不殺仕事人 ドラマ版『デアデビル』シーズン1なんちゃって総解説
映画だけでなくTVドラマにまで拡大を続けるマーベル・シネマティック・ユニバース(…)。その最新作でNYの暗黒街を舞台とした『デアデビル』がこのほどNetflixより配信されました。その面白さに「ああっ」と言う間に全話視聴してしまったので、感想をまとめておきます。完全ネタバレの観た人むけです。
#1 「戦いのゴング」
デアデビルがなぜ特殊能力を得たか、ヘルズキッチンがどれほど腐敗してるかが説明される第1話。この回のみニコニコ動画の特別配信で見ましたが、なぜか合間にお笑い芸人さんたちの解説が入っていて非常に邪魔でした(なだぎさんは好きですけど)。CGもワイヤーもなく鍛え抜かれた肉体がひたすらぶつかりあうアクションシーンに息を呑みました。特に印象深いのは、予告でも使われていたデアデビルが口から血を垂らしながらゆっくり起き上がる例のカット。「けっとばされてもすぐおきろ ふんづけられてもまたおきろ」という『けろっこデメタン』の主題歌が思い出されます。
#2 「カットマン」
誘拐された子供を追ってマフィアと戦っていたデアデビルは、ミスから重傷を負って通りがかった看護師に助けられる… 早くもコテンパン状態になってて、この調子で13話もつのか!? とすごく心配になる第2話。
ドラマ版デアデビルの大きな特徴のひとつである「痛描写」が光る回。ヒーローは普通殴られても平然としてるものですが、DDの場合は「肉がじくじく裂けてるなあ」「内出血で鈍痛が響いてるなあ」という感覚がよく伝わってきます。それはともかく、個人的にはこの回がベストエピソードでした。
かつての自分のように父の名を呼びながら泣きじゃくる子供のために、満身創痍の体でマフィアの巣窟に乗り込むマードック。その手が幼きものに届いた時、わたしの鼻水は滝のように流れ落ちたのでした
#3 「吹雪の中のウサギ」
冒頭とクライマックス以外は地味な法廷劇がつづく第3話。そしてラストシーンで満を持して「名前を言ってはいけないあのひと」…ウィルソン・フィスクというかキングピンが登場します。この回が「ピン」で遊ぶボウリング場から始まるのはその伏線だったのか? まあこの「キングピン」という呼称、シーズン1では結局最後まで使われませんでしたけどね… 正義のために戦っていたのに思わぬ犠牲者を出してしまい、うちのめされるデアデビルの姿が胸に迫ります。
#4 「故郷」
もったいぶった初登場の直後に画廊のオーナーといい感じになってしまうフィスク。その影でマードックと関わったた看護師のクレアはロシアン・マフィアに狙われて絶体絶命のピンチに。罪無きものの命が風前の灯のまさにその時、絶妙なタイミングで現れる正義の味方…という非常にヒーローものらしいエピソード。でもシーズン1でそういう話、第一話とこの回くらいでしたねえ~ 落ち込み気味のマードックを慰めるクレアの言葉に鼻水が垂れ、デートを邪魔されてロシア人をボコボコにするフィスクに小便が漏れました。
#5 「火の海」 #6 「濡れ衣」
フィスクさんの個人的な怒りをかったために追い詰められるロシアン・マフィア。そのとばっちりでヘルズ・キッチンは火の海と化し、デアデビルは濡れ衣を着せられて警察からも追われる身に… あれ? 元々追われてたっけ? 無実を証明するためにロシアン・マフィアのボスを抱えて廃ビルに逃げ込んだDDですが、警官隊に囲まれるわ、ボスは死にそうになるわでシーズン1前半最大のピンチに陥ります。『デアデビル』の悪役というのはどいつも極悪人ばかりで決して許してはいけないやつらばかりなんですが、それでもどうしても憎めないところがありまして… それは彼らが「悪人なりに全力で生きてる」からなんだと思います。決して相容れない存在のマットとウラジミールがドカバキ殴りあいながら、最後の最後にちょっとだけお互いを思う。そういう話にわたし弱いんです。
#7 「スティック」
6話までを第1部、8話からを第2部とするとインターミッション的なエピソード。マット少年を格闘技に導いたスティック師匠との出会いと再会が描かれます。このスティック師匠、亀仙人やヨーダとは違って人格的に相当問題があります。弟子のマットのことも案じてはいるようですが、その愛情の示し方が恐ろしくひねくれていたり。スティック先生の上にいるのは誰なのか、彼らが狙っていた「ブラックスカイ」とはなんだったのか、このシーズンでは結局明らかになりませんでした。次シーズンへの伏線でしょうか。あとDDはずっと徒手空拳で戦っていましたが、師匠との再会に思うところがあったのか、この回から棒の武器「ビリークラブ」を使うようになります。
#8 「鏡に映る亡霊」
気弱なぽっちゃりおデブだったフィスクが、なぜ悪の帝王キングピンとなったかを描く回。「ぼくたち似てるよね」「似てへんから」というやり取りがありましたが、やはり似てるというか共通項の多いお二人さん。父を殺されたマットと、父を殺したフィスク。この合わせ鏡のような構造がドラマ版の骨子となってる気がします。そしてラストでいよいよ表舞台に乗り出すフィスク。がんばれ! 負けるな!とつい応援したくなります(^_^;
#9 「自分の中の悪魔」
最強の敵を迎えて最大のピンチを迎えるデアデビル。その最強の敵というのが「忍者」というのがなんともアレですが… ともかくDDのやられっぷりがあまりに痛々しくて目を覆いたくなります。こんなに頻繁に痛々しい目に会うヒーローって他に『ワイルド7』の飛葉チャンとデロリンマンくらいではないでしょうか。あと忍者さんはあんなに強かったのに退場の仕方がすげーあっけないあたりが忍者らしくてよかったです。
#10 「親友との対立」
前回ラストで親友のフォギーに正体がバレてしまったマット。彼が今までなにをしてきたのか知ってしまったフォギーは激しく動揺する。あの時 同じ花を見て美しい といった二人の心と心が今はもうかよわない。あの素晴らしい愛をもう一度~♪ …9話でメタメタにやられてしまったため、今回マットは寝たきり。ひたすらフォギーへの弁解を繰り返します。その中で語られる二人の学生時代の話にほっこりしたり、マットがヴィジランテ(自警員)への道を歩み始めたきっかけに沈んだ気持ちになったり。デアデビルの超聴力というのはもちろん戦闘にも役に立ちますが、なによりもまず「弱者の悲鳴」を聞き逃さないためにあるんだなあと。あと「こんなことしてたらいつか死ぬぞ!」「ぼくの能力を説明するのは難しい」というセリフにうなずくことしきり。
#11 「正しき者の道」
邪魔者は全て片付けた!と意気揚々だったフィスクさんですが、何者かの罠にはまりパーティーは大参事。愛する人も重態に陥ってしまいます。おろおろしまくりのフィスクにいつになく優しい言葉をかけられた腹心の悪メガネは単独である行動に出、それが裏目に出てしまうことに… このウェスリーさんも生かしておいてはいけない極悪人でしたが、亡くなってみるとちょっとさびしかったりして。デアデビルはようやくそれなりに動けるようになり、フィスク配下の仕立て屋さんと激しいバトルを繰り広げます。ん? このスーパーヒーローものなのに敵がチンピラばっかりというあたり、『怪傑ズバット』を彷彿させます。あと11話に至っても例のコスチュームが登場せず海賊マスクのままとか、「思い切ってるよなあ」と思いました。カレン役のロザリオ・ドーソンさんもこの回で退場。『シン・シティ』でも見てましたがこのドラマでめっちゃ好きになりました。
#12 「残しゆくもの」
ナンバー2まで奪われて怒りが天まで突き上げてしまうフィスク。彼をはめたのは一体何者か。そしてその怒りはフィスクの正体を探るジャーナリスト、ベン・ユーリックに向けられる。このドラマで主人公サイドのお父さん的なキャラと言っていいベンさん。死亡フラグがバンバン立ちまくる中、彼は果たして生き残ることができるのか。いや!お願い!死なないでベンさん! …この回のアクションの見所は、マットがスーツ姿のままでバルクールを駆使して麻薬の製造所を突き止めるシーン。よたよたしてたボスの一人マダム・ガオも意外な強さを発揮してたまげました。
#13 「デアデビル」
シーズン1最終回。頂点から底辺にまで転落したフィスクは恋人と新天地を目指そうと決死の脱出を試みるが、その前にやっとこコスチュームを着用したあの男が立ちはだかる。デアデビルとキングピン、宿命の二人の対決のゆくえは果たして…(大体予想つくけれど)。このドラマ版『デアデビル』って1,2話をプロローグとするならば、あとは「いかにしてキングピンが没落していくか」という話だったなあ…としみじみ思いました。愛を知ったために築き上げた全てを失ってしまうって、ロマンチックですねえ。演じるは『ジュラシック・パーク』でも出演してた「微笑みデブ」ことヴィンセント・ドノフリオ氏。彼の新たな代表作となったといっても過言ではないかと。そしてマットを演じてたチャーリー・コックスもナイーブながらも信念を貫き通すヒーローを体現していて素晴らしかった。『スターダスト』『博士と彼女のセオリー』などでも見ていたのですが、そちらではあまり印象に残らなかっただけに(^_^;
あとこのドラマ、シーズン1で切りよく終わってくれた点も大変良かった。『エージェント・オブ・シールド』でもそうでしたが、そういうところにスタッフの良心を感じます。
Netflixでは今後同じくNYを舞台として『ジェシカ・ジョーンズ』『ルーク・ケイジ』『アイアン・フィスト』を製作予定。その3名とデアデビルが『ディフェンダーズ』を結成するそうです。また『デアデビル』も「アメコミドラマ史上最高傑作!」という評を受けてかシーズン2が製作決定いたしました。おいかけるの本当に大変なんですけど…
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