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January 27, 2016

与太郎+熊八= マイケル・ボンド ポール・キング 『パディントン』

Pdt1昨年夏から秋にかけてクマの映画が4本公開されましたが、それから少し遅れておおトリの登場です。世界的に有名な名作童話を最新CG技術で新生させた『パディントン』、ご紹介します。

南米はペルーで暮らしていた子熊のパディントンはある日地震で家を失い、宿無しになってしまう。「ロンドンに行けば親切な人が家を与えてくれるはず」 そう言う叔母の言葉を信じて、パディントンは貨物船に乗り込み遠いイギリスの地までやってきた。だが方々を歩いてみても、家をくれる人は見つからない(そりゃそうだ)。途方にくれて駅のベンチに座り込むパディントン。そんな時たまたまそばを通りがかったブラウン夫人は、彼を哀れに思い「よかったら我が家に来ない?」と声をかける。

「パディントン」の誕生は1958年。その年に童話『くまのパディントン』(マイケル・ボンド著)が出版され、以後多くの続編が作られたとのことです。三度にわたってテレビアニメ化もされました。わたしが見たことがあるのはたぶん最初のバージョン(こちらで見られます)。背景やキャラはほとんど絵なのに、パディントンのみが立体という形式が面白いですね。たしか主人公のくまが悪気はないんだけど、おうちの中でいろんなものをぶちまけたりぶちこわしたりして騒動を巻き起こす、そんな話だったかと記憶してます。石ノ森章太郎先生の漫画の…というかひどい方の『ロボコン』を彷彿とさせます。

で、今回もCGアニメとして作るという手もあったかと思いますが、あえての「実写映画化」となっております(もちろんパディントンはCGですが)。そのためブラウンさんち一家や、周りのおじいさんおばあさんらがすごく存在感があるというか、ご近所さんみたいに感じられるのですね。そりゃむこうさんはアングおロサクソン系ですけど、わたしたちの町内にも普通にいそうな人たちばかりです。ニコール・キッドマン以外は。
あと特に「最近のCGってすごいな」と感じたのはパディントンの目だけですごく表情を豊かに表わしているところ。彼の表情を追っているうちに、最初は「微妙…というか野獣」と思えたパディントンの造形にもだんだんと愛着がわいてきます。
そのパディントンの声を演じているのはオリジナル版ではベン・ウィショー、日本語版では松坂桃李君(わたしは松坂版で観ました)。パディントンは実際には小中学生くらいの年だと思うのですが、もうちょっと上の年齢というか青年の声でしゃべっています。ただこの狙ったかわいさのない純朴な声のせいか、パデんィントンが本当に誠実で汚れなき存在なんだな…ということがよく伝わってきます。たとえ家のものを次から次へと破壊してもです。まあこれだけモフモフのかわいいやつが家にいたら、「形あるものはいつか壊れるのだから」とあきらめるほかないでしょう。

クマ以外にも数名はじけたキャラが登場します。一人はニコール・キッドマン演じる剥製フェチの人。ニコールさんがここまでコテコテのお笑いをやるのはかなり珍しいと思うんですが、これが実にはまるはまる。この映画で唯一の悪人といっていいキャラですが「面白いから許す」といわざるを得ません。大女優がさらに新たな輝きを増した感がありました。
ブラウン家の主であるおとうさんもなかなかに濃いキャラでした。冒頭こそパディントンを胡散臭がっていてすごく感じ悪いのですが、回想シーンで「ボーン・トゥ・ビー・ワイルド」と共に現れるくだりからぐんぐんと好感度が上がっていきます。無理な女装や無茶なアクションでさんざん笑わせてくれた後に、最後はホロリと泣かせてくれる実に愛すべきおじさんです。

他にも背景や小道具がいちいち凝っていたり、面白い映像の演出があったり、小ネタやパロディが満載だったり…と実に魅力がパンパンにつまった映画でした。

Pdt2b『パディントン』は現在全国の映画館で上映中。日本では決してメジャーなキャラではないので苦戦するのでは…と思いましたが、最初の週はスターウォーズ、妖怪ウォッチの次につけてなかなか健闘しております。やはり日本人はゆるキャラに弱いようで。
世界的にはもちろん大ヒットして制作費の五倍近い収益を記録しております。この成績を受けて当然のように続編製作も決定したとのこと。また何年後かにはパディントンに再会できることでしょう。


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Comments

> ニコール・キッドマン以外は。

多数のニコール・キッドマンしか暮らしていない町があったらちょっと息が詰まりそうだな、と思いました。この映画で全力でくだらない事やってくれてるから実はいい人なんだと思うんですけど。

Posted by: ふじき78 | February 14, 2016 05:25 PM

>ふじき78さん

自分的にはキッドマン全然OKなので、彼女がいっぱい住んでる街があったら素晴らしいと思います。隣のいいように操られてたじいちゃんに感情移入してしまいましたね

Posted by: SGA屋伍一 | February 16, 2016 09:01 PM

遅ればせながら見てきました。
意外とくまよりも周りの人間のほうがイカれているコメディでしたけど、トランプ発言とかテーマがタイムリーすぎてちょっと考えさせられました(^_^;)

おっしゃるとおり、ちょこちょこ出てくる映像の工夫が面白かったです。英国風からくり?っていうのかな、ああいうのも堪能できました!
あの地理学会のチューブのやつ楽しそうw

Posted by: ゴーダイ | February 21, 2016 03:34 PM

「微妙…というより野獣」で笑いました
最初はクマっぽすぎるかなーと思ったんですが、だんだんかわいく思えてきちゃった!
私はすごいこれお気に入りでした。
でもキャロルの方がもっと好き!
ところで、『白鯨との闘い』が『白鯨のいた海』になってるのはわざとですか?

Posted by: とらねこ | February 22, 2016 03:47 PM

>ゴーダイさん

「移民問題を風刺してる」という評価もよく聞きますね。異文化に慣れるにはそれなりの我慢と時間が必要ですがブラウンさんちを見習って国際交流に励みたいと思います

>あの地理学会のチューブのやつ楽しそう

『脳男』という映画で似たようなのを見たことがあるのですが、施設によっては実用化されてるのかな?

Posted by: SGA屋伍一 | February 23, 2016 10:11 AM

>とらねこどん

最初見かけが微妙だったやつに愛着がわくと、反動ですごくかわいく見えてくることってあるよね。E.T.とかw
『キャロル』も評判いいね~ 自分は最近の一番のお気に入りは『ザ・ウォーク』で、ついで『パディントン』です

>ところで、『白鯨との闘い』が『白鯨のいた海』になってるのはわざとですか?

うっかりです! なおします!(^_^;

Posted by: SGA屋伍一 | February 23, 2016 10:20 AM

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