オバケのタコ八郎 サム・メンデス 『007/スペクター』
はやいものでダニエル・クレイグの007ももう4作目。最初の『カジノ・ロワイヤル』が2006年の暮れだったから、彼が就任してからもう9年も経つんですねえ。時の経つのははやいものだなあ… …
はっ 数秒物思いにふけってしまいましたが、そんなわけで007最新作『スペクター』紹介します。
メキシコシティで「死者の日」が祝われていたその日、MI6の腕利きスパイ007=ジェームズ・ボンドはテロを企む殺し屋を追っていた。テロは未然に防がれたが、亡き上司の前Mからの情報で事件の背後に別の大きな組織が控えていること、さらに今まで自分が倒してきた強大な敵たちがみなその組織とつながっていたことをボンドは知る。折りしもボンドの無茶な行動やイギリス諜報部の再編により、MI6の00セクションには解体の危機が迫っていた。
で、その謎の組織の名前が「スペクター」というのですね。日本語になおすと「オバケ」。「スペクター」の紋章はタコの形をしているのですが、西洋人にとってはイカ・タコは「得体の知れない不気味なもの」というイメージが強いので、そういう関係でシンボルに選ばれたのでしょう。
古い世代の人にはおなじみでしょうけど(^_^;、実は「スペクター」という組織は007の定番の悪役だったりします。イデオロギーに囚われず、単純に自分たちの私利私欲のために悪事を企む秘密結社ということになってます。まるでシ○ッカーじゃん!!と思いますが、おそらくショ○カーの方がこの組織をモデルにしているのでしょう。
007とスペクターのかかわりについてはこちらのサイトで大変丁寧に解説されていて勉強になりました。はあ~そんなややこしい権利問題のいざこざがあったんですね~
ただクレイグ版のボンドにはわざわざ昔の悪役を出してこなくても、いまだ決着のついてない「クァンタム」という組織があったじゃないですか。わたしは前から「ボンドがクァンタムを壊滅に導いてこそ、クレイグ版007はきれいに終われる」と主張してきました。ダニエル・クレイグも年のせいかいい加減やめたがってるみたいだし、その前にきっちりその辺をやっておいてほしいなと前情報を聞いたときは思ったのでした。
ところがどすこい… 以下、どんどんネタバレしていきます。
実は今回「クァンタム」の上部組織が「スペクター」だったということが明らかになり、「スペクター」が崩壊したことで「クァンタム」との決着もあっさりついてしまったのでした。だのに「よかった~ めでたしめでたし」という気持ちにならないのはなぜでしょう(^_^;
ひとつはスペクターというのがあんまりそんなにすごい組織とも思えなかったからです。首領のブロフェルドさんは登場シーンこそなかなかの威厳を漂わせているのですが、後半を過ぎたあたりから段々不手際が目立ってくるのですね。スパイ映画によくある「さっさと殺せばいいのに無意識に主役に反撃の機会をくれている」というアレです。そんな首領に率いられてる組織が前作までの事件の黒幕だったと言われてもいまいちピンと来ません。やはりその配下だった『スカイフォール』のシルヴァさんのほうが怖かったし、やり手だったと思いませんか?
もうひとつのすっきりしない理由は、これまでのクレイグ版007と雰囲気が微妙に違っていたからです。2006年以降のボンド全体的に切なげでほろ苦いムードが漂っているのが特徴であり長所であると思っています。それがダニエル・クレイグの地味でクールな風貌とマッチしていたし、それ以前のボンドとの差別化ともなっていました。しかし今回はもうこれ以上ないくらいのハッピーエンドだったので、「ちょっと! 君にそんな幸せは似合わないよ!」とつっこみたくなったのでした(われながらひどい)。
つっこみたくなるといえばほかにもいろいろ強引なところがありましたねえ。サム・メンデス監督もまた自分にオファーが回ってこないように、「多少の矛盾が出たとしても今回で終わらせてやる!終わらせてやる!終わらせてやる!」という気合を込めて作っていたんだと思います。
けれどこうしたことは観終わって反芻してからむらむらわきあがってきた気持ちであり、観ている間はほとんど気にならず2時間半もあっという間でした。007の特色である息もつかせぬ連続アクションは今回も健在でしたし。あとひとつ感心したのが最後のブロフェルドの処置の仕方ですね。007にしてはぬるい…という方もおられましょうが、常に新しいことに挑戦し続けるクレイグ版ボンドらしいシーンだと感じました。
というわけで見事に最終回みたいだった『007/スペクター』ですが、もちろんシリーズが終わるはずもなく(^_^; ファンの注目しているのはあと一本契約の残っているダニエルさんが続投するかどうか、ということでしょう。わたしは交代するにせよしないにせよ、長期シリーズが陥りがちなマンネリにならなければそれでいいです。というわけで次回作は001から009まで勢ぞろいで大活躍な話なんかどうでしょうか。まるでどこかのサイボーグみたいですけれどw
Comments
SGAさんおはようございます♪
スペクターという組織こそ自分は本作で初めて知りましたけど、裏で世界情勢を支配し暗躍する秘密結社っぽい雰囲気は確かに○ョッカーに類似する部分もありましたね。「イー!」とかは聞こえませんでしたが、ボスの一挙手一投足に合わせて構成員たちが規律よく行動する辺りとかはいかにもな感じ^^;結構リアルな路線を走っていた今までのダニエル・クレイグ版ボンドももちろん好きですが、今回の悪の組織をこらしめる勧善懲悪な展開も凄い好物だったのでした(笑
Posted by: メビウス | December 18, 2015 07:24 AM
こんにちは。
>そんな首領に率いられてる組織が前作までの事件の黒幕だったと言われても
ガランダー帝国のゼロ大帝が全ての悪の組織を支配していたと云ってたのに、デルザー軍団の岩石大首領も歴代悪の組織を操っていたと云い、バダン総統も歴代悪の組織を操っていたと云ってましたから、とりあえず首領たるもの一度は口にしたいセリフなのかもしれません:-)
落ちぶれたミスター・ホワイトが哀れで哀れで……。ミスター・ホワイトとの対決を楽しみにしていたんですけどねぇ。
Posted by: ナドレック | December 19, 2015 10:36 PM
>メビウスさん
一人の幹部をたおしたらまた別の幹部が…というところもショッカーっぽいですよね。今年はスパイ映画4本ありましたが、どれもはっきり「悪」として描かれていたのが痛快でした
Posted by: SGA屋伍一 | December 21, 2015 06:18 PM
>ナドレックさん
ライダーの悪の組織もかわるがわる色々出てきましたが、いまの劇場版では結局ショッカーが大活躍してるあたり、デストロンやGODのこともたまには思い出してあげようよ、という気持ちになります
そうそう、わたし今回予習をさぼっていったもので、ミスターホワイトが出てきたときは「誰だっけ…このひと」状態でした(^_^;
Posted by: SGA屋伍一 | December 21, 2015 06:22 PM