こんな体に誰が四た ジョシュ・トランク 『ファンタスティック・フォー』
本年度最後のアメコミ映画(だと思った)は、マーベルユニバース最初のヒーローチームを新鋭ジョシュ・トランクがリブートさせたこの作品。『ファンタスティック・フォー』ご紹介します。
リード・リチャーズは子供のころからテレポーテーション装置の開発に情熱を燃やし、ご近所に迷惑をかけたりしていた。そんな彼の才能を評価していたのは、幼馴染のベン・グリムただひとり。しかし発明コンテストで試作機が高名なストーム教授の目に止まり、リードはその研究室に迎え入れられる。教授の子供たちのスーとジョニー、プロジェクトに呼ばれたビクターらと協力し、ついにリードは念願の装置を完成させる。だがその功績が軍に奪われそうなことを知った彼は、仲間たちと共に「テレポーテーションに成功した最初のメンバー」として歴史に名を残そうとする。
当ブログでも扱いましたが『ファンタスティック・フォー』は以前に二部作で映画化されております(1作目の記事はこちら。2作目の記事はこちら)。映画でも漫画でもうじうじ悩むヒーローが多いマーベルユニバースにあって、ファンタスティックフォーは例外的に明るくのんきなキャラクターたち。体に変化が生じた時こそそれなりに悩んではいましたが、「ま、これはこれで仕方ないよね」となかなか気持ちの切り替えが早かったように記憶しています。
しかし今回のリブート版は実にマーベル作品らしい鬱々と悩むスタイルに変更されています。まあどうせ新生させるのだったら、前と同じことをやったって意味ないですからね。それに体がゴムや岩になったら、もっともっと深刻に苦悩するのが普通だと思います。「クローネンバーグ大好き」を公言するトランク監督は、そこに目をつけて『ザ・フライ』のように暗いほうへ暗いほうへストーリーを運んでいきます。
ただ問題は一生懸命暗いムードで語っていたお話が、ラスト20分くらいですごくわかりやすい普通のアクションものになってしまうところ まるでそれまで『モーニング』誌で連載されていた漫画が、ラスト数回で突然『コロコロコミック』に移籍したような感じです。
これはどうも20世紀FOXが「これでは売れまい」といろいろ横やりを入れたりいじくったりしたせいでそんな作りになってしまったようです。それで結局売れなかったのだからなんともやるせないものがありますね…
すでに出来上がってしまった作品に対して「ああすればよかったこうすればよかった」というのは、なんだか死んだ子の年を数えるようですごく後ろ向きな行為だと思うんですよね。それで今回はわたしなりに「ここをこうすればよかった」という点をいくつか考えてみました(日本語おかしいよ)。タイトルにちなんで4点あります。あ、ラストまでネタバレ全開ね♪
①「リードとベンの友情」
この映画のテーマのひとつはリードとベンの友情にあると考えてます。唯一無二の親友を心ならずもひどい目にあわせてしまった。そこでいかに懸命に罪を贖うか、一方あわされた方はいかに相手を許すか…ということを丁寧に描いてくれたらとても感動したと思うのですが、映画では「いつの間にか仲直りしてた」という感じでした。まあ「成り行きで一生懸命共同作業してたら、なしくずしに元鞘におさまった」ということもあるでしょうけど。
②「ビクターの思考」
1年ほどの放置プレイの末に「地球を滅ぼしてこの惑星を守る」と大暴れするビクターさん。わけがわかりません。普通は里心がついて「早く帰りたい」と思うものでは? 自分を置いてった連中への逆恨みが高じてそうなってしまったんでしょうか? 未知のエネルギーと融合しておかしくなってしまった人の思考を理詰めで説明するという方が無理なのかもしれませんが、エンターテイメントならそこはもう少し自然に話を運んでほしかった。もしかしたらあの惑星はソラリスよろしく意思を持っていて、ビクターはその意思に乗っ取られたのだ、とか
③「冷たいリード君」
前半ではあれほど必死にビクターを助けようとしていたリード君ですが、クライマックスでは全く迷いなくビクターを地球の敵として葬り去ります。そりゃ確かにそうするしかなかったのかもしれませんが、かつての研究仲間なんだからぷちっとくらい悼んでやってもいいんじゃないか? さすがにここは脳内補完がむずかしい(^_^;
④「X-MENとのリンク」
今回の大きなウリのひとつは「X-MENと世界を共有している」という設定だったと思ったのですが、本編ではエックスメンの「エ」の字も出てきませんでした。ファンタスティック・フォーなんて今となっては地味な素材なんだから(あっ)、X-MENからサブキャラの2,3人もカメオ出演させてその設定をもっと前面に出すべきだったのでは? 脚本だってX-MENシリーズを手掛けているサイモン・キンバーグが書いてるんだから。とりあえずそういう情報があったらもっと多くのオタクがホイホイと喜んで観に行ったと思います。 もったいね~
と、ここまでぐちぐち文句を書くのも結局はこの映画が好きだからなんです。ゆがんだ愛情の表れですね。メタメタになった山場でも這いつくばってたリード君が懸命に立ち上がる姿には燃えましたし…
『ファンタスティック・フォー』はまだ二週目なので全国の映画館で公開されてますが、果たしてどれほどもつでしょうか(^_^;
驚くべきことにけっこうな赤字となったこの映画の続編を、FOXさんは諦めずに作る予定だそうです。あとからキンバーグさんが「X-MENの世界とは別」と言い出して目が点にもなったりしましたが、一応X-MENとのコラボ作品も企画されてるという噂。カオスですね…
Comments
SGAさんこんばんわ♪
前シリーズが結構明るめのノリにも見えましたから、リブートはその逆方向に舵取りをした感じにも確かに見えましたが、その鬱々さを上手く表現出来ていたかといえば自分もちょっと疑問な気もしました--;
①と②は同意できますねーwリードとベンはビクターが暴れた辺りでもう仲違いが戻っていた感じもしましたし、そのせいか自分も少し苦悩や葛藤が弱く見えてしまって・・。まあベンは政府に言いように使われていることを理解していた風もありましたから、彼をそそのかしたあの政府のお偉いさんの言葉もあんまり真に受けていなかったのかもしれませんが・・。
あとビクターも悪者になるのは分かってましたけど、その過程がおざなりと言うか持って行き方が少し強引な気もしましたね。プラネット・ゼロの事をもう少し詳しく描いてくれれば良かった気もします。
そんな感じでリブートスタートがちょっと失敗になりそうな雰囲気ではありますが、それでももしかしたら続編で化けるかもという可能性もあるので、自分も出来れば本作は一作目で終わってほしくなかったり・・。シルバーサーファーがまた出てくれば面白くなりそうですしねw
Posted by: メビウス | October 21, 2015 02:12 AM
>メビウスさん
こんばんはー
自分はこの暗いムード嫌いじゃないんですけど、「X-MENとどう違うのか」と言われたらそれまでなんですよね(^_^; それも最後まで貫徹できなかったし…
平成ライダー大集合映画がよく終盤にきてキャラクターが意味不明な行動・言動を繰り返すことがありますが、今回のファンタスティック・フォーはそれに近いものがあったような気がしますw
それでも前半はそちらに比べたらかなり丁寧だったかな~ それだけに惜しいんですよね
わたしもこれで終わってしまったらファンタスティックフォーがあまりに気の毒なのでどうか続いてほしいんですが、監督とキャストがいろいろもめてるみたいでどうも前途は多難ですねえ(^_^;
Posted by: SGA屋伍一 | October 22, 2015 10:11 PM
伍一くん☆
主役と監督が殴り合いになったと聞いてましたが、途中から横やり入ってお話が最後のほうでいきなりお気楽なかんじになったのはそのせいだったのね・・・なるほど・・・
いじくって中途半端なエンタメになったのなら、本当に気の毒だわ。
暗いまま突き進んで欲しかったなー
次回作はどっちの方向へいくのかしらね?
Posted by: ノルウェーまだ~む | October 26, 2015 12:53 AM
>ノルウェーまだ~むさん
監督と役者が険悪でも意外といいものができる場合もあるんですけどね。この間のマッドマックスとか。ただこの映画に関してはもろ裏目に出た感はありますね… まあベンとリードのようにトランク監督とマイルズ君も仲直りしてほしいものです
続編、上ではああ書いたけどあるのかな(^_^; ソニーがスパイダーマンを「4」まで作る、との予定をあっさりひるがえした例があるだけに…
Posted by: SGA屋伍一 | October 26, 2015 10:32 PM