« 世界はPCで回っている ジャコ・ヴァン・ドルマル 『神様メール』 | Main | ボクシング映画によくある風景 アントワン・フークア 『サウスポー』 »

June 13, 2016

チミチャンガは俺チャンが ティム・ミラー 『デッドプール』

20160611_2004322016年も続く怒涛のアメコミ映画ラッシュ。そしてついにマーベルきっての異端児というか問題児の登場とあいなりました。全米で公開されるや大旋風を巻き起こした『デッドプール』、ご紹介しましょう。

元特殊部隊で今は町の用心棒をしているウェイド・ウィルソンは、ある日自分と同じように弾けた性格の娼婦ヴァネッサと出会う。たちまち激しい恋に落ちたウェイドは彼女と暮らし始め、やがて念願のプロポーズへとこぎつけ、ヴァネッサの承諾を得る。だが幸せの絶頂もつかの間。ウェイドは自分が重度のガンに侵されていることを知る。失意のウェイドに怪しげな組織が近づく。彼らは自分たちの実験に協力すればガンの治療も可能だとウェイドにもちかける。だがそれが彼をとんでもない怪物というか超人というかヘンテコな存在「デッドプール」に変えることになろうとは…

デッドプールの誕生は1991年。X-MENの分家のひとつ「ニューミュータンツ」の悪役として登場したのでした。当初一回こっきりのゲストキャラとして作り出されたデッドプールは、製作陣の悪ノリで「これでもか」というくらいヘンテコな設定を盛られます。それが読者に大うけして25年後の今映画の主役にまでなってしまうのですから、世の中な何がどうなるかわかりません。
代表的なヘンテコ設定のひとつは「体がいくら損壊してもすぐ元通りになる」というもの。原作ではウルヴァリンの超回復能力を移植されたということになってます。ただ完全にうまく移植できなかったのか、全身の表面が「くさったアボガドと腐ったアボガドが×××した」ような状態に。ファンキーな軽口を連発していてもこのあたりがちょっと同情を誘うキャラクターではあります。
あとこの体質が脳に影響を及ぼしてしまったのか、彼の精神状態は普通ではありません。どう普通じゃないかというと、自分はコミックブックのキャラであり、周りの出来事もすべてコミック内の出来事だと思い込んでいるのです。それはある意味正しいのですが、真剣に悪役や社会問題と戦っているヒーローたちからしたらそんなデップーさんは狂人にしか見えません。それでもお構いなしに読者に向かって「これからの展開はね」と語りかけるデップーさん。アメコミヒーロー史上かつてないほどにぶっとんだ野郎であります。

ですからデップーさんというのはとても危険なキャラクターであります。ほかのヒーローたちがいくら真剣なムードで緊迫感を高めていても、彼がマイペースで活躍すればするほどドリフのコントのようになってしまうわけですから。まあマーベルコミックスというのはなんでもアリというか非常に多様性に満ちた世界なので、こんな規格外なデップーさんでさえそれなりに違和感なく?真面目ヒーローと共存したりしてます。
しかし映画のX-MENユニバースにおいてはどうでしょう。怒り・悲しみ・別れ・愛を一貫して謳いあげてきた叙情性豊かなこのシリーズにこんな下ネタおちゃらけ野郎を放り込んだら、今まで築き上げてきたシリアスな世界観がぶちこわしになります。というかもうこの作品が売上的にシリーズ最新作『アポカリプス』を大きく上回るのはまちがいないので、すでにぶちこわしかけております。…まあそうなったらそうなったでどうなるか、ちょっと楽しみだったりして♪

ただ「ぶっとんだ」「規格外」と書いてまりましたが、「映画のデップーさんはコミックほどイカレてない」という声もよく聞きます。それはおそらく映画オリジナルのヒロイン・ヴァネッサさんのせいでしょう。今回デップーさんが行動するのはすべて彼女の存在ゆえです。彼女にひけ目なく会いたいから顔をもとに戻す方法を必死で探し、彼女を守るために悪党たちと戦うわけです。時々脱線することはあってもその行動には一貫性があります。その点コミックのデップーにはこれといって大切な人もいなけりゃ(最近結婚したんだっけ?)、やりたいことも頻繁に変わるというか常に衝動で動いているので予測不可能なことこの上ありません。そういうのを期待してた人にはちょっと物足りなかったかもしれませんね。

けれどデップー特有の下ネタやサブカルに満ちた語り口は健在でしたし、例の「第4の壁破り」も一生懸命やってくれたので、わたしとしては大いに満足いたしました。これを踏み台として次回作ではもっともっとそのいかれっぷりを発揮してもらいましょう。

20160604_163703というわけで日本ではマイナーもいいところだった『デッドプール』、いろいろ工夫をこらした宣伝が功を奏したのか初日からけっこうなヒットをとばしています。よかった… これからはスパイダーマンやバットマンと並んでデップーさんが老若男女にもてはやされる時代が来るのでしょうね… 怖い時代になったものです。
『デッドプール』は現在全国で絶賛上映中。二か月後には若干影が薄くなったご本家の『X-MEN:アポカリプス』も待機中。当然セットでこちらも鑑賞する予定です。


|

« 世界はPCで回っている ジャコ・ヴァン・ドルマル 『神様メール』 | Main | ボクシング映画によくある風景 アントワン・フークア 『サウスポー』 »

Comments

あ~原作では彼女いないんだ・・・確かにクソ無責任なら恋愛関係あそこまで長続きしないもんなあ(^_^;)
もっとぶっとんだ人かと思ってました。

Posted by: ゴーダイ | June 13, 2016 at 10:19 PM

SGAさんこんばんわ♪

デッドプールっててっきりマーベルキャラクターの中でも古参かと思っていたのですが、90年代に登場したキャラクターなんですね。自分がコミックキャラと理解してるだけあってか、映画の方でも観客に語りかけてきたりと、確かに色々な枠を飛び越えるマーベルキャラきっての異端児に見えました。
おそらく既存のマーベルキャラがやらないような言動をお構いなしにやってのけるあの俺ちゃん主義みたいなとこに不思議な魅力もあって、それが人気にも繋がってるのかもしれませんね。・・・ウザいわ~って時もあるけどw

Posted by: メビウス | June 16, 2016 at 03:08 AM

>ゴーダイさん

原作では割とモテてるんですよね。ただその相手がマフィアの娘とか死を司る女神とかそんなんばっかしw

Posted by: SGA屋伍一 | June 16, 2016 at 10:10 PM

>メビウスさん
わたしもちゃんと読んだわけではないんですけど、スパイダーマンとX-MENの人気がうなぎのぼりでとうとう売り上げでDCを抜いた…というころ生まれたキャラですね。当時のマーベルにはこんな異端児的なキャラを生み出すほどの勢いがあったのだと思います(その後ほどなくして経営破綻してしまうんですが(^_^;))
まあたしかに「うざいなw」と思う瞬間もありますね。ゆるキャラならともかく中身は筋肉ムキムキのおっさんなわけですから。そんなうざったさも含めて魅力的なキャラクターです

Posted by: SGA屋伍一 | June 16, 2016 at 10:16 PM

伍一くん☆
デップーさん、原作ではもっとイカレテいるのねー?
コミックのキャラだと思い込んでいるというのもビックリ!
恋人いなくてやけくそ感もあるのかな??
映画はぶっ飛んでいるようで、そういう意味では意外とちゃんとしている・・・?

Posted by: ノルウェーまだ~む | June 17, 2016 at 12:21 PM

>ノルウェーまだ~むさん

原作ではそれなりにモテてるんですが、長続きしなかったり悲恋で終わったりすることが多いようです。惚れられた相手が「死の女神」だったりね…(^_^;
ファンタスティック・フォーもダークマンもグロメンになったせいで恋人と別れることになってしまいましたが、このパターンからハッピーエンドを迎えるのはなかなかに貴重な例であります

Posted by: SGA屋伍一 | June 17, 2016 at 09:36 PM

デップーさんが、キャップと共演する事だけはなさそうだという事がよく分かりました。ヴァネッサ、映画オリジナルなのかあ。映画偉い。

Posted by: ふじき78 | September 18, 2016 at 11:16 PM

>ふじき78さん

原作では素顔をさらしたらヒロインから「グロい! 無理!」となじられる泣ける話もあったりするんですよ。映画偉い

Posted by: SGA屋伍一 | September 20, 2016 at 09:12 PM

Post a comment



(Not displayed with comment.)


Comments are moderated, and will not appear on this weblog until the author has approved them.



TrackBack

TrackBack URL for this entry:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/70832/63772707

Listed below are links to weblogs that reference チミチャンガは俺チャンが ティム・ミラー 『デッドプール』:

» デッドプール [HEAVEN INSITE's Blog]
 「面白い度☆☆☆ 好き度☆☆」  なんというか、アボカドと腐ったアボカドがヤったような顔だな。  う~ん(^_^;)ポスターがけっこうキャッチーで期待値が上がりすぎてしまったよ [Read More]

Tracked on June 13, 2016 at 10:20 PM

» 「デッドプール」☆下品でいい加減で純愛 [ノルウェー暮らし・イン・原宿]
「グリーン・ランタン」でヒーローとしては大コケしたライアン・レイノルズが起死回生。 茶目っ気たっぷりの無責任なヒーローは、正義を振りかざして、一般市民を巻き込み被害を大きくして、無限大のテーマに自らの首を絞めることがない。... [Read More]

Tracked on June 15, 2016 at 11:37 PM

» デッドプール [シネマをぶった斬りっ!!]
【監督】ティム・ミラー 【出演】ライアン・レイノルズ/モリーナ・バッカリン/エド・スクレイン/T・J・ミラー/ジーナ・カラーノ/ブリアナ・ヒルデブランド/ステファン・カピチッチ 【公開日】2016年6月1日 【製作】アメリカ 【ストーリー】 タクシーに乗って目的地へ急ぐ全身赤いコスチュームの男。彼は運転手に自分の名前を「デッドプール」だと告げる。到着したのはハイウェイの...... [Read More]

Tracked on June 16, 2016 at 03:08 AM

» 映画 『デッド・プール』 [こみち]
JUGEMテーマ:映画館で観た映画 nbsp; nbsp; nbsp;   シュールな 笑いと下品なセリフ。 nbsp; 殺戮シーンもあり、グロテスクなシーンや nbsp; エロティクなシーンと表現があるので nbsp; 『R15+』指定なのですね。 nbsp; B級映画だけど、アクションシーンは楽しめます。 nbsp; 鋼鉄化した頑強な身体を持つミュータン... [Read More]

Tracked on June 17, 2016 at 11:44 PM

» 「デッドプール」 [或る日の出来事]
「ウルヴァリン : X-MEN ZERO」にも出てたんか! [Read More]

Tracked on June 21, 2016 at 09:22 AM

» 『デッドプール』(2016) [【徒然なるままに・・・】]
かつて特殊部隊の有能な傭兵だったウェイド・ウィルソンは、今は金を貰ってチンピラを制裁する自警団のような生活をしていた。そんなある日売春婦のヴァネッサと出会って意気投合、同棲生活を経て結婚を意識するようになる。しかし突如ウェイドを襲った末期がんの宣告。そんな余命幾許もないことを知ったウェイドに「末期がんを治せる」と接触してくる謎の男。彼はヴァネッサを悲しませまいとしてその誘いに乗り、彼女の前から姿を消す。ところがウェイドが連れてこられたのは恐るべき人体実験が行われている施設だった。実験のため全身の皮膚... [Read More]

Tracked on July 21, 2016 at 08:39 PM

» 『デッドプール』『シビル・ウォー キャプテン・アメリカ』『X−MEN アポカリプス』を乱れ撃ちで [ふじき78の死屍累々映画日記]
未レビューマーベル映画をまとめてできるだけ短評で。 ◆『デッドプール(字幕)』トーホーシネマズ新宿7 ◆『デッドプール(吹替)』シネマロサ1 ▲デップーさんと硬い人。 ... [Read More]

Tracked on September 20, 2016 at 12:06 AM

» デッドプール [いやいやえん]
【概略】 かつて特殊部隊の有能な傭兵だったウェイドは、ある日、末期ガンと宣告される。しかし、謎の男にガンが治ると騙されたウェイドは、戦闘マシンとして改造されてしまう。元の自分に戻って愛する女性と再会するため、自作のコスチュームで「デッドプール」となった彼の戦いが始まる…。 SFアクション 呼んだ?クソ無責任ヒーローですけど、何か。 デップー現象もなるほどな、という感じ。本作では自己中のおちゃめな異形の主人公の「おふざけ」がなんだか、なんだか、可愛いっすなー!!! いやちゃんとヒ... [Read More]

Tracked on October 06, 2016 at 11:18 AM

» デッドプール [銀幕大帝α]
DEADPOOL 2016年 アメリカ 108分 アクション/ヒーロー/コメディ R15+ 劇場公開(2016/06/01) 監督: ティム・ミラー 製作: ライアン・レイノルズ 製作総指揮: スタン・リー 出演: ライアン・レイノルズ:デッドプール/ウェイド・ウィルソン モリーナ・バッカリン:ヴァネッサ エド・スクライン:エイジャックス/フランシス T・J・ミラー:ウィーゼル ジーナ・カラーノ:エンジェル・ダスト ブリアナ・ヒルデブランド:ネガソニック・ティーンエイジ・ウォーヘッド レスリ... [Read More]

Tracked on October 09, 2016 at 03:55 PM

« 世界はPCで回っている ジャコ・ヴァン・ドルマル 『神様メール』 | Main | ボクシング映画によくある風景 アントワン・フークア 『サウスポー』 »