« つかもうぜ! ゴールデンボール!! 漫☆画太郎 山口雄大 『珍遊記』 | Main | 子連れ恐竜地獄旅 ピーター・ソ-ン 『アーロと少年』 »

March 30, 2016

萌えが戦車でやって来る 水島努 劇場版『ガールズ&パンツァー』

Gp1昨年後半にツイッターをにぎわしていた謎?の言葉。「ガルパンはいいぞ」 これ、TVアニメ『ガールズ&パンツァー』を熱心に愛する「ガルパンおじさん」たちの決めゼリフのようなものだったのですね。「そんなにいいのか…」と気になっていたところへ、我らがコロナO田原でも「4DXバージョン」として劇場版がかかることになり、TVシリーズを全然観てないにも関わらず観に行くことにしました。劇場版『ガールズ&パンツァー』、ご紹介します。

華道や茶道などとともに、戦車戦が女子のたしなみとされている世界。廃校を文科省より促されていた大洗女子学園は、転校生西住みほらの活躍で「戦車道」の全国大会に優勝。廃校は免れたかに思えた。しかし文科省の役人は強引に大洗女子学園をつぶしにかかる。そこで生徒会長角谷は母校を存続させるために一発逆転の秘策を実行に移す。

あ、主人公について何も書いてないな。ヒロインの西住みほさんはやさしさと冷静さをあわせもつ戦車道の天才。戦車道の家元の出であるが事情があって親と絶縁。しかし転校先の大洗女子学園で素晴らしい仲間たちとあい、失っていた戦車道への情熱を取り戻します。外見はこの手のアニメにしてはちょっと地味。

正直初心者ということもあって、この世界に入っていくには多少の努力を要しました。コクピットが特殊なカーボンで包まれていると言っても、ハッチから頭を出してたら怪我をするんじゃないか…?とか、市街戦で家を壊された人には賠償金が入るようだけど、あんなに壊しまくったら都市機能がマヒしてしまうのでは?とか。あと一応学園ドラマなのに先生が誰一人として出てこないのも大いに疑問でした。
そういう風に頭に「?」マークが浮かぶたびに、わたしは「いや、これはこういう世界観なんだ」と自分を一生懸命説得いたしました。脳みそをもみほぐしもみほぐし、柔らかくすることによってなんとかついていけた次第です。

そして脳みそが存分に柔らかくなった中盤あたりから、だいぶこの作品を楽しめるようになっていきました。たとえば学園の生徒たちが母校を追い出されてひなびた土地で仮住まいをしてるくだりがあるのですが、その辺の美術背景がいちいち美しいんですよね。おそらく茨城県大洗町をモデルにしてるんでしょうけど、実在の風景に材をとりながらこの世のどこにもない景色を作り出してるということで、一種のメタ・ファンタジー的なムードを醸し出しておりました。大洗町はあってもそこで女の子が戦車を転がしてるなんてことはまず起こりえませんからねw

あと復活にかける大洗メンバーの前に強敵がたちふさがるわけですが、この辺で「さすがにそりゃ無理だ」ってくらい主人公たちに不利な条件をいくつも作り出すわけです。その到底不可能な要素をひとつ、またひとつと覆していって勝利に少しずつ近いづいていく過程が心地よかったです。特に圧倒的劣勢だったミポリンたちを助けにかつて下した世界の?強豪たちが一斉に集結するあたりは『リングにかけろ』の「ギリシア十二神編」みたいで燃えました。

ほかに好感のもてた点としては、ブルーとかピンクとか現実にない髪色の子が一人もいないこととか、この手の萌え系アニメにありがちな「優柔不断な男の子がハーレムを作る」という話でなかったことです。というか男性はほぼわき役のおっさんしか登場せず、女の子たちのさわやかな友情ばかりが120分語られます。そのシンプルな徹底ぶりにわたしは26巻かけて野球とチームワークしか描かなかったちばあきおの『キャプテン』を思い出しました。

Bundesarchiv_bild_101i0883734a19a_r肝心の4DX効果については入浴シーン&ラストシーンのシャボン玉くらいしか印象に残りませんでしたが、噂に聞く「ガルパン」を実際に体感できてよかったです。
普段すいてることも多い(…)コロナO田原の予約が瞬時に埋まったほどに大人気の劇場版『ガールズ&パンツァー』。さすがにもう落ち着いてきましたが、始まって一か月以上たってるのに来週もまだ続映するようです。萌えと戦車とスポ根が好きな方はどうぞごらんください。パンツァー、フォー!!


|

« つかもうぜ! ゴールデンボール!! 漫☆画太郎 山口雄大 『珍遊記』 | Main | 子連れ恐竜地獄旅 ピーター・ソ-ン 『アーロと少年』 »

Comments

ありえない設定で無理してる部分も勿論あるんですが、基本、しっかりと青春スポ根ドラマになってるので物語上の違和感はないんですよね。

しかし、設定の突飛さから言ったら、航空戦闘機の代わりに魔女が両足にエンジンを付けて魔力で空を飛ぶのだが、その世界にスカートという概念がないのでパンツ丸見えである、という「ストライク・ウィッチーズ」には敵わない。あれもそこそこ面白いのにパンツ丸見えなので人に進めづらいんだ。

Posted by: ふじき78 | April 01, 2016 10:38 PM

>ふじき78さん

タイトルに「パンツ」と入っていながら全然パンツが見えないのはわたしも気になってました。別に見せろとはいいませんが、あれくらいの丈の長さでちらとも見えないのはかえって不自然のような… スカートがひざ下くらいまでの長さだったらよかったと思います

Posted by: SGA屋伍一 | April 04, 2016 10:27 AM

ギャルパン…ちょっと、ごあいさつにうかがったまでです…

Posted by: ボー | September 13, 2019 07:41 AM

>ボーさん

お元気そうでなによりw
かわらず平常運転ですね!

Posted by: SGA屋伍一 | September 17, 2019 09:52 PM

Post a comment



(Not displayed with comment.)


Comments are moderated, and will not appear on this weblog until the author has approved them.



TrackBack


Listed below are links to weblogs that reference 萌えが戦車でやって来る 水島努 劇場版『ガールズ&パンツァー』:

» 『ガールズ&パンツァー劇場版』をトーホーシネマズ日本橋5で観て、しまった凄く面白いじゃんふじき★★★★ [ふじき78の死屍累々映画日記]
五つ星評価で【★★★★一見さんでも楽しませる演出上の力技】 あまり理由は判然としないのだが、何とも面白いのである。 私は前作OVAの劇場公開にお付き合いしただけの 基本 ... [Read More]

Tracked on April 01, 2016 10:34 PM

» ガールズ&パンツァー 劇場版 [銀幕大帝α]
GIRLS und PANZER 2015年 日本 120分 学園/ドラマ/アクション 劇場公開(2015/11/21) 監督: 水島努 声の出演: 渕上舞:西住みほ 茅野愛衣:武部沙織 尾崎真実:五十鈴華 中上育実:秋山優花里 井口裕香:冷泉麻子 瀬戸麻沙美:西絹代 米澤円:玉田 大空直美:福田 高森奈津美:ローズヒップ ジェーニャ:クラーラ 能登麻美子:ミカ 下地紫野:アキ 石上美帆:ミッコ 竹達彩奈:愛里寿 飯田友子:アズミ 藤村歩:メグミ 中原麻衣:ルミ <ストーリー> 学校の存... [Read More]

Tracked on July 28, 2016 09:10 PM

« つかもうぜ! ゴールデンボール!! 漫☆画太郎 山口雄大 『珍遊記』 | Main | 子連れ恐竜地獄旅 ピーター・ソ-ン 『アーロと少年』 »