史上最大の壁ドン 諌山創・樋口真嗣 『進撃の巨人 ATTACK ON TITAN』
洋画のシリーズ大作が押し寄せる2015年夏。対する日本が送り出すのはこれ… で大丈夫なのか!?(^_^; 諌山創氏原作の大ヒットコミックを、『ガメラ』シリーズの樋口真嗣監督と名物評論家の町山智浩(脚本)が挑む実写映画『進撃の巨人 ATTACK ON TITAN』、ご紹介します。
おそらく遠い未来。謎の怪物「巨人」の襲来により、文明の後退を余儀なくされた世界。人類は堅固な防壁を何重にも作って隠れ住むことにより、100年以上の平安を得ていた。だがその平安も突如として現れた超大型の巨人の出現により、壁もろとも崩れ去る。外に出ることを願っていた血気盛んな青年エレンは、圧倒的なまでの巨人の力と残酷性を目の当たりにし、己の存在のちっぽけさをかみしめる…
わたくし『進撃の巨人』はその人気と発想の奇抜さが気になり、原作コミックを5巻まで読みました。確かに面白い。ただ「一刻もはやく次が読みたいんじゃあ!」というほどははまらず、「そのうち思い出したらまた購読再開しようかな~」という程度の読者です。
そんなわたしが今回の映画を観に行く気になったのは、『ガメラ』の樋口氏が久々に怪獣を撮るということと、映画への造詣が深い町山氏がどんな脚本を練り上げたのか?ということが非常に気になったからです。
で、結論から申しましすと、実にヘンテコな映画でしたね(笑) と同時に感情移入できすぎて辛かったり燃えたりする作品でした。この点に関しては個人的には原作以上にビンビン響いてきました。その理由を今から説明いたします。
まずヘンテコな点から。原作の巨人というのは西洋的世界が舞台なので一応ファンタジー系の怪物っぽく見えるんですが、映画版の巨人は「超巨大型」以外、日本人が申し訳程度のメイクで素っ裸で演じてるのですごくぽかんとします。そんで演じている方々のほとんどがすごく平凡というか、その辺に普通にいそうな風貌なのですね。そんなご近所さんのような巨人たちが、人間をアイスクリームをかじるようにさわやかに頬張ったりする… そんなユーモラスでバカバカしい反面、恐ろしく気色悪いシーンが連発されます。とりあえずいっぺん観たら一年くらいは忘れないだろう…というインパクトがありました。
次いでどの辺が感情移入できたかという点。これは原作にはなかった部分だと思うのですが、主人公がけっこう大きなコンプレックスを抱えているのですね。最初こそ「俺はビッグになるんじゃあ!」と中二魂全開でいきがってるんですが、いざ逆境が訪れたら周囲に流されるままで何もできない。好意を寄せてくれる女の子がピンチに陥ってもただ茫然と見ているだけ。ほんで久しぶりにその子と再会したら、「あんた誰?」みたいなよそよそしい視線を投げかけられたりします。
そんな風に落ち込んでるところへ、ますますメンタルを追いこんでくれる上司や顧客やルールにうるさいご近所の人々。そう… 巨人たちの風貌が妙に身近なのは、わたしたちの周りのプレッシャーをかけてくる人たちの象徴だからだと思います。せっかくのんびり休みたいのに隣室でギャーギャー泣きわめく赤ん坊みたいのもいましたね…
そんなところへ「君はやればできるよ!」とさわやかに励ましてくれる先輩が現れます。若い主人公はそいつを真に受けて思い切ってチャレンジしてみますが、これが見事に大失敗。エールをくれた先輩はもちろん見て見ぬふりを決め込みます。
ああああ… あるあるあるある! 100%ではありませんが、若いころこんな経験した人ってけっこういるんじゃないでしょうか。「ない」という人はたぶん恵まれた境遇なんだと思います。よかったね!
だからこそ極限まで追い込まれた主人公が、むかつく上司やモンスタークレーマーをぶんなぐりひきちぎるシーンは拳を上げてシンクロせずにはいられないのです。
さて、この映画は喧嘩大好きでダメな映画には容赦ない町山氏が脚本を手掛けているという点でも注目を集めています。ですからこうも解釈できるかもしれません。
「日本はつまらん映画ばっかりだ! チャンスがあったら俺がすごい映画を作ってやるぞ!」と安全圏内で吠えていた評論家。しかし実際にやってみたら、結局日本映画のシステムに飲み込まれてダメダメな部分をひきついでしまう。そんな彼を映画ファンたちや評論家仲間は「それ見たことか」と徹底的に叩き潰そうとします。はたして某評論家の運命やいかに…
すでに樋口監督や造形の方がネットでブチ切れて物議をかもしているこの作品。ただ肝心の某評論家は特に目立った声明を出していません。一生懸命怒りをためこんで吐き出すタイミングを見計らっているんでしょうか。
願わくばその怒りはネット上ではなく、作品の中でぶちまけてほしいもの。完結編となる『進撃の巨人 ATTACK ON TITAN エンド オブ ザ ワールド』は一ヶ月後の9月19日から公開です。前編を超えるカタルシスが待っているか、目も当てられないカタストロフィーが待っているか… 今からドキドキです!
Comments
伍一くん☆
映画面白かったです!
この映画はコミックやアニメを見てない人の方が、楽しめたみたいね。
確かに詳しく聞くと、なるほど作品の良さが失われているのかな?って思うけど、これはこれで十分楽しめたわ~
後編はどちらのファンも納得できるようなかんじだといいね。
Posted by: ノルウェーまだ~む | August 24, 2015 12:21 AM
>ノルウェーまだ~むさん
ツイッターでは不評の方が多いので、「楽しめた」という意見を聞くと嬉しいです。なんでも原作者の諌山先生自らが「やるなら原作と変えてほしい」とおっしゃったそうで(^_^; 面白いですよね~
なにはともあれ後編も楽しみです!
Posted by: SGA屋伍一 | August 24, 2015 10:51 PM
やるなら原作と変えて欲しい・・・ですか。(;´∀`)
原作世界を忠実に再現しようとしてコケる作品もありますが
どのみち、もともとその原作やらアニメやらに思い入れが深いひとを納得させるのはこの手の実写版絶対ケチがつきますから
難しいもんですね。そこまで変えんでもええやろ~ってとこでしょうか。
予備知識のないほうが楽しめたパターンの私ですが、
それでも「大日本人」みたいな巨人たちにはポカーンでしたし、
なにより、たくさんのファンがいて、かっこかわいいキャラクターグッズがたくさんあって(これはアニメ版の影響ですかね)というなかで
どうしても、エレンがそこまで魅力的な主人公に見えなかったんですよ。知らない人間が見てもほんとにこんなキャラクターだったの?ではちょっとね・・・って思いました。
その反面でこちらの記事みて「なるほど~そういう見方もあるのか」って読ませていただいていちいちあるあるあるあるでした。(^_^;)
どう解釈するのかどこに楽しみや共感をみつけるのか
そういうのもありますね~。(*^_^*)
Posted by: Ageha | September 03, 2015 10:39 AM
>Agehaさん
こんにちは! コメントありがとうございます! 嬉しいです!
というわけでやっぱり原作ファンからはひんしゅくをかってる実写版ですが、「変えてほしい」と原作者自ら言ったと聞いた時には「諌山先生って面白いひとだな~」と感心しましたよ。むしろ監督や脚本の人が「そこまで変えないで…」とセーブをかけたそうです
でもまあやっぱり、全員日本人がやると決まった時点で無理があるんですよね。この企画。そんなポンコツなところがかえっていとおしいんです。ひろい心で感想読んでくださりこれまたありがとうございます!
Posted by: SGA屋伍一 | September 03, 2015 10:36 PM