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May 09, 2016

ある日森の中クマさんと殺りあった アレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ 『レヴェナント 蘇えりし者』

Photo本当にいまさらながらではございますが、レオナルド・ディカプリオ、念願のアカデミー主演男優賞おめでとう! 本日はその受賞作品である『レヴェナント 蘇えりし者』ご紹介します。

19世紀初めのアメリカ北西部、ヘンリー隊長率いる毛皮ハンターたちは原住民の襲撃に合い厳しい旅の途上にあった。そのさなか道案内役を務めていたヒュー・グラスは子連れの熊に襲われ瀕死の重傷を負う。隊長はグラスの息子含む三人の付き添いを残し先に砦に向かうことを決定。だが付き添いの一人フィッツジェラルドは、グラスを足手まといとみなしてひそかに殺そうと企てる。

賞レースとは関係無しに前から楽しみにしていた作品。というのは情報等からわたしの好きな小説家ジャック・ロンドンの作品世界を彷彿とさせるところがあったので。ロンドンの作風を手短に説明すると、雄大な自然、たくましい生き物たち、ふつふつとたぎる冒険心、そしていつ野たれ死ぬかもわからない過酷な環境… ま、そんなところです。そしてその期待には十分にこたえてもらいました。『レヴェナント』の重要な要素である親子の情愛の絆とか、復讐劇などはロンドンの小説にはあまり見られないものでしたけどね。

で、宣伝からもっとヒリヒリと焼付くような復讐劇を想像していたのですが、微妙にムードが違っておりました。復讐劇というのは普通標的が越後屋のような極悪人で、主人公は激しくその憎悪を吐露するものですが、本作品のフィッツジェラルドが凶行に走った心情もわからないでもないし、グラスの復讐心ももっとこう淡々としています。
かわりに強調されているのは神々しいまでのアメリカ北西部の自然風景と、ディカプリオを見舞う幾多の災難です。原住民に熊にならず者たちに寒さに飢えに水死の危険に… その全てに体当たりの演技で臨むディカプー。ベジタリアンであるのに生の肝臓まで食らったりしたというから驚きです。まさにオスカーも納得のベストアクトということができましょう。そして「復讐してやるぞー」という思いでもなければグラスもまず生き残ることはできなかったでしょう。

ただ実話というか原作ではグラスさんの復讐の動機は息子を殺されたからではなく、置き去りにされたこととお気に入りの銃をかっぱらわれたことが原因だったようです。なぜ原作にはない「息子」の設定を取り入れたのか。それはイニャリトゥ監督の方針としか言いようがありません。彼の作品は全部観たわけではありませんが、調べてみたらほぼ全ての監督作に「悩めるお父さん」が主人公、もしくはそれに順ずる立場で出てきます。なんでもデビュー作『アモーレス・ロペス』も亡くなった息子のために作ったとのことで、監督は「人は失ったもので形成される。人生は失うことの連続だ。失うことでなりたかった自分になるのではなく、本当の自分になれるのだ。」とコメントしております。イニャリトゥ氏が息子さんのことを思いながらずっとレクイエムのように映画を作りつづけているのだとしたら、なんとも切ないものがありますね…

あとこれはどうでもいいことなんですけど、こないだ観たピクサーアニメ『アーロと少年』といろいろかぶったり対照的になってる点も面白かったです。どちらも大西部の雄大な風景を舞台にした親子のサバイバル劇ですが、『レヴェナント』では親が子を失うのに対し、『アーロと少年』では子が親を失います。以下結末までネタバレしちゃうのでご了承ください。

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そして『アーロ』では家族を失うきっかけになった者と温かい絆を育んでいくのに対し、『レヴェナント』では同情せず最後まで仇を追いつめていきます。とどめの段階で急に「自然にまかせる」とか言い出したのはちょっと謎でしたが。芥川龍之介の『芋粥』のような心境でしょうか。また主人公に幻想を見せて生死をあいまいにして終わらせるやり方は前作『バードマン』を思い出しました。

Img10323167531『レヴェナント 蘇えりし者』は現在全国の映画館で公開中。非常に高レベルの作品であるのに同日公開の動物映画『ズートピア』と明暗がくっきりわかれました。やっぱり子供たちは牛の肝臓を生で食うような映画は嫌いか… ご興味おありの方は早めに劇場に行かれてください。


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Comments

> やっぱり子供たちは牛の肝臓を生で食うような映画は嫌いか…

レヴェナント、ヌーディストとかも出てこないしなあ。

Posted by: ふじき78 | May 10, 2016 at 12:12 AM

本物の生レバーをお食べになる必要はないのでわ?ヘ(゚∀゚ヘ)アヒャ

Posted by: ボー | May 10, 2016 at 10:20 PM

>ふじき78さん

デカプリオは一生懸命脱いでましたが… まあ痛々しいヌードでしたね

Posted by: SGA屋伍一 | May 12, 2016 at 09:52 PM

>ボーさん

それが役者魂ってもんではなかろうかと! 個人的にはレバーは火を通して食べる派ですが

Posted by: SGA屋伍一 | May 12, 2016 at 09:54 PM

伍一くん☆
彼、ベジタリアンなのね?
どのくらい食べると、あんな風に膨らんじゃうのかな?
ラストは私は好きでした。

Posted by: ノルウェーまだ~む | May 13, 2016 at 11:49 PM

>ノルウェーまだ~むさん

彼はオフの時はポテチをバリボリ食いながら取り巻きたちとTVゲームばかりしているという噂がありますw そんな生活をしていればおのずと…
ちなみに「ヒュー・グラス」で検索するとモデルの人はあのあとどうなったのか書いてあります

Posted by: SGA屋伍一 | May 15, 2016 at 08:25 PM

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