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November 30, 2015

ヤッツィー!バカ村 ナイト・M・シャマラン 『ヴィジット』

250pxv_2009_intertitle色々用事が重なって10日ほどおやすみしてましたが、再開させていただきます。本日は当たり外れが激しいのに生暖かいファンの多いあの人の最新作、『ヴィジット』をご紹介いたします。

母親が恋人とバカンスに行くことになったため、一週間の間初めて会う祖父母の家で過ごすことになった姉弟。最初こそ朗らかでしっかりしているように見えた祖父母だったが、1日、2日と経つにつれ姉弟は次第に彼らに異常さに気付き始める…

ここのところCGバリバリのあまり「らしくない」大作を撮っていたナイト・M・シャマラン。しかし今回は実に彼らしい作風に立ち返っております。薄暗い映像、極力抑えられた劇伴、あれ? 今画面の隅をなんかよぎった!? なんかいる!! こわい!!!…という感覚。これこれ、これこそがファンの求めているシャマラン・スタイルですよ。
ただ『ハプニング』以前と少し違うのは、そういう従来のシャマラン・スタイルでありながら微妙に笑えるということ。
この映画の恐怖の対象となるおじいちゃんおばあちゃんですが、老人的な意味でどうもボケているようであり、お笑い的な意味でもボケをかましてくるので、真剣に見入っている場面で「ぶほっ」と吹き出してしまうことが何度かありました。
さらにおびえる側の姉弟もちょっとずれてるところがあります。お姉ちゃんはさっさと逃げ出せばいいのに妙に自作映画を撮ることにこだわってるし、弟は歳に似合わぬラップを歌って失笑させてくれるし、ボケに対してボケを返しているような構図でありました。
じゃあいったい誰がつっこめばいいのか? それはもちろん、わたしたち観客です。しかし映画館で「そらちゃいまんがな!!」と絶叫するわけにもいかないので、仕方なく心の中で必死に雄叫んでいた次第です。

「お笑いと恐怖は紙一重」という言葉があります。あったような気がします。もしかしたらわたしが作ったのかもしれません。ともかく、監督は真剣に作っているのに、感覚がずれているためなんか笑える… そういう映画も確かにあります。ただ『ヴィジット』に関して言えばシャーミン(シャマランの愛称)はちゃんと計算してお笑いを獲りに行ってるのでは…という気がしました。中堅どころに来て、なお新しい挑戦…お笑いと恐怖の境界に挑むシャーミン。その意気やよしとしましょう。
あと古参のファンとしては『サイン』を思わせるキーワードやシーン、急に豹変する『ハプニング』みたいな老人にニヤリとさせられました。
代わりによくみられる「善良な人がなぜ突然悲劇に見舞われるのか」というテーマはだいぶ薄味になってましたね。それも笑える映画になっていたひとつの要因だと思います。

というわけでシャマラン久々の快作となった『ヴィジット』。なんで今回は(それなりに)出来がいいのか。その答えは次のデータを見ると理解できるような気がします。『シックスセンス』以降のシャマラン映画の予算一覧ですが

『シックス・センス』 …4千万$
『アンブレイカブル』        …7千5百万$
『サイン』              …7千2百万$
『ヴィレッジ』            …6千万$
『レディ・イン・ザ・ウォーター』  …7千万$
『ハプニング』          …  4千8百万$
『エアベンダー』        …1億5千万$
『アフター・アース』      …1億3千5百万$
『ヴィジット』      …5百万$

明らかに予算がかかってない作品の方が出来のいいものが多い。これからもプロデューサーの皆さんはくれぐれも彼に大金を与えないようお気を付けください。

Vst1『ヴィジット』はまだどこかで公開してるかと思いますが、あのシャマランの作品なのにぐっと公開館が少なく、しかもそろそろ終わりそうな雰囲気。気になる方はお早めに鑑賞して「ヤッツィー!!」の意味を確かめてください。


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November 19, 2015

文化遺産を守り隊 ジョージ・クルーニー 『ミケランジェロ・プロジェクト』

Img_6久々の連続更新。なにをそんなに無駄にがんばっているんだろう! 本日は一時期お蔵入りが心配されながらも、無事公開となりましたジョージ・クルーニー監督・主演の「実話に基づく物語」、『ミケランジェロ・プロジェクト』をご紹介いたします。

第二次大戦末期、もはやドイツの敗北は時間の問題となっていた。だがヒトラーが道連れに略奪した美術品を破壊するかもしれない…という情報を聞き、ハーバード大学付属美術館の館長ジョージ・ストークスは危機感を募らせる。彼は軍上層部にかけあい、仲間たちと美術品を保護するためのチーム「モニュメンツ・メン」を結成。戦火の続いている欧州へと向かう。

この映画の特色はまず「戦争映画なのに雰囲気がゆるめ」というところでしょうか。第二次大戦もほぼ終わりかけのころなので、戦場といっても大規模な戦闘はだいぶ少なくなっている状況。そしてモニュメンツ・メンは立場上軍属ですが中身は学者さんだったり職人さんだったりするので、いまひとつ緊張感というものに欠けております。彼らの多くがおじいちゃんやおじさんであることも一層ゆるいムードに拍車をかけておりました。

とはいえ、ドイツ近辺まで来ると当然ナチス残党もそれなりにおります。緊張感のないおじさんたちがうっかり修羅場に足を踏み入れてしまい、アクション映画とはまた違った形でハラハラする場面も何度かありました。
ストークスたちの障害となるのはドイツ軍だけではありません。時には味方である連合軍も彼らの足をひっぱります。モニュメンツ・メンの最優先事項は文化遺産を守ることですが、軍隊の第一の目的は敵をぶっ殺すことですからね。「歴史的建造物を壊さないでほしい」というストークスらに対し、「そっから敵がバンバン撃ってくるんだから攻撃しないわけにはいかん。アホ」なんてやり取りもありました。さらにソ連軍はどさくさに紛れて高価な美術品を自国に持って帰ろうとする気満々だったりします。

そういう血の気の荒い連中を相手に、学者さんたちは頭を使ったりタイミングを見計らったりして少しずつ成果を収めていきます。その最中にとんでもないものを見つけてしまったり、びっくりするところで見つけてしまったり。多少の脚色が加えられてはいるようですが、そういった知られざる歴史秘話にただただ感心するばかりでした。

ひとつ目についたのがいまどきの映画にしてはやけに喫煙シーンが多いこと。貴重な絵画の前でもみんな平気でプカプカやっておりました(^_^; まあそういう時代だったんでしょうね。ストレスのたまる戦場だから…ということもあるでしょう。ただいくつかのシーンでは重要な小道具としても使われていて、煙草に関してクルーニーさんなにかこだわりでもあるのかな…なんてことを思ったりしました。

冒頭でストークスは「人間は減ってもまた増える。でも文化財は壊れたら元に戻らない(つまり人命より文化財の方が大事)」となかなか過激なことを申します。しかし敵地で大切な仲間を失ったとき、彼はやはり人一人一人の命も大切であるということを改めて実感します。では人命と文化財、果たしてどちらが大事なのでしょう。答えは「どっちも大事」ということだと思いました。比べられるようなことではないんですよね。美術品も人間もどんなに気を使ってもいつかは形をとどめなくなるものであります。だからこそがんばって少しでも長持ちできるようにしていかなければいけない… モニュメンツ・メンの奮闘を観ていてそんな風に感じました。

Od7en2oaakzos0『ミケランジェロ・プロジェクト』は現在全国の映画館で上映中。せっかく公開にこぎつけたのにこれまたあんまり客が入っていないようです(^_^; いい映画なのに! なんでや!!


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November 18, 2015

パパンが ジョー・ライト 『PAN ネバーランド、夢のはじまり』

Scan誰もが知ってるおとぎ話のヒーローを、ディズニー…じゃなくてワーナーブラザーズが新解釈で映画化。『PAN ネバーランド、夢のはじまり』、ご紹介します。

たぶん第二次大戦時。ロンドンの孤児院で暮らすピーターは、意地悪な院長にいじめられながらも、いつか母が迎えに来てくれることを信じていた。だがある晩ピーターは他の孤児たちと一緒に空飛ぶ海賊船に連れ去られてしまう。海賊船が向かった先は恐ろしい魔人「黒ひげ」が支配する地獄のような国だった。そこで過酷な労働を強いられていたピーターは、ぶっきらぼうだが親切なフックという男と知り合う。

最近のファンタジー映画にありがちな傾向として「○○は実は悪者じゃなかった」というのがあります。『雪の女王』は実は悪い人じゃなかった。『マレフィセント』は実はかわいそうな女性だった。『シンデレラ』の継母は… あれは普通に悪人だったんだっけ?(未見) ま、ともかくそんな流れに沿ってかこの『PAN』では「フック船長はもともとはいいやつだった」というコンセプトで作られています。もう演者が『トロン・レガシー』『オン・ザ・ロード』のイケメン、ギャレッド・ヘドランドですからね。ちょび髭でワニに食われたヘンテコなおっさんのイメージはこれっぽっちもありません。ていうかまるっきりインディ・ジョーンズな外見でした。

では誰が代わりに悪者を務めるかというと、『パイレーツ・オブ・カリビアン 生命の泉』にも出てきた海賊黒ひげ氏です。時代がまるっきり違うような気もするんですが、ある種の魔法で命を永らえている模様。あと「黒」ひげだけにブラック企業の社長さんみたいでした。
悪者はもう一人います。それは孤児院の院長先生。そういえば『アーネストおじさん』や『怪盗グルー』でも院長先生はかなり性悪でした。ただ『キャンディ・キャンディ』や『ルイスと未来泥棒』の院長さんは慈愛深い方だったので、人間いろいろ、院長もいろいろということなのでしょう。

まあそんな子供たちをサクサク搾取していく悪漢を相手に、年端もいかぬピーターがチョイ悪大人のフックとタッグを組んで立ち向かっていくあたりがとても痛快でした。この二人、年齢差も慎重差もあるのに対等の友人のように接していて、見ていて気持ちよかったです。
あとこの作品の大きな魅力のひとつは、壮大で想像性に富んだビジュアルであります。RPGでしか見ないような空飛ぶ帆船が大スクリーンで激突したり旋回したりする姿はまことに迫力満点でした。ほかにも空中にプカプカ浮かんでる巨大な水玉とか、天空に向かって延々と登っていくケーブルカーとか。とにかく宙に浮いてるものがいろいろ多かったですね。
ピーターが健気に母や親友を思う気持ちにもじ~んと来るものがありました。

しかしこの映画、手堅いところを押えているようで興行の方は東西ともにぱっとしないようです。ほかの国ではなんでだかわかりませんが、とりあえずわが国ではもうファンタジー映画はプリンセスを前面に出さないと当たらないのかも。さもなくばゆるキャラを目立たせるとか。ハリー・ポッターが大活躍してたのもそんなに前じゃないとは思うんですがね~

415335lそんでもって「どうしてフック船長が闇落ちしたのか」という謎は明かされぬまま終わってしまうんですよね。続編が望み薄だと「あとはご自分で想像してください」ということになってしまうんだろうな… 最近はそういう終わり方もそれはそれでいいんじゃないかと思えるのですが。
『PAN ネバーランド、夢のはじまり』は現在全国の映画館で公開中ですが、そんなわけで興味終わる方ははやめに観に行きましょう。ちなみに『アナ雪』の娘に負けじと松田聖子さんが日本語版主題歌を歌っておられますw


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November 16, 2015

オールタイム・音楽映画ベスト10

毎年年末にはてなブロガーのワッシュさんという方が開催されているオールタイム・ジャンル別映画ベスト10。今年のお題は「音楽映画」だそうです。正直音感とか芸術的センスとかほとんどないわたくし。名作ミュージカルもあんまり観てなかったりするんですが、せっかくなのでお祭りに参加します。以下、「それほど音楽に関心のない映画ファンがたまたま観た音楽映画ベスト10」ということでよろしくm(_ _;)m


☆10位 『アクロス・ザ・ユニバース』(2007)
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「それほど音楽に関心がない」と書いたばかりですが、やっぱりビートルズは別格ということで。♪ストロベリーフィールフォーエヴァ~


☆9位 『セッション』(2014)
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今年の新星。「いじめ、かっこわるい」と思いながらもツルピカ先生のネチネチとしたいじめ指導と、それに立ち向かうマイルズ・テラーのスティックさばきというかムチさばきに息をのみました。


☆8位 『サウンド・オブ・ノイズ』(2010)
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「楽器のない音楽演奏」…そんなことできるんかい!とつっこみながらも、奇抜な発想にひきつけられてしまうスウェーデンの快作。すべての音痴にささげられる音楽映画でもあります。


☆7位 『たまの映画』(2011)
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10本中唯一のドキュメンタリー。『たまの映画』という題ですが彼らが「たま」を組んでいたころの映像は出ません(笑) 『この空の花』『野のななのか』などでも使われたパスカルズの演奏は圧巻。


☆6位 『ジャージー・ボーイズ』(2014)
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しぇえーーーりーーーー しぇりべいびーしぇえーーーりーーーー しぇりべいびー しぇえーええーーええりーべいえいびー


☆5位 『フィッシュストーリー』(2009)
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ひとつの曲に秘められた謎がいくつもの世代を結び付けていくカタルシス。「僕の孤独が魚だったら、 巨大さと獰猛さに、鯨でさえ逃げ出す」


☆4位 『チャーリーとチョコレート工場』(2005)
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先日地上波でやってて思い出した(笑) チュイン!チュイン!チュインガーム!! チュイン!チュイン!チュインガーム!!


☆3位 『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』(2014)
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ウガチャカウガウガウガチャカウガウガアーアアーアアー だんだん面倒になってきているわけでは、決してあります。


☆2位 『海の上のピアニスト』(1998)
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まあ壮大なるホラ話ですよね。そこがいんじゃない! 主人公を演じるのは後にエドワード・ノートン版ハルクと死闘を繰り広げることになるティム・ロス。


☆1位 『青春デンデケデケデケ』(1992)
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芦原すなお氏の小説を大林宣彦監督が映画化した作品。「なにもそこまで…」というくらい徹底して原作に忠実なのだが、そこが(略)。若き日の浅野忠信さんがなかなかにプリティです。


以下、惜しくも入らなかった作品は『ブルースブラザーズ』二部作、『レニングラード・カウボーイズ』二部作、『ファントム・オブ・パラダイス』『少年メリケンサック』『レ・ミゼラブル』『うた魂』『オーケストラ!』『パガニーニ』など。いつにもましてお目汚しでございました~

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November 13, 2015

レクイエム・フォー・ドッグ チャド・スタエルスキー 『ジョン・ウィック』

Awaremi0918キアヌ・リーブスといえば『スピード』『マトリックス』などで90年代後半はアクション俳優としてもぶいぶい言わせておりました。ところが最近は作品に恵まれないこともあって、すっかり「アクション」のイメージが薄れてた感があります(『47RONIN』なんかではそれなりにアクションしてたような気もしますが、もう内容が忘却の彼方)。そこへ「キアヌ・リーブス完全復活!」と銘打ってアクションバリバリの新作がやってまいりました。『ジョン・ウィック』、ご紹介します。

最愛の妻を失い、うちひしがれる男・ジョン。立ち直れない彼のもとへ、生前妻が贈った一匹の子犬が届く。彼女の愛を感じ、わずかに安らぎを得るジョン。だが彼の車に目をつけたマフィアの息子・ヨセフがジョンの家に押し入り、子犬はあえなく殺されてしまう。ことを知ったヨセフの父・ヴィゴは狼狽する。なぜならジョンは彼がかつて雇っていた超一級の殺人マシンだったからだ…

え~、今回もネタバレ満載の辛口評価で。なんにでもべろべろに甘いのがこのブログの特色だったのに… アイデンティティの危機にさらされてる今日この頃です。

まずツッコミの一点目。みんなから「伝説伝説」ともてはやされてたジョンさんが、不意をつかれたとはいえ冒頭でヘタレなマフィアの青二才にあっさりやられてしまうのがおかしい。ブランクと妻の死で感覚が鈍りきってたってことですかねえ。それにしてもなんだかすっきりしないところであります。

二点目。幸運にも?ジョンを気絶させて車を奪うことに成功したヨセフ。しかし彼はジョンを殺さずに痛めつけただけで満足して帰ってしまいます。そこはのちのちの禍根を残さないためにも殺しとかないと。いくらなんでもそこまでやるのはやりすぎだと思ったんでしょうか。ただその不徹底が彼の命を縮めることになりました。やるならとことんやる。やらないなら何もやらない。中途半端が一番よくありません。…と偉そうに書きましたが、わたしも中途半端にかけてはなかなかのレベルなので、なんか見ていて悲しくなってしまったのでした。確かに同情の余地もないクズ野郎なんでしょうけど…

三点目。この映画には他にもベテランの殺し屋が何人も登場するのですが、ベテランの割にはなんか脇が甘いというか緊張感が足りないところがあります。ジョンの友人のマーカスや顔なじみのバーキンスなどはそれぞれ信義のため、あるいは金のためにやばい橋を渡るのですが、それだけのリスクを冒したならとっとと高跳びするなり厳重に身辺に警戒するなりしないと。なのにのんきにその辺をフラフラ歩いてるからあっさり殺されちゃうわけじゃないですか。よくそんなんでこれまで生きてこられたなあ、と不思議でありません。

あと警察。警察仕事しろよ(笑) そんなんだからデアデビルがいろいろ苦労することになるわけで。

もう一点、これはツッコミというかないものねだりのようなことですが、ジョンの奥さんが贈ったのがもし子猫だったら、賊が来ても吠えたりせず逃げただろうし、バカ息子もお父さんの顔で指を詰める程度で許してもらえたかもしれません。しかしまあ『What’s Michael』などを読むと極道が猫を飼うというのは相当に恥ずかしいことのようなので、ウィック夫人もその辺のことを考えて犬を贈ったのでしょうね。これはやはり致し方なきことかも。

いい点もあげましょう。ひとつはなかなかお目にかかれない柔術アクション。映画の格闘場面で殴ったり蹴ったりというのは普通にありますが、投げたり絞めたり関節を極めたりというのはあまり観たことがありません。ラーメンや千葉真一などで日本通のキアヌ・リーブスだからこそ取り入れた要素かもしれません。これも銃弾が飛び交ってる中実用的にどうなんだろ、という気もしないでもないですが、斬新だったのでありです。ちなみに柔道漫画『帯をギュッとね!』によりますと絞められて落ちる瞬間というのはわりと気持ちいいらしいです。一度体験したいような、くせになったら困るような。

さらにこの映画からは貴重な教訓が得られます。マフィアにとって最も重要なこととはなにか、ということです。それは「息子の教育」。『ラン・オールナイト』『ロード・トゥ・パーディション』『イースタン・プロミス』などもそうですが、息子の教育をしっかりやらなかったばかりに、組織が危機に面することになる…ということはよくあります。当代随一の知恵を誇ったソロモン王も息子は相当なボンクラだったそうなので、これ権力がでかければでかいほど難しいことなのかもしれません。でももしあなたがマフィアのボスで、組織を盤石のものにしたいなら、息子は甘やかしたりせず寺にでも預けて人格面を磨き上げとくことをおすすめします。

220051999『ジョン・ウィック』はまだ全国の映画館で上映中…だよな? どっちにしてもそろそろ終わりそうです。本国ではかなりヒットしたようで、早々と続編が決まりました。今度はワンちゃんがひどい目にあいませんように。


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November 10, 2015

素晴らしいWCKDWCKD若いうちはやりたいこと(略) ジェームズ・ダシュナー T・S・ノーリン 『メイズランナー2 砂漠の迷宮』  

Mzrn2a1作目の公開が本国より半年ほど遅れたので、数か月でもうその続きが観られることになりました。怪我の功名と言っていいのか… 試験の帰りに観てきました『メイズランナー2 砂漠の迷宮』、ご紹介します。一作目の記事はコチラ

幾多の試練を潜り抜け、ついに仲間たちと巨大迷宮の外へ出たマーカス。そこで彼らを待ち受けていたのは「君たちを保護する」というジャンソンという男だった。ジャンソンとその部下たちに連れられて、巨大な施設へと運ばれる一行。十分な食事や清潔な環境に、少年たちはひと時の安らぎを得る。だが自分たちを監視するようなジャンソンたちの視線や、いずこかへと連れられていく少年たちを見ているうちに、マーカスの胸にぬぐいきれない疑いの念が宿るのだった…

えー、一作目はガンガン動く巨大迷路があって、その中で子供たちが知恵を振り絞ってサバイバルする姿が斬新だったんですよね。しかし今回の2作目は「なんかどっかで観たなあ」という場面・要素が多々見られました。はっきり言ってしまうと『バ○オハザード』とか『ハンガー○ーム』とか『マッドマ○クス』などでございます。特に『バイオハ○ード』。
多分作者さんは「でっかい動く迷路があったら面白えじゃん!」という思い付きからこの物語を書き始めたのだと思います。で、話がすすんでいくにつれ、「どうしてそんな迷路が作られたのか」「なぜ少年たちはその中に閉じ込められていたのか」理由を考えなければならなくなったと。
今回の『砂漠の迷宮』はわりとその「理由」の説明がメインだったような気がします。ただその「理由」がまた他の作品でもあったようなものだったり、「そのためにわざわざ巨大迷路作る必要なかったんじゃね?」と思えるものだったりしてね…(^_^; まあ後者の件に関してつっこむのはやや大人げない気もします。ガンダムで「宇宙兵器が人型である必要ねーじゃん!」と言ったり、ジョジョで「超能力がなんであんなスタイリッシュなフィギュアみたいな形してんだよ!」と文句つけたりするようなもんですからね。人はそれをなんと言うでしょう。そうです。「野暮天」と言います。
だからどんなに説得力がなくても、たとえ整合性が取れなくても、一作目の「巨大迷路」に匹敵するビックリドッキリでハッタリの効いたアイデアがほしかったところでした。それを思いつくのも大変なことなんでしょうけど。

ただそういうのも観終わってからポチポチと感じたことで、観てる間は息をつく暇もなかったのであまり気になりませんでした。本当にちょっとでも迷ったりとまったりしたら、すぐ死んじゃうような状況が次から次へと少年たちを襲います。ですから普通にハラハラドキドキできる程度の面白さはあります。主人公トーマスがよく「ろくに考えもせず突進する」と批判されますが、そうでもしないと死ぬか捕獲されるか、という世界なのも確か。あとトーマス君は暴走機関車みたいな名前もよくないんだと思います。
余談ですがトーマス君を演じるディラン・オブライエン君は、ロケ地の遺跡で「遺物を持って帰ってはいかん」と厳命されたにも関わらず、それをぱくってきたことをあっけらかんとSNSでつぶやいてたりします。このあまりの思考力のなさ… まさにトーマス役にうってつけだと思いました。

あとこれは最初からわかっていたことですが、これ、三部作の真ん中なんですよね。つまり続きから始まって「さらに続く!」となって終わるわけです。もう少しキリよく終わってくれたらモヤモヤすることもなかったのですが、はっきり言ってすごく『スターウォーズ 帝国の逆襲』みたいな幕切れだったのでモヤモヤを抑えきることができませんでした。しかも今度の続きは二年後だというし…

Mzrnn2b温厚なわたしには珍しく辛口評価となってしまいましたが、それでも完結編は観に行くつもりです。ここまでつきあったらキャラクターたちにどんな結末が待ち受けているのか気になりますしね。ただ最近流行りの「完結編は二部作」というのはぜひやめていただきたい。『メイズランナー2 砂漠の迷宮』は現在全国の映画館で公開中であります。


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November 05, 2015

コンドルは飛んでいく・根性は絞り出す ジャン=マルク・ヴァレ 『わたしに会うまでの1600キロ』

Wam16001でんでんむしよりは雀のほうがいい そうだとも そりゃそうだ もっともだ まったくだ (坂崎幸之助・訳)

すっかり実力派女優となった感のあるリース・ウィザースプーンが、『ダラス・バイヤーズ・クラブ』のジャン=マルク・ヴァレと組んだ「実話に基づく物語」。先日遅れてこちらで公開してたので観てまいりました。『わたしに会うまでの1600キロ』、ご紹介します。ちなみに原題は『Wild』となっております。

シェリル・ストレイドは最愛の母の死後精神のバランスを崩し、ドラッグとセックスに溺れる日々を送っていた。そのため結婚生活も破綻してしまう。だがある日立ち直ろうと決意した彼女は、母親に認められる自分となるためにアメリカ合衆国を歩いて縦断する過酷な旅「パシフィック・クレスト・トレイル」への参加を申し込む。しかしアウトドアの素人である彼女にとって、その旅は苦難の連続であった。

この映画で特に印象深かったのは、シェリルさんの中でいかにお母さんが大きな存在だったか、ということです。どっちかというと母親の死をひきずりやすいのは男の方だと思うのです。現実・フィクションを問わずそういう話ちょくちょく聞きますからね。親子の絆の濃さも人によってそれぞれなんでしょうけど、大人の女性がお母さんを失ってしまったことでここまでえんえんと苦しみ続ける話はちょっと珍しい。
彼女のお母さんが本当にあったかくて素晴らしい人だったから、喪失感もそれだけ大きかったということなのでしょう。加えてうっかり心無い言葉を言ってしまったことや、あまり恩返しができなかったことの罪悪感も、シェリルさんのダメージを一層深くしたのだと思います。

そんなお母さんがなんでか好きでよく歌ってた歌が冒頭で出したサイモン&ガーファンクルの(元はメキシコ民謡)『コンドルは飛んでいく』。この曲が冒頭からエンドロールまで本当によくかかります。
いつ終わるともわからない行程を、かたつむりのように地道に歩き続けなければならない彼女にしてみれば、きっと何回も「鳥みたいにピャーッと飛んでければ楽だろうなあ」と思ったに違いありません。最初のうちはシェリルが旅に慣れてないせいでなかなか先に進まないわ、頻繁に回想シーンは入るわで、観てる側も「これ2時間以内で本当に終わるのか? もしかして続編に続いちゃうんじゃないか?」とハラハラします。
経験不足以外にも険しい自然や、女の一人旅であることもシェリルを苦しめます。ただ一組を除いて彼女が旅で出会った野郎どもは、みな親切で紳士的でしたね。アメリカ人って性的にガツガツしててハングリーな人が多いんだろうな~なんて偏見を前から抱いてましたが、改めなくてはなりません。

前半こそ厳しい旅に四苦八苦してたシェリルさんですが、PCT参加者のアドバイスや、彼女自身の成長もあって後半はスムーズに行程を進めていきます。やっぱり何事も慣れるまでが大変ってことですかね…
大手の邦画であれば終盤に近付くにつれ勇ましいマーチをかけ、ゴールへの感動を高めようとするものだと思いますが、ジャン監督は前作と同じくその辺は淡々としてます。涙や鼻水がこぼれ落ちるということはありませんでしたが、そのあっさり加減がテーマ曲にマッチしていて心地よい映画でありました。

Wamd16002『わたしに会うまでの1600キロ』はまだ地方で公開されてるところもあるようなので、ご興味持たれた方は公式サイトで探されてみてください。ちなみに同時期にやはり似た題材・タイトルの『奇跡の2000マイル』という映画もやってましたが、そちらは流れてこなかったのでスルー(^_^;


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November 03, 2015

執念ジャンプ 大場つぐみ・小畑健・大根仁 『バクマン。』

Bkmn1少年ジャンプの内幕を痛快に描いた人気漫画を『モテキ』などの大根仁監督が映画化。最初は興味なかったんですが、やけに評判がいいので気になって観てきました。『バクマン。』、ご紹介します。

「絵がうまい」ということ以外取り立てて目立つところのない高校生・真城は、漫画原作者を目指す高木との出会いや、同級生小豆への告白から本気で漫画家になることを決意する。それも日本漫画界の頂点である週刊少年ジャンプで。飽くなきセッションの中で急成長した真城と高木の作品は、見事ジャンプ誌の新人賞の副賞に輝く。だがその上を行き「天才」とうたわれる新人作家新妻エイジの存在が、二人に闘志を燃やさせる。真城と高木はどちらが先にジャンプで人気の頂点を取るか、エイジに挑戦状をたたきつける。

以下ネタバレ気味で(^_^;
わたしこの映画の何が特に気持ちよかったかというと、漫画家版『スラムダンク』であったということ。
素質はあるのに特に目標を持ってなかった若者が、恋をきっかけにしてそのジャンルに異常なまでの熱意を燃やすようになり、チームメイトとの切磋琢磨も手伝ってグングンと急成長を遂げる。何度かの挫折を経てとうとう大一番を迎えた主人公は再起不能のリスクも顧みずみごとに大勝利をおさめる。しかしそこで全力を使い果たした主人公チームはほどなくして一度燃え尽きてしまう…

見事に『スラムダンク』そのものじゃないですか。わたし『バクマン。』原作は未読なんで憶測ではございますが、漫画の方はここまで『スラムダンク』ではないと思います。そもそも劇中にあからさまに『スラムダンク』からセリフを引用したりパク…オマージュしたシーンがありましたしね。監督がよほど『スラムダンク』がお好きなんでしょうね。わたしも大好きです。

で、『スラムダンク』の何が特に鮮烈かというと、やはり主人公がクライマックスでボロボロになっても最後までやり遂げようとする姿なんですよ。才能ある若者には、誰に強制されるでもなく、このあとどうなってもかまわないから、できるのはいましかないから、意地でもこれを完遂したい…という瞬間があります。非常にはかない、うつろい安い栄光のためにね。
これ、本当は大人は鬼になっても止めてあげなきゃいけないのかもしれないし、安易に美化してはいけないんでしょうね。でもやっぱりできることならやらせてあげたいと思うし、そういう若者の姿は本当にキラキラとまぶしく映るのですよ。映画『バクマン。』の佐藤健君と神木隆之介君からはまさしくそんな目もくらむような輝きが放たれていました。

あとこれは映画とは直接関係ないんですが、「少年ジャンプにおける漫画の手法」ということについても色々考えさせられました。わたしはちょうどジャンプ黄金期に小中学生でありました。で、そのころの看板作品というのは絶好の「終わり時」を迎えても人気があるうちは終わらせてもらえず、ダラダラとマンネリな展開を続けさせられ、読者に飽きられた途端打ち切りのようにして終わるものが少なくありませんでした。当然完成度もへったくれもありません。たぶん編集サイドは長期的な構成なんてほとんど考えてなくて、次の一週をいかにして楽しませるか、それだけに全力を注いでたんでしょうね。まるで作品が味がなくなっても噛み続けられ、その挙句道端に吐き捨てられるガムのようで、一時期すごくそうしたやり方に反感を覚えました。
ただ、今のジャンプはそういうやり方…映画『バクマン。』で描かれてるような作り方をしてませんよね。おおまかな構成もちゃんと考えられてて、傍からは「これまだいけるんじゃないの?」と思える場合でも余力を残して人気作品を終わらせている。そんなわけで10年後20年後まとめて読んでも遜色のない「名作」が増えてきました。しかしそうしたやり方のせいか、そして漫画自体に勢いがなくなってきたせいか、ジャンプはかつてほどの隆盛を誇ってはいません。そのことにさびしさを感じるのも確かです。

若者たちの一番の関心がスマホやSNSに移ってしまった今、漫画が以前のような栄光を取り戻すことはもうないでしょう。けれども情熱ある作り手はこれからも絶えず現れるでしょうし、傑作・名作も引き続き作られていくことでと思います。
わたしがこの映画で特に好きなのは、二人が一仕事終えたあと、その漫画が小学生や肉体労働者、サラリーマンなど様々な人たちに読まれていくシーン。娯楽の形も色々ありますが、やっぱり週刊連載漫画というのは最も手軽に、最も多くの人たちに届きやすい媒体なんではないかな、と。

Bkmn2映画『バクマン。』は引き続き現在全国の映画館で上映中です。漫画に限らず「物語」を作ることにあこがれている方々におすすめです。


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