ボクシング映画によくある風景 アントワン・フークア 『サウスポー』
イケメンながらキモい系の役も十二分にこなす実力派俳優ジェイク・ギレンホール。そのジェイク氏が熱いボクシング映画をやると聞いて「これは間違いない!」と思い行ってまいりました。『サウスポー』、ご紹介します。
ビリー・ホープは孤児ながら愛する人の支えと類まれなる闘志でボクシングのランクを駆け上り、ついには世界統一王者のベルトをも手に入れる。だが頂点に上り詰めたのもつかの間、自分の激昂がもとで起きた事故から彼は最愛の妻を失い、茫然自失の状態に陥ってしまう。試合には負け、財産を失い、信頼していたプロモーターには去られ、ついには唯一残った娘とも引き離されてしまうホープ。栄光からどん底まで転落した彼は、父として、チャンプとして再び立つことはできるのだろうか。
そんなに頻繁ではないですが、ハリウッドでもポツポツと作られてますよね、ボクシング映画。で、その名作は「再起の物語」であることが少なくありません。日本のスポーツ漫画のように才能のある若者が健康的にステップアップしていくのではなく、すでにいい年のうらぶれた大人が底辺から這い上がっていく話が多いです(その点暮れに公開されていた『クリード』はなかなか異色ものでした)。まあやっぱりボクシングで頂点に挑むというのは、「再起の物語」としてそれだけ絵になるし、観る者の心を燃え立たせるものがあるんでしょうね。実際の例としても先日亡くなったモハメッド・アリやジョージ・フォアマンの復帰戦などは、下手なフィクションが裸足で逃げ出すほどにドラマチックでしたし。
ただ大変なのは演じる役者さん。アスリートでもないのにボクサーを演じるとなればそれなりに体を作ってこなければなりません。今回ジェイク君がそのためにこなしたメニューは
・ランニング/13㎞ 週5回
・縄跳び/15分
・ディフェンス練習/3分×3
・パンチング練習/3分×6
・サンドバッグ打ち(動きなし)/3分×3
・サンドバッグ打ち(動きあり)/3分×3
・腹筋/500〜1000回
・懸垂/100回
・ディップス/100回
・136㎏のタイヤをハンマーでたたく/3分
・136㎏のタイヤを投げる/20回
・スクワット/100回
…これを一日二回、約半年続けたそうです。お疲れ様でした… 『ナイトクロウラー』で演じた貧弱メンヘラの面影は全くありません。そこまでして作り上げたバディがまず見どころと言えます。
あと『サウスポー』の際立った点と言いますと、再起ものとはいえとにかくどん底の部分が長い。そしてきつい(^_^; まあ主人公が追い込まれれば追い込まれるほどクライマックスのファイトも盛り上がるものかもしれませんが、それにしても辛い。あんなに自分を慕っていた娘ちゃんから「死ねばよかったのに!」と言われるほどですからこのボディブローは相当なものです。『ロッキー・ザ・ファイナル』で「人生ほど重いパンチはない!」とスタローンが言ってましたが、まさにヘビー級のメガトンパンチでしたね。それでもなお起き上がり、少しずつ人格的にも成長していくホープの姿には目を見張るものがありました。
以下、ネタバレ。
再びつかんだタイトルマッチにおいて、娘との絆を取り戻すホープ。わたしてっきりここでパパのピンチにお嬢ちゃんがリングサイドに駆けつけ、弱ってる彼の闘志を燃えあがらせるのかと思ってました。ところがお嬢ちゃんはいつまで立っても控室から出ることなく、ついにそのまま試合終了。この辺の展開には少し首をかしげました。
考えてみますに、成長前のホープはいわば「世界最強の男」であるのに奥さんに依存しきってるようなところがありました。試合中でさえもいつも客席で奥さんを探しているほどに。ここでお嬢ちゃんが出なければ勝てないのであれば、それではやはり誰かに依存していることに変わりがなくなってしまう。そばで見ていなくても心の中の支えとして自分の力にすることで、ようやくホープは一人前の大人になれた…ということだったんですかね~
というわけで現在全国で公開中の『サウスポー』ですが、今の日本ではボクシングものって人気ないのかあんまりお客さん入ってないようです。おなかがポヨンと出っ張った人は引き締めるモチベーションを高めるためにもぜひ観に行きましょう。あしたのため~そのいち~ ひだりわきえぐりこむように~
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