怪演総進撃 諌山創・樋口真嗣 『進撃の巨人 ATTACK ON TITAN エンド オブ ザ ワールド』
公開初日こそ賛否両論真っ二つだったものの、日が経つにつれどんどん酷評が目立って行った実写版『進撃の巨人』前編。このままいくと後編ではどうなってしまうのだろう… と戦慄しながら待っていた『進撃の巨人 ATTACK ON TITAN エンド オブ ザ ワールド』、ご紹介いたします。謎の巨人化現象により絶体絶命の危地から脱出したエレン。だが彼を危険視した調査兵団は、人間に戻ったエレンを厳重に縛り上げ、銃殺の刑に処すことを決める。またしてもピンチに陥ったエレンを救ったのは、突如として飛来した謎の巨人であった。ミカサやアルミンが戸惑うのをよそに、巨人はエレンをいずこかへ連れ去っていく。果たしてエレンと仲間たちの運命は。そして人類は巨人の恐怖から解放されるのだろうか…
というわけで?予想通りめっためたに批判されている本作品。確かに悪いところは10や20ではありませんでした。でもいいところもいっぱいありました! ですからわたしはもっぱらいいところだけを取り上げていこうと思います。
まず1点目は、後編が映画オリジナルの展開であったこと。前編はおおむね原作と同じ流れだったので、原作を読んでるとどうしても先の展開が読めてしまうところがありました。しかし今回は原作とは別に物語に決着をつける!ということで「先のよめない面白さ」がありました。
2点目は「前編の伏線が生きてくる」ということ。冒頭で転がってた不発弾、巨人がいきなり出現した理由、爆弾泥棒たちの正体、エレン(人間体)の必殺技など、一か月経って忘れかけてたあれやこれやが後編では思わぬところで再登場したり明かされたりします。確かに100点満点といえるほどきれいに着地はしてませんでしたが、いきあたりばったりでなく、ちゃんと考えられて脚本が書かれてたんだなあ…ということはよくわかりました。
3点目は「久々の東宝怪獣映画復活」ということと、「この映画でしか見られない映像がある」ということ。このブログを始める直前の『ゴジラ ファイナルウォーズ』から11年、ようやっと日本の怪獣映画の総本家とも言える東宝が本格的に怪獣映画を作ってくれました。しかも監督は平成ガメラの樋口真嗣氏。それだけでたとえどんなに内容はひどかろうとも応援したくなるというものです。さらに日本独自の撮影技術と言える「特撮」がふんだんに使われているのも嬉しい。まあぶっちゃけCGにそれほどお金がかけられなかったからかもしれないですが、特撮には特撮にしか出せない味があるわけで。VFXと比べてどっちが優れている、劣っている、ということではなく、いろんな技法があることがいいのだと思います。
とはいいながらも、これからますます特撮は消えゆく存在となっていくでしょう。デジタルに追われていくフィルム撮影のように。だからこそわたしは応援したいんですよね…
あと後編は前編よりもちゃんと怪獣映画になっていたと思います。前編のダイダラボッチみたいな妖怪じみた巨人も強烈ではありましたが、わたしはやっぱりちゃんとかっこいい怪獣のバトルがみたい。そこへいくと後編ではスピーディな怪獣2頭のガチンコあり、怪獣対さらにでかい大怪獣のバトルありと大変楽しませていただきました。
最後にほめるべき点は「主人公たちがちゃんと成長してる」ということ。第1部では非情な現実にうちのめされ、悪い大人たちのいいなりになっていたエレンとミカサですが、第2部ではうっかり流されそうになりながらも、ちゃんと自分の頭で考えて何が悪いのか、何が理不尽なのか自分の頭で答えを導き出しています。
脚本町山さんの言によるとこの作品の主題は「右翼も左翼も相打ちになって滅んじまえ」ということだったそうで。たしかに権力者というのは、思想の別なく「大義のためには少数の犠牲はやむを得ない」と庶民を切り捨てる例が多い。自分たちの身はしっかりと安全なところに置いといて。
この実写版『進撃の巨人』からは「ずるい大人たちはもっともなことを言って君たちをだまそうとするけれど、そんな大人たちにだまされず何がおかしいのか自分の目で見極めてほしい」という若者たちへのメッセージを感じました(この説教くさいところが一部の人はダメだったようですが(^_^;))。
ただほとんどベタ誉めスタンスのわたしでさえ、エンドロール後のあれはどうかと思いました。もう一人の脚本担当の渡辺雄介氏は『ガッチャマン』でも同じことをやってましたがあれがクセなんでしょうか。あえてああいうオチにしたのであれば、さらにクオリティとカタルシスを向上させた続編を作ってみせるのがクリエイターとしての筋だと思います。「もういいよ勘弁してくれ」という声が怒涛のごとく聞こえてきそうですが、わたしは待ちます。
さて、ここまで読んで「お、興味なかったけど面白そうじゃん」と思われた方、どうかわたしの感想は信用しないでください。もし「なんだか危ない予感がする」と思われたならスルーするのが吉だと思われます。
時々「この人の批評は信用している・できない」という文を目にすることがありますが、何を観て何を観ないか決めるのはあくまで自分のセンスではないでしょうか。でも逆にどんなにフルボッコな映画でも「面白い!」と思えたらそのことを自信を持って言い続けましょう。そう負けないで泣かないで消えてしまいそうな夜は あなたの声を信じあるけばいいの。
かなり酒が入っていて気が大きくなっているせいか今日は結構偉そうなことを書きました。えへんぷい。『進撃の巨人 ATTACK ON TITAN エンド オブ ザ ワールド』は1週目で『ヒロイン失格』に逆転されてしまいましたがまだまだ大ヒット公開中。前編はたしか今週で大体終わってしまうようなので、一気観するならおはやめにどうぞ!
Comments
>エンドロール後のあれはどうかと思いました。
「『メイズ・ランナー2』に続く」って字幕を出せばよかったんですよ。
楽しみです、『メイズ・ランナー2』:-)
Posted by: ナドレック | October 10, 2015 03:08 PM
>ナドレックさん
それこそ「3」までひっぱることになっちゃうじゃありませんか!w
Posted by: SGA屋伍一 | October 11, 2015 05:41 PM
伍一くん☆
ああ・・・怪獣映画だったのね?
前編は絶賛していた私も、さすがに後編はどうなの?って思っちゃった。
絵画のような美しいシーンも悪くはないけど、ちょっと長いというか、むしろ教訓めいたものと関係ないし~で、そういう点がアンバランスに感じたかな。
まさか3はないでしょう?
Posted by: ノルウェーまだ~む | October 15, 2015 10:35 PM
>ノルウェーまだ~むさん
まあたしかにエヴァの悪影響というか、「いつの間に着替えたんだ?」みたいなシーンありましたね(^_^;
それでもわたしはこの映画大好きです。出来の悪い子ほどかわいい!みたいなw
3はたぶんないでしょうが、原作完結後にリブートがあったりして
Posted by: SGA屋伍一 | October 18, 2015 09:24 PM