2599年殺虫の旅 貴家悠・橘賢一・三池崇史 『テラフォーマーズ』
青年誌に連載されている人気漫画を映画化… って最近書いたばっかりの書き出しだな(^_^; ゾンビの次は宇宙怪物!ということで鬼才三池崇史監督と異才中島かずきがアレンジしたSFアクション『テラフォーマーズ』、ご紹介します。
近未来、地球はさらなる環境破壊と人口増加により深刻な危機を迎えていた。そこで各国首脳は火星を地球化し、増えすぎた人類を移民させることを計画する。幼馴染の身代わりとなって警察に追われていた青年・小町庄吉は、「火星先遣隊としての適正がある」ということで、減刑と引替に宇宙へ旅立つことになる。ひきあわされたチームのメンバーは同じようにして選ばれた犯罪者ばかり。そして目的地である火星には想像を超えた怪物が待ち受けていた。
大体2、3ヶ月に一度くらいは試写会の段階で「こりゃひどい…」という噂が流れてくる映画があります。去年の代表格で言うと『ギャラクシー銀河』とか。で、今年上半期の代表格がこの作品。ツイッターを眺めていたら普段温厚な人まで「著しく消耗した」とかおっしゃってましたし、「観ていて心が死んだ」なんてつぶやきもありました。
だけど…だけどです。予告編を観たらそれなりにビジュアルがSFしてたし、脚本が中島かずきさんだったんです。そして『パシフィック・リム』ファンとしてはもう一度菊地凛子のパイロットスーツっぽいものが見られるわけです。行かないわけにはいかないでしょう。「俺のハートはそう簡単にくたばったりはしないぜ?」とそれこそ巨悪に立ち向かうアクションヒーローのような心境で観にいきました。
で、まあ確かにつっこみどころをあげたらキリがない映画ではありましたが、耐えられないほどではありませんでしたw むしろ面白い部分もいろいろありました。
例えばこれは原作のアイデアの功績ですが、主人公たちはそれぞれ昆虫の遺伝子を組み込まれた強化人間ということになってます。スズメバチやバッタやヘッピリ虫の能力を人間大に増幅させたらどうなるかという発想がなかなかユニークです。そして能力を発揮する場面で池田秀一氏(シャア)のEテレの番組のような渋い解説が流れます。昆虫好きにはたまりません。
あとアラもあるんですけど、ちゃんと脚本に意外な展開やどんでん返しがあるところにも感心しましたし、圧倒的大多数の軍勢に少人数のグループが気合でつっこんでいくノリが好みでした。そう、この映画、大抵のことは気合でなんとかなる世界観なんですね。そこはさすが『グレンラガン』の中島かずきであり、『デッド・オア・アライブ』の三池崇史です。SF的ガジェットやビーグルもまあまあ良くできていました。
そんな広い心で楽しく観た『テラフォーマーズ』ですが、それでもどうしても悲しかったのはモリマコこと菊地凛子さんがいつの間にか久本雅美のようになってしまったことですね… 俺のマコを返してください。大きなお世話ですけど染谷君との新婚生活はうまくいってるのかな?と少し心配になりました。
わたくしは自分の中でダメ映画を次のようにカテゴライズしています。
①…「ダメなのはわかってるけど好きなんだ! 命をかけてかばう!」という映画。『CASSHERN』『進撃の巨人』など
②…「ダメなりに楽しく見たけど、かばってあげたいというほどの思い入れはない」という映画。『デビルマン』『ガッチャマン』など
③…「さしものわたしもフォローしようがない。あきらめてくれ」という映画。『大日本人』『キューティーハニー』など
④…「観る気ないけど遠くで応援してる。がんばって』という映画。『ギャラクシー銀河』など。
『テラフォーマーズ』はこの中でいうと②のグループかな~
そんな『テラフォーマーズ』、人気原作にも関わらず初登場からぱっとしない成績です。そろそろ公開も終わりそうな勢い。いつもなら「興味のある人はお早めに」と言うところですが、こればっかりはどうぞ検討に検討を重ねて慎重に鑑賞を決めてください。あなたが虫好きならおすすめですが…
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Comments
この映画を怒ってる人はかなり真面目な人なんじゃないかと思います。でも、この映画は人間の大きさになった虫に対して、人間が科学力も何も使わず、体力と根気だけでタイマンを張るというデタラメな映画です。こんなデタラメなコンセプトの映画にあまり細かいアラを探してもしょうがないと思います。
Posted by: ふじき78 | May 22, 2016 10:52 PM
>ふじき78さん
三池作品を何本か観て彼のカラーを知ってる人なら「またか」で済むと思いますが、「ゼロ・グラビティ」のようなシリアスなサバイバルを期待してた人が観たらそりゃ怒るでしょうなあ。宇宙のように心を広く持ちたいものです
Posted by: SGA屋伍一 | May 24, 2016 09:29 PM