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January 06, 2016

ロッキー・ザ・ネクスト ライアン・クーグラー 『クリード チャンプを継ぐ男』

51ut9804qnl最初に製作の噂を聞いた時には「いやー、無理だろw」と思いましたが、その後の絶賛の嵐に目を疑った本作品。終わったはずだった『ロッキー』のシリーズを、新星ライアン・クーグラーが巧みな発想でよみがえらせた『クリード チャンプを継ぐ男』、紹介します。

父の顔を知らず、母と死に別れた少年アドニスは、施設にいたところを父の「正妻」であったメアリー・アンという女性に引き取られる。母はボクシングのチャンピオンとして名をはせたアポロ・クリードの愛人だったことをアドニスは知る。メアリー・アンの愛情を受け恵まれた暮らしを送っていたアドニスだったが、成長するにつれ父の影を追うようにボクシングに打ち込むようになる。思うようにコーチを見つけられなかった彼は、父の最大のライバルでやはり伝説のチャンピオンである「ロッキー・バルボア」の元を訪ね、師となってくれるよう頼むが…

そういえば「ロッキー」シリーズについては「ファイナル」公開時こんな文章を書いたことがありました。我ながらよくまとまってる(ような気がする)ので、お暇な方はご覧ください。
近年どん詰まりになって「もういい加減リブートしちゃえば」と誰もが思っていたところを、見事な発想と技巧で盛り返したシリーズがふたつありました。「X-MEN」シリーズと「ワイルド・スピード」シリーズです。どちらもうっかりやってしまったシリーズの黒歴史を、切り捨てることなくきちんと流れにくみこんで、感動するレベルにまでもっていったのには脱帽というほかありません。
この度の『クリード』もその二つに負けていません。シリーズの中でどう考えても浮いている「4」を土台に据え、ロッキーの盟友アポロの息子にスポットを当てる…という着眼点がまず見事。その新主人公の背景や成長をしっかりと描くと同時に、旧作と比べてまったく違和感のないロッキーの姿を見せ、その葛藤も織り込む。本当に丁寧で巧みな造りになっています。また最初は教えられる一方だったアドニスが、いつしか老境のロッキーを励ましひっぱっていくようになります。環境も人種も違うのにだんだんと親子のようになっていく二人のやり取りに、何度となく鼻水をぶしゅっと噴出させられました。

ただシリーズ一作目の『ロッキー』と今回の『クリード』は、方向性は同じですけど質的に違うものも感じられました。若かりしころのロッキーは基本的に自分のために戦っております。一人前の男になるために、一角の人物になるためにダメダメだった自分に別れを告げてリングに向かいます。そんなロッキーの(あるいはスタローンの)「変わりたい」という思いが強く感じられる映画でした。
一方で今回のクリードは「変わりたい」というより「自分が何者なのかたしかめたい」という気持ちでリングにあがっているように感じられました。自分は本当に人々が噂するあの偉大なチャンプの息子なのか。同じ血が流れているのか。父と一度も語ることがなかったアドニスは父と同じ世界に飛び込むことでその答えを得ようとします。その戦いに、やがて「病気のロッキーを励ましたい」という別の動機も加わっていきます。若者特有の激しさや図々しさもあるけれど、このアドニスが本当にいいやつなんですよね…

この映画、現実と3つの点でシンクロしてるように感じられました。ひとつはクーグラー監督がスタローンに企画を持って行った時の経緯。最初スタローンはやんわり断ったそうですが、クーグラー監督が諦めずに熱意を訴えたところ、思い直して俄然協力的になったとか。なんだか劇中のクリードとロッキーの出会いを彷彿とさせるものがありますw
二つ目は主演のマイケル・B・ジョーダン君に関して。彼、有名なバスケ選手のマイケル・ジョーダンと名前がほぼ一緒ですよね。Bが入ってるか入ってないか。きっとこれまで100万回くらい「あの人と名前似てるよね」と言われ続けたと思います。でもこの映画でこれだけの実力を示したからには、もう「ビッグ・ジョーダンと名前がクリソツ」ということで彼を思い出す人はぐっと減ったことでしょう。それくらいマイケル・「B」・ジョーダンの存在感が際立った映画でありました。
三つ目はスタローンの「息子」について。五作目の『ロッキー/最後のドラマ』でロッキーの息子役を演じたこともあるスタローンの長男は、この映画が公開される3年前に不幸な亡くなり方をしました。『クリード』では息子は遠くへ越したということになってましたが、息子に会えなくてさみしそうなロッキーの姿を見ていると、どうしてもその悲劇を思い出してしまうのでした。映画とはいえ、新たな息子を得たことでスタローンの悲しみが少しでも和らいでくれたなら嬉しいです。

Item_0000000536_05で、今回の1作目以来の大評判に気をよくしたロッキー、じゃなくてスタローンは,早くも続編を企画中…なんて情報が今日入ってきました(^_^; いや、クリードの物語はここで終わった方が美しいのでは…とも思いましたが、スタローンが元気になってくれならそれもいいかな、と。だからどうか続編でロッキーが死にませんように。
『クリード チャンプを継ぐ男』はその評判とは裏腹に、日本では興行に苦戦してる模様。映画の様に最後まであきらめず着実にポイントをもぎ取って行ってほしいものです…


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Comments

伍一くん☆
あら、私ったらスタローンの息子さんが亡くなっていたなんて、存じませんでしたわ。
5作目ロッキーも実は観て無くて・・・
そうなると益々ぐっと胸に響きますね。
最後涙ボロボロでした~

Posted by: ノルウェーまだ~む | January 13, 2016 at 12:20 AM

>ノルウェーまだ~むさん

6作目にもロッキーの息子が登場するんですけど、こちらはスタローンの実子じゃないんですよね。なんか事情があったのか
こないだGG賞もらったときにきれいな娘さんたちと出ていて、なごみましたね~

Posted by: SGA屋伍一 | January 14, 2016 at 01:21 PM

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これはヤバイ。何の捻りもないのにここまで魅せるなんて。全て大体の予想はつくのに。それもあっさりと、と言ってもいいほどに。サクサクとした物語の進行具合。だがお約束の12ラウンドの死闘に至るまでの静かなる、ある種大人な盛り上げ方…!「どこで出るのか?もしかしたら出ないのか?」と思わせた「ロッキーのテーマ」の曲の使い方。ちょっと尋常ではないよ。こうなるって…リングのシーンが凄いことになるとは判ってても、やはり燃えちゃうし、泣いちゃう。かつてロッキー・バルボア(シルベスター・スタローン)とリングで死闘を繰り... [Read More]

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