地はすぐ近くにあるのに、戻ろうとすればサメのご飯になってしまうのは必定。そして刻々と満潮の時間が近づいていく…

どっかのトレンディ・ドラマみたいなタイトルがついてますが、原題は『The Shallows(礁)』と実にシンプルです。最近レンタルDVDの棚にぎっしりと並んでいるくだらなそうなサメ映画の数々。シャークネード、シャークトパス、トリプルヘッド・シャーク、メガシャークVSグレートタイタン、ジュラシック・シャークetc… この映画は「もうそういう色物的なコラボはやめて、サメ本来の味で勝負しようぜ!」という作り手の意気込みがみなぎっておりました。
実はシネコンで予告を見たときに、「いかにも一発アイデア的なスリラーだなあ。それで1時間半以上もつんかい?」と思ったものでした。しかし監督が「かわいそうなリーアム・ニーソン三部作」(『アンノウン』『フライト・ゲーム』『ラン・オール・ナイト』)のジャウム・コレット=セラと知り、考えを改めました。彼ならば限られた状況でいかようにも話を面白く盛り上げてくれるに違いないと。そしてその期待は裏切られませんでした。

まあビキニなんてほとんど素っ裸みたいなもんじゃないですか。まさに丸腰同然であります。そんな状態で巨大なサメにどうやって対処するのか? …というかもうあきらめるしかないですよね… しかしあたりを見回すとそこかしこに利用できそうなものがちらちら浮かんでたり沈んでたりするんですよ。か弱い女の子が知恵を絞ってマスター・キートンのようにサバイバル技術を駆使していくあたりがまことに痛快でした。
実は最近ちょっと似た事故がありまして、海に遊びに来てた少年が沖に流されて、礁にたどりついて九死に一生を得たとのこと。そんでその少年は携帯電話をビニールに入れて腰にゆわえていたため、すぐに助けを呼ぶことができたんだとか。この映画でもそうしていたら40分くらいで話が終わっていたと思うんですけどね。でもまあそれではサスペンスとして面白くないし、「現代人はすぐネットや携帯に頼りがちだ! もっと自分の生き抜く力を信じろ!」という監督のメッセージが込められてるような気もしました。

あと、ただサメとビキニの話に終わらないだけの絶妙なアクセントがふたつ加えられています。ひとつはナンシーがその浜辺に来た理由。そこにサスペンスの添え物にふさわしいくらいの、ささやかな人間ドラマが含められています。
もうひとつはナンシーが礁で追いつめられている間、ずっとそばで見守っている怪我したカモメ。このカモメちゃんが実にかわいらしくて。人がバクバク食べられていく凄惨な映画の、一服の清涼剤のような役割を果たしていました。

前半はサメが来るぞ~来るぞ~というわざとらしい演出が多様されていて、チキンなわたしとしては「どうしてこんな映画観に来ちゃったんだろ」と軽くちびりながら後悔しておりました。しかし一転、ナンシーがサメと戦う決意をかためてからは、こちらも俄然ファイトが燃え上がりまして(影響されやすい性格)。クライマックスなどは思わず「ぐべち」とわけのわからん声が漏れてしまいました。まあそれくらいエキサイトする作品だということです。

61szintbiyl__sl500_sy355_「海はやさしいだけじゃない。怖いところでもあるんだ」ということでぜひ『ファインディング・ドリー』と合わせて観てほしい一本。ちなみに興ザメなことを言ってすいませんが、人がサメに襲われて死ぬ件数は世界でだいたい10~20件くらいのようです。みんな安心してビキニでビーチを楽しみましょう。

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Comments

きっと、あのカモメが影の大番長だと思うな。

Posted by: ふじき78 | August 19, 2016 at 11:53 PM

>ふじき78さん

最後ポケモンのように進化してサメと戦ってほしかったですね

Posted by: SGA屋伍一 | August 23, 2016 at 10:08 PM

何気にサメ映画好きだったりする私です。

これは面白かったですね。最近やっと観たけど。
2度続けて再生してしまったので観終わったら夜中の2時をまわっていましたが。

シンプルで「原点に帰れ」という感じがいいですね。
わたしも頑張らなきゃ…(何に?ダイエットか?)といろんな意味で思わされました。
それと,あのカモメがかわいい~~
カモメがペットに見える映画ってはじめてでした。新鮮。

この作品の邦題から「ロング・バケーション」を連想してしまったのは私も同じです。

Posted by: なな | February 04, 2017 at 03:23 PM

>ななさん

サメ映画がお好きとはちょっと意外。2度続けてリピートとはずいぶんツボにはまられたのですね
単なるモンスターパニックものと思いきや、健気に生きる女性たちに大いに元気を与える映画だったと思います。ヒロインが脚をざっくり切ってしまうあたりは痛々しすぎてつらかったですが

カモメはよかったですね。去年見た映画の中では『ファインディング・ドリー』の前座に出てたひな鳥とならんで最も印象に残った鳥さんでした

Posted by: SGA屋伍一 | February 04, 2017 at 10:04 PM

ジャウマ監督って、邪悪な馬なんですか?

Posted by: ボー | April 30, 2017 at 07:26 AM

>ボーさん

返事がめちゃくちゃ遅れてすみません…
邪悪っていうかなんか意地悪ですね、このひと

Posted by: SGA屋伍一 | May 11, 2017 at 10:02 PM

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