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July 24, 2016

20年目の独立やり直し ローランド・エメリッヒ 『インデペンデンス・デイ:リサージェンス』

Calendarnewsima42016720年前世界的なヒットを飛ばしたアホバカSF大作が、満を持して帰ってきました。監督はローランド・エメリッヒそのままの『インデペンデンス・デイ:リサージェンス』、ご紹介します。

1996年、かつて経験したことのない宇宙人の大侵略を辛うじて退けた人類は、国家の枠を越え協力し合い、次なる襲来にそなえていた。だがそんな努力をあざ笑うかのごとく、月の前線基地に突如として前回をはるかに上回る巨大円盤が出現する。またしても訪れた絶体絶命の危機に、かつて地球を救った英雄たちと、その子供たちが立ち向かう。

前作『インデペンデンス・デイ』(以下ID4)はかなり思い入れの深い映画です。何度か書いてますがそれ以前は「映画なんてたけーよ、そうそう1800円も払っていられっかよ」という人間でしたが、ID4を観てからは「やっぱりでっかいものはでっかいスクリーンで観なくてはいけないんだな…」ということに気づき、それから映画館通いがはじまってしまいました。いまは別にでっかいものが出てこなくても気になったら映画館で観るようになってしまいましたが、とにかくID4はわたしにとってそんな恩人のような沼の入り口のようなそんな映画です。そのID4が20年の時を経て帰ってくるというんですから、こりゃあ張り切らないわけにはいきません。

で、結論から申しますと今回も面白かったです。ウリはまず前回よりさらにスケールアップした巨大円盤ですかね。「とにかくでかけりゃいいんだよ」というエメリッヒ監督の高笑いが聞こえてくるようです。ほかにも宇宙人の技術を取り入れた新型メカとか、敵のボス的存在であるクイーン・エイリアン(のようなもの)、ビッグサイズのポケモンボールみたいな謎の物体など、一生懸命新要素を取り入れて楽しませてくれます。

ただ前作と比べてしまうと、大幅にパワーダウンしてしまったのは否めませんかね(^_^; 基本的にやってることは1作目とおんなじなんですけど、なんというか微妙に燃えるポイントをはずしてしまったというか。たとえば前作は立場の違う三人の男が奇妙な偶然で邂逅し、一致団結して綱渡りのようなミッションに挑むところがよかった。そして彼らとは別にみんなからバカにされてたじいさんが、本当にいいところをもっていって華々しく散るところが泣けました。そして難攻不落だった巨大円盤が作戦の甲斐あってド派手に爆発するところにスカッとしたわけです。
ところが今回はこういう燃えポイントがことごとくないか薄味でした。まああの月くらいはあろうかという円盤は、落としちゃったら巨大隕石衝突くらいの大惨事になりかねないので、落とすに落とせないという事情もわかるんですけどね。

あとエメリッヒ監督はこの映画の公開直前に「スーパーヒーロー映画なんか全然面白くない」という挑発的な発言をされてました。それにむかついたわけじゃありませんけど、いまどきヒーロー映画でさえ「本当の正義とはなんなのか? 正義というのはそれぞれの主観でしかないのでは?」というテーマに挑んでいるわけです。現実に各国の正義を巡って世界ではテロ事件も起きてるわけですからね。そういうことを考えると、わたしも二十年前と比べるとさすがにちょっと分別臭くなったせいか、この映画の「異物は片っ端からぶっ殺せ! ぶったおしたら次は攻め込んじゃれ!」というノリにはややついていき難かったりして。

Pokemon4300x350あれ… 気が付いたら愚痴が多くなっちゃったな(^_^; 取り繕うようですが今回も楽しめたのは確かですし、なによりわたしの映画道の原点であるID4の続編ときたら、応援しないわけにはいかないのです。そうだ、もうひとついいところありました。てっきり「続編につづく」と終わるのかと思ったら、一応リサージェンスはリサージェンスで切りよく終わってくれたことです。えらいぞ!
エメリッヒ監督はこの映画に登場した若い世代が宇宙へ飛び出していく第三作も製作希望とのこと。大宇宙だったらどんなでかい円盤破壊してもあまり支障ないですしね! そんな監督の次回作はいまのところ月が地球に激突しそうになる話だそうです。んっとーにこの人もかわんねーな~~~ 好き!


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July 20, 2016

大霊界2016 宮藤官九郎 『TOO YOUNG TO DIE!若くして死ぬ』

Photo資格の勉強が押し迫ってきて更新が途絶えがちです(^_~; 今日は本当は2月に公開されるはずだったのに、不幸な事故が重なってようやく日の目を見たこの映画を紹介します。『TOO YOUNG TO DIE!若くして死ぬ』でございます。

同じクラスの手塚ひろ美に恋い焦がれるアホな高校生・大助は、修学旅行の自由行動で一気に間を縮めようと計画を練るが、その旅行の最中突然の事故に合ってクラスメイト達ともども死んでしまう。大助が目を覚ました場所は鬼が支配する地獄のような場所、というか地獄だった。鬼の1人でなぜかメタルバンドのリーダーであるキラーKが言うには、定期的に開かれる閻魔大王との面談でいい点をもらえれば、現世に生まれ変わるチャンスが与えられるという。手塚ひろ美との初チューを果たすため、大介はキラーKの指導のもと奮闘するが…

とまあなかなかあほらしそうな映画なんですが、感心したのは意外と仏教の教えに忠実に地獄・あの世が再現されているというとこですね。どんな種類の地獄があるかとか、地獄にはどんな鬼がいるかとか、いわゆるひとつの六道輪廻の仕組みとか。まさに若い世代にはうってつけの仏教入門と言えるかもしれません。ちなみに六道輪廻とは天道、人間道、地獄道、修羅道、餓鬼道、畜生道のことです。あらゆる魂はこの6つの世界をひたすらぐるぐる回って生まれ変わるというのが仏教の考えなのですね(『聖闘士星矢』で覚えました)。で、なぜか大助くんが決まって飛ばされるのが畜生道なんですが、何度かかわいい動物の姿も拝めたのが期待外のラッキー♪って感じでした。

ただ「何度も生まれ変わる」というストーリーなゆえ、うまくやらないとグダグダになりやすいんですよね。こういうループものって。そしたらさすがは宮藤官九郎。期待を裏切らないテンポの悪さでしたw でもまあ主演の神木隆之介君の好演と時々ツボにはまるギャグがあったせいで、なんとか面白さがバッドテンポを上回ったような気がします。

少し真面目な話をしますと、身近であればあるほど、そしてその人が若いほど、誰かの死というのは本当にやりきれないものであります。だからこそ昔の人はいろいろあの世の設定を考えて、ここではないどこかで元気でやっていてほしいと考えたのだと思います。くだらない気休めにすぎない、と感じる人もいるでしょうけど多少はそんな空想に心が慰められるのも確かです。死後もなおも元気いっぱいの大助くんの姿を見ながらそんなことを考えていました。
ちなみに主演の神木君は幼いころ体が弱く、医師から「助かる可能性は1%」と言われたこともあったそうです。そんで「何か生きていた証を残したい」とお母さんが子役スタジオに入れたのが芸能界デビューのきっかけだったとか。そんな神木君が成人してこんな映画で大活躍しているのは実に皮肉であり、感動的なことであります。これからもますますの活躍を期待しています。

Ripd1おふざけのスタイルをとりながらもさらっと「本当の幸せってどういうことなのかな?」ということに触れていたのもよかったです。
夏休み大作に押されてきて少々影が薄くなってきましたが、それでも『TOO YOUNG TO DIE!若くして死ぬ』は全国でまだヒット公開中。配給さんも胸をなでおろしていることでしょう。どうせならお盆の時期まで伸ばした方がもっと盛り上がったかも…


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July 11, 2016

タイムハザードⅡ(?) ジェームズ・ボビン 『アリス・イン・ワンダーランド 時間の旅』

20131102020827aee2010年(もうそんな前になるかよ…)、『アバター』にはかなわなかったものの、日本での興行収入が118億円に達し超大ヒットとなった『アリス・イン・ワンダーランド』。その実写版『アリス』がキャストはそのまんまで、監督だけ交代して6年ぶりに帰ってきました。『アリス・イン・ワンダーランド 時間の旅』、ご紹介します。前作の感想はコチラ

前作から3年後。長い航海から帰ってきたアリスはパトロンだった会長の死と、いけすかない息子がそのあとを継いだことを知る。新会長はアリスに借金を返すために船か住み慣れた家のどちらかを手放すように迫る。屋敷の一室でアリスが悩んでいると、部屋の鏡が突然歪みだし彼女をなつかしのワンダーランドへと誘う。旧友たちとの再会を喜ぶアリスだったが、その一人マッドハッタ―は心を病み命の危機に瀕していた…

原題は「Alice Through the Looking Glass」。「鏡を通り抜けるアリス」とでもいったところでしょうか。原作小説の第二作『鏡の国のアリス(Through the Looking-Glass, and What Alice Found There)を思わせるタイトルですが、例によって全然違う内容だそうです。
さて、今回の第二作、とっちらかった前作と比べると非常によくまとまってました。その分原典からはさらに遠くなった感もありますが、おかげで寝ずに済んだ(笑)。そこがまずよかったところです。

あといまどき珍しいこってこての勧善懲悪話だった1作目に対し、今回は「悪にも悪になった理由がある」「善玉だって失敗や罪を犯すことがある」というお話になってました。そういう意味では最近のディズニーの流れに実にマッチした内容でありました。

他に目を引いた点としましては時間を司る城の壮大なビジュアルとか、前作もそうでしたけどコスプレの異常なまでのはまり具合とかですね。特に赤の女王(ヘレナ・ボナム・カーター)と白の女王(アン・ハサウェイ)の二人は圧巻です。新顔では時の化身である「タイム(そのまんま)」であるサシャ・バロン・コーエンがお子様用に下ネタを封印しながらも非常にいい味を出していました。

というわけで全体的に決して悪くはない本作品ですが、続編モノの宿命というべきか際立った目新しさやインパクトに欠けていたのも事実。「時間の旅」という新機軸に挑戦してはいましたが、もうちょっとぶっとんだアイデアが必要だったかもしれません。口で言うのは簡単ですけどね…

加えて6年前のジョニデ&ティム・バートン・ブームも完全に鎮静化してしまったせいか、初週こそトップだったものの前作と比べるとだいぶ出足が落ちているようです。わたしは今年最大のヒット作になるのでは?と予想してたんですが、さすが自分の予想はあてにならないなあ。来週からはさらに追い打ちをかけるように『ファインディング・ドリー』が始まってしまうのでまた浮上することはまずないでしょう。恐ろしやディズニー、身内同士で弱肉強食の争いを繰り広げるとは…

Aiwd2『アリス・イン・ワンダーランド 時間の旅』はたぶんまだもう少し全国で上映中だと思います。前作や『チャーリーとチョコレート工場の秘密』などが好きな人には強くおすすめします。
あと前作と今作の間にチェコのシュバンクマイエルが作った『アリス』も観ました。こっちはこっちでディズニー版と全然違う不気味でシュールな快作ですので、併せて鑑賞することをおすすめします。DVDは約4千円くらいで出ております。


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July 04, 2016

古谷実に関してはちょっと偉そうに語らせてもらいたい 古谷実・吉田恵輔 『ヒメアノ~ル』

Tokatyan1『稲中卓球部』で人気を博し『ヒミズ』でセンセーションを巻き起こした異能の漫画家・古谷実。その古谷氏の1作品がこの度映画化されて多くの人から絶賛を浴びています。『ヒメアノ~ル』、ご紹介しましょう。

清掃員として平凡な日々を送る青年・岡田は、ある日先輩の安藤から「自分の運命の人(だと思い込んでる)」カフェ店員・阿部ユカとの間を取り持ってほしいと頼まれる。半ば無理やり付き合わされる形になった岡田は、ユカにストーカーらしき男がいることを知る。その男は偶然にも岡田の高校時代の同級生・森田だった。

わたくし古谷先生の漫画にはそれなりにずっとつきあっております。『稲中』『僕といっしょ』『グリーンヒル』とギャグ路線を歩んでいた古谷先生が、またギャグか…と思わせて恐ろしいほどの毒気を吐き出したのがやはり映画化されている『ヒミズ』。さすがにきつかったのか、つづく『シガテラ』『わにとかげぎす』はシリアスムードとギャグを半々に織り交ぜたスタイルとなります。そしてそのあと発表されたのが『ヒメアノ~ル』です。
これも冒頭こそお笑いムードで始まり、ギャグパートもそれなりにあるのですが、サイコパス森田の凶行の描写があまりにも鬼気迫りすぎて笑える場面も笑えなくなるような漫画でした。
当初岡田・安藤が主軸で進んでいたストーリーは途中から完全に森田中心となり、最後の方に至っては「あれ? 岡田君どこいったの?」ってくらい影が薄くなってしまいます。個人的にはその結末は煮え切らない、唐突なもののように思え、「古谷先生も行き詰っちゃったのかなあ」なんて思ったものでした。

だもんで『ヒメアノ~ル』が映画化されると聞いたときには、「なぜこれを?」と大変びっくりいたしました。しかもその評判がけっこういいというから二度びっくりです。最初は完全スルー予定でしたが思い切って観てみることにしました。なるほど、たしかにいろいろ面白かったです。
漫画版よりもよかったのはそれほど密接でもなかった岡田と森田の関係が、こちらではぐっと強い因縁で結ばれていて最後まできっちり絡んでいたこと。同じ学校に通うごく普通の高校生だった二人がなぜこれほどに隔たってしまったのか、際立った対比として描かれています。時折ニュースで見る血も凍るような凶悪犯やテロリスト。そういう凶悪犯もかつてはもしかしたら私たちと穏やかで平凡な人間だったのかもしれない。想像もしたくないような残酷な経験が彼らを悪魔のような人間に変えてしまったのでは…なんてことを考えさせられます。いくらひどい目にあっても変わらない人だっているとは思いますが。
最初は明らかに安藤の方が森田君よりおかしくて危ない人間に見えるのも面白かったですね。そしてストーリーが深刻になっていくにつれ、このムロツヨシ演じる安藤がいやしとなり天使のように見えてくるから不思議でなりません。
ずっとギャグとシリアスがないまぜになっていた原作と違って、映画では突然ギャグからシリアスに転調するのも斬新で印象的でした。それこそごく普通の日常が、突然悪夢のような状態に見舞われることもあるんだな…と背筋が寒くなりましたですよ。

Hmanというわけで胃袋にズシリと来る意欲作でありました。あまりに重くてわたしはちょっと疲れちゃったりもしたんですけど(^_^;
ちなみにこのあと古谷先生は『サルチネス』で『稲中』とはまた違った完全ギャグの作品を手掛けられます。やっぱ自分はこういう方が好きだなあ。そしていま『イブニング』誌で連載中の『ゲレクシス』が、完全にいっちゃってる感じのギャグ漫画でこれまた面白い! 気になった方はそちらも手に取って読まれてみてください…ってまだ単行本化されてなかったか。 


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