« 熊出没チュー意! バンジャマン・レネール ステファン・オビエ&バンサン・パタール 『くまのアーネストおじさんとセレスティーヌ』 | Main | クマジン・オール・ザ・ピープル セス・マクファーレン 『テッド2』 »

September 10, 2015

マッドリラックマ ヤン・スベラーク 『クーキー』

Cky1クマの映画の話が続きます。別にそんなにクマがすきってわけでもないんですが… 今回紹介するのはチェコのしょぼくれたテディベアが活躍する『クーキー』。まずはあらすじから。

喘息もちの少年オンドラの一番の親友はピンクのテディベア・クーキー。だがいい加減くたびれてきたクーキーは「ほこりが出るから」というママの独断でゴミに出されてしまう。「無事でいてほしい」と願うオンドラの祈りが天に通じたのか、クーキーはゴミ捨て場で自我に覚醒。小さな神々が住む森の中で迷いながら、クーキーはオンドラの元へ戻ろうと奮闘する。

チェコは昔から人形劇が盛んな国。その人形劇をコマ撮りアニメとしてアレンジしたものがいわゆる「チェコアニメ」です。『クーキー』はアニメではありませんが、チェコアニメを若干先祖がえりさせて、実写ドラマとハイブリッドさせたような作品です。
同じ形式の作品といえば少し前の『マペッツ』正続編があります。ただあちらが人間と人形が同じ場面に出ていたのに対し、こちらは人間の世界と人形の世界はそれなりに分かたれております。
で、いかにもチェコらしいのがキャラクターのグロテスクさ(笑)。主人公のクーキーはかわいらしいんですが、彼を助けてくれる「村長」や敵対するアヌシュカなどは、いかにも「妖怪」といったふうないでたちをしております。くわしくはこちらを参照。しかもその妖怪の周りを本物のミミズやらムカデやらが這い回っていたりします(リスや小鳥さんもいますけどね)。苦手な方もいるでしょうけど、わたしなどはかえってそういうダークな造形にチェコ特有のカラーが感じられてかえって心惹かれたりします。

さらに「チェコ」というキーワードで考えると、チェコアニメの御大シュバンクマイエルを彷彿とさせるような要素もありました。シュバンクマイエルの作品には妄想が次第に現実に侵食してくるものが多いんですが、『クーキー』も「少年の妄想かも?」と思えていたことが現実に痕跡を残しているようなシーンがあり、ドキッとさせられました。もっともシュバンクマイエルの作品ほど怖いものではなく、少年とクーキーの純粋な思いにかえってほっこりするような仕上がりになっております。

あとお国柄とか全く関係なく面白かったのが、この手の妖精ものには似つかわしくない「車」が大活躍するということ。普通妖精さんの世界ではあまり現代文明の利器は登場しないものですよね。トーベ・ヤンソンさんも日本のアニメでムーミンが車に乗ってるシーンを観て激怒されたそうですし。
ところがクーキーが迷い込んだ妖精の森では、上の位の者はなんでか木で出来た乗用車を使用してたりします。いったいなんで動いているのか謎です。木だけに気(キ)で動かすんでしょうか… … それはともかく。
ヘンテコな車に乗ったヘンテコな妖精がマッドマックスばりのカーチェイスを繰り広げている様はすごくヘンテコで痛快でした。こんな映像はめったに見られるものではありません。

Cky2はたしてクーキーは無事親友のもとに戻れるのか。戻ったとしてもまたママに捨てられてしまうのがオチではないのか。子供のころ親に勝手におもちゃを捨てられた経験のある人には、涙なくしては見られません。
『クーキー』はもうじき改装に入る新宿武蔵野館を中心に、全国でちょぼちょぼと公開中。くわしくは公式サイトをご覧ください。次はいままたしても熊が活躍する『テッド2』をとりあげます。本当にそんなに熊が好きなわけでもないんですが


|

« 熊出没チュー意! バンジャマン・レネール ステファン・オビエ&バンサン・パタール 『くまのアーネストおじさんとセレスティーヌ』 | Main | クマジン・オール・ザ・ピープル セス・マクファーレン 『テッド2』 »

Comments

Post a comment



(Not displayed with comment.)


Comments are moderated, and will not appear on this weblog until the author has approved them.



TrackBack


Listed below are links to weblogs that reference マッドリラックマ ヤン・スベラーク 『クーキー』:

« 熊出没チュー意! バンジャマン・レネール ステファン・オビエ&バンサン・パタール 『くまのアーネストおじさんとセレスティーヌ』 | Main | クマジン・オール・ザ・ピープル セス・マクファーレン 『テッド2』 »