魔法少女ユキコ☆マギカ カルロス・ベルムト 『マジカル・ガール』
「日本の魔女っ娘アニメをモチーフにしたヨーロッパ映画」ということで気にはなってたのですが、近くでやってないし観たら暗い気分になりそうなので敬遠していたこの作品。先日上映館の近くまで行ったので勇気を振り絞って観てきました。『マジカル・ガール』、ご紹介します。
白血病を患う少女アリシアは日本のアニメ「魔法少女ユキコ」が大好き。余命わずかな娘のために、アリシアの父は彼女がひそかにほしがっているユキコのプレミアもののドレスをなんとか手に入れようとする。
同じ町に住むバルバラは夫から愛されていながら精神的に不安定な状態にあり、友人の前で洒落にならないことを言ったりして彼を困らせていた。アリシアとバーバラの運命はやがてあることをきっかけに複雑につながりあう。
以下、肝心なところはばらしませんが大体の展開がよめてしまうと思うので未鑑賞の方はご了承ください。
わたしがこの映画に興味を持った理由の一つは、監督が「『まどか☆マギカ』に影響を受けた」と語っていたからです。そのことを意識して観るとなんとなく『マジカル・ガール』のテーマがつかめてきます。
それは「もし魔法によって幸せになれたとしても、その作用でほかの誰かが不幸になる。そして最終的には一度は幸せになった者にも負のカルマが跳ね返ってくる」ということですね。
二回あるものがぱっと消されてしまうシーンがありますが、あれは「誰もが魔法使いになれる」ということを暗示してるんだと思います。で、この映画でいう魔法というのはそんなに幅広いものではなく、単に「他の人をあやつったり支配したりする力」のことをさしてるのではなかろうかと。意識的・無意識的にかかわらずね。
『マジカル・ガール』にはいくつか乱歩を連想させる要素も見え隠れしています。バーバラが訪れる部屋に黒蜥蜴のマークがあったり、映画のエンディングで美輪明宏が歌っていた「黒蜥蜴のテーマ」が流れたり。あとアリシアのお父さんが使っていた検索サイトがグーグルでもヤフーでもなく「RANPO(RAMPO?)」だったり。そういえば乱歩の作品にも人を意のままに操ろうとする作品が幾つかあったような。『心理試験』とか『目羅博士』とか。ひとつのことに異常なまでの執着を抱く心理描写などもちょっと乱歩っぽかったです。
そんなわけで覚悟していたように非常に意地悪で気の滅入る映画でありました。それでも途中何度かくすくす笑えるシーンがあったのが救いです。やっぱりシリアスなムードの中、突然長山洋子のアイドル歌謡が流れて、アニメのコスプレをした女の子が突っ立っていたら日本人としては笑ってしまいます。こういうの、西洋の人たちにはどういう風に感じられるのか聞いてみたいところですね。
監督さんはインタビューの中で『キルラキル』にも触れていたり、来日中どこぞのバーでウルトラ怪獣やふなっしーを落書きしてったりと相当なオタクさんのようです。でも『マジカル・ガール』はそんなにオタクオタクしてなくて、アート映画としても十分通用する点は見事だと思いました。
今年は他にも日本やその文化をモチーフとした渋い洋画が幾つか公開される予定です。すでに公開中の『リザとキツネと恋する死者たち』(トニー谷)や、ガス・ヴァン・サント監督の『追憶の森』(樹海)、スコセッシ監督の『沈黙』(遠藤周作原作)などなど。イタリア映画祭限定ですが「鋼鉄ジーグと呼ばれた男」(ロボアニメ)なんてのもあります。個人的には『沈黙』がかなり楽しみ。
『マジカル・ガール』は好評につき現在公開拡大・延長中であります。この映画の関係で『まどか☆マギカ』に興味を持った方はぜひそちらもご覧くだされ。
Comments
こんばんは。
これ、とっても好きな映画になりました…☆
作品の根底に潜む悪意が滲む感じが、とっても気に入ってしまって。
私もクリーミィマミに憧れていたので、アリシアの気持ちは分かります。
私もあんな感じの魔法のステッキを持っていましたよ。
すがやんに魔法をかけたら、私のペットのタヌキになってくれるかな〜?
Posted by: とらねこ | April 24, 2016 06:12 PM
>とらねこさん
おう、そうですか…
たしかに「大人のための魔法少女もの」みたいな毒気たっぷりのメルヘンものでしたね
クリーミーマミにあこがれてたというのは前に聞いたことあったな。意外とかわいらしいところが…ごほんごほん
最近ますますおなかが出てきてタヌキ化が進んでるすがやんでした。ぽんぽこぽん
Posted by: SGA屋伍一 | April 26, 2016 09:47 PM