おかしな一人と一匹 テリー・ジョーンズ 『ミラクル・ニール!』
『スタートレック』『ミッション・インポッシブル』『スターウォーズ』などドル箱シリーズの出演でいまや世界的大スターの感があるサイモン・ペグ。そのペグさんの新作は彼の王道に戻った実にしょうもないコメディ映画。『ミラクル・ニール!』、ご紹介します。
1972年、宇宙人へのメッセージを積んで地球より飛び立ったパイオニア10号は、航行から43年を経てついにその目的を果たす。メッセージの金属板(上部画像参照)を受け取った宇宙人たちは銀河法にのとって、一人の男に全知全能の力を与え、地球人が有害が無害か確かめようとする。テストに受からなかった場合、当然地球は消滅。そしてその被験者に選ばれたのはニールという英国のさえない教師であった。
この金属板、わたしは学研まんが・ひみつシリーズの第1巻『宇宙のひみつ』で知りました。ですから昔の宇宙好きの子供たちにはよく知られた話だったんですけど、ここんとこずっと目にしてなかったなあ~ 冒頭でこれが出てきたときよくいえば懐かしい、悪く言えば古臭い思いが胸を満たしましたw
宇宙人が地球を簡単に吹っ飛ばそうとするところや、それに頼りない男が振り回されるあたりはやはり英国のSFコメディ『銀河ヒッチハイクガイド』 を彷彿とさせます。あと星新一や筒井康隆の短編にもちょくちょくこんな話があったような。ごく普通のサラリーマンか何かが突然神にも等しい力を授かって…という。ユーモア作家だったら一度は挑んでみたいテーマなのでしょうか。ちなみに原題は『Absolutely Anything』。直訳すると「絶対的な何か」、意訳すると「神様」ってとこですかね。
とあるサイトではあらすじで「全知全能の力を与えるけどその男はその力を愛犬とお喋りにしか使わなくて…」と紹介されてましたがこれはウソですね(笑) けっこういろんなことに使ってます。ただ銀河コンピューターは最近のMacやウィンドウズよりも融通が聞かないみたいで、ニールが願ってたことの30%くらいずれた反応を見せます。「生徒を静かにさせろ!」と言えば爆破事故を起こして全員死なせてしまうし、「生き返らせろ!」と言えばゾンビにしてしまうし… そんなブラック風味のボケとツッコミがいちいちツボにはまりました。
あとやっぱり話が俄然面白くなるのは犬が喋り出してから。話せるようになってからの第一声が「ビスケットくれよ!ビスケットくれよ!」だったりします。うちの婆さん猫がいまちょうどこんな感じです。犬は猫より頭がいい、みたいなイメージがありますけど、厳密にいうと賢いのは訓練された犬ですよね。訓練されてなければ犬も猫もそんなに変わりないと思います。このデニス君も相当頭が悪そうだし品はないしご主人様の足をひっぱるしでかなりの駄犬であります。それでもニールを一途に心配してるところは本当に愛らしいし泣かせます。猫派のわたしも「犬もいいなあ…」としみじみ思いました。たぶんこれ、デニス君が猫だったらあまり話として盛り上がらなかったと思います。個人的にはもっともっと犬の登場場面を増やしてほしかったです。
わたしてっきり「結局はニールが根はいいヤツなんで、宇宙人の試験に合格する」みたいなそんなオチを予想しておりました。ところがこれがこちらの予想をはるかに上回る展開が待ってまして。このサプライズだけでもご飯が10杯はいけるくらい痛快でした。この気持ちよさ、ぜひ多くの人に体感してほしい…
スタッフ・出演にモンティ・パイソンのメンバーが多く関わっているのも見どころのひとつ。わたしゃあんまり知らないんですけどね。
『ミラクル・ニール!』は現在全国の映画館で中規模程度で上映中であります。愛犬は地球を救うのであります。
Comments
伍一くん☆
この映画、実は「下町コメディ映画祭」で見ていたのですが、こんな今頃に公開だったのね。
最近ポスターで見て、あれ?なんで?って思っちゃっていたわ。
凄く面白いのに、時期が悪いよね、話題に全く上っていないような??
Posted by: ノルウェーまだ~む | April 24, 2016 10:18 PM
>ノルウェーまだ~むさん
そうそう、もっと盛り上がるかと思ったのに今話題作が集中しすぎていまいち影が薄くなってしまってるんですよね…
ちなみに静岡東部ではまだ上映予定がなくて渋谷まで出張って観ました。それだけの価値はあった映画でしたよ~
Posted by: SGA屋伍一 | April 26, 2016 09:59 PM