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January 19, 2016

行こう行こう血の山へ ギレルモ・デル・トロ 『クリムゾン・ピーク』

Kotaku_201303_pacific_rim_crimson_tあの怪獣バトル映画『パシフィック・リム』からだいたい一年半。ギレルモ・デル・トロ氏の新作は久々の「屋敷になんかいる!」系のゴシックホラーとなりました。『クリムゾン・ピーク』、ご紹介いたします。

20世紀初めの米国。作家を志す娘イーディスは、彼女の父に出資を求めてやってきた英国の貴公子トーマス・シャープと出会い、次第にひかれるようになっていく。いろいろあって彼の故郷へ嫁ぐことになったイーディスは、ぎこちないながらもトーマスの姉と三人で新しい生活を始める。しかし彼女は次第に屋敷のなかに得体のしれない怪物が徘徊してることに気付き始める。そしてイーディスは思い出すのだった。むかし母とおぼしき亡霊が発した「クリムゾン・ピークに行くときは気をつけなさい」という警告を…

…というわけで今回もデルトロ氏ならではの「お屋敷愛」が炸裂した映画。画面の隅々をおどろおどろしい装飾や小道具が彩っております。古めかしいピアノ。壊れかけたエレベーター。家の外には独特の粘土層が滲み出す赤色の土地がひろがっています。しかしなんといってもシャープ邸の際立った特色は屋根の中央部にでかい穴が開いていること。だから屋敷の中にも雪が降ります。いわばアナと雪の情景とでも言うか(すいません)。いくら愛があったとしてもこんな新居では花嫁もドンびきすると思うのですが、イーディスちゃんは心優しいお嬢さんなので寒さにも笑顔で耐えます。けれどお家の中をうろつく幽霊にはさすがに我慢できず、だんだん神経がまいっていってしまいます(だよね)。
ただデル・トロさん描くところの幽霊というのは物陰から突然ぐわっと登場するのではなく、「そろそろ登場するな…」という前奏曲のあとに出てくるのでそんなに怖くありません。ゆえにチキンのわたしでも安心して鑑賞することができました。きつかったのはむしろびっくり描写より、じくじくと痛みが伝わってくるような流血描写の方でした。

あと『パンズ・ラビリンス』でもそうでしたが、怖いのはお化けよりも人間の心理であることがテーマのひとつとなっています。おそらくデル・トロ氏が念頭に置いていたのは怪談童話の「青髭」でしょう。このデルトロ流青髭を『アベンジャーズ』のロキ、ことトム・ヒドルストンが演じているのが『クリムゾン・ピーク』の大事なところです。こう言ってはなんですが、明らかになんか謀略を企んでいる顔つき。その一方で「ワルで面倒くさいやつだけど、きっと根は悪くない子なんだろうな」という先入観もぬぐえません。ロキなんで。果たしてその先入観はあっていたか? 答えはご自分で確認してみてください。

そんな育ちのよさそうなヒドルストンに比べて、明らかにもっとおっかなかったのが彼の姉を演じるジェシカ・チャスティン。これまではよよと泣き崩れたり、ストレスに悩まされたりするような役が多かったですが、今回はサディズム全開で大活躍します。個人的にはこれまでのチャスティンさんのベスト・アクトだと思いました。このチャスティンさんのサド魂を見抜いてキャスティングした人に心からの拍手を送ります。

これまでのデルトロ作品とちょっと違うな、と思ったのは真正面からラブシーンやドロドロの愛欲を描いていたところ。デルトロ作品の恋愛描写というと「ない」か小中学生レベルのものばかりだったので。デルトロさんも大人になっちゃったんですかね~ そう思うとすこしさびしかったり、「無理すんなよ!」と思ったりするわたしでした。

Photo『クリムゾン・ピーク』は現在日本各地の映画館で細々と公開中。『ヘルボーイ』や『パシフィック・リム』にくらべるとずいぶん少ないな…と思いましたが、もともと彼のお屋敷系の映画はこんなもんだったような気もします。
デル・トロさんの次回作は一応名作SF『ミクロの決死圏』だそうですが、彼の親会社みたいなレジェンダリー・ピクチャーズが中国に買収されたことで、かの国で大ヒットした『パシフィック・リム』の続編企画がだいぶ前進したのでは…という声も聞こえてきました。あと彼が原作・製作を務めたTVドラマ『ストレイン 沈黙のエクリプス』が絶賛レンタル中。精力的で微笑ましい限りです。


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Comments

> ロキなんで。

(笑)
トムヒの佐藤隆太感爆発!

Posted by: ふじき78 | February 15, 2016 at 02:06 AM

>ふじき78さん

最近佐藤君がなにやってるのかよく知らんのですが… 木更津キャッツアイとか好きでしたー

Posted by: SGA屋伍一 | February 16, 2016 at 09:02 PM

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