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February 28, 2016

マーベル愛の劇場・第二章 『エージェント・オブ・シールド』シーズン2 全22話完全覚書

215436w300シーズン1のレンタル解禁から1年… ようやっとあの面倒くさいやつらが帰ってまいりました。マーベル・シネマティック・ユニバースの裏側を描く『エージェント・オブ・シールド』、シーズン2がこのほどリリースされたので約3週間かけて完走いたしました。本日はその適当な感想をば。完全ネタバレなのでくれぐれもこれから観ようかという人は先に本編をご覧になってから読んでください! あとシーズン1の記事はこちら

#1 新生S.H.I.E.L.D.始動(Shadows) #2 新たなる一歩(Heavy is the Head)
ヒドラ蜂起により大打撃を被ったシールドを再建すべく、奮闘するコールソン新長官。第二部最初のお仕事はヒドラが狙っていた謎のオベリスクを奪回することでした。冒頭でいきなりエージェント・カーターが活躍してるので借りてきたDVD間違えた?と思われる方もおられるでしょうけど、安心してください。あってますよ!
視聴者のハートをつかむためか知りませんが、いきなりこの二話で新生メンバーがパタパタと死にます。その中で生き残ったのが傭兵ランス・ハンター。チョイ悪を気取りながら内に熱いハートを抱えてるにくいやつです。これまた初登場のなんでも融合しちゃう怪人君も「凍結しただけ」とのことなので、またそのうち出てくることでしょう。

#3 氷の男(Making Friends and Influencing People)
シーズン1の11話に出てきたアイスマン君がさらにぐれて再登場。その捕獲にあたるのがヒドラに潜入捜査してたシモンズちゃん。あとでスカイにもつっこまれてましたが、その人選は無理がないか? コールソン! あと秘密結社たるヒドラが普通に開かれたオフィスかまえてるのもなんかおかしい。海のモズクと消えたMr.フリーズでしたが、死体がないということで(略)

#4 仮面の敵(Face My Enemy)
ヒドラの手に落ちて洗脳されてしまった悲劇のエージェント、ゴル子33初登場のエピソード。得意技は瞬時にどんな顔にもなれる変身マスクです。メイさんに変身して本物とガチバトルを繰り広げるシーンは圧巻でした。
で、この回でようやくわたしも「あれ? レギュラーにハゲの黒人増えた?」ということに気づきます。彼の名はマック。ガタイはいいのに技術担当。モブキャラかと思っていたら、のちのちけっこう重要なポジションになります。

#5 闇に潜む医者(A Hen in the Wolf House)
それってブラックジャックのことでは…(もちろん違います)。謎に包まれたスカイちゃんのお父さんがようやく本格的に出てくるエピソード(だったと思う)。それよりも今回のメインは案の定潜入がばれてピンチに立たされる、シモンズちゃんの逃走劇。実に意外なとこから出てきた助っ人にびっくりしました。その新メンバーはボビー・モース。コミックでは「モッキンバード」というコードネームでアベンジャーズで活躍したキャラです(上部画像参照)。木琴が得意なのか二本のバトンのような武器を使います。

#6 スプリンター爆弾(A Fractured House)
今回けっこう駆け足で観たので、この話はウォードがいじめられて脱走するくだりくらいしか覚えてません。逃がしちゃうシールドもシールドですが、ここであっさりウォードが死ぬわけもないしね… あと元嫁が帰ってきて動揺しまくりのランスさんが面白いです。そうそう、唐突に「静岡のお茶」という言葉が飛び出して県民としてはびっくりぽんでした。

#7 最後のピース(The Writing on the Wall)
シーズン1ラストからひっぱってたコールソンの「いつでもどこでも落書きしたい病」が解決する話。あとシールドもけっこう悪どいことやってたんだなあ…と気分が暗くなる回でもあります。
とりあえず複数の人が描いていた図柄を組み合わせ、落書きは3Dの地図であったことが判明いたします。地図の差し示す場所を解明すべくドキドキワクワクのコールソン。気持ちはわかるけどウォード捕獲にもうちょっと本腰入れな…

#8 兄弟の再会(The Things We Bury)
ほんの小さな出来事に~ 愛は~傷ついて~ これまたシーズン1からひっぱっていた「ウォードの過去になにがあったか」を回収する回でした。『ひとつ屋根の下』よろしくひし!と抱き合ったウォード兄弟でしたが、根に持つタイプのグラント君が家族をゆるすわけもなく、AOSをさらに暗い方向へ引っ張っていきます。
そりゃたしかにどうしようもないヤツですが、わたしはどうしても彼がにくめなくてねえ… そのうちなんとか更生してほしいものですが(無理ぽ)

#9 地下に眠る都市(...Ye Who Enter Here) #10 オベリスクの力(What They Become)
立体地図が指し示す地下神殿には何があるのか? コールソンたちを待ち受ける恐怖と怪異…!? な前後編。まず前半の敵ボスであったホワイトホールさんが非常にあっけなく死にます。あまりにもあっけなかったのであとで復活するのかと思いましたが、現在のところそれっきりです。そしてさらにあっさりさっくりトリプレットが土くれに… 確かに影が薄くなりつつあったけど、気のいいやつだったのでこの扱いはかなりショックでした。ひどい。ひどいわ…cryingcryingcrying

#11 衝撃のあと(Aftershocks)
スタッフもさすがにやりすぎたと反省したのか、1話丸々トリプレットの追悼に費やされたエピソード。「命と引き換えに世界を救った」と言われると多少は慰めにもなります。コールソンは攻勢の手をゆるめず弱ったヒドラにさらに大打撃を与えます。これじゃ後半戦う敵組織がなくなってしまうのでは…と心配になりますが、安心してください。ちゃんと相手いますよ! この回で涙ちょちょぎれたのはスカイの変身?を内緒にしてやったフィッツ君の男気ですね。泣き言ばっかり言ってたのに成長しやがって… ま、次の回ですぐにばれちゃうんですが。

#12 記憶をなくした戦士(Who You Really Are)
アスガルドの女子レスラー、シフさんAOS再度の登場です。「盾の女神」だけにシールドとは相性がいいんでしょうね。ただ今回はいきなり私服での登場だったのですぐにはわかりませんでした(^_^;
シーズン2も後半に突入ということでインターミッション的な回でありました。『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』とのリンクも申し訳程度に出てきます。

#13 能力者たち(One of Us)
スカイちゃんのお父さんポジションをコールソンに奪われ、逆上した実父のカルさんが怪人たちをひきつれて大暴れする回。せっかく同情しかけたのにこれです。演じるは『ツイン・ピークス』で有名なカイル・マクラクランさん。観てませんがあちらではもっと理知的でクールな人物だったのでは…
元旦那の登場に嬉しそうなメイさんが印象的でした。「コールソンに惚れてる」みたいなこと前に言ってましたが、これなんかもう忘れられた設定になってるような。

#14 顔のない女(Love in the Time of Hydra)
スカイちゃんに手ひどくふられて銃弾までお見舞いされたウォードは、自分を救ってくれたゴル子33との愛のために生きることを誓います。この回で面白かったのは基地に彼らが侵入したと知ってあわてふためくタルボット准将。この人も最初はいけすかないじいさんでしたが、シーズン2を通してだいぶ愉快なキャラに成長しました。
スカイちゃんは隔離されることが決定。「彼女のことになるとあなたは冷静を欠く」とコールソンがつっこまれてましたが、「そうだよね!? みんなそう思ってたよね!?」とTVの前で激しくうなずきました。

#15 2つのシールド(One Door Closes) #16 アフターライフ(Afterlife)
ボビーとマックが数話前からこそこそしてたのは、コールソンに反旗を翻すシールドの一派と内通してたから…ということが明らかになります。あっという間に主導権を奪われてしまうコールソン(^_^; 確かシーズン1も15話からこんな流れだったような… ただ相手は一応「シールド」なので、ヒドラが相手の時よりはなんとなく安心して見られます。助っ人に現れたピーターソン(デスロック)にテンションが上がり、フィッツのリュックに差し入れられたサンドイッチにほろほろと涙しました。

#17 メリンダ(Melinda)
スカイちゃんが目覚めた先は超能力者インヒューマンズたちが暮らすコミュニティ。そこでは彼女のお母さんが待っていて… あれ? バラバラ死体になって亡くなったはずでは? …という視聴者の困惑をよそに同時進行でメイさんの悲しい過去が明かされます。そんなわけで急に存在感を増してきたインヒューマンズ。コミックではコスチュームをまとったアメコミらしいルックスですが(下図参照)、こちらでは見かけは普通のにーちゃんねーちゃん。2019年映画化予定だそうですが… だいじょぶか?

#18 敵か味方か(The Frenemy of My Enemy)
この回はスカイちゃんと普通の親子としてデートを楽しむカルさんがあまりにも微笑ましくてかわいそうで、そればっかり印象に残りました。13話では「駄目だ、この人」と思いましたが再び好感度上昇です。その直後ヒドラの罠にはまり大敗を喫してしまうコールソン・チーム。ピーターソンはまたしても敵の手に落ち魔改造の憂き目に… どうもこのシリーズはハゲの黒人に冷たい気がしてなりません。

#19 汚れた6人(The Dirty Half Dozen)
とらわれのピーターソン&インヒューマンズの電気君を救うべく、再結集した初期コールソン・チーム。この面子やっぱりいいな!とわたしははしゃいでましたが、裏切り者のウォードが混じってることでほとんどのメンバーがイライラを募らせます。もうシーズン1の時のようなわきあいあいとした雰囲気は戻ってこないのかしら…(こない)。さめざめ

#20 傷(Scars)
映画『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン』との連動エピソード。やっとかい!!!! コールソンがこそこそしてた理由が明らかになり、シールドの内輪もめもなし崩し的に解決し。これでひとまず安心だ… と思いきや、スカイ母ジャイーンさんの企みでシールドとインヒューマンズはいつ戦争に突入してもおかしくない状態に。ジャイーンさんがこんなにも腹黒な人だったなんて… このくだりは「戦争っていうのはこうやって始まってしまうんだなあ」というのがよくわかって勉強になります。

#21 S.O.S.(前篇)/#22 S.O.S.(後編)(S.O.S)
先手必勝とばかりにシールド本部に攻撃をしかけてくるインヒューマンズ。その最中母の企みを知ったスカイは彼女と決別。そんなくそ忙しい中ウォードとゴル子33はボビーを拉致って拷問しますが、事態は思わぬ結果に…
ひとまずインヒューマンズを制圧し事件は解決しますが、これから大変なことになりそうだな~ということを匂わせてシーズン2は幕を下ろします。意外だったのはウォードが本気でゴル子を愛していたことですね。てっきり道具としか見てなくて用が終わったらポイ捨てするのかと。実の母親とあんなことになってしまったスカイちゃんのメンタルも心配です。あとホラー映画のような形でもってシモンズが退場してしまいましたが、シーズン3のポスターにちゃんと出てたのでたぶん生きてるでしょう。

29407inhumans_lgそんなわけでシーズン1と比べるといささか切れの悪かったシーズン2ラスト。すでに本国ではシーズン3が放映されてるとのこと。『インヒューマンズ』公開まで続けるんでしょうか。あとハンターとボビーをメインに据えたスピンオフ『Most Wanted』というのが制作進行中です。追いかけるの大変なんですけど!


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February 24, 2016

あいぽんのお仕事 ダニー・ボイル 『スティーブ・ジョブズ』

Applelogo没後4年。いまだ多くの人々に影響を与えているスティーブ・ジョブズの伝記を、鬼才ダニー・ボイルとアーロン・ソーキンが映画化。本日はその『スティーブ・ジョブズ』(まんまのタイトル)を紹介します。

生涯で幾つもの革新的な製品を開発し続けたジョブズ。だが彼の晴れ舞台とも言える新商品発表の日には、決まって楽屋に何人かの招かれざる客が訪れるのであった。その中には彼がかたくなに認知しようとしない娘のリサの姿もあった。

『スティーブ・ジョブズ』という映画は彼が亡くなって1年ちょいしか断ってない2013年にも作られています(原題は『Jobs』)。そっちの方は観てないんですが、聞くところによるとオーソドックスに彼の生涯を追った伝記映画になっているとのこと。その差別化のためかは知りませんが、本作は一風変わった形式が試みられています。ジョブズの生涯で特に象徴的な3日間を、3幕形式で映像化しているのですね。1幕目は1984年のマッキントッシュ発表の日、2幕目は1988年のNeXT発表の日、3幕目はiMac発表の日…という具合です。

ジョブズについてはそれほどくわしくないわたくし。それでもちらちら見聞きするのは「絶大な支持を得ているカリスマでありながら、人格が強烈すぎてまわりの人々からはよく嫌われてた」という話です。この映画でもその点がよく描写されていました。
特に印象的だったのは「素人からすればどうでもよさそうなすごい細かいことにめちゃくちゃこだわる」ということです。マッキントッシュに「ハロー」と言わせたり、NeXTが正方形に見えるようにある辺を1㎝伸ばしたり、どれも同じようなサメのデモ画面を何回も何回も作りなおさせたり…
そのくらいだったらまだ笑ってすませられるレベルですが、恩人であり親友であるウォズニアックが「アップルⅡチームに謝辞を述べてくれ」と頼んでも、プライドを曲げられずに頑として応じない。友達を大切に思ってるんだったらそれくらい折れてやれよ…と思わずにはいられません。劇中に出てくる「嫌われたくはない。だが嫌われてもかまわない」という言葉がジョブズの性格をよくあらわしています。この一切の妥協を許さない性格だからこそカリスマとなり、優れた業績をなしとげてきたのかもしれません。わたしは凡人なので人から好かれるのであればいくらでも妥協しますけどね~ それはともかく、そんなジョブズとてひとなみの愛情を欲していたのでは…という風に映画では描かれています。本当は大切に思っているのに不器用でプライドが高いため、なかなかそれを素直に言い表せない。そんなところは孤高の天才もわたしたちと同じ人間であることを感じさせます(そういえば今回ジョブズを演じていたミヒャエル・ファスベンダー、愛情表現がへたくそなために嫌われたり仲たがいしたりする役をよくやってますよね…)。
しかし同じことの繰り返しとも思える3幕の中で、ジョブズは少しずつ娘との関係を改善させていきます。この少しあたたかみのあるムードがいかにもダニー・ボイルらしいと思いました。彼の映画の主人公たちは欠点も多くありますが、それでも監督は愛情をこめて描きます。同じソーキン脚本でデビッド・フィンチャー監督が撮った『ソーシャルネットワーク』はよく今回の『ジョブズ』と比較されますが、あちらはやはり監督の性向ゆえか本作よりもシニカルで冷笑的に感じられました。
ここでそんな風に「ちょっといい話」に落ち着いてしまったあたりが評価が分かれるところでしょうね。わたしは普通に心地よかったのでアリです。
Sjb2そんなわけで新しい方の『スティーブ・ジョブズ』は全国の映画館で公開中です。とりあえずジョブズさんのファンの人は観ておいて損はないと思います。


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February 17, 2016

ジャガイモ畑でいきのびて アンディ・ウィアー リドリー・スコット 『オデッセイ』

Yjimage近年『ゼロ・グラビティ』『インターステラー』と宇宙開発映画の力作が続きましたが、今度は御大リドリー・スコットが火星探査を題材にドカンとやってくれました。SF小説『火星の人』を原作とした『オデッセイ』、紹介いたします。

火星への有人探査が可能となった近未来。宇宙飛行士ワトニーは突然の大嵐に襲われ行方不明となってしまう。クルーは彼が死んだものと諦め地球へと帰還の旅に着くが、実はワトニーはまだ生きていた。限られた水・空気・食料で次の船が来るまでの4年間どうやって生き延びるか。ワトニーは持ち前のポジティブ思考で知恵を巡らし、なんとか生き延びようと決意する。

そんなん無理に決まってんだろーっ!!…と普通は思います。しかしあっさり死んでしまったら映画はすぐに終わってしまうわけで。どうやってワトニーが多くの不可能をクリアしていくのか、そんなミステリー的な面白さがまずあります。

さらにこの映画の魅力として、リアルな火星開発を描いているという点があげられます。これまで火星を題材とした映画はいくつかありましたが、大抵タコみたいな宇宙人が出てくる荒唐無稽なものばかりでした。『レッド・プラネット』はいい線行ってましたがあれも結局アクション重視の作品でありましたし。『オデッセイ』では実際の火星の環境や風景はどんなものなのか。空気も水もろくにないところでどうやって生きていくのか。学習漫画のように素人にもわかりやすく面白く解説してくれます。

監督は『エイリアン』『ブレードランナー』などで知られる超ベテランのリドリー・スコット。彼のイメージをわたしなりに表すと「撲殺・斬殺・時々射殺」みたいな感じです。つまり作品の中でいっぱい人が死にます。しかしこの『オデッセイ』では…(ぼちぼちネタバレに入ります)
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驚くべきことに誰1人として死にません。天国に一番近い位置にいるワトニーはもちろん、出演中の死亡率が大変高いショーン・ビーンでさえも(クビは飛んでましたが)。
こんなに人が死なないリドスコ作品はおそらく『プロヴァンスの贈り物』(未見)以来ではないでしょうか。でもあれだって冒頭でおじさんが死んでるらしいし。
あとリドスコ作品は笑える場面があまりなく、男たちが血管を浮かせて「ぶっ殺すー!」と叫んでるシーンの方が多い印象です。しかし『オデッセイ』ではみんな静かになごやかにしゃべってますし、ユーモラスな要素もたっぷりあります。生きるか死ぬかの瀬戸際だというのに。
これはまあ原作(未読)がそうだから、と言ってしまえばそうですが、バイオレンスのスペシャリストのリドスコがそんな原作に興味を持ったということが不思議です。老いて心境の変化でもあったのか、弟の死が影響を与えたのか。ただ言ってみれば「彼らしくない」この映画が、『グラディエイター』以来の大好評を呼んでアカデミー賞にもバンバンノミネートされているのはなかなかに皮肉ですね。あと次回作は『エイリアン』前日談の『プロメテウス』の続編だそうなので、また死人がゴロゴロ出る作風に戻るかと思われます。

20160217_121311こんだけウダウダと書いた後になんですけど、「その監督らしい・らしくない」なんてのはまあどうでもいいことですよね。面白けりゃいいんです。そしてこの『オデッセイ』はかなり普遍的に「面白い」作品になっていると思います。ゆるキャラも怪獣も出なけりゃスター的な俳優が出ているわけでもないのに、二週にわたって興行一位に輝いていることがそれを証明しています。「こわくなさそう・わかりやすそう」ということで年少者たちにも好評のようですし。
そんなわけで『オデッセイ』はまだまだ公開続いちゃうんじゃないかと思われます。無事に生き延びたマット・デイモン氏ですが、次回作はおなじみのジェイソン・ボーン・シリーズで命が危なくなるとのこと。そちらも期待してます。


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February 15, 2016

ボーンクラ・アイデンティティー ニマ・ヌリザデ 『エージェント・ウルトラ』

Agu1ちょっと奇妙な風貌と早口で、若手俳優の中では異彩を放っているジェシー・アイゼンバーグ。前作『嗤う分身』はドストエフスキー原作のアート作品でしたが、今回はブレイクした『ゾンビランド』のようなB級血みどろアクションに再挑戦。『エージェント・ウルトラ』、ご紹介します。

アメリカの片田舎に住むマイクはドラッグ大好きなボンクラ青年。自分の素性もわからず、心因性の病気で「街から出られない」という症状を患っていたが、彼には(なぜか)優しくかわいいフィービーという恋人がいて、ラブラブで幸せな毎日を送っていた。
いい加減フィービーに結婚指輪を渡そうとマイクが思い悩んでいたある日、彼は勤め先のスーパーで謎の男たちに襲われる。しかし意外なことに体が覚えていた殺人技術で、マイクは瞬時にして刺客たちを返り討ちにしてしまう。自分は一体何者なのか… 彼の悩みがさらに追加されたのをよそに、街では国家的陰謀が着々と進行していた。

この映画、原題を『アメリカン・ウルトラ』と言います。アメリカン・サイコ、アメリカン・ジゴロ、アメリカン・ビューティー、アメリカン・ギャングスター、アメリカン・ヒストリーX、アメリカン・パイ…と並べてわかるように、「アメリカン」とつく映画の主人公は大抵ろくでもないやつばかりです。よくてボンクラ、悪くて人でなし、うんと悪くて大量殺人者です。本作品の主人公マイク君もなかなかのボンクラで、しかもその正体は殺人マシン。ですが人並みに恋人に関するあれこれで悩んでいたり、おバカな漫画「宇宙ゴリラの物語」を自作してたりと他のバッドでアメリカンなやつらと比べると実に小市民的な親しみやすさがあります。ぶつぶつつぶやきながらフラフラ歩き回るその様は、潜在能力が半端ないこともあいまって『究極超人あ~る』のR・田中一郎を彷彿とさせていました。

で、ちょっとネタバレしちゃうとこの映画、主なストーリーは『ボーン・アイデンティティー』と大体一緒なんですよね。でもちょっとしたさじ加減の違いで印象を大幅に異なるものにしています。マイク君はボーンや『イコライザー』のデンゼルさんのように身の回りのものを武器として使うのですが、その日用品というのがカップラーメンだったりただのスプーンだったりおおよそ武器らしくないものばかりで、いちいち笑いを誘ってくれます。
おおよそ殺し屋のイメージから程遠いジェシー君の振る舞いもこの映画にコメディ要素を増し加えています。凄腕の暗殺者たちに命を狙われているというのに、指輪を渡すタイミングを見計らってたり、すねて家でふて寝したり… だのになんとかピンチを切り抜けちゃったりするから不思議です。
あとこうしたスパイ系映画というのは大都会で世界をまたにかけて暴れたりするものですが、あくまで田舎の町で閉鎖的に進行していくあたりも独特でした。

そんなヘンテコなスパイアクションに花を添えているのがクリステン・スチュワート。『トワイライト』や『スノーホワイト』で純愛乙女を演じたかと思えば、こないだは『オン・ザ・ロード』でセックス&ドラッグにふけるビッチ役をやったり、色々迷走してるなあと思っていましたが、今回はたぶん素に近い役だからでしょうか。自然体のかわいらしい魅力にあふれていました。最後の方でぼこぼこになぐられて顔面崩壊状態になってたのは「あー、また無理してる」とは思いましたが。

Agu2『エージェント・ウルトラ』は実は本国ではけっこうコケたりしたのですが、日本でも公開館が少ないせいかあまり話題になっていません(^_^; というかもう今週で公開終わる…のかな… ちなみにアイゼンバーグ君は3月公開の『バットマンVSスーパーマン』でも重要な役を演じています。そっちの方での活躍も楽しみです!


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February 09, 2016

ブラックキャットによろしく・劇場版 杉作・山本透 『猫なんてよんでもこない。』

Sga3話せば長くなるのですが、高校のころ格闘技ファンの友人のすすめで愛読していた『キック・ざ・ちゅう』という漫画がありました。原作はベテランのなかいま強先生で、作画は杉崎守さんという方でした。で、その単行本のオマケページに杉崎先生のエッセイがのっていて「弟がボクシングの4回戦でがんばっている」なんてことが書かれていました。それから十年以上たって、その弟さんが描いたネコ漫画を読むことになろうとは夢にも思いませんでした。彼はその後「杉作」というペンネームで漫画家に転身し、このブログでも何回か紹介した『クロ號』、そして『猫なんてよんでもこない』を著すことになります。今日は現在公開中の『猫よん』の映画版を観てきたのでその感想をば。まずはあらすじから。

おそらく90年代。ボクサーとしていまひとつ壁を越えることのできないミツオは、ボクシングに集中するためバイトをすべてやめ、兄のところに転がり込む。だが兄が拾ってきた二匹の捨て猫・クロとチンの世話を押し付けられたため、ミツオはなかなかトレーニングに専念できない。元々猫があまり好きではなかったこともあり、ミツオのストレスは高まっていく。それでもともに過ごしていくうちにお互いになれていき一安心と思えたころ、ミツオは大きなアクシデントに見舞われる。

ネコをテーマにした映画はちらほらあります。しかし猫というのは基本的に犬より扱いにくく、思い通りに動いてくれない動物です。だからドラマや映画に出てくる猫というのは大抵の場合じっとしてるか、ただ普通に歩いてるかというシーンが多いです。ですがこの『猫なんてよんでもこない』では驚くべきことに猫が演技してるように、その場その場にあった動きをします。実は映画化されると聞いたときその点が一番心配だったのですが、みごとに原作のクロ・チン(子)を再現していました。調教師の腕が見事だったのか、思うように動いてくれるまでスタッフが忍耐し続けたのか、はたまた巧妙なCGなのか… ま、その点がまずすごいし、ほんわかさせられる映画でした。

ただこの映画はほんわか和むだけの話ではなく、けっこうきついというか『火垂るの墓』を彷彿とさせるところもあったりします。以下はけっこうネタバレしてるのでご了承ください。

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『火垂るの墓』は戦争が主人公兄妹を追い込んだ…という風に受け止められてますし、確かにそういう側面もある話ですが、兄がおばさんの家を飛び出したりしなければ妹は死ななかった…ということも匂わされています。
『猫なんてよんでもこない』も映画で観て改めて気づいたのですが、ミツオの無邪気な判断というかよかれと思ってやったことが結果的にクロの寿命を縮めてしまうことになります。実はその贖罪のために描かれたというところもふたつの作品は似ています。
自分のせいで守るべきものが死ぬとわかった時、ボクシングを諦めたときも兄に放り出された時もぼや~っとしていただけだった青年が、はじめて声をあげて泣きます。わたしは別に飼い猫に負い目とかない(…と思う)ですけど、あいつももう15歳なので遠からず別れる時が来るんだろうなあ、と思うとさすがに胸をしめつけられるものがありました。後ろの席で観ていたお客さんも同じように感じたのかはたまた自分の経験を思い出したのか、「ごぶっ」という嗚咽の音を漏らしていました。それなりに映画館に通ってますけどそんな音を聞いたのは初めてだったのでちょっとびっくりしましたね(^_^;

「主人公のせい」と書きましたが、「猫を飼う」ということについてもいろいろ考えさせられました。今の日本の都市部ではそりゃ去勢・避妊してなるべく家から出さない…という飼い方が当たり前なのかもしれません。それが猫が最も長生きして近所に迷惑もかからない飼い方だから。でもそれが本当に猫にとって幸せな生き方なのか…ということはやっぱり猫に聞いてみないとわからない。でもまあ猫は希望を答えてくれるわけではないので、やっぱり色々考えを巡らせて、最善と思える飼い方をするしかないんですよね。

結果的に短い生涯を終えたクロですが、このクロちゃん、ミツオが言うようにまさに「奇跡の猫」だと思います。段ボール箱に捨てられてたごく普通の猫だったのに、飼い主の生き方を変え、二度に渡って漫画化され、日本中の多くの人を感動させてるわけですから。そんな猫はそうそういるものではありません。

これはごくごく小さい世界のお話です。ストーリーの半分くらいは家の中で進むし、あとの半分も家の周辺の範囲内でおさまってます。ただ前後にスケールの大きい映画ばかり観てた(スターウォーズとか捕鯨の話とか綱渡りの話とかスパイの歴史秘話とか)ので、この小ささがなんとも心地よく感じられたのでした。
20160209_142749ただ『猫なんてよんでもこない』、原作はそれなりに売れてたと思ったのに映画はそんなに入ってないようです(^_^; なぜだ… ニャンコの自然な演技だけでも一見の価値がありますので、特に『岩合光昭の世界ネコ歩き』などが好きな方はごらんになってみてください。あと一週あるかないか…かな…


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February 05, 2016

決定! 第5回人間以外アカデミー賞!!(2015年公開の作品から)

なぜアカデミー賞は人間にしか与えられないのか。そんな疑問から生まれた「人間以外アカデミー賞」、完全なる自己満足にも関わらず今回でとうとう5回目を迎えました。本当にもう… バカね♪
そんなわけで人間以外の生物、生物でもなくても自我をもってるっぽいやつらを種別に表彰していきます。では遺伝子の単純そうなやつらからいきますか。


602115952☆細菌・微生物部門 『メイズランナー』の元凶になったウィルス
次点に『クーキー』に出てきたきのこっぽいやつら

☆植物部門 『クレヨンしんちゃん オラの引越し物語 ~サボテン大襲撃~』のサボテン
サボテンってなんか怖いですよね… 次点に『リトルプリンス』のバラ

☆昆虫・無脊椎動物部門 もちろん 『アントマン』のアントニー
去年に引き続き蟻の活躍が目立ちました。アリ以外の無脊椎動物もがんばろう!

Bdm2☆水棲生物部門 『バケモノの子』の白鯨
他の候補に『007・スペクター』OPのタコ、『コングレス未来会議』に出てきたアニメダコなど

☆鳥類部門 鳥と言えるのか微妙なとこですがアカデミー賞も取ってたので 『バードマン』よりバードマンを
ほかには『ペンギンズ』もがんばっておりました。飛べないけど

☆両生類・爬虫類部門 『ミュータント・タートルズ』と迷ったんですが個人的なひいきで 『ラブ&ピース』のピカドンに おまえをっ わすれないっ 他には『エクソダス』のカエルとか

Gamba1☆小動物・ペット部門 『GAMBA ガンバと仲間たち』よりガンバと『ジョン・ウィック』の子犬のW受賞で
ほかに『キングスマン』のJB、『ひつじのショーン』のピッツァ、ブス犬、『ホワイトゴッド』『ベル&セバスチャン』と犬がよくがんばった年でした

☆牧畜系部門 『ひつじのショーン』よりショーンと仲間たち以外にありましょうや…

☆野獣系部門 『くまのアーネストおじさん』と『バケモノの子』の熊徹さんのW受賞で
クマ以外の野獣では『リトル・プリンス』のキツネさんも泣かせてくれました。

98715756s☆恐竜その他絶滅した生き物部門 当然『ジュラシック・ワールド』の皆さんですが、ここはベテランの貫録をみせつけてくれたT-REXさんに。あっと画像がモササウルスだった…

☆ドラゴンその他伝説の生き物系部門 DVDスルー&限定上映でしたが『ヒックとドラゴン2』のトゥース(レス)に。ドリームワークス復活への期待を込めて

☆怪獣部門 まあ 『進撃の巨人』さんたちですね。一人選ぶならエレンの変身する鎧型の巨人 
他の候補にはピカドン、『メイズランナー』のアレ、『スターウォーズ』のアレなどがありました。

Mxfd1☆人でなし部門 そんなに悪いことしてないんですがインパクト的に『マッドマックス 怒りのデスロード』のイモータン・ジョー様
次点に『セッション』のハゲ先生(名前忘れた)

☆ゾンビ・吸血鬼部門 やはりインパクトで『ゾンビーバー』 人間じゃないゾンビという視点が新しい

☆幽霊部門 『母と暮らせば』の二宮君
役名なんだっけ…(調べろよ)

200x200☆妖怪・モンスター部門 まあジバニャンですよね

☆神様部門 『アベンジャーズ エイジ・オブ・ウルトロン』よりソーくらいしか思い浮かばなかった…
だんだん適当になってきました

☆悪魔部門 『GAMBA』より白イタチのノロイ
イタチですけど本物の悪魔です

Fz0326_15☆友好的宇宙人部門 ☆類人猿部門
この二つはまとめて『スターウォーズ フォースの覚醒』のチューバッカさんにさしあげます。ほんによう帰ってきた!!

☆敵対系宇宙人部門 『ドラゴンボールZ 復活のF』よりフリーザ様
実はどうやって復活したのかいまだに知りません。今年は『ID4』続編の宇宙人さんたちにも期待


1091☆ロボット部門 『スターウォーズ フォースの覚醒』よりBB-8
今年もチャッピー、ターミネーター、『トゥモローランド』のアテナちゃん、ウルトロン、R2-D2にC-3POとこの部門大激戦でしたが、この玉っころが全部持っていきやがりました。にくい

☆正体不明部門
『インサイド・ヘッド』のヨロコビ、カナシミ、ビンボン、『ピクセルズ』のパックマンたち、『クーキー』の謎の物体たちなどもいましたが、個人的なひいきで『寄生獣 完結編』の田宮さんと『ミニオンズ』に

さて、いよいよのおおトリ
41n3onyrbjl__sx342_☆☆大賞 『寄生獣 完結編』のミギー
ありがとうミギー!!! お前はやはり生きている!!!
あともう一組『ジュラシック・ワールド』の皆さんにもさしあげます。
2015年の映画興行を大いに盛り上げてくれた功労者。ありがとう!!! 本当にありがとう!!!

それでは2016年も、人間も人間以外もがんばっていきましょう!! わたしはダメかもしれませんが…(笑) 人間以外アカデミー賞でした~

 

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February 03, 2016

かいじゅうたちの無法地帯 トム・グリーン 『モンスターズ/新種襲来』

Monsters4年ほど前、斬新な発想と驚くべき低予算で注目を集めた『モンスターズ/地球外生命体』という映画がありました(感想はこちら)。その才能をかわれたギャレス・エドワーズ監督は2014年の『GODZILLA』を任されることになり、今年の『スターウォーズ』スピンオフ『ローグワン』も担当することになりました。そのギャレス監督の原点でもある『モンスターズ』の続編が、本国イギリスの公開から1年以上を経て、ようやく日本でも見られる様になりました。『モンスターズ/新種襲来』、ご紹介します。

宇宙からの怪物が地球に飛来して数年。怪物たちはますます数を増して行き、生息範囲も拡大していくばかりだった。アメリカの貧しい地域に生まれたサムは友人と共に軍隊に入り、モンスターを掃討する任務につく。だがサムたちは任地でモンスターよりも、彼らの空爆で被害を被った現地の人々と戦うことを強いられる。

前作は感想にも書いたように、怪獣映画の体を装いながら怪獣がほとんど出てこない、一風変わったロードムービーであり、恋愛映画でありました。
だから続編ができると聞いたとき身構えたのですね。今回も怪獣の出番はラスト数分くらいしかないのではないかと。しかし予告編を見たら予算が上がったのか怪獣バンバン出てきます。今回こそ人間と怪獣の一大バトルが観られるか!?と期待を抱いて遠くの新宿の映画館まで行ってきました(バカですねえ)。
結果からいうと期待は半分だけかなえられました(笑) 確かに今回は怪獣の出番が大幅に増えてます。ただ怪獣と人間はちょこっとしか戦いません。じゃあなにがなにと戦っているのかというと、あらすじにも書いたように米軍とゲリラが『ハートロッカー』か『アメリカンスナイパー』のような銃撃戦を繰り返しています。怪獣は背景として時々そのうしろをのそのそ歩いてるだけ… まあこの怪獣傷つけられればさすがに怒りますけど、あまり攻撃的ではないんですよね。ただでかいし、歩くだけでものを壊してしまうという理由で殺されてる、ちょっとかわいそうなモンスターなんです。
そんなコンセプトからもわかるように、今回もまっとうな怪獣映画ではなく、「怪獣映画の皮をかぶった戦争映画」と言った方が正しい。災害(怪獣)がはびこっているにも関わらず、それでも身内同士の醜い争いをやめられない人間たち。そんなシニカルな視線が全編に徹底して貫かれております。
まあこれはこれで確かに作る意義がある。なんだかんだ言って怪獣もいっぱい見られるし。あとこの映画スケジュール的にギリギリまで観られるかわからなかったので、映画館にたどり着いた時点で十分満足していたわたしがいました。
しかし… しかしです。やはりどうしても豚骨ラーメンをたのんだのにミートソーススパゲッティが出てきたような思いは否めません。スパゲッティがうまかったからそこで満足すべきなのか? いや、俺は豚骨ラーメンが食べたかったんだと怒るべきなのか? 男としてそんな自問自答を繰り返させられる作品でした。
今回はギャレス監督は製作に回っていますが、そういえばこないだの『GODZILLA』も決してわかりやすい怪獣映画ではなかったですね。彼が作りたいのは王道的なエンターテイメントではなく、(怪獣の出てくる)「不条理」を描いたドラマなのかもしれません。となると今度の『ローグワン』がちょっと心配になるわけですが(^_^;
Mstss2そんな『モンスターズ/新種襲来』はもうだいたいのところで上映が終わってしまいました… が、まだ少し残ってるところもありますので詳しくは公式サイトをごらんください。たとえ小難しくても多少モヤモヤするとしても、怪獣はスクリーンで見たほうがいいと思います!


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February 01, 2016

フィリップ、君はいかれてる ロバート・ゼメキス 『ザ・ウォーク』

Walk11974年、NY世界貿易センタービルで行われた伝説のパフォーマンスを、名匠ロバート・ゼメキスが3Dで映画化。『ザ・ウォーク』、ご紹介します。

フランス生まれのパフォーマー、フィリップ・プティは子供のころサーカスで綱渡りを見て以来その芸に魅せられ、いつも最高の舞台を探し続けていた。ある日歯医者の待合室で「ツインタワー」こと世界貿易センタービルの記事を見つけたフィリップは、これこそ自分が求めていた綱渡りの舞台であると歓喜する。高さ約500m、命綱なし、もちろん許可が下りるわけもないその無謀とも言えるチャレンジに、フィリップは数少ない協力者たちと入念な計画をもって挑む。

ご存知の方も多いと思いますが、この話をもとにしたドキュメンタリー映画が『マン・オン・ワイヤー』というタイトルで2009年に日本で公開されています(感想記事はこちら)。
そちらはノンフィクションでありながら、クライマックスの場面でサティが流れたりして、上品というか幻想的な造りになっております。プティさんが綱を渡っているシーンも静止画像が大写しになるだけなので、まるで雲の上を悠々と散歩しているかのようなイメージでした(最近知ったところによると、8㎜撮影をしようとしたら協力者が警官に取り押さえられてできなかったとのこと)。まあそれはそれで趣がありますが、「やっぱり動いて綱渡りしてるシーンも見たかったな…」とは思いました。
ロバート・ゼメキス監督も同じように感じたのかもしれません。今回の映像はCGだしプティさんも本人ではなくジョセフ・ゴードン・レビットが演じてるわけですが、最新技術を駆使してわたしたちをいまはなき貿易センタービルのてっぺんまで連れて行ってくれます。
『マン・オン・ワイヤー』の感想でわたくし「自分もなんだか綱渡りがやりたくなってしまう」なんてのんきなことを書いてましたが、『ザ・ウォーク』を観たら全くその気は失せました。死んでもやりたくありません。
ゼメキス監督って前からサド気質のある人だと思ってました。作中人物をシビアな状況に追い込んでいたぶってるようなそういう作品が多いですよね。ただ今回、責められているのは主人公ではなく観客のわたしたちです(主人公はむしろ幸福の絶頂にあります)。自分がのせられやすい体質だからかもしれませんが、本当に一瞬でも油断したらまっさかさまに落ちていくような、そんな緊張感をえんえんと味わわせられました。
プティの協力者である数学者の先生もこちらの恐怖感をあおってくれます。彼はなんと高所恐怖症だったりするので。「じゃあなんであんたはこんなとんでもねえ高所のプロジェクトに参加したんだ!?」と襟首を捕まえて揺さぶりたい衝動に駆られます。世界で有数の高いビルに挑んで苦手を克服しようと思ったのでしょうか? いずれにせよ肝心なところで「あーんこわいよー」とわめく彼を見ていると、すでに結果を知っているのにも関わらず「こんなの無理。絶対死んじゃう」という思いがガンガン高まってきます。本当にねえ… こんな無茶なことよく成功させましたねえ… まさに事実は小説よりも奇なりであります。

ゼメキス監督はサドなだけでなく、その試練を通じて人の成長を物語る作家でもあります。「おじぎなんかしてられっかバッキャロー」と師匠と大喧嘩したプティさんも、神に近い領域にまで近づいて自分が多くのモノに支えられていることを実感し、自然と感謝の思いを抱くようになります。その謙虚な気持ちが伝わったのか、言ってみれば犯罪者でもある彼に多くの人が賛辞を贈ります。この辺がやっぱりお国柄なんですかね… 日本だったら賛辞と同じくらい「世間を騒がせおって!」と非難も轟々湧き上がる気がします。

ともかくさんざん怖い思いをさせられただけに、それが無事終わった時の安堵感と達成感もまた半端ありません。飽きもせず年中映画ばっかり観てますけど、ホラーでもないのにこんなにおっかない映像は観たことがありませんし、ハラハラドキドキさせられた体験もそうはないです。
20090919084856それだけすごい映画なのに『ザ・ウォーク』、日本ではいまひとつヒットしていない模様。有名スターもゆるキャラも出てないですからね… いい映画が必ずしもヒットするわけではないことは重々承知してますが、今回は本当にやるせない。これ、テレビサイズで観たらほとんど意味のない映画だと思うので、ちょっとでも興味のある人はスクリーンで観られるうちに、ぜひこの貴重な経験を味わってみてください!


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