三匹がイキる ラドヤード・キップリング ジョン・ファブロー 『ジャングル・ブック』
♪わーおわーおわおー ぼぼんばぼんぼんぼんばぼんぼぼば 『オオカミ少年ケン』や『少年ケニヤ』(若い人は知らんだろ)に大きな影響を与えた児童文学の名作『ジャングル・ブック』。これまでもたびたび映画化されてきましたが、本日はその最新バージョンを紹介しましょう。『ジャングル・ブック』(タイトルそのまんま)です。
旅の途中、父親が命を落としたため、ジャングルに放り出された赤子のモーグリ。だが彼は心優しい狼のラクシャに育てられ、たくましく成長していく。しかし人間に恨みをもつトラのシア・カーンはジャングルに人間がいることに異を唱え、モーグリを自分に差し出すようラクシャたちに迫る。モーグリは群れのみんなに迷惑をかけないため、一人旅に出るのだが…
えー、原典の『ジャングル・ブック』は子供のころに読みました…が、だいぶ詳細を忘れています。数編のエピソードからなる短編集で、半分くらいはモーグリの話なんですけど、ほかは彼と全く関係ないアザラシやゾウが主人公を務めています。
わたしが特に思い出深いのは1994年に『ハムナプトラ』のスティーブン・ソマーズが作ったバージョン。たしかモーグリがすぐに大きくなって、青年といってもいい年齢で活躍し、ヒロインといちゃいちゃしたり悪者の人間たちと戦ったりしてました。
それに対して今回のジョン・ファブロー版ではモーグリは子供のまんまです。あと彼以外に人間がほとんど出てこず、ついでに『銀牙』よろしく野生動物が言葉を話したりしてます。これ、ディズニーの遺作となった1967年版のアニメがこういうスタイルだったようなのですね。というかこのお話、やはりディズニーの『ライオン・キング』と構成がそっくりだと思いました。ソマーズ版とファブロー&アニメ版、どっちが原作小説に近いかといえば… すいません、忘れました。
さて、わたしこういう野生動物が友達だったり子分だったりする話にめちゃくちゃ弱いんですよ。先にあげた『少年ケニヤ』しかり、『怪獣王ターガン』しかり、ちょっと違うけど『バビル二世』しかり。40過ぎのおっさんになった今もこういうシチュエーションの話に出会うと「クキェーツ!!」とハートが燃え滾ったりします。
ソマーズ版でもちゃんと狼、豹、熊が登場しますが、そちらではモーグリの家来的な扱いで個性もそんなに描き分けられてなかったような。でもまあそれはそれで好きな作品であります。
今回は動物たちにもそれぞれ性格があり、たとえばモーグリを拾った黒豹のバギーラはいいやつなんですが、ちょっと口やかましい長男的な立場のキャラクターです。そして途中から登場するクマのバルーはガタイはいいものの、いい加減で働くことを嫌うのんき者の次男みたいな役割。そして人間のモーグリは二匹のお兄ちゃんに振り回されながら無邪気にはしゃぎまわる末っ子的な存在。コントみたいなやり取りを繰り広げていた三匹が、クライマックスでは凶悪な敵に対して、桃太郎侍のようにそろって見栄を切るあたりが猛烈にかっこよく、これまた「フガー!!」と燃え上がったのでした。あとジャングルも盛大に燃えてました。
出さなくてもいいのにサービス的に怪獣っぽいものを出してくれるのも嬉しかったです。今夏は『シン・ゴジラ』は当たり前として、『ゴーストバスターズ』や『インデペンデンス・デイ:リサージェンス』、そして本作品でも怪獣が暴れまわっていてはしゃいじゃいました。ここまで怪獣が獣実してた夏は近年ちょっと記憶にありません。
ジョン・ファブロー版『ジャングル・ブック』は全米では大ヒットとなりましたが、日本では邦画や『ペット』に押されていまいち売れてないようです。いい映画なんだけどなあ… ちなみにディズニーは早くも続編の製作にとりかかっているそうですが、間の悪いことにワーナーさんも再来年モーション・キャプチャーの第一人者アンディ・サーキスを監督に据えて『ジャングル・ブック』を作ることが決まっています。ハリウッドのみなさんはそんなにこの話が好きなんですか! まあやるならやるで一生懸命差別化にがんばっていただきたいものです。
すぐ上のイラストは今回のモーグリを自分流に描いたつもりなんですが、ちょっとずれてしまったような。もう少し幼い雰囲気を出したかった…
Comments
うさんくさい少年だと思ったら…もぐりだったんですね!
Posted by: ボー | September 01, 2016 06:27 AM
>ボーさん
それ、40年前から言われてるギャグや!
Posted by: SGA屋伍一 | September 01, 2016 10:14 PM