進撃の小人 ピエール・コフィン&カイル・バルダ 『ミニオンズ』
夏といえば子供向けのアニメ映画がたくさん公開される時期。その乱戦を制したのは細田守監督の『バケモノの子』と、次いでこの作品でしょう。『怪盗グルー』シリーズの前日談『ミニオンズ』ご紹介します。次いでながら『グルー』1作目の記事はコチラ。2作目の記事はコチラ。
ミニオン… 彼らは人類誕生より地球に生息していた謎の生物。生態はいたずら好きで遊び好き、そしてなるべく強いボスに仕えること。だがどういうわけか彼らの仕えるボス…恐竜、王様、皇帝、ドラキュラetcは長生きしない。ボス不在の期間が長く続いた1960年代、(比較的)しっかりもののミニオン・ケビンは、ボスを探す旅に出る。お調子者のスチュアートと、甘えん坊のボブを連れて。はたして彼らは理想のボスに巡り合えるのか。
みなさんは子供にうけるアニメを作るとしたらどんなものを考えるでしょうか。素人のわたしが思いつくのは、色とりどりのファンタジーの世界で、かわいい動物が冒険するようなそういうアニメです。
ところがこの『ミニオンズ』は1960年代の英国で謎の物体3匹が冒険するという設定。『グルー』シリーズの下積みがあるからできたんでしょうけど、考えようによっては完全に子供置いてけぼりにも見えるような設定です。それでも全世界で大ヒットしてるわけですから、頭をひねります。わけわかんないながらもミニオンの「黄色い」「丸っこい」というデザインがお子様を引き付けるんでしょうかね。
あと先日『インサイド・ヘッド』が公開されてたからよくわかるんですが、この作品『グルー』シリーズのみならず、最近のCGアニメの中でもちょっと異質なところがあります。ピクサーが興したこのジャンル、やはり主な客層はお子様なので、教育的要素が盛り込まれていたり、主人公がなにかしら成長を遂げるのがセオリー。
しかし『ミニオンズ』では基本的に道徳の授業のような教訓はとりあえず見当たりません(笑) それどころか「悪って最高! 悪いことって楽しい!」と犯罪を推奨するようなセリフが多々見られます。
ケビンたちが仕える新ボス、スカーレット・オーバーキルは全然改心しないし、ミニオンたちも「いつまでもボスに頼っていてはダメだ。自分たちの道は自分たちで決めよう!」などとはまったく思いません。
でもね、そういうく~だらなくてなんの教訓にもならないところが素晴らしいじゃないですか。PTAご用達のようなCGアニメも嫌いじゃないですが、少しくらいこういう反教育的なCGアニメもあっていいと思います。
あと余談ですが、このアニメ、なんか『ルパン3世 カリオストロの城』を思い出させるような場面がけっこうあります。
ネタバレですがざっと書き出してみると
・乗用車で銀行を襲って逃走するシーンがある
・スカーレット・オーバーキルが不二子ちゃんっぽい
・その相棒のハーブの風貌がちょっとルパンっぽい
・城の床に突然穴があいて真下に落下するシーンがある
・怪しげな地下道をさまようシーンがある
・礼拝堂で行われる式典を主人公たちが妨害するシーンがある
などなど
まっ「単なる偶然」として片づけられないこともないですが、怪盗アニメの名作として、監督も参考にしてたのでは…と考えると楽しいです。
他にも城達也のジェットストリーム世代には懐かしい音楽の数々、世界各国から集まってきた個性豊かな悪者たち、風光明媚なロンドンの景色、ミニオンのベタなギャグや想像を超える展開…などなど楽しい要素がてんこ盛りです。
『ミニオンズ』は現在全国の映画館で大ヒット上映中。本家である『怪盗グルー』の第三弾も2017年6月に全米公開予定。ミニオンの進撃はまだまだ続きそうです。
Comments
本当にナンセンスでしたよねw
私はグルーあってのこいつらって感じだったので、面白かったけど、ちょっとさみしかったです。その点ラストは燃えましたけど!(しかも声もちゃんと師匠だったし!!
『カリオストロの城』と大きく違う点は、いつもなら露悪的な主人公がいいやつにならないってところかな。ナドレックさんも指摘してたけど。
Posted by: ゴーダイ | August 21, 2015 12:22 AM
>ゴーダイさん
返事が遅れてすいません。結局今回はグルーの部下になるとこまでいかなかったので、正式に彼の子分となるエピソードも見てみたいですなあ
>いつもなら露悪的な主人公がいいやつにならない
いいやつになってしまう話は『月泥棒』ですよね(笑)
Posted by: SGA屋伍一 | August 24, 2015 10:49 PM