ゴリラの恋 河原和音・アルコ・河合勇人 『俺物語!!』(映画版)
ヒロイン失格、レインツリーの国、オレンジ… 途切れることなく作られ続けるコテコテの恋愛映画。普段はまず観に行きませんが、この映画は予告からあふれんばかりの男汁を感じて鑑賞してまいりました。人気漫画の実写映画化作品、『俺物語!!』ご紹介します。
男が惚れる男の中の男、剛田猛男18歳。彼はそのたくましい肉体と海のような懐の広さで男子から絶大な人望を得ていたが、ゴリラのようなルックスが災いして女子からはいつも敬遠されるのだった。一方皮肉なことに無二の親友の砂川誠は、ずば抜けたイケメンぶりで学校中の女子の視線を独占していた。
ある日猛男と砂川は下校途中ちゃらい男にからまれている他校の女子生徒を目撃する。男気から彼女を助けてやった猛男は、その子…大和凜子のあまりの可憐さに思わずときめいてしまう。だが彼女は砂川のことを好きだと思い込んだ猛男は、自分の気持ちを押し隠して二人の仲を取り持とうとする…
泣けますね… 少女漫画の主人公がゴリ面の男の子というのは相当無茶だと思うのですが、猛男の純な気持ちが読者の心に伝わったのか、原作は今年もっとも注目を浴びた漫画の一つとなりました。無類の武勇をほこりながらも性的魅力にまったく自信のもてない猛男くんは、まさしく現代のシラノ・ド・ベルジュラックといえましょう。名前がジャイアンこと剛田猛のもじりなのは「マジメにやれ」と思いましたが(同様に砂川誠は骨川スネ夫からきているのでしょう)。
ちょうど昨日脚本の手法に関して面白い一文を読みました。恋愛もの、バディものの常道というのは、主人公は最初お互いのことを最低だと思っているが、ともにいくつかの困難をのりこえていくうちに、最後にはかけがえのないパートナーだと思うようになる…というもの。
しかしこの『俺物語!!』は最初から猛男も凜子もお互いのことを最高だと思っています。あれ… じゃあ話すぐ終わっちゃうじゃん…となるところですが、となりにたまたま紛らわしく砂川のアホが突っ立っていたため(そしてあまりにもこれまでモテなかったため)、猛男はえんえんと誤解を引っ張り続けることになります。
砂川はいちはやく両者の気持ちを察しているのだからさっさと伝えてやればいいのに…と思いますが、「こういうのは自分で気づくのが大切」というポリシーでもあるのか、はたまた映画を二時間もたせるためか、あえてそのことを口にしません。まあよく「しゃべらせすぎ」と批判される邦画において、こういう「大事なことをなかなか言わない」というキャラはちょっと粋な気もしますけれども。
一応自分はこの映画は笑いが目的で観に来たのですが、その期待は裏切られなかったものの笑いのテンションは冒頭のシーンがMAXだったりして(^_^; ただお笑い抜きにしても十分気持ちよくさせてもらえる映画でした。正直いまどきのおっさんとしてはいまどきの若者とか、もうセンスとか考えてることとか全然違うんだろうな…という思いがあったのですが、フィクションではあるものの猛男たちの切ない気持ちや思いやりは非常によくわかるもので、なんだか安心したのでした。そして夕焼けや星空の下で思い悩む猛男=鈴木亮平氏の背中がまことに絵になるのですね。ゴリ面なのに。やはり男は顔じゃない、男気だと強く実感しました。自分、男気もあんまりないですけれども。
そんなブサメンをもあたたかい気持ちにさせてくれる『俺物語!!』はまだ二三週は全国の映画館でやっているかと思われます。かっこいいとはこういうことか!!
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