花園の秘密 ブジェチスラフ・ポヤル 「ふしぎな庭」シリーズ
最近日本のどこかで定期的に上映されている感のあるチェコアニメ特集。いまから5,60年前に作られた東欧のアニメが、それだけの支持があるというのが不思議でもあり、微笑ましくもあります。先日も阿佐ヶ谷であらたにオープンした「ユジク阿佐ヶ谷」という劇場で特集があり、おさそいいただいたので行ってまいりました。今回観たのはチェコアニメでシュバンクマイエル、トルンカと並び称される巨匠ブジェチスラフ・ポヤルの連作「ふしぎな庭」シリーズ。ご紹介します。
一人暮らしで寂しい思いをしている老紳士。ペットを飼えば楽しい毎日を送れるのでは?と考えた彼は、小さな魚や子犬らしきものを買ってきたのだが、それらが成長するにつれ手に負えなくなり、広大な庭に放し飼いにしてしまう…
以上が第一話「動物好きな男」のあらすじ。こちらは絵アニメで作られ、やさしいタッチのちょっと物悲しいムードも漂っているエピソードです。
ただ面白いことにつづくエピソードはややスタイルが変わってきています。第二話からはチェコお得意の人形アニメとなり、しっとりした一話と比べてドタバタ忙しい愉快な空気に包まれています。
2~4話にあたる「広がる霧」「トラを捕まえろ」「銀紙に包まれたネズミの話」のストーリーはこんな感じ。老紳士がこの世を去ってしばらくして、彼の庭は世間に隔絶されたまま荒れ放題になる。登校途中そこを通りかかった少年たちは冒険心に駆られて庭への侵入を試みるが、そこの主らしき大きな猫から意地悪な目にあわされる…
1話では玉のようにかわいかった子猫ちゃんが、どこをどうまちがったのか性悪のドラ猫に成長してるあたり、爆笑するとともに時の流れの無情さを痛感いたします。果たして老紳士の他のペットたちはどうなったのか? 少年たちの目線になって、庭の奥へと探検に出かけたくなります。で、「子犬っぽかったもの」のその後はわりと早い段階で出てくるのですが「小魚っぽかったもの」の存在はちらっと語られただけで4話まで終わってしまいました。まあこういう風に「あとは自分で想像の翼を広げてつづきを考えなよ」という形もかっこいいし、こころにくいよなあ…と思いながら映画館を出ました。
ところがどすこい、家に帰ってしらべてみたら今回は上映されなかったけれどちゃんと続きにあたる第5話があるじゃありませんか。おそらくこのエピソードこそが真の最終話です。がんばって検索したらyoutubeで見つけました。チェコ語なので何を言ってるのか見当をつけるのが大変でしたが…
まあとにかくそんな大胆な構成と破天荒なお話が楽しいシリーズです。
何本か見た限りでは、三巨匠のイメージは大体こんな感じかと思います。
・シュバンクマイエル…ほとんど子供のことなど考えてない。ひたすらアートとしてのアニメを追及する
・トルンカ…一応子供向けの体裁をとっているが、やはり作品のアート性を重視している
・ポヤル…まず子供たちを楽しませるためにアニメを作っている
必ずそう、というわけではなく、そういう傾向がある…という程度の特徴ですが。
あとポヤル作品も子供むけだからすべてがゆるゆるのふわふわというわけではなく、時折ちらりと残酷性やブラックユーモアが顔をのぞかせたりもします。世界の名作童話に無邪気に混ざっているたぐいのからっとした残酷さですけどね。
おそらく来年もどこかで行われるであろうチェコアニメ特集。気になる方は専門サイト「チェコチェコランド」をまめにチェックされてみてください。左の画像はアンケートに答えたらいただいたクリアファイル。気前いいな! ユジク阿佐ヶ谷!
Comments
シュヴァンクマイエルと、トルンカ、ポヤルの三者をざっくり分類していますが、
これ面白いですね!
あながち間違っていないような気がします!
もしかしてあの可愛かった子猫ちゃんが、小憎らしいドラ猫になってしまったのか?
これ、自分でもそのとおりに思っていた割に、人に言われるとズキっとするのは、何故でしょうか?
Posted by: とらねこ | December 24, 2015 05:03 PM
>とらねこさん
どうもどうも! ざっくり分類しちゃいましたが、もっともっといっぱい観て認識がまちがってないかたしかめたいですね。イジー・バルタなんかはまだよくわからないし
>自分でもそのとおりに思っていた割に、人に言われるとズキっとする
あ、自覚があ… いえ、そうじゃなくて(^_^; ドラ猫さんなとらねこさんもかわいくていいじゃないですか~ と何を言っても地雷になるなw
Posted by: SGA屋伍一 | December 25, 2015 09:35 PM