« マーベル南北戦争・劇場版 ルッソ兄弟 『シビルウォー/キャプテン・アメリカ』 | Main | 2599年殺虫の旅 貴家悠・橘賢一・三池崇史 『テラフォーマーズ』 »

May 16, 2016

ジャパン・オブ・ザ・デッド 花沢健吾・佐藤信介 『アイアムアヒーロー』

Iamh1♪ ヒーロー ヒーローになるとき ああ アイアムア
ビッグコミックスピリッツ連載の人気漫画を映画化。よくある流れよね…と思ったらこれが世界各国の映画祭で絶賛だという。権威に弱いわたしはそれで観ることにしました(笑) 『アイアムアヒーロー』、ご紹介します。

鈴木英雄はうだつのあがらない35歳の漫画家。ビッグになることを日々妄想し続けるが連載は決まらず、ついには同棲していた恋人のテッコに愛想をつかされてしまう。なんとかよりを戻そうと苦悩する英雄をよそに、街では異変が起き始めていた。高熱に冒された人々が野獣のように他の人を食い殺すZQN(ゾキュン)と化して暴れ出したのだ。奇病はまたたくまに広がり、都市機能はマヒしてしまう。英雄は偶然知り合った女子高生比呂美と共に、菌が感染しないという高所の富士山を目指す。

というわけでどこからどこを切り取っても見事なまでにゾンビ映画です。皆さんゾンビお好きですか? わたしはそんなに好きじゃありません。昔っからヌルヌルグチョグチョした生物感あふれるものより、ツルツルピカピカしたメタリックなものの方が好きなので。まあゾンビって触ったらいつまでも汚れとか匂いとか落ちなさそうですよね。
それでも期待して本作品を観に行ったのは、先にも述べた海外での評判とこの予告編がめっちゃチャカチャカしてて楽しそうだったので。暗く息苦しい本来のゾンビものとは違う、はっきり言っちゃうと和製『ゾンビランド』のようなものを期待していたのですね。
で、実際に観てどうだったかと申しますと、さすがに『ゾンビランド』よりはシリアスでした。しかし直球のゾンビ映画に比べるとまだユーモアや爽快感があって、一応期待にはこたえていただきました。
ゾンビの本場といえばもちろんアメリカ。かの国なら仮にゾンビが発生しても容易に銃が入手できるゆえ、一般人でもある程度は対抗することができます。しかしそうはいかない日本では何で戦えばよいのでしょう。日本刀… だってそうそう周りにあるものではないですよね。しかしこの映画では都合のいいことに主人公の趣味がクレー射撃だったりするので、おうちに普通にショットガンがあったりします。ではそれで序盤からバカスカ撃ちまくるのかといえばそれも違ったりします(^_^; 英雄くんは生来の気弱な性格のため、ゾンビや悪者にもなかなか引き金をひくことができないのです。この辺、なかなか日本人的というかリアルなキャラ造形だな~と思いました。

というわけでせっかくのライフルをもちながら長いこと宝の持ち腐れ状態が続きます。しかしそこはそこでなかなか面白かったりして。不思議なかわいらしさを放つヒロイン比呂美ちゃんと、どこか抜けた英雄がバタバタ走り回ったり、時にまったり旅をするのを眺めているのは観ていて飽きませんでした。どこへどう転がっていくかわからないストーリー展開にもひきつけられましたし。

以下、ラストまでネタバレで…






そしてそれまでどうしてもゾンビを撃てなかった英雄が、いろいろ辛酸をなめたり葛藤を繰り返した末、クライマックスでは大噴火した火山のように無双の活躍を見せます。これ最初はなかなか痛快だったんですが、あまりにもドロドログチャグチャ人肉と内臓が飛び散るので最後の方ではすっかり胸焼けしてしまいました。もう床一面にぬたぬたしたもんが散乱していて、誰がこれ片づけるんですか状態。まあでもここまで徹底したゴア描写はシネコン邦画ではなかなかできるものではなく、その点では感心しました。
後に映画秘宝で読んだところによると、ゾンビの脳みそはプリンで製作されていたとのこと(そして撮影地の韓国ではそれが入手しづらく大変だったとのこと)。「あ、あれ本当はプリンなんだよな」とか考えながら観たら胸焼けもおこさずにすんだかもしれません。

あとそこまで山場が凄惨だったせいか、ラストで車が山道をカントリーミュージックと共に走っていくシーンがすごくさわやかに感じられました。ずっと「英雄と書いてヒデオです」と名乗っていた主人公が、そこで初めて「ただの…ヒデオです」とつぶやきます。やはりサバイバルバトルを描いたドラマ『仮面ライダー龍騎』の「英雄ってのはなろうと思った瞬間に失格なんだよ」という言葉を思い出しました。英雄になりたいという欲求を捨てて、ようやくヒデオは真の英雄になれたのだと思います。
Ia2『アイアムアヒーロー』はうるさ方の映画ファンからの後押しも受けて、現在R15ながら中ヒット上映中。わたしは富士の見える(笑)柿田川サントムーンというショッピングモールで観たのですが、映画の日とは言え満席になったのには驚きました。地方ではあまりそういうことはないので…
この作品で一皮むけた感のある佐藤信介監督の次回作はなんとあの『デスノート』の後日談。不安もありますがこちらも楽しみです。


|

« マーベル南北戦争・劇場版 ルッソ兄弟 『シビルウォー/キャプテン・アメリカ』 | Main | 2599年殺虫の旅 貴家悠・橘賢一・三池崇史 『テラフォーマーズ』 »

Comments

伍一くん☆
プリンなんだー
だとするとバニラの甘い匂いが立ち込めて、逆に胸やけしそうね?

Posted by: ノルウェーまだ~む | May 20, 2016 02:21 PM

>ノルウェーまだ~むさん

そういうキモ系スイーツみたいなの売り出して一発当てられないかなあ~ なんかいけそうな気がするんですよね

Posted by: SGA屋伍一 | May 22, 2016 04:52 PM

じつは私もヒーローなんですよ。名前にヒロがつくので。
あ、自分で言ったらヒーローじゃないや。

Posted by: ボー | May 22, 2016 05:25 PM

富士山のふもとのショッピング・モールがプリンまみれ。

それは「プリン火山」ってダジャレなんでしょうなあ。

Posted by: ふじき78 | May 22, 2016 10:31 PM

>ボーさん

もしやあなた… つのだ☆ひろ!?

Posted by: SGA屋伍一 | May 24, 2016 09:25 PM

>ふじき78さん

わたしは「富士見」と「不死身」のダジャレなのかと思ってました

Posted by: SGA屋伍一 | May 24, 2016 09:26 PM

Post a comment



(Not displayed with comment.)


Comments are moderated, and will not appear on this weblog until the author has approved them.



TrackBack


Listed below are links to weblogs that reference ジャパン・オブ・ザ・デッド 花沢健吾・佐藤信介 『アイアムアヒーロー』:

» 「アイアムアヒーロー」 [或る日の出来事]
おもしろい! [Read More]

Tracked on May 22, 2016 05:24 PM

» 『アイアムアヒーロー』を新宿ピカデリー6で観て、しょーがないじゃん有村架純がかわいいんだから★★★★ [ふじき78の死屍累々映画日記]
▲美女二人。映画の命題はこの二人と引き換えに世界を失ってもいいか、という気もするのだけど、それだったら答はYESでしょう。 五つ星評価で【★★★★虐殺されるゾンビよ ... [Read More]

Tracked on May 22, 2016 10:35 PM

« マーベル南北戦争・劇場版 ルッソ兄弟 『シビルウォー/キャプテン・アメリカ』 | Main | 2599年殺虫の旅 貴家悠・橘賢一・三池崇史 『テラフォーマーズ』 »