リトルランボー/怒りの脱出 ヤルマリ・ヘランダー 『ビッグゲーム 大統領と少年ハンター』
夏から秋にかけて活躍が目立ったサミュエル・L・ジャクソン。いまもっとも勢いのある黒人俳優といっていいでしょう。今回はそのサミュエルさんの出演作でも、『アベンジャーズ』や『キングスマン』と比べるとちょっと目立たなかった『ビッグゲーム 大統領と少年ハンター』をご紹介します。
フィンランドの男にはある年齢に達すると、一人山中で一昼夜を過し、獲物を狩って来なくてはならないという掟がある(らしい)。少年オスカリはその試練に挑んでいたが、折悪しく上空を飛んでいたエアフォース・ワンで大統領を狙ったテロが発生。なんとか脱出した大統領と鉢合わせする。オスカリは護衛を失った大統領を守って、凶悪なテロリストたちと戦うことになるのだが…
ま、普通に考えて「そりゃ無理だろ」って思いますよね。だから予告を見たとき「このガキンチョは幼児のころから山奥で育ったモーグリのような野生児で、大人顔負けの戦闘能力を持ってるんだろうなあ」と予想しておりました。ところがどすこい本編を観てみたら、のび太…とまではいかないものの、その辺の小学高学年とさほど変わらないスペックしかない。狩猟用の強い弓を渡されても弦をいっぱいにひくほどの力もない。いったいどうやって悪者たちと渡り合うのか頭をひねりました。もしかして大統領の方がものすごく強くて少年はオマケとか?と思いましたが、サミュエル・L・ジャクソンなのに大統領も常人なみの戦闘力でした。
そういう時力を試されるのが脚本家の筋運びです。力量が著しく異なる二つのチームの戦いを、いかに自然に接戦に持ち込むか… 結論から申しますと「そこそこ苦しいところもあったけど、まあがんばったんじゃないかな! お疲れ様!」という感じでありました(^_^; ですからこの映画は刑事コロンボのように細かい違和感がいちいち気になる人にはむいてないと思います。子供の運動会を温かい目で見守るようなお父さんのようなまなざしで鑑賞いたしましょう。
そういえば昔親しんだ児童文学にはその辺の子供が大の大人を向こうに回して大活躍する話がけっこうありましたよね。『十五少年漂流記』とか『少年探偵団』とか『ズッコケ3人組』シリーズとか。そういうものだと思って観た方が楽しめるかと思います。
あとこの映画の見どころをひとつあげるとすると、「いつになく優しいサミュエル・L・ジャクソン」でしょうか。史上最も映画で「ファック!」と叫んだとされ、大体10人以上は軽く殺してるんじゃないか…という役柄ばっかりのサミュエルさん。ですが『ビッグ・ゲーム』では相棒が年端もいかぬ少年ゆえ、普通に模範的な大人を演じております。わたしの半端なリスニング能力でチェックしたところ、今回は1回も「ファック!」とは言ってませんでした。なんだ、ものたりない… じゃなくて、やれば出来るじゃないですか~ これからも子供の前では丁寧な言葉で話し続けてほしいものです。ズボンにおしっこをひっかけた話とかはしてましたが。
フィンランド主体で撮られたアクション映画という点でもちょっと珍しい作品ですね。こちらに入ってくるフィンランド映画ってわたしの知る限りではほのぼのとした人情味豊かなものがほとんどなので。たまに『アイアン・スカイ』のような珍品もありますが。ちなみに監督は「ヤルマリ・ヘランダー」さんというちょっと吹き出してしまうようなお名前です。
この『ビッグゲーム』、公式サイトを見ても8月からデータが更新されておらず、恐らくもう公開終了したものと思われます(^_^; DVDがそのうち出るんでしょうけど、こちらも今のところ特に正式な発表はなし。気になった方はレンタル店の新作の棚をこまめにチェックされてください。
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