タケシとヒロシの間に 石ノ森章太郎・金田治 『仮面ライダー1号』
ここ数年、毎回アレな出来にも関わらずアクの強い企画にひかれてつい行ってしまう春の仮面ライダー映画。今年はいつもと違う重厚な雰囲気や脚本を井上敏樹氏が務めるということで「もしや…」と期待してみた(懲りないw)のですが果たしてその結果は。仮面ライダー45周年記念作品『仮面ライダー1号』、ご紹介します。
仮面ライダーゴーストこと天空寺タケルは、街で暴れている怪人の一団と、彼らに追われている少女と出会う。さらにそこへ少女を守ろうとする一人のただならぬ風格の男が現れる。彼はこの世に誕生した最初の仮面ライダー、1号こと本郷猛であった。そして追われていた少女は猛にとって父のような存在であった立花藤兵衛の孫・麻由であった…
え~、結論から申しますと、藤岡弘、さんのアイドル映画でした! つまり藤岡さんが自分の言いたいメッセージを全開で発信し、若い女の子といちゃいちゃし、かっこいいところではバシッと決めるそういう映画でした。
わたくしさすがに仮面ライダー1作目は生まれてなかったこともあってそんなに観てないのですが、本郷猛ってそんなに自己主張の強いキャラではなかったんではないでしょうか。こう言ってはなんですけど、もっと没個性的というか平均的な正義の味方だったように思います。藤岡さんも当時は駆け出しということもあって、自分の個性を前に出すことよりも「本郷猛」というキャラクターを演じることを優先していたでしょう。
ところが今回の映画では藤岡さんが普通に藤岡さんのまんま仮面ライダーを演じています(笑)。後輩のゴーストに「命とはなんだ!?」と哲学的な問いかけをし、現代の若者たちに戦争や環境問題について警告を発しておられます。
本郷さんも長い間海外をさすらってるうちに、社会問題について深く考えるようになられたのかもしれません。石ノ森章太郎先生もヒーロー漫画の中でよく公害や差別問題を題材にされてましたしね… でもそれにしてももう少しバランスよくというか、活劇の合間にさりげなく、という風にできなかったものでしょうか。
さらに必然性もなく出てきたノバショッカーの計画や、脈絡もなく出てくるアレクサンダーの魂とやらが混乱を増幅させてくれます。
…よかった点もあげておきましょう。まず予告にもあった暗闇の中立ち上がるちょっとマッチョのネオ1号のビジュアルが大変かっこよかった。ここだけでもまあなんとか元は取れたかな、という気もしないでもありません。
あと古びたガレージで本郷がおやっさんの写真を拾って「帰ってきたぜ…」とつぶやくシーン。ここに限ってはちゃんと藤岡さんも本郷猛を演じていたと思います。
他にはキャリアもあるのに地獄大使を嬉々として演じておられる大杉漣さんとか。ディケイド劇場版もあったからこれで二度目ですかね。お疲れ様でした。最初の方で竹中直人がカラオケに興じてるシーンで場内の子供たちが大うけしてたのもよかったです。そんなもんかな~
また当分「1号」を映画化することはないでしょうけど、できたら和智正喜先生の小説『仮面ライダー 誕生1971』を原作に忠実に映画化してほしいんですよね… さらにできたら金子修介監督で、長谷川圭一氏か小林靖子女史の脚本で。わたしが生きてる間になんとか…なんとか実現しないものですかねえええ(別に不治の病でもなんでもありません)
『仮面ライダー1号』は現在全国の映画館で中ヒット中。あとライダー関連ではアマゾンプライムビデオとやらで『仮面ライダーアマゾンズ』というダジャレみたいな企画が配信されていて話題を呼んでいます。冗談みたいなタイトルの割にこちらは初期平成ライダーを思わせるムードで本当に面白そう。でもそれだけのために入会するのもなんなのでDVD化をじっくり待ちたいと思います。
Comments
ライダーに首がないと妙にゴキっぽいすね(基本、黒いし)。
しかし、あの戦いでショッカー日本支部も地獄大使と戦闘員が1人とかになっちゃったろうから、
「いつもすまないねえ」
「それは言わない約束でしょ。お粥が冷えるわよ」
という貧乏病人コントみたいな生活が繰り広げられるんだろうか。
Posted by: ふじき78 | April 06, 2016 09:37 PM
>ふじき78さん
そういえば島本和彦先生が『コックローチマン』というゴキブリ版仮面ライダーの短編書いてました
ショッカーはもうあのコスチュームで出てくるだけでギャグになっちゃうんですよねえ。
Posted by: SGA屋伍一 | April 08, 2016 10:04 PM