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August 29, 2016

磁力と黙示録 ブライアン・シンガー 『X-MEN アポカリプス』

Apocalypse前作『フューチャー&パスト』で感動的な大団円を迎えた映画「X-MEN」シリーズ。もうこれで終わりでいいんじゃない?とも思いましたが、60年代の『ファースト・ジェネレーション』、70年代の『フューチャー&パスト』と来たら、「やっぱり80年代が舞台の作品も作りたいよね!」とスタッフが考えたのでしょう。そんなわけで現在公開中の最新作、『X-MEN:アポカリプス』、紹介します。

エグゼビアらの活躍によりテロ事件が未然に防がれた80年代。世間はミュータントにわりかし好意的になっていた。だがそのためミュータントを神とあがめるカルト教団が誕生し、紀元前より眠りについていた最古の超人・アポカリプスを目覚めさせてしまう。現代の退廃した世界を見たアポカリプスは激怒。自分の手でそれを滅ぼし、新たな世界を作り上げることを決意する。その配下として選ばれたミュータントの1人に、東欧で穏やかな暮らしを送っていたエリックことマグニートーもいた…

映画の「X-MEN」シリーズが始まったのは2000年ジャスト。かれこれ16年前ですよ… あのころはわたしもまだ若かったなあ。ふううう。…と余計な感傷にひたるのはやめます。いま年にバカスカ作られてるアメコミ映画のブームの礎を築いたのは、このシリーズといっても過言ではありません。
おそらく「アメコミ映画とかバカバカしいし~」と言う層を引き込むためでしょう。シリーズ初期はとにかく「地味に地味に」というアレンジがなされました。原色派手派手のコスチュームはフラットブラックになり、メンバーは基本的にノーマスクの素顔丸出しがデフォルトであり、舞台は常にわたしたちと地続きの世界であり…といった具合にです。
コミックのX-MENももちろんシリアスで社会的なテーマがこめられてはいますが、そこはやっぱり漫画なんで、宇宙へ行ったり魔界へ行ったり、大勢のメンバーがバンパイアになっちゃったりとトンでもな展開も時々はあります。そういうのをなるべく避けて映画版はここまで来たわけですが、今回はとうとうやっちゃいましたね… なんせ敵は古代エジプトから生きていた「神様」ですから。この「アポカリプス」の設定も実は原作通りなんですが、これまでの映画シリーズの流れから見るとかなり浮いてます。なんというかこう、「ムー」というか「MMR」的発想ですよね。

しかしまあそこに目をつむればけっこう痛快です。うじゃうじゃいるX-MENのキャラの中でも、特に最強と言える4人のミュータント(プロフェッサーX、マグニートー、ジーン・グレイ、アポやん)が一堂に会すわけですから。これらのチートキャラが入り乱れてくんずほぐれつの大合戦を繰り広げるわけですから、これが面白くないわけがありません。そしてそれら最強キャラの周囲で、物理攻撃しかできないメンバーも一生懸命がんばっています。
特に今回目立っていたのは1作目から登場しているサイクロップス。思えばコミックでは主人公と言ってもいいほどの存在なのに、映画ではずっとウルヴァリンの引き立て役でさんざんな扱いでした。ですが今回はウルヴァリンがほとんど出てこないこともあっていつも以上にはつらつと活躍しておりました。まあ一番おいしいところはチートキャラ達に持って行かれちゃうわけですが。

対照的に気の毒なのが人気的には二軍っぽいキャラクターたち。シンガー監督は自分の作り上げたX-MEN世界は愛していても、おそらく原典のほうはそれほど好きではないんだと思います。これはX-MENに限らずアメコミ映画にはよくあることですが、漫画では何十年と生き延び続けたベテランキャラが非常にあっさり死んだりするので。特に『ファースト・ジェネレーション』で初登場したキャラたちのその後には涙を禁じえません。わたくし『ファースト・ジェネレーション』公開時に「初期三部作に出てこない面々は、壮絶な殉職シーンを免れないかもしれませんね・・・」なんてことを書いてたんですが、その予言が当たったかどうかは… うふふ♪な・い・しょ♪

さて、この『X-MEN:アポカリプス』、人気絶頂のジェニファー・ローレンスをメインにすえても日米ともに売上はぱっとしないようです。少し前、同じユニバースの『デッドプール』があんなにヒットしたのに… なぜでしょう。思うに初期は観客のとば口をひろげたX-MENシリーズですが、いまや百花繚乱となってしまったアメコミ映画の中では、かえってその地味スタイルが裏目にでちゃったのかもしれません。かといってここから急に派手派手にして人気が出るかといえば… うーん、難しいところですね(^_^;

D521678c343b633a3cf098d1d22514a7d533作かけてようやく21世紀に追い付いてきたX-MEN。今度こそ完結のように見えなくもありませんが、20世紀フォックスはまだまだ次なる計画を練っています。とりあえず製作が確定してるのが『ウルヴァリン』の3作目と『デッドプール』の2作目。ほかにはアウトローの伊達男を主人公にした『ガンビット』や、若い候補生がメインの『ニュー・ミュータンツ』、攻撃的な暗殺部隊の活躍を描く『X-FORCE』などが企画中です。プロフェッサーの狂気の息子の名がタイトルの『リージョン』というドラマも作るみたいです。そうそう、『ファンタスティック・フォー』とのコラボはどうなったんだろう。
来年もアメコミ映画は激戦区のようですが、どこも末永く続きますように… おまけにこれまで書いた感想のリンクを貼っておきます。
1作目
2作目
ファイナル・ディシジョン
ウルヴァリン
ファースト・ジェネレーション
ウルヴァリン:サムライ
フューチャー&パスト
デッドプール

原作60年代編
原作70年代編
原作80年代編

お暇な方は読んだってー

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Comments

SGAさんこんばんわ♪

X-MENシリーズも随分と長いシリーズになっちゃいましたよね。思えば自分もアメコミ映画に触れるきっかけになったのがX-MENの一作目だったような気がしますし、俳優ヒュー・ジャックマンを知る作品ともなったので、なんか改めて功績の大きい作品だとも感じます(笑

まあまだシリーズは続く雰囲気ではありますが、それでも一応の区切りをつけた本作もとても面白かったですね。確かに最強クラスのミュータントがたくさん出て来て一斉にバトルに雪崩れ込む後半とかは鼻息荒くなったほどw
でも自分の中での最強ミュータントって誰にも知覚されないほどの超高速移動が出来るクイックシルバーかと思ったんですが、アポに手足をボキッ!!とやられた瞬間、その思いも砕けてしまったのでした^^;

Posted by: メビウス | August 31, 2016 08:44 PM

>メビウスさん

こんばんは。昨夜は大変でしたね。お疲れ様でした
これの前と言うと『バットマン&ロビン』がありまして、『スポーン』や『ブレイド』もあったもののアメコミ映画が続くかどうかもわからない状況でした。そこへ『X-MEN』と『スパイダーマン』が公開されて、まあ言ってみれば救世主ですよね。アメコミ映画の

クイックシルバーは前作に続き活躍してましたが、彼ってお笑いパートには向いててもクライマックスでかっこよく決めるのには向いてないんじゃないかと思いました(^_^; 原作ではもっと無愛想でクールなおっさんなんですけどね

Posted by: SGA屋伍一 | August 31, 2016 10:31 PM

ハーレイ・クインを入れたら、ヒットしたと思う。

Posted by: ボー | September 01, 2016 06:23 AM

>ボーさん

サイロックのオリビア・マンさんもがんばってましたがいまいち目立ちませんでしたねー

Posted by: SGA屋伍一 | September 01, 2016 10:13 PM

伍一くん☆
確かに今回やらかしちゃった感あるよね。
古代エジプトの神とか持ち出すと、私はちょっとX-MENらしくないと思ったので、案外この地味な処が好きだったのだと気付きました。

プロフェッサーの息子って狂気なの??気になる~~

Posted by: ノルウェーまだ~む | September 03, 2016 02:39 PM

>ノルウェーまだ~むさん

まだ~むさんのような大人のマダ~ムにはやはり地味で(アメコミにしては)現実的な前までのスタイルの方が合うでしょうね。たぶん基本的にはこれからもそういう路線で行くと思います。デッドプールをのぞいては…
教授の息子は「2」で出てきたんですけど、もうみんな忘れてますねえw

Posted by: SGA屋伍一 | September 04, 2016 09:22 PM

何か遂にプロフェッサーの頭が! みたいな些末な事が話題になってるうちに公開が終わってしまったのは、やっぱり規模感を伝えられなかったからじゃないですかね。アポカリプス側5対X-MEN側5の対決が地球の運命の明暗を決する、言われても、リアリティーがない。
アポカリプスが単にでかくて青くてハゲのおっちゃん以外に、「だから凄いんだ」みたいなのが宣伝的に浮かび上がってこないのが、よろしくなかったんじゃないですかね。いつもの「X-MEN」であるなら、パスしてもいいや。そんなに「X-MEN」詳しくないし、コンプリートして見てないし、みたいな人が多かったんじゃないかと。「X-MEN」であろうがなかろうが見に行かなくてはならないみたいな宣伝方法が取られてなかった気がする。

Posted by: ふじき78 | September 19, 2016 08:44 AM

>ふじき78さん

こんとこよくある「異次元に穴をあけてなんか呼び込む」というクライマックス出なかったのはよかったですが、アポヤン含む数人で世界を滅ぼす…といわれても確かにピンと来ませんでしたね。むしろ核兵器廃絶して世界平和に貢献していた気がします。
X-MENもかつては日本でもそれなりに人気あったと思うんですが…やはり派手派手でピカピカのコスチュームでイメチェンするしかないか? あとは巨大ロボに乗るとか

Posted by: SGA屋伍一 | September 20, 2016 09:17 PM

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