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January 27, 2016

与太郎+熊八= マイケル・ボンド ポール・キング 『パディントン』

Pdt1昨年夏から秋にかけてクマの映画が4本公開されましたが、それから少し遅れておおトリの登場です。世界的に有名な名作童話を最新CG技術で新生させた『パディントン』、ご紹介します。

南米はペルーで暮らしていた子熊のパディントンはある日地震で家を失い、宿無しになってしまう。「ロンドンに行けば親切な人が家を与えてくれるはず」 そう言う叔母の言葉を信じて、パディントンは貨物船に乗り込み遠いイギリスの地までやってきた。だが方々を歩いてみても、家をくれる人は見つからない(そりゃそうだ)。途方にくれて駅のベンチに座り込むパディントン。そんな時たまたまそばを通りがかったブラウン夫人は、彼を哀れに思い「よかったら我が家に来ない?」と声をかける。

「パディントン」の誕生は1958年。その年に童話『くまのパディントン』(マイケル・ボンド著)が出版され、以後多くの続編が作られたとのことです。三度にわたってテレビアニメ化もされました。わたしが見たことがあるのはたぶん最初のバージョン(こちらで見られます)。背景やキャラはほとんど絵なのに、パディントンのみが立体という形式が面白いですね。たしか主人公のくまが悪気はないんだけど、おうちの中でいろんなものをぶちまけたりぶちこわしたりして騒動を巻き起こす、そんな話だったかと記憶してます。石ノ森章太郎先生の漫画の…というかひどい方の『ロボコン』を彷彿とさせます。

で、今回もCGアニメとして作るという手もあったかと思いますが、あえての「実写映画化」となっております(もちろんパディントンはCGですが)。そのためブラウンさんち一家や、周りのおじいさんおばあさんらがすごく存在感があるというか、ご近所さんみたいに感じられるのですね。そりゃむこうさんはアングおロサクソン系ですけど、わたしたちの町内にも普通にいそうな人たちばかりです。ニコール・キッドマン以外は。
あと特に「最近のCGってすごいな」と感じたのはパディントンの目だけですごく表情を豊かに表わしているところ。彼の表情を追っているうちに、最初は「微妙…というか野獣」と思えたパディントンの造形にもだんだんと愛着がわいてきます。
そのパディントンの声を演じているのはオリジナル版ではベン・ウィショー、日本語版では松坂桃李君(わたしは松坂版で観ました)。パディントンは実際には小中学生くらいの年だと思うのですが、もうちょっと上の年齢というか青年の声でしゃべっています。ただこの狙ったかわいさのない純朴な声のせいか、パデんィントンが本当に誠実で汚れなき存在なんだな…ということがよく伝わってきます。たとえ家のものを次から次へと破壊してもです。まあこれだけモフモフのかわいいやつが家にいたら、「形あるものはいつか壊れるのだから」とあきらめるほかないでしょう。

クマ以外にも数名はじけたキャラが登場します。一人はニコール・キッドマン演じる剥製フェチの人。ニコールさんがここまでコテコテのお笑いをやるのはかなり珍しいと思うんですが、これが実にはまるはまる。この映画で唯一の悪人といっていいキャラですが「面白いから許す」といわざるを得ません。大女優がさらに新たな輝きを増した感がありました。
ブラウン家の主であるおとうさんもなかなかに濃いキャラでした。冒頭こそパディントンを胡散臭がっていてすごく感じ悪いのですが、回想シーンで「ボーン・トゥ・ビー・ワイルド」と共に現れるくだりからぐんぐんと好感度が上がっていきます。無理な女装や無茶なアクションでさんざん笑わせてくれた後に、最後はホロリと泣かせてくれる実に愛すべきおじさんです。

他にも背景や小道具がいちいち凝っていたり、面白い映像の演出があったり、小ネタやパロディが満載だったり…と実に魅力がパンパンにつまった映画でした。

Pdt2b『パディントン』は現在全国の映画館で上映中。日本では決してメジャーなキャラではないので苦戦するのでは…と思いましたが、最初の週はスターウォーズ、妖怪ウォッチの次につけてなかなか健闘しております。やはり日本人はゆるキャラに弱いようで。
世界的にはもちろん大ヒットして制作費の五倍近い収益を記録しております。この成績を受けて当然のように続編製作も決定したとのこと。また何年後かにはパディントンに再会できることでしょう。


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January 25, 2016

ホエールが吠える ロン・ハワード 『白鯨との闘い』

4c4482638101e0fe872d038ab4a92472一週間寝ずに考えてこんな記事タイトルしか思い浮かびませんでした…(うそ)。昨年は『バケモノの子』で主人公が愛読してたり、『ウォーリアー』でお父さんが朗読を聞いてたりと『白鯨』がちょくちょく小道具で使われてる映画が目立ちましたが、今度はその元となった実話の映像化が実現。名匠ロン・ハワードの『白鯨との闘い』、ご紹介します。

19世紀なかばの英国。金持ちになろうと捕鯨に精を出す一等航海士のチェイスは、新米の船長ポラードのお守として新たな航海に出る。最初こそ順調に鯨が取れたものの、そのあとは長い不漁が続き、チェイスたちは心身ともに追いつめられていく。そんな折立ち寄った島で一行は、ある海域に鯨の群れがいると聞いて藁をもすがる思いでそこへ向かう。だがそこには彼らの想像を超える怪物が潜んでいた。

『アポロ13』『シンデレラマン』『ビューティフル・マインド』『フロスト×ニクソン』『ラッシュ』…と、「実話に基づく物語」をよく手掛けるロン監督。ただどれもが第一次大戦より後の話なのに対し、今回は石油が流通する以前のもっと古い時代を扱っております。
タイトルやポスターなどから怪獣めいた鯨との一大バトル・パニックを想像される方もおられるかと思います。たしかにそういう要素もありますが、モンスター部分は全体からすると2割くらいでしょうか。その他の部分では当時の航海・捕鯨・漂流はどんな風だったのか、ということが描写されます(漂流は現代でもあまり変わらないかも…)。航海ものも好きなわたしとしてはその辺もけっこう楽しんで観てました。特に鯨漁のくだりなんかはこれまで映像で観たことなかったので勉強になりました。いまでこそ鯨を獲ると轟々と避難する欧米ですが、昔は彼らも貪欲に捕鯨を行ってきたわけですよね。しかも食べるためではなく、油(燃料)を取るためだけに。
この辺に『白鯨といた海』のテーマが見え隠れしてる気がします。以下だんだんネタバレしていくのでご了承ください。

この映画の原題は『In the Heart of the Sea』。『闇の奥(Heart Of Darkness)』を思い出させるタイトルです。さしずめ「その海の深奥で」みたいな意味でしょうか。映画では海の奥だけではなく人間の心の暗闇も語られます。

お話の途中ポラード船長は「人間は万物の霊長で神に似せてられたんだから、動物をいくら好き勝手に扱ってもかまわない」みたいなことを言います。それに対し「傲慢では…」と異を唱えるチェイス(ちなみに聖書には「家畜を優しく扱いなさい」という一文もあります)。人間、生きるためにはやっぱり何かを殺して食べることもあります。だから自分のために死んだ命に敬意を払い、感謝を抱くことが大事なんでは。わたしには大鯨や漂流といった災厄は、金儲けのために残酷に鯨を殺し続けるチェイスたちにくだされた神罰のように見えました。そのことに反省し、モリを持つ手を止めたとき、彼らは許され命を永らえます。たとえ食べたものが○○であったとしてもです。

ちなみに実際はどうだったのかというと、「エセックス号」で検索するといろいろ資料が出てきます。この記事とか。わたし鯨の逆襲で船が沈没したというのは映画を盛り上げるためのフィクションだと思ってましたが、これ本当だったみたいです。おだやかなイメージのある鯨も、怒らせると怖いんですね… わたしも気を損ねないようくれぐれも気をつけたいです。スキューバとか全然興味ないんで、たぶん一生接触することはないと思いますが。

A0089661_158124『白鯨との闘い』は現在全国の映画館で上映中。『白鯨』言うたら熟年世代のハートをジャストミートするのでは、と予想してましたが、二週目にして10位以内から陥落とかなりの苦戦を強いられているようです。鯨や漂流が好きな人でまだ観そびれている人はお早めに!


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January 19, 2016

行こう行こう血の山へ ギレルモ・デル・トロ 『クリムゾン・ピーク』

Kotaku_201303_pacific_rim_crimson_tあの怪獣バトル映画『パシフィック・リム』からだいたい一年半。ギレルモ・デル・トロ氏の新作は久々の「屋敷になんかいる!」系のゴシックホラーとなりました。『クリムゾン・ピーク』、ご紹介いたします。

20世紀初めの米国。作家を志す娘イーディスは、彼女の父に出資を求めてやってきた英国の貴公子トーマス・シャープと出会い、次第にひかれるようになっていく。いろいろあって彼の故郷へ嫁ぐことになったイーディスは、ぎこちないながらもトーマスの姉と三人で新しい生活を始める。しかし彼女は次第に屋敷のなかに得体のしれない怪物が徘徊してることに気付き始める。そしてイーディスは思い出すのだった。むかし母とおぼしき亡霊が発した「クリムゾン・ピークに行くときは気をつけなさい」という警告を…

…というわけで今回もデルトロ氏ならではの「お屋敷愛」が炸裂した映画。画面の隅々をおどろおどろしい装飾や小道具が彩っております。古めかしいピアノ。壊れかけたエレベーター。家の外には独特の粘土層が滲み出す赤色の土地がひろがっています。しかしなんといってもシャープ邸の際立った特色は屋根の中央部にでかい穴が開いていること。だから屋敷の中にも雪が降ります。いわばアナと雪の情景とでも言うか(すいません)。いくら愛があったとしてもこんな新居では花嫁もドンびきすると思うのですが、イーディスちゃんは心優しいお嬢さんなので寒さにも笑顔で耐えます。けれどお家の中をうろつく幽霊にはさすがに我慢できず、だんだん神経がまいっていってしまいます(だよね)。
ただデル・トロさん描くところの幽霊というのは物陰から突然ぐわっと登場するのではなく、「そろそろ登場するな…」という前奏曲のあとに出てくるのでそんなに怖くありません。ゆえにチキンのわたしでも安心して鑑賞することができました。きつかったのはむしろびっくり描写より、じくじくと痛みが伝わってくるような流血描写の方でした。

あと『パンズ・ラビリンス』でもそうでしたが、怖いのはお化けよりも人間の心理であることがテーマのひとつとなっています。おそらくデル・トロ氏が念頭に置いていたのは怪談童話の「青髭」でしょう。このデルトロ流青髭を『アベンジャーズ』のロキ、ことトム・ヒドルストンが演じているのが『クリムゾン・ピーク』の大事なところです。こう言ってはなんですが、明らかになんか謀略を企んでいる顔つき。その一方で「ワルで面倒くさいやつだけど、きっと根は悪くない子なんだろうな」という先入観もぬぐえません。ロキなんで。果たしてその先入観はあっていたか? 答えはご自分で確認してみてください。

そんな育ちのよさそうなヒドルストンに比べて、明らかにもっとおっかなかったのが彼の姉を演じるジェシカ・チャスティン。これまではよよと泣き崩れたり、ストレスに悩まされたりするような役が多かったですが、今回はサディズム全開で大活躍します。個人的にはこれまでのチャスティンさんのベスト・アクトだと思いました。このチャスティンさんのサド魂を見抜いてキャスティングした人に心からの拍手を送ります。

これまでのデルトロ作品とちょっと違うな、と思ったのは真正面からラブシーンやドロドロの愛欲を描いていたところ。デルトロ作品の恋愛描写というと「ない」か小中学生レベルのものばかりだったので。デルトロさんも大人になっちゃったんですかね~ そう思うとすこしさびしかったり、「無理すんなよ!」と思ったりするわたしでした。

Photo『クリムゾン・ピーク』は現在日本各地の映画館で細々と公開中。『ヘルボーイ』や『パシフィック・リム』にくらべるとずいぶん少ないな…と思いましたが、もともと彼のお屋敷系の映画はこんなもんだったような気もします。
デル・トロさんの次回作は一応名作SF『ミクロの決死圏』だそうですが、彼の親会社みたいなレジェンダリー・ピクチャーズが中国に買収されたことで、かの国で大ヒットした『パシフィック・リム』の続編企画がだいぶ前進したのでは…という声も聞こえてきました。あと彼が原作・製作を務めたTVドラマ『ストレイン 沈黙のエクリプス』が絶賛レンタル中。精力的で微笑ましい限りです。


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January 14, 2016

この壁、越えるべからず スティーブン・スピルバーグ 『ブリッジ・オブ・スパイ』

Geteiltd一年経つのははやいもので、もうぼちぼちアカデミー賞のノミネートが発表される時期であります。本日はその有力候補にして名匠S・スピルバーグの最新作『ブリッジ・オブ・スパイ』をご紹介します。

冷戦が激しくなってきた1957年。主に保険の業務を担当していた弁護士のジェームズ・B・ドノバンは、上司の推薦を受け逮捕されたソ連のスパイ・ルドルフ・アベルの弁護を行うことになる。「死刑にせよ」という世論に反してアベルの命を救おうとするその弁護は、多くの敵意を身に招くことになった。それでもなんとか裁判を終えたドノバンだったが、彼の仕事はまだ終わらなかった…

前作に続き知られざる(米国では有名なのかな?)歴史秘話を扱った作品。昨年は派手なアクションで彩られたスパイ映画が目立ちましたが、諜報活動というのは実際にはかなりひっそり、地味に地味に行われてることがこの映画を観るとよくわかります。

脚本は『ノー・カントリー』『ファーゴ』などで知られるコーエン兄弟。近年のスピルバーグはしみじみ感動を呼ぶような作風のものが多いですが、コーエン兄弟はどちらかというと皮肉っぽい冷笑的な作品が目立ちます。果たしてそのふたつがうまく溶け合うのかな… と思いましたが、観てみたらそれなりにうまくいってましたね。大衆や国家の思惑を描くところは皮肉っぽく、でも個人=ドノバンの葛藤や戦いに関しては素直に賞賛できるような演出になっていました。で、ここぞという場面で大げさな音楽がかかったり、役者が絶叫するわけでもなく、あくまで静々とお話は進行していきます。でも観終わって一日経って思い返すと、目に涙をいっぱいたたえたドノバンの表情や、淡々と語るアベルさんのセリフがおごそかに胸にひびいてくるのです。そんな京料理のように、いつまでもさわやかな風味が残っていく映画でありました。

前に作家の大沢在昌先生が「ハードボイルドというのはスタイルとかキザなセリフではなく、全く接点のなかった二人が出会い、わずかな間ふれあい、そして別れていく話」というようなことをおっしゃってましたが、そういう意味で言うなら『ブリッジ・オブ・スパイ』はまさに直球のハードボイルドでございました。

難点をひとつあげるなら、ソ連とアメリカ、そして東ドイツをめぐる謀略の行き違いが画面だけだとちょっとわかりづらいことですね。中学生のころまだ冷戦が続いていたわたしはなんとかついていけましたが、いまの若い人にはどうだろうなあ… というわけで、なじみのない世代はその辺をさらっと予習してから臨んだ方がいいかもしれません。

あとこの手の「真実に基づく物語」って、すごく重要なことを最後の字幕でさくっと済ませたりしますが、この映画もやっぱりそうでした。そっちの話もぜひ映画化していただきたいものです。

Photo『ブリッジ・オブ・スパイ』はまだ公開1週目なのでもう2,3週はつづくものと思われます。果たしてアカデミー賞にどこまで食い込めますか。まあスピルバーグはもう2回もらってるからいいんじゃね?という気もしますが(笑)


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January 12, 2016

笑う犬との生活 チャールズ・M・シュルツ スティーブ・マーティノ 『I LOVE スヌーピー THE PEANUTS MOVIE』

Snoop1世界中で有名な子供たちと犬の漫画を、『アイス・エイジ』『ブルー』などで知られるブルースカイスタジオが映画化。『I LOVE スヌーピー THE PEANUTS MOVIE』ご紹介します。

チャーリー・ブラウンは何をやらせてもダメな男の子。特に凧揚げに関しては何百回と挑戦してるのに一度も成功したことがない。そんなチャーリーだが不思議と友達は多い。なかでも一番の親友は飼い犬のスヌーピーだ。
ある時、チャーリーのクラスに赤毛のとびっきりかわいい女の子が転校してくる。チャーリーはその子にいいところを見せようと、ダンスにかくし芸大会に果敢にエントリーするが…

「時間が空いたら観ようかなー」と思っていこの作品(^_^;  そんなすごく消極的な鑑賞動機だったのですが、観ているうちにだんだんと思い出してきました。わたし子供のころ教育テレビかどこかでやっていたスヌーピーのアニメが、けっこう好きだったことを。忘れかけていた昔馴染みにひょっこり出会った時のように、芋づる式によみがえる記憶。意地悪なルーシー、毛布が手放せないライナス、ピアノに打ち込んでいるシュローダー、姉御肌のペパーミント・パティ、その舎弟のマーシー、いつも埃っぽいビッグ・ベンなどなど… そしてなぜか大人は登場せず。壊れた管楽器のようなサウンドでフガフガとしゃべるんですよね。

意外だったのは邦題になってるスヌーピーがまったく物語のメインではないこと(笑)。チャーリー・ブラウンがいろんなことにがんばってる横で、おちょくってるか足をひっぱってるか。あるいはまったく関係ないところで空想にふけってるか。言ってみればこいつがいなくてもストーリーには全く支障がありません。でもそんな意味なさそうなやつがでかい顔してスクリーンの中を駆け回ってるところが、この映画の面白さというか特色のような気もします。

そんなわけで『ドラえもん』ののび太とは違い、全く動物の助けをあてにできないチャーリー・ブラウン君。何度も何度も何度も何度も何度も失敗しても、努力を重ねるその姿には感嘆せざるをえません。たとえそれがどんなに無駄な努力であったとしてもです。
チャーリーのほかにいいなあ~と思ったキャラは、ペパーミント・パティとライナス。パティさんはおそらく小学生でありながら戦国大名にでもなりそうな豪快さと運動神経を持ち合わせています。そんな中ちらっとみせる女の子っぽさが強烈に萌えます。
ライナス君は付属の毛布ゆえに「自立してない」というイメージが強いですが、周りのチャーリーを見る目がどんなに変わろうと、彼はいつも親友の本質や美点を見極め、的確なアドバイスをくれます。こんなに出来た友達というのはそうそう得られるものではありません。あんな問題児の姉がいるのにどうしてこんな出来た子に育ったのか謎です。

あと連載開始からどれだけ年月が経ってるのかわかりませんが、2016年の今観てもほとんど古さを感じさせないのが『スヌーピー』あるいは『ピーナッツ』のすごいところだと思いました。チャーリーの悩みはいまのおっさんにも十分わかるものだし、いまもこんな子供たちが世界中にきっといることでしょう。

Snoop2と、いろいろほめちぎりましたが『I LOVE スヌーピー THE PEANUTS MOVIE』、わたしのなじみの映画館では5館中4館で終了してました(^_^; やはり『妖怪ウォッチ』とぶつかったのがまずかったか… これにめげずブルースカイスタジオがまたよいアニメを作ってくれることを祈ります!

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January 06, 2016

ロッキー・ザ・ネクスト ライアン・クーグラー 『クリード チャンプを継ぐ男』

51ut9804qnl最初に製作の噂を聞いた時には「いやー、無理だろw」と思いましたが、その後の絶賛の嵐に目を疑った本作品。終わったはずだった『ロッキー』のシリーズを、新星ライアン・クーグラーが巧みな発想でよみがえらせた『クリード チャンプを継ぐ男』、紹介します。

父の顔を知らず、母と死に別れた少年アドニスは、施設にいたところを父の「正妻」であったメアリー・アンという女性に引き取られる。母はボクシングのチャンピオンとして名をはせたアポロ・クリードの愛人だったことをアドニスは知る。メアリー・アンの愛情を受け恵まれた暮らしを送っていたアドニスだったが、成長するにつれ父の影を追うようにボクシングに打ち込むようになる。思うようにコーチを見つけられなかった彼は、父の最大のライバルでやはり伝説のチャンピオンである「ロッキー・バルボア」の元を訪ね、師となってくれるよう頼むが…

そういえば「ロッキー」シリーズについては「ファイナル」公開時こんな文章を書いたことがありました。我ながらよくまとまってる(ような気がする)ので、お暇な方はご覧ください。
近年どん詰まりになって「もういい加減リブートしちゃえば」と誰もが思っていたところを、見事な発想と技巧で盛り返したシリーズがふたつありました。「X-MEN」シリーズと「ワイルド・スピード」シリーズです。どちらもうっかりやってしまったシリーズの黒歴史を、切り捨てることなくきちんと流れにくみこんで、感動するレベルにまでもっていったのには脱帽というほかありません。
この度の『クリード』もその二つに負けていません。シリーズの中でどう考えても浮いている「4」を土台に据え、ロッキーの盟友アポロの息子にスポットを当てる…という着眼点がまず見事。その新主人公の背景や成長をしっかりと描くと同時に、旧作と比べてまったく違和感のないロッキーの姿を見せ、その葛藤も織り込む。本当に丁寧で巧みな造りになっています。また最初は教えられる一方だったアドニスが、いつしか老境のロッキーを励ましひっぱっていくようになります。環境も人種も違うのにだんだんと親子のようになっていく二人のやり取りに、何度となく鼻水をぶしゅっと噴出させられました。

ただシリーズ一作目の『ロッキー』と今回の『クリード』は、方向性は同じですけど質的に違うものも感じられました。若かりしころのロッキーは基本的に自分のために戦っております。一人前の男になるために、一角の人物になるためにダメダメだった自分に別れを告げてリングに向かいます。そんなロッキーの(あるいはスタローンの)「変わりたい」という思いが強く感じられる映画でした。
一方で今回のクリードは「変わりたい」というより「自分が何者なのかたしかめたい」という気持ちでリングにあがっているように感じられました。自分は本当に人々が噂するあの偉大なチャンプの息子なのか。同じ血が流れているのか。父と一度も語ることがなかったアドニスは父と同じ世界に飛び込むことでその答えを得ようとします。その戦いに、やがて「病気のロッキーを励ましたい」という別の動機も加わっていきます。若者特有の激しさや図々しさもあるけれど、このアドニスが本当にいいやつなんですよね…

この映画、現実と3つの点でシンクロしてるように感じられました。ひとつはクーグラー監督がスタローンに企画を持って行った時の経緯。最初スタローンはやんわり断ったそうですが、クーグラー監督が諦めずに熱意を訴えたところ、思い直して俄然協力的になったとか。なんだか劇中のクリードとロッキーの出会いを彷彿とさせるものがありますw
二つ目は主演のマイケル・B・ジョーダン君に関して。彼、有名なバスケ選手のマイケル・ジョーダンと名前がほぼ一緒ですよね。Bが入ってるか入ってないか。きっとこれまで100万回くらい「あの人と名前似てるよね」と言われ続けたと思います。でもこの映画でこれだけの実力を示したからには、もう「ビッグ・ジョーダンと名前がクリソツ」ということで彼を思い出す人はぐっと減ったことでしょう。それくらいマイケル・「B」・ジョーダンの存在感が際立った映画でありました。
三つ目はスタローンの「息子」について。五作目の『ロッキー/最後のドラマ』でロッキーの息子役を演じたこともあるスタローンの長男は、この映画が公開される3年前に不幸な亡くなり方をしました。『クリード』では息子は遠くへ越したということになってましたが、息子に会えなくてさみしそうなロッキーの姿を見ていると、どうしてもその悲劇を思い出してしまうのでした。映画とはいえ、新たな息子を得たことでスタローンの悲しみが少しでも和らいでくれたなら嬉しいです。

Item_0000000536_05で、今回の1作目以来の大評判に気をよくしたロッキー、じゃなくてスタローンは,早くも続編を企画中…なんて情報が今日入ってきました(^_^; いや、クリードの物語はここで終わった方が美しいのでは…とも思いましたが、スタローンが元気になってくれならそれもいいかな、と。だからどうか続編でロッキーが死にませんように。
『クリード チャンプを継ぐ男』はその評判とは裏腹に、日本では興行に苦戦してる模様。映画の様に最後まであきらめず着実にポイントをもぎ取って行ってほしいものです…


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January 05, 2016

黒人青年の主張 F・ゲイリー・グレイ 『ストレイト・アウタ・コンプトン』

Img_01俺はコンプトン生まれヒップホップ育ち 悪そなやつは大体友達… 2016年最初に取り上げる作品は、伝説のヒップホップグループN.W.Aの伝記映画。『ストレイト・アウタ・コンプトン』ご紹介します。

1986年、LAでも特に治安の悪いコンプトンに育ったイージー、ドレー、アイス・キューブたちは、どん詰まりの状況から抜け出そうとヒップホップグループ「N.W.A」を結成する。彼らのレコードは業界のベテラン、ジェリー・ヘラーの目に止まり、そのマネジメントで急速に全米No.1のグループへと成長する。しかしN.W.Aの過激な歌詞と契約の際の不公平は彼らに波乱をもたらしていく。

恥ずかしながらN.W.Aについてはほとんど知りませんでした。メンバーの一人アイス・キューブを『トリプルX ネクストレベル』『21ジャンプストリート』といったB級映画で見知っていた程度。それらの出演からは想像もつきませんでしたが、いやあ、アイス・キューブってすごい人だったんですねえ… なんつったって「世界を変えた」んですからねえ… ちなみにこの映画におけるキューブさんは、キューブさんのご子息が演じておられます。
観ていてすぐに思い出したのは一昨年のイーストウッド御大の作品『ジャージーボーイズ』。どの辺が似ていたかというと
・メンバーの育った町の治安が悪く、彼ら自身も犯罪に関わりがあった
・瞬く間に全米のスターへと駆け上がり、ホテルで乱交パーティーにふける
・でもそれだけサクセスしてるのに常に金の問題がつきまとってる
・そして金の問題で結局メンバーは分裂してしまう
いわゆる「大人気グループにありがちな展開」というものなのかもしれません。

一方『ジャージー・ボーイズ』と違うのは言うまでもありませんけど、その音楽ジャンル。フォーシーズンズが「ベイビー出ておいでよー」なんて甘ったるい曲を歌ってたのに対し、N.W.Aは「ファッキンポリス! 警官ブっころせ!」ですから(^_^; ラップもいろいろあるんでしょうけど、日本で一時流れていた「だよねー」とか「両親に感謝」なんてのと比べるとあまりの違いに茫然とします。ただそんな過激の歌詞の中に「ここにこのE様が主張する」なんて文句があるとプッと吹き出しちゃったりもして。

あともう一点異なっていたのは、『ジャージー~』では若者たちを見守る頼もしい大人がいたのに対し、こちらの大人は若者たちを金の成る木とみなして食い物にしようとすること。ジェリーなどはポール・ジアマッティが演じてるせいもあって最初は普通にいい人にしか見えなかったのですが… ただ彼もそんなに羽振りのいい暮らしをしてるようではなかったので、あるいは資金配分がまずかっただけなのかも。

映画はN.W.Aの軌跡を追うとともに、80~90年代の差別問題もさりげなく映し出します。そういえばこのころロス暴動なんてのもありましたよね… リンカーンやキング牧師の映画を観ると「これで黒人は平等になった!」というムードで終わりますが、現代にいたっても根本的には解決できてないわけで… あ、正月早々暗い気分になってしまった… まあ決して明るい映画ではありませんが、イージーたちの破天荒なエネルギーに元気をもらえることも確かです。

12027772_917243525022361_8260935230『ストレイト・アウタ・コンプトン』は全米ではヒットをかっとばしましたが、日本ではなじみのない題材ゆえか小規模で細々と公開中(^_^; ラップに興味あるなしにかかわらず、活気ある青春ドラマが好きな人にお勧めです。

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