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April 01, 2016

子連れ恐竜地獄旅 ピーター・ソ-ン 『アーロと少年』

Apatosaurusu最近ディズニー本家やユニバーサル・スタジオにちょっと押され気味のCGアニメのパイオニア・ピクサー。危機感を感じているのか?今回はいつもより早いペースでの新作発表となりました。恐竜をモチーフとした『アーロと少年』、ご紹介します。

中生代において巨大隕石が地球に衝突しなかった世界。滅亡を免れた恐竜たちは、言葉を話したり牧畜・農耕ができるほどの文化を育てていた。アパトサウルスの少年・アーロは家族の役に立とうと家畜の世話をがんばるが、臆病な性格のために失敗がつづいていた。彼を案じた父親は別の仕事として食料泥棒を捕まえることをアーロに託す。張り切ったアーロは見事に食料泥棒を捕まえる。それは彼が初めて見る人間の子供だった…

謎の生物と人間の子供が友達になるという話はよくあります。E.T、アイアン・ジャイアント、のび太の恐竜、恐竜物語REXetc… ただこれらの場合守ってあげる立場にいるのは大体人間の子供で、喋れるのも人間の方です(当たり前だ)。しかしこの『アーロと少年』においては庇護者となるのも言葉を話すのも謎の生物であり、人間の方は「うがー」としか言いません。この逆転の構図に「思い切ったな…」と当惑しつつ、ピクサーらしい実験精神に感銘を受けました(^_^;

主人公たちが意味不明な原語しかしゃべらない『ミニオンズ』、主人公たちはおろか登場人物すべてが「フガフガ」しか言わない『ひつじのショーン』など、近年の海外アニメのクリエイターたちはこぞって「言葉を越えたコミュニケーションの表現」にチャレンジしているように思えます。『アーロと少年』においてはアーロはよくしゃべるので彼の感情・思考は手に取るようにわかります。しかし原始人君の思いというのはわたしたちが想像するほかありません。この原始人君、怒りや嬉しさというのははっきり顔に出すのですが、「悲しさ」だけは涙を流すわけでもなく、むっつりした表情で見せるのみ。おじさんはおいおい大げさに泣かれるよりもこういう方がよほどもらい泣きしてしまいます。たとえば原始人君がさびしそうに棒を倒してあることを伝えるシーンがあるのですが、棒が倒れただけで鼻水がジェット噴射状態になってしまいわたしもいよいよおしまいだと思いました。
あとアーロの方は人間を「友達」という風に思ってたようですが、食うか食われるかの世界で初めて彼に助けてもらった原始人君は、アーロのことを父親か母親の様に思ってたんじゃないかなあ…と考えると、またしても鼻水がナイアガラ状態になるわけです…

ただ食料が乏しい世界においては「誰かを守る」というということは厳しい試練になることがあります。自分が食ってくだけでも十分大変なわけですから。実際このアニメには他の生き物を食う・利用することしか考えてない恐ろしい恐竜たちも多数登場します。やさしいアーロのお父さんでさえ「食料泥棒はぶっ殺せ」みたいなことを言います。ここでわたしが思い出したのは名作児童文学『子鹿物語』(NHKでアニメもやってました)。主人公の少年は「畑を荒らすから」という理由で仲良しだった子鹿をお父さんに撃たれてしまいます。それが現実というものなのかもしれません。
そんな世界でアーロはあえて「殺さない」ことを選択します。そのことで大きなものを失うことにもなるのですが、それでも少年を許し、必死で守り通します。これは誰にでもできることではないです。よほど器の大きな人間(この場合は恐竜)でないと無理でしょう。この物語は子供だったアーロが別の子供を守ることで、自分の目標であった父親に近づいていき、さらにビッグな男になっていく、そんなお話だと思っています。その懐の大きさこそが、原題『The Good Dinosaur』のGoodにあたるものなのでしょう。甘くぬるいファンタジーと感じられる方もおられましょうが(大体恐竜がしゃべってるし)、この映画を観る子供たちにはそんなスケールの大きい大人を目指してほしいものです。

一点ちょっと物足りなかった点。この映画だけでなく、ここ数年のピクサー作品に言えることですが、『トイ・ストーリー3』までのピクサーにはクライマックスにおいてこちらの度肝を抜くようなスペクタクル・アクションがほとんどの作品に備わっていたのですね。それだけドタバタ動き回りながらも、最後はきっちり感動させるというのもピクサーのすごいところでした。そういう予想を越えるようなアクションがなかったのはやはり少しさびしい。相当レベルの上がってしまったディズニーご本家に拮抗していく上でも、新人監督さんたちにはその辺がんばっていただきたいです。

Photo『アーロと少年』は現在全国の映画館で公開中。『ドラえもん』に真っ向からぶつけたのはまずかったような気もしますが、それでも『ひつじのショーン』特別編に比べるとかなり健闘しております。
ピクサーが次に送り出すのはあの『ファインディング・ニモ』の続編。今夏公開予定ということで、やっぱりハイペースであります。


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Comments

原題が『The Good Dinosaur』と言うのですね。人間だったら『The Good Man』で、ジョン・グッドマンみたいだ。ちなみにジョン・グッドマンはピクサーの『モンスターズ・インク』のサリーの声を充てている。是非ともアーロもサリーのように強く優しく育ってほしい。

Posted by: ふじき78 | April 01, 2016 at 10:53 PM

>ふじき78さん

グッドマンさんはグッドマンに見えない役のこともよくありますが、「アーロもサリーのように…」というところはまったく同意です。続編は嫁探しの話になりそうですね

Posted by: SGA屋伍一 | April 04, 2016 at 10:29 AM

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