かいじゅうたちの無法地帯 トム・グリーン 『モンスターズ/新種襲来』
4年ほど前、斬新な発想と驚くべき低予算で注目を集めた『モンスターズ/地球外生命体』という映画がありました(感想はこちら)。その才能をかわれたギャレス・エドワーズ監督は2014年の『GODZILLA』を任されることになり、今年の『スターウォーズ』スピンオフ『ローグワン』も担当することになりました。そのギャレス監督の原点でもある『モンスターズ』の続編が、本国イギリスの公開から1年以上を経て、ようやく日本でも見られる様になりました。『モンスターズ/新種襲来』、ご紹介します。
宇宙からの怪物が地球に飛来して数年。怪物たちはますます数を増して行き、生息範囲も拡大していくばかりだった。アメリカの貧しい地域に生まれたサムは友人と共に軍隊に入り、モンスターを掃討する任務につく。だがサムたちは任地でモンスターよりも、彼らの空爆で被害を被った現地の人々と戦うことを強いられる。
前作は感想にも書いたように、怪獣映画の体を装いながら怪獣がほとんど出てこない、一風変わったロードムービーであり、恋愛映画でありました。
だから続編ができると聞いたとき身構えたのですね。今回も怪獣の出番はラスト数分くらいしかないのではないかと。しかし予告編を見たら予算が上がったのか怪獣バンバン出てきます。今回こそ人間と怪獣の一大バトルが観られるか!?と期待を抱いて遠くの新宿の映画館まで行ってきました(バカですねえ)。
結果からいうと期待は半分だけかなえられました(笑) 確かに今回は怪獣の出番が大幅に増えてます。ただ怪獣と人間はちょこっとしか戦いません。じゃあなにがなにと戦っているのかというと、あらすじにも書いたように米軍とゲリラが『ハートロッカー』か『アメリカンスナイパー』のような銃撃戦を繰り返しています。怪獣は背景として時々そのうしろをのそのそ歩いてるだけ… まあこの怪獣傷つけられればさすがに怒りますけど、あまり攻撃的ではないんですよね。ただでかいし、歩くだけでものを壊してしまうという理由で殺されてる、ちょっとかわいそうなモンスターなんです。
そんなコンセプトからもわかるように、今回もまっとうな怪獣映画ではなく、「怪獣映画の皮をかぶった戦争映画」と言った方が正しい。災害(怪獣)がはびこっているにも関わらず、それでも身内同士の醜い争いをやめられない人間たち。そんなシニカルな視線が全編に徹底して貫かれております。
まあこれはこれで確かに作る意義がある。なんだかんだ言って怪獣もいっぱい見られるし。あとこの映画スケジュール的にギリギリまで観られるかわからなかったので、映画館にたどり着いた時点で十分満足していたわたしがいました。
しかし… しかしです。やはりどうしても豚骨ラーメンをたのんだのにミートソーススパゲッティが出てきたような思いは否めません。スパゲッティがうまかったからそこで満足すべきなのか? いや、俺は豚骨ラーメンが食べたかったんだと怒るべきなのか? 男としてそんな自問自答を繰り返させられる作品でした。
今回はギャレス監督は製作に回っていますが、そういえばこないだの『GODZILLA』も決してわかりやすい怪獣映画ではなかったですね。彼が作りたいのは王道的なエンターテイメントではなく、(怪獣の出てくる)「不条理」を描いたドラマなのかもしれません。となると今度の『ローグワン』がちょっと心配になるわけですが(^_^;
そんな『モンスターズ/新種襲来』はもうだいたいのところで上映が終わってしまいました… が、まだ少し残ってるところもありますので詳しくは公式サイトをごらんください。たとえ小難しくても多少モヤモヤするとしても、怪獣はスクリーンで見たほうがいいと思います!
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