名探偵今昔 『シャーロック 忌まわしき花嫁』
数年前から人気を誇ってるBBCのドラマ『SHERLOCK』。19世紀末のシャーロック・ホームズの冒険譚を、現代を舞台におきかえてリメイクした意欲的なシリーズです。これをまた19世紀末にアレンジしなおした(ややこしい)特別編が、日本では劇場公開という形でお目見えすることになりました。『シャーロック 忌まわしき花嫁』、ご紹介します。
数々の難事件を解決し、「名探偵」と噂されるシャーロック・ホームズ。彼のもとにまた不可解な事件がもちこまれる。衆人環視の中自殺した花嫁衣装の女性が、その日の晩にまた現れ自分の夫を殺害したというのだ。死者がよみがえって凶行を遂げたのか。名探偵は親友のワトソン博士と共にこの難事件に挑む。
と、いうわけで通常のシリーズとは時代設定が異なる故、これからいきなり観ても問題なさそうな本作品。ところがどすこい、これが観すすめていくと割と密接なかかわりがあることが明らかになりまして… わたくしも観る前にそんな噂を聞いて「???」となりました。まあどうつながっているかは実際に観て確かめてください。シリーズ全話観る余裕がないという方はシーズン1の1話、シーズン2の3話、シーズン3の1話と3話だけでも観てから臨むことをおすすめします。
絶大な人気を誇る故、今までも何度も何度も映像化されてきたシャーロック・ホームズの物語。近年ではガイ・リッチーがロバート・ダウニーJr.と作った映画版二作や、NHKで学園ものとしてアレンジされた三谷幸喜氏の人形劇などが思い浮かびます。
BBCドラマ『シャーロック』の特徴といえば時代設定のほかにも画面に思考が文字となって浮かび上がる独特な演出や、マイクロフトとモリアーティの比重がかなり大きいということなどがあげられます。二人とも原作では本格的に登場するのは1,2編くらいですが、こちらではシリーズを通じてなくてはならないキャラクターになっています。特にモリアーティが怖い。彼は言ってみればホームズに倒される宿命を背負ったキャラでありましたが、このシリーズでは「もしかしたらシャーロック負けちゃう?」と思わせるほどに、モンスター的な存在にまで進化しております。
あとホームズシリーズに不可欠な存在といえばジョン・ワトソン。こちらもホームズの助手というか引き立て役のように描かれることが多いですが、『シャーロック』ではその純粋さでもって、人間性に乏しいホームズを辛うじて現世にとどめるような役割を果たしています。おおよそ人のためには動かなそうなシャーロックが、彼を守るためには全力で行動する姿には思わず目頭が熱くなります。それと同じくらい振り回して迷惑もかけたりしてるので、あまり感謝されてはいないようですが(笑)。
『忌まわしき花嫁』に話を戻しますと、思い切ったことやったな~って感じです(^_^; 島田荘司先生が提唱する「本格ミステリー」(ホラーと思えた不可思議を論理的に解く類の推理小説)的なコンセプトにはワクワクしましたが、結局この19世紀の世界がシャーロックの○○ッた○○だったというのはびっくりぽんでした。まあなかなか見られない構成で面白かったのでよしとします。個人的には『超光戦士シャンゼリオン』の最終回を思い出しましたが、そういってわかってもらえる人がどれほどいるか…
『シャーロック 忌まわしき花嫁』は「特別限定上映」と銘打って4週間かっきりの公開となるようです。そんだけやってたらもう普通の公開と変わらないのでは… その上映もあと10日ほどでしょうか。
近日中にはイアン・マッケランを主演に老ホームズを描いた『Mr.ホームズ』という作品もスタンバイしているそうです。お好きな方はそちらもどうぞ。
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