« 終わりなきネタを探し求めて アラン・テイラー 。『ターミネーター:新起動/ジェニシス』 | Main | 進撃の小人 ピエール・コフィン&カイル・バルダ 『ミニオンズ』 »

August 10, 2015

愛のビンボン脱出大作戦 ピート・ドクター 『インサイド・ヘッド』

20150806_193324_800x450♪ゆかいなやつさ ビンボンビンボンロケットで飛ぶよ ビンボンビンボン

えーと… ビンボンって何? というわけでご紹介します。ピクサー2年ぶりの最新作『インサイド・ヘッド』です。


人間の頭の中には司令塔のような施設があります(この映画ではそういうことになっています)。そしてその司令塔にはヨロコビ(修造っぽい)、カナシミ(どんくさい)、イカリ(シンジ君ではない)、ムカムカ(水商売っぽい)、ビビリ(虫っぽい)という5つのキャラクターがいて、彼らが代わる代わる信号を送ることによって、わたしたちは感情を発露する仕組みになっています。
この映画の舞台となるのは、ライリーという一人の女の子の頭の中。住み慣れた土地から引っ越して不安定になっているライリーの脳内で、ドジをふんだカナシミがヨロコビともども司令塔からすっ飛ばされてしまいます。ライリーに子供らしい感情を取り戻させるため、凸凹コンビは脳内の危険地帯をびくびくしながら旅することに…

えー、まずこのぶっとんだ設定が楽しいですね。司令塔で記憶が形成されると、ボール状のそれは巨大な貯蔵庫へ送られる仕組みになっています。ちょっとパチンコ台に似てなくもない。ただこの貯蔵庫にも限界はあり、定期的に掃除人たちがいらなそうな記憶を掃除機で吸い取ったりします。「忘れる」ってことのメカニズムをこんな風に描写しているわけですね。
他にも遊園地のような場所もあれば鉄道も走っていたり、はたまた底知れぬ焼却炉もあったり… 脳内をここまでにぎやかにワンダフルに描いたそのセンスがとても素晴らしいです。ピクサーお得意の小ネタも矢継ぎ早に連発されます。
そんな自由すぎる脳内空間の中で、とりわけわすれがたいのが「ビンボン」というキャラクター。ピンク色の象で木製の手押し車で空を飛んだりする豪快な野郎です。ていうかピンクの象ってアル中患者が幻覚で見るっていうアレじゃないのか!?
まあコレの正体がなんなのかというと、実はライリーがごくごく幼いころに考え出したイマジナリー・フレンド=空想上の友達なんですね。そしてもう小学校高学年になろうかというライリーはすでにこのビンボンを忘れかけております。
イマジナリーフレンドを扱った他の作品には西原理恵子さんの『いけちゃんとぼく』、スペインの児童文学『くじらのホセフィーナ』などがあります。きっと子供のころは誰しもこういう友達を創造(想像)して遊ぶものなんでしょうね。うちの姪っ子にも「ニラリーノさん」というイマジナリーフレンドがいます。餃子を焼くのが得意なんだそうです。詳しい姿かたちは不明。
ただ悔しいのはわたしにはそういう記憶が全くないこと。オリジナルの特撮ヒーローを考え出してノートに書き留めたりはしてましたが… 本当に完全に忘れてしまったのか、それともそういう情操に乏しかったのか。脳内の隅から隅までを捜索して、引きずり出してやりたい衝動に駆られます。

話は変わりまして。わたくし今回の『インサイド・ヘッド』、ある意味ピクサーの原点回帰的な作品だと思いました。ピクサー初期の三大傑作といえば『トイストーリー』『モンスターズ・インク』『ファインディング・ニモ』であることに異論はないでしょう。この三作品にはある共通点があります。それはまず凸凹コンビのバディ・ムービーであり、そのコンビは「ある子供」のために必死にがんばる…という点です。『バグズ・ライフ』があまり語られることもなく、続編を作られる気配もないのはこの法則を外れているからかもしれません。
しかしその後ピクサーも「同じパターンばかりではよくない」と考えたのでしょうか。バディ・ムービーではあるものの、恋愛風味だったりサクセスストーリーだったりまた違う種類のものが目立ってきます。あるいは子供そのものがバディだったりとか。そもそもバディものでなかったりとか。
ただここ最近売上的にはともかく、方向的にはなんとなく迷走してる気がするピクサー。続編ものを連発したり、かと思えば『メリダ』のようにあんましピクサーらしくないものにも手を出したり。
そこで「自分たちらしく、かつ独創性溢れる作品とは何か」ということで、かつての黄金パターンに乗っ取った、このオリジナル作品『インサイド・ヘッド』を作り上げたんではなかろうかと。考えすぎですかね(^_^;

監督は『モンスターズ・インク』『カールじいさんの空飛ぶ家』のピート・ドクター。こうやって並べてみるとこの人はいつも「親の目線」で映画を作っているなあ、と感じました。そういう意味ではピクサーの監督陣ではとりわけ作風がはっきりしてる人とも言えます。ラセターがディズニー本家も統括しなければならず、アンドリュー・スタントン、ブラッド・バードが余所でも仕事をしている今、ピクサーの中心となるのはもしかしてこの人かも。問題は製作ペースがかなりゆっくりってとこでしょうか…

4904810835479『インサイド・ヘッド』は夏の超大作に押されがちではありますが、現在全国で公開中。次はCGアニメとして最大のライバルとなっている『ミニオンズ』を紹介する予定です。


|

« 終わりなきネタを探し求めて アラン・テイラー 。『ターミネーター:新起動/ジェニシス』 | Main | 進撃の小人 ピエール・コフィン&カイル・バルダ 『ミニオンズ』 »

Comments

私はこの映画、すごい良く出来ているんだけど、欲を言えば意外性がなくて割とトントン拍子に進んで終わっちゃったのが、ちょっとだけ残念かな、と。
迷走かどうか知らないけど、私は今後も色々なジャンルにチャレンジしていってほしいですね。実際この映画もかなり独創的だしな。

Posted by: ゴーダイ | August 10, 2015 at 11:09 PM

私にもイマジナリー・フレンドはいなかったなあ。
しかし、ピンクの象って、フロイト的にかなり、やばいんじゃ?

Posted by: ふじき78 | August 10, 2015 at 11:55 PM

>ゴーダイさん

まあ結末は予想できますよね(^_^; これが大人向けの映画だったら主人公が発狂してバッドエンド、ということもありそうだけど

>私は今後も色々なジャンルにチャレンジしていってほしいですね

次の恐竜映画はあんまりピクサーっぽくない感じですね。なんかわたし泣かされそうな予感

Posted by: SGA屋伍一 | August 11, 2015 at 10:37 PM

>ふじき78さん

エッチに目覚めるのが早い人はイマジナリーフレンドが消滅するのも早いんじゃないですかねえ~ わ、私は違いますよ?

Posted by: SGA屋伍一 | August 11, 2015 at 10:38 PM

Post a comment



(Not displayed with comment.)


Comments are moderated, and will not appear on this weblog until the author has approved them.



TrackBack

TrackBack URL for this entry:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/70832/62023278

Listed below are links to weblogs that reference 愛のビンボン脱出大作戦 ピート・ドクター 『インサイド・ヘッド』:

» インサイド・ヘッド [HEAVEN INSITE's Blog]
 「面白い度☆☆☆☆ 好き度☆☆☆☆☆」  月に連れてってあげてね。  心の中のイメージを具体化して描くっていう内容の作品は、かつて私も描いたことがあるんだけど、これがな [Read More]

Tracked on August 10, 2015 at 11:09 PM

» 『インサイド・ヘッド』を109シネマズ木場5で観て、だから何だったのだろうふじき★★★ [ふじき78の死屍累々映画日記]
五つ星評価で【★★★ヨロコビとカナシミの冒険は終わった。めでたしめでたし。で、それでいいの? 何か一つ釈然としない】 吹替版で鑑賞。 上手い下手というより、役柄に合っ ... [Read More]

Tracked on August 10, 2015 at 11:55 PM

» ヨロコビの猪突猛進。(^_^;)〜「インサイド・ヘッド」〜 [ペパーミントの魔術師]
吹き替え版しかありませんでした。TOHOシネマズくずはモールにて。 ・・・HEROが舞台挨拶で結構ながかったから焦ったよ〜〜。 ソッコーで食べて2本目。(;´∀`) えっとね〜、他人の結婚式にでも迷い込んだような写真のオンパレードに 歌詞テロップつきのドリカムはちょ...... [Read More]

Tracked on August 12, 2015 at 12:29 AM

» 「インサイド・ヘッド」 [ここなつ映画レビュー]
「もうそんな年じゃないから」と言う息子を半ば強引に連れ出して鑑賞。確かに主役の少女ライリーとほぼ同世代の息子にとっては、「もうそんな年じゃない」感が満載なのかも。背伸びのジェネレーションであるにも関わらず、一段上がって高見で見ることもできない。そう、これはむしろ子供を持った大人のあるあるネタなのかも。内容は極めて普通。「脳内ポイズンベリー」で学習済みなので、脳内での役割分担に新鮮な驚きもない。いや、もちろん着想はこちらの方が先なんでしょうが。子供というものが無条件に両親から愛される存在であるという前... [Read More]

Tracked on August 13, 2015 at 01:41 PM

« 終わりなきネタを探し求めて アラン・テイラー 。『ターミネーター:新起動/ジェニシス』 | Main | 進撃の小人 ピエール・コフィン&カイル・バルダ 『ミニオンズ』 »