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August 31, 2015

トムのミッションには不可能という文字がない クリストファー・マッカリー 『ミッション・インポッシブル:ローグ・ネイション』

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夏休み大作洋画もこれでコンプリートかな~ おなじみトム・クルーズがおなじみのあのヒーローを演じる人気シリーズ第5弾。『ミッション・インポッシブル:ローグ・ネイション』ご紹介します。

世界各国で破壊活動を行っている謎の組織「ローグ・ネイション(ならず者国家)。数々の難事件を解決してきたIMFのエージェント、イーサン・ハントはようやく彼らの手掛かりをつかむが、その矢先IMFはCIAの横やりにより解体。ローグ・ネイションの存在もハントの誤認ということにされてしまう。納得のいかないハントは政府に逆らい、国際指名手配をかけられながらも単独で「ならず者国家」を追いつめようとする。

毎回監督の違う『ミッション・インポッシブル』シリーズ。今回の監督はクリストファー・マッカリーというどちらかといえば脚本の作品の方が多い方。彼がこの前に撮った『アウトロー』も観てみましたが。これがいい意味で地味で渋くて西部劇でもそのまんまいけるような映画でして。5作目の監督に決まったと聞いて「今度の『ミッション~』はぐっと大人の雰囲気になりそうだな」と予想してたらその通りでした。前作『ゴースト・プロトコル』にはほとんどなかったお色気要素も加味されてましたしね(特に太もも)。
あと今回の目新しい点としてはCIAが前面に出てきたところでしょうか。仕事がかぶってて、その上いつも派手な活躍をするIMFみたいな組織があったら、CIAとしてはさぞ面白くないだろうな~と思っていたらやっぱりムカついてたみたいです。ローグネイションの攻撃をかわしつつ、CIAの足引っ張りにも気を配らなきゃいけないんだからハントさん御一行もまことにご苦労なことです。

そんな風に若干カラーの異なるところはありますが、このシリーズもようやく統一性が出てきたというか、ハントのキャラもブレがなくなってきたように感じられます。おそらく3作目からずっとJJエイブラムスが関わっているせいでしょう。ではそのハント君、どんなキャラかというと、「なんとなく坊ちゃんくさい」とでも申しましょうか。きっと育ちがいいんでしょうね。人を信じやすい、よくいえば純真、悪くいえばだまされやすい、そんなキャラです(それってスパイとしては致命的では…)。あと女性に対しても常に距離を取っているというか奥手な様子がうかがえます。
ただそんな人柄が慕われやすいのか、MIFの同僚たちはこぞって「あ~ん、ハントハントheart04」とすり寄ってきます。それこそ失職や命の危険も顧みずに。あまりこういうことは言いたくありませんが、まさに「ハント総受け」状態であります。
統一性が感じられるのはサイモン・ペグ演じるベンジーの存在も大きいですね。シリアスな場面でもユーモラスなセリフで和ませてくれる彼のポジションは、シリーズの中でもかなり重要なものになってきました。
MIFのレギュラーではもう一人一作目から出てるルーサーさんがおられるんですが、どうもキャラ立ちがいまひとつなせいか、ツイッターでもほとんど言及されてるつぶやきを目にしません。ここらで一皮むける必要があるかと思われます。

さて、作品の特色というのは比較対象や表があるとわかりやすいもの。というわけでこしらえてみました。「有名スパイ比較表」。一応ボンドはダニエル・クレイグ版、ハントは3作目以降の、ボーンは記憶を失ってからの…ということでご了承ください。
 
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昼休みに5分くらいでこしらえたものなんで細かいツッコミはどうぞご遠慮ください。

なんか最近米国ではスパイ映画が流行っているようで、秋には(遅れてですが)『キングスマン』、『コードネーム U.N.C.L.E.』、冬には本家?『007/スペクター』と公開が続きます。ジェイソン・ステイサムがぽっちゃりおばちゃんとコンビを組む『S.P.Y』 も 大変面白そうですが、こちらは日本公開未定。なんとかしてください。
Mirn1_2『ボーン』シリーズも第5作がそろそろ撮影開始とのこと。そして『ミッション・インポッシブル』もこの度のヒットを受けて早くも第6作の製作が決定しました。トムよ、なぜそう生き急ぐ!


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August 28, 2015

食べれますん 大岡昇平・塚本晋也 『野火』

Photoもう夏も終わりですね… みなさんよい思い出できたでしょうか。
わたしのお盆休みのメインは渋谷までこの重そうな映画を観に行ったことでした(^_^;  かつて市川崑も映画化したことのある大岡昇平の戦記文学に、鬼才・塚本晋也がチャレンジ。『野火』、ご紹介します。

終戦間近のフィリピンの島で、肺を患う日本兵・田村は食糧を求めてさまよっていた。時には一人で、時には仲間の兵隊たちとともに。わずかな望みをかけて友軍の集う拠点に向かおうとした田村たちだったが、米軍の攻撃は激しさを増すばかり。飢えと砲撃に極限まで苦しめられた田村の脳裏に、いつしかひとつの欲望がよぎりはじめる。

わたくし映画観た後原作も読んでみました。ストーリーは結末を除けば映画と大体一緒です。ただ原作は大岡先生の体験も多少交じってはいるんでしょうけど、あくまで架空の人物を主人公にしたフィクションとして書かれています。実際先生も「エドガー・アラン・ポーの『ナンタケット島出身のアーサー・ゴードン・ピムの物語』が枠となっている」と語っておられます。
一方映画の方は普通に田村=大岡先生として描いているように見えました。原作にはない「ものを書いていた」というセリフなどからそれがうかがえます。そして「現実もこれに近かったんでは…」と思わせられるほどのディティールと臨場感に満ちています。この辺は塚本監督の映像にかける執念の力がそう思わせるでしょうか。わたしたちもいつしか田村と共に腹をすかせ砲弾におびえ、森の中をうろつきまわっているような錯覚にとらわれます。

んで、これ太平洋戦争を主題にした映画ではありますが、政治的メッセージはほとんど感じられませんでした。そりゃ戦争はいかんと思うしこんな状況になったらすごく嫌ではありますが、旧日本軍だけに限らず、歴史を通じて世界のどこかで起きてることではなかろうかと。愚かな指導者の命令で、食料もろくに用意されず遠くに派遣された武装集団はやがてどうなるか。大抵は異国の地で餓死するか、地元の人たちになぶり殺しにされるかです。そんな極限状況で人はどうやって理性を保っていられるのでしょう。実際精神に異常を来してしまう者も少なくありません。しかし不思議なことにこれでもかというくらい地獄を経験している田村は、狂気との境をふらつきながらもなんとか理性を保ちます。

原作でも映画でも象徴的に描かれる「野火」。「野火」とは現地の人たちが野でたく火のことです(そのまんま)。この「野火」は何を表しているのか。ひとつ考えられるのは田村の中でかすかにゆらめく理性の光=人間性ではないかということです。なんたって基本的に火は人がおこすものですし、食べ物に火を通して食べるのも人間だけです。狂気に陥る一歩手前で彼をとどめているものなのかもしれません。
一方、火=危険なものと考えると全く別の意味が浮かび上がってきます。どちらかといえば劇中の「野火」は鬼火や狐火のような、だれがおこしたのかわからない不気味な印象を受けました。そうすると田村を禁断の欲望へと駆り立てる狂気の炎とも考えられます。
え~~~と、じゃあ結局どっちなんでしょう? 一生懸命考えた末、「よくわからない」という結論に達しました。 あるいはまったく別のものをさしているのか、大岡先生も意味とかあんまし考えてなかったのか… 文学ってむずかしいですねえ。

ま、そんな小難しいことを考えず映像だけでもビシバシ突き刺さる映画です。残酷なシーンもいっぱいありますが、塚本監督のセンスのゆえかそれなりに綺麗に見えました。個人的には後味もそんなに悪くありませんでしたし。ただこの辺は人によって意見が別れるところでしょう。「辛すぎた。トラウマになった」という人もいっぱいいます(^_^;

20150828_200843『野火』は決して上映館は多くありませんが、多くの評者の絶賛をあび、いま静かに話題を呼んでおります。劇場に関してはこちらをご覧ください。この度の映画化は大岡昇平という名前しか知らなかった作家に興味を持てたいい機会でもありました。代表作と言われる『俘虜記』も今日買ってきたのでおいおい読んでいこうと思ってます。


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August 24, 2015

暴れ食いラプトル コリン・トレヴォロウ 『ジュラシック・ワールド』

20060825100121ああ やばい 恐竜が来る 頭からかじる 人間たちを
逃げろ やばい 恐竜がきた 手足を食いちぎる 骨も残さず
この曲に合わせて歌ってください)
本日とうとう日本でも2015年度最大のヒットとなった15年ぶりのシリーズ最新作『ジュラシック・ワールド』、ご紹介します。

オープン間近でありながら、色々と問題がありすぎたために頓挫した「ジュラシック・パーク」。しかし多くの難題を乗り越え、約20年の時を経て「ジュラシック・ワールド」として再出発。オープン後には数えきれぬ客たちが押し寄せ、順調に収益を伸ばしていた。気をよくした開発部はさらに客をひきつけようと、T-REXをも上回る大型の肉食恐竜を誕生させる。ヴェロキラプトルの調教係として雇われていた元軍人のオーウェンは、そんな会社の暴走に不安の念を隠せずにいた…

えー、わたくし『ジュラシック・パーク』シリーズは1作目から映画館で観てて、当然前作の『Ⅲ』も記憶にあるんですが、あの時は世界でも日本でも「まずまず」くらいの盛り上がりだったんですよね。それが今回はなぜこんなにぶっちぎり状態なのか、その辺を考えてみたいと思います。


理由その1:「ひさしぶりだから」

頻繁にやられると飽きが来るものですが、一世代くらい間が開くと逆に新鮮に感じられたりするもので。そういうことですよね。


理由その2:「目新しい要素がいっぱい」
やっぱり一番大きな理由はこの辺ですかね… いくつかありますんでさらに小分けにしてあげてみます

目新しい要素その1:「夢の恐竜公園実現」 Ⅲまでの惨状を見てるとどうして実現できたのか不思議でたまりませんでしたが、子供にとってはたまらない夢の恐竜動物園を実際に見せてくれるわけですよ。もちろん映画史上でも初でしょう。だからわたしはパニックが起きずに二時間遊園地を楽しむ映画でもよかったんですけどね…

目新しい要素その2:「インドミナス・レックス」 T-REXを超える怪物を…ということで考えられたのがこのインドミナス・レックス。映画内で開発された、いわば空想上の恐竜であります。思い切ったことをしましたねえ。それだけに謎のベールに包まれた不気味さが漂う存在であります。

目新しい要素その3:「調教されたヴェロキラプトル」 シリーズでは人間たちに襲いかかるヴェロキラプトルですが、今回は主人公オーウェンの仲間として登場。まるで『ターミネーター2』的発想ですよね。しかし完全に仲間になったのかといえば、そこは爬虫類ですから怪しいところもあり…

目新しい要素その4:「モササウルス」 子供のころから恐竜図鑑ではなじみ深かったモササウルス。ですが海棲の大型爬虫類で映画に出てくるのはプレシオサウルスなどの首長竜ばかり。それが満を持しての登場です。化石より二倍くらいでかい気もしますが目をつぶりましょう。

目新しい要素その5:えーと、ここはややネタバレになっちゃいますが

「モンスターをやっつけちゃう」
ということ。『ジュラシック・パーク』シリーズが他のモンスターパニックものと違うのは、大抵モンスターをやっつけずに「逃げて終わり」というとこにあります。小賢しい人間が大自然の脅威にかなうはずあるまい、という教訓がそこには含まれているのかもしれません。けれどもそれがちょっと物足りなかったのも事実。できれば『ジョーズ』やや『トレマーズ』や『エイリアン』のように、豪快に怪物を退治してほしいと願うのが中二的男子であります(笑)。今回はあの手この手を使って見事にやってくれました。インドミナスは自然というより科学の産物なのでぶったおしてもいいだろう、とスタッフに判断されたのかもしれません。ともあれこのカタルシスがリピーターを増やしているのは間違いないでしょう。

ただ、目新しいことばかりではなく、旧作へのリスペクトもしっかりしてるのがこの映画の偉いところです。特に今回は1作目にもあった「純粋な夢が残酷な結果を産むこともある」というテーマが復活してましたからね。これがやっぱり『ジュラシック・パーク』の重要なポイントのひとつであると思うので。

アレ… そういえばそれなりにひさしぶりで、目新しい要素もいっぱい出して、旧作のリスペクトも一応してたのにそんなに盛り上がらなかったシリーズ映画がありましたね。あれはなんでダメだったのだろう。ター…なんとかと言ったかもしれません。

急に説得力がなくなってきた感がありますが、続けます。


理由その3:主に欧米においてですが、「クリス・プラットの魅力」

『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』ではラスカルと共演してたクリプラですが、今回はラプトルとのいちゃいちゃを見せつけてくれます。動物と並ばせると輝くんですよね、この人。そういえば『ジュラシック・ワールド』はちょっと『あらいぐまラスカル』と通じる部分もありました。


理由その4:主にというか完全に日本においてですが、「宮崎アニメとぶつからなかった」

実は『ロストワールド』も『Ⅲ』も日本でそれなりにヒットしてるんですが、それぞれ『もののけ姫』『千と千尋の神隠し』とぶつかってしまったために若干影が薄くなってしまった感は否めません。今回も『バケモノの子』という強力な妖怪アニメが立ちふさがりましたが、まだ細田守氏は宮崎御大ほどのビッグネームではないせいか、ジュラシックシリーズが見事なリベンジを果たしました。正直これは意外でしたねえ。

20140422_1bというわけでまだまだ快進撃を続けている『ジュラシック・ワールド』。実写洋画の不振が続いているこのご時世で、復活の兆しとなればいいのですが…

世界記録第3位の成績を受け、すでにさらなる続編も決定しております。今度は絶望的な状況から多くの試練を乗り越えて無事ワールドを再建する『プロジェクトX』的な話が観とうございます。恐竜映画としてはピクサーの『アーロと少年』も待機中。こちらも楽しみです。


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August 20, 2015

史上最大の壁ドン 諌山創・樋口真嗣 『進撃の巨人 ATTACK ON TITAN』

Sgkj1洋画のシリーズ大作が押し寄せる2015年夏。対する日本が送り出すのはこれ… で大丈夫なのか!?(^_^; 諌山創氏原作の大ヒットコミックを、『ガメラ』シリーズの樋口真嗣監督と名物評論家の町山智浩(脚本)が挑む実写映画『進撃の巨人 ATTACK ON TITAN』、ご紹介します。

おそらく遠い未来。謎の怪物「巨人」の襲来により、文明の後退を余儀なくされた世界。人類は堅固な防壁を何重にも作って隠れ住むことにより、100年以上の平安を得ていた。だがその平安も突如として現れた超大型の巨人の出現により、壁もろとも崩れ去る。外に出ることを願っていた血気盛んな青年エレンは、圧倒的なまでの巨人の力と残酷性を目の当たりにし、己の存在のちっぽけさをかみしめる…

わたくし『進撃の巨人』はその人気と発想の奇抜さが気になり、原作コミックを5巻まで読みました。確かに面白い。ただ「一刻もはやく次が読みたいんじゃあ!」というほどははまらず、「そのうち思い出したらまた購読再開しようかな~」という程度の読者です。
そんなわたしが今回の映画を観に行く気になったのは、『ガメラ』の樋口氏が久々に怪獣を撮るということと、映画への造詣が深い町山氏がどんな脚本を練り上げたのか?ということが非常に気になったからです。

で、結論から申しましすと、実にヘンテコな映画でしたね(笑) と同時に感情移入できすぎて辛かったり燃えたりする作品でした。この点に関しては個人的には原作以上にビンビン響いてきました。その理由を今から説明いたします。

まずヘンテコな点から。原作の巨人というのは西洋的世界が舞台なので一応ファンタジー系の怪物っぽく見えるんですが、映画版の巨人は「超巨大型」以外、日本人が申し訳程度のメイクで素っ裸で演じてるのですごくぽかんとします。そんで演じている方々のほとんどがすごく平凡というか、その辺に普通にいそうな風貌なのですね。そんなご近所さんのような巨人たちが、人間をアイスクリームをかじるようにさわやかに頬張ったりする… そんなユーモラスでバカバカしい反面、恐ろしく気色悪いシーンが連発されます。とりあえずいっぺん観たら一年くらいは忘れないだろう…というインパクトがありました。

次いでどの辺が感情移入できたかという点。これは原作にはなかった部分だと思うのですが、主人公がけっこう大きなコンプレックスを抱えているのですね。最初こそ「俺はビッグになるんじゃあ!」と中二魂全開でいきがってるんですが、いざ逆境が訪れたら周囲に流されるままで何もできない。好意を寄せてくれる女の子がピンチに陥ってもただ茫然と見ているだけ。ほんで久しぶりにその子と再会したら、「あんた誰?」みたいなよそよそしい視線を投げかけられたりします。
そんな風に落ち込んでるところへ、ますますメンタルを追いこんでくれる上司や顧客やルールにうるさいご近所の人々。そう… 巨人たちの風貌が妙に身近なのは、わたしたちの周りのプレッシャーをかけてくる人たちの象徴だからだと思います。せっかくのんびり休みたいのに隣室でギャーギャー泣きわめく赤ん坊みたいのもいましたね…
そんなところへ「君はやればできるよ!」とさわやかに励ましてくれる先輩が現れます。若い主人公はそいつを真に受けて思い切ってチャレンジしてみますが、これが見事に大失敗。エールをくれた先輩はもちろん見て見ぬふりを決め込みます。

ああああ… あるあるあるある! 100%ではありませんが、若いころこんな経験した人ってけっこういるんじゃないでしょうか。「ない」という人はたぶん恵まれた境遇なんだと思います。よかったね!
だからこそ極限まで追い込まれた主人公が、むかつく上司やモンスタークレーマーをぶんなぐりひきちぎるシーンは拳を上げてシンクロせずにはいられないのです。

さて、この映画は喧嘩大好きでダメな映画には容赦ない町山氏が脚本を手掛けているという点でも注目を集めています。ですからこうも解釈できるかもしれません。

「日本はつまらん映画ばっかりだ! チャンスがあったら俺がすごい映画を作ってやるぞ!」と安全圏内で吠えていた評論家。しかし実際にやってみたら、結局日本映画のシステムに飲み込まれてダメダメな部分をひきついでしまう。そんな彼を映画ファンたちや評論家仲間は「それ見たことか」と徹底的に叩き潰そうとします。はたして某評論家の運命やいかに…
すでに樋口監督や造形の方がネットでブチ切れて物議をかもしているこの作品。ただ肝心の某評論家は特に目立った声明を出していません。一生懸命怒りをためこんで吐き出すタイミングを見計らっているんでしょうか。
願わくばその怒りはネット上ではなく、作品の中でぶちまけてほしいもの。完結編となる『進撃の巨人 ATTACK ON TITAN エンド オブ ザ ワールド』は一ヶ月後の9月19日から公開です。前編を超えるカタルシスが待っているか、目も当てられないカタストロフィーが待っているか… 今からドキドキです!

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August 16, 2015

進撃の小人 ピエール・コフィン&カイル・バルダ 『ミニオンズ』

Main_large夏といえば子供向けのアニメ映画がたくさん公開される時期。その乱戦を制したのは細田守監督の『バケモノの子』と、次いでこの作品でしょう。『怪盗グルー』シリーズの前日談『ミニオンズ』ご紹介します。次いでながら『グルー』1作目の記事はコチラ。2作目の記事はコチラ

ミニオン… 彼らは人類誕生より地球に生息していた謎の生物。生態はいたずら好きで遊び好き、そしてなるべく強いボスに仕えること。だがどういうわけか彼らの仕えるボス…恐竜、王様、皇帝、ドラキュラetcは長生きしない。ボス不在の期間が長く続いた1960年代、(比較的)しっかりもののミニオン・ケビンは、ボスを探す旅に出る。お調子者のスチュアートと、甘えん坊のボブを連れて。はたして彼らは理想のボスに巡り合えるのか。

みなさんは子供にうけるアニメを作るとしたらどんなものを考えるでしょうか。素人のわたしが思いつくのは、色とりどりのファンタジーの世界で、かわいい動物が冒険するようなそういうアニメです。
ところがこの『ミニオンズ』は1960年代の英国で謎の物体3匹が冒険するという設定。『グルー』シリーズの下積みがあるからできたんでしょうけど、考えようによっては完全に子供置いてけぼりにも見えるような設定です。それでも全世界で大ヒットしてるわけですから、頭をひねります。わけわかんないながらもミニオンの「黄色い」「丸っこい」というデザインがお子様を引き付けるんでしょうかね。

あと先日『インサイド・ヘッド』が公開されてたからよくわかるんですが、この作品『グルー』シリーズのみならず、最近のCGアニメの中でもちょっと異質なところがあります。ピクサーが興したこのジャンル、やはり主な客層はお子様なので、教育的要素が盛り込まれていたり、主人公がなにかしら成長を遂げるのがセオリー。
しかし『ミニオンズ』では基本的に道徳の授業のような教訓はとりあえず見当たりません(笑) それどころか「悪って最高! 悪いことって楽しい!」と犯罪を推奨するようなセリフが多々見られます。
ケビンたちが仕える新ボス、スカーレット・オーバーキルは全然改心しないし、ミニオンたちも「いつまでもボスに頼っていてはダメだ。自分たちの道は自分たちで決めよう!」などとはまったく思いません。
でもね、そういうく~だらなくてなんの教訓にもならないところが素晴らしいじゃないですか。PTAご用達のようなCGアニメも嫌いじゃないですが、少しくらいこういう反教育的なCGアニメもあっていいと思います。

あと余談ですが、このアニメ、なんか『ルパン3世 カリオストロの城』を思い出させるような場面がけっこうあります。
ネタバレですがざっと書き出してみると
・乗用車で銀行を襲って逃走するシーンがある
・スカーレット・オーバーキルが不二子ちゃんっぽい
・その相棒のハーブの風貌がちょっとルパンっぽい
・城の床に突然穴があいて真下に落下するシーンがある
・怪しげな地下道をさまようシーンがある
・礼拝堂で行われる式典を主人公たちが妨害するシーンがある
などなど

まっ「単なる偶然」として片づけられないこともないですが、怪盗アニメの名作として、監督も参考にしてたのでは…と考えると楽しいです。
他にも城達也のジェットストリーム世代には懐かしい音楽の数々、世界各国から集まってきた個性豊かな悪者たち、風光明媚なロンドンの景色、ミニオンのベタなギャグや想像を超える展開…などなど楽しい要素がてんこ盛りです。

Minionsscarlet_overkill004『ミニオンズ』は現在全国の映画館で大ヒット上映中。本家である『怪盗グルー』の第三弾も2017年6月に全米公開予定。ミニオンの進撃はまだまだ続きそうです。

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August 10, 2015

愛のビンボン脱出大作戦 ピート・ドクター 『インサイド・ヘッド』

20150806_193324_800x450♪ゆかいなやつさ ビンボンビンボンロケットで飛ぶよ ビンボンビンボン

えーと… ビンボンって何? というわけでご紹介します。ピクサー2年ぶりの最新作『インサイド・ヘッド』です。


人間の頭の中には司令塔のような施設があります(この映画ではそういうことになっています)。そしてその司令塔にはヨロコビ(修造っぽい)、カナシミ(どんくさい)、イカリ(シンジ君ではない)、ムカムカ(水商売っぽい)、ビビリ(虫っぽい)という5つのキャラクターがいて、彼らが代わる代わる信号を送ることによって、わたしたちは感情を発露する仕組みになっています。
この映画の舞台となるのは、ライリーという一人の女の子の頭の中。住み慣れた土地から引っ越して不安定になっているライリーの脳内で、ドジをふんだカナシミがヨロコビともども司令塔からすっ飛ばされてしまいます。ライリーに子供らしい感情を取り戻させるため、凸凹コンビは脳内の危険地帯をびくびくしながら旅することに…

えー、まずこのぶっとんだ設定が楽しいですね。司令塔で記憶が形成されると、ボール状のそれは巨大な貯蔵庫へ送られる仕組みになっています。ちょっとパチンコ台に似てなくもない。ただこの貯蔵庫にも限界はあり、定期的に掃除人たちがいらなそうな記憶を掃除機で吸い取ったりします。「忘れる」ってことのメカニズムをこんな風に描写しているわけですね。
他にも遊園地のような場所もあれば鉄道も走っていたり、はたまた底知れぬ焼却炉もあったり… 脳内をここまでにぎやかにワンダフルに描いたそのセンスがとても素晴らしいです。ピクサーお得意の小ネタも矢継ぎ早に連発されます。
そんな自由すぎる脳内空間の中で、とりわけわすれがたいのが「ビンボン」というキャラクター。ピンク色の象で木製の手押し車で空を飛んだりする豪快な野郎です。ていうかピンクの象ってアル中患者が幻覚で見るっていうアレじゃないのか!?
まあコレの正体がなんなのかというと、実はライリーがごくごく幼いころに考え出したイマジナリー・フレンド=空想上の友達なんですね。そしてもう小学校高学年になろうかというライリーはすでにこのビンボンを忘れかけております。
イマジナリーフレンドを扱った他の作品には西原理恵子さんの『いけちゃんとぼく』、スペインの児童文学『くじらのホセフィーナ』などがあります。きっと子供のころは誰しもこういう友達を創造(想像)して遊ぶものなんでしょうね。うちの姪っ子にも「ニラリーノさん」というイマジナリーフレンドがいます。餃子を焼くのが得意なんだそうです。詳しい姿かたちは不明。
ただ悔しいのはわたしにはそういう記憶が全くないこと。オリジナルの特撮ヒーローを考え出してノートに書き留めたりはしてましたが… 本当に完全に忘れてしまったのか、それともそういう情操に乏しかったのか。脳内の隅から隅までを捜索して、引きずり出してやりたい衝動に駆られます。

話は変わりまして。わたくし今回の『インサイド・ヘッド』、ある意味ピクサーの原点回帰的な作品だと思いました。ピクサー初期の三大傑作といえば『トイストーリー』『モンスターズ・インク』『ファインディング・ニモ』であることに異論はないでしょう。この三作品にはある共通点があります。それはまず凸凹コンビのバディ・ムービーであり、そのコンビは「ある子供」のために必死にがんばる…という点です。『バグズ・ライフ』があまり語られることもなく、続編を作られる気配もないのはこの法則を外れているからかもしれません。
しかしその後ピクサーも「同じパターンばかりではよくない」と考えたのでしょうか。バディ・ムービーではあるものの、恋愛風味だったりサクセスストーリーだったりまた違う種類のものが目立ってきます。あるいは子供そのものがバディだったりとか。そもそもバディものでなかったりとか。
ただここ最近売上的にはともかく、方向的にはなんとなく迷走してる気がするピクサー。続編ものを連発したり、かと思えば『メリダ』のようにあんましピクサーらしくないものにも手を出したり。
そこで「自分たちらしく、かつ独創性溢れる作品とは何か」ということで、かつての黄金パターンに乗っ取った、このオリジナル作品『インサイド・ヘッド』を作り上げたんではなかろうかと。考えすぎですかね(^_^;

監督は『モンスターズ・インク』『カールじいさんの空飛ぶ家』のピート・ドクター。こうやって並べてみるとこの人はいつも「親の目線」で映画を作っているなあ、と感じました。そういう意味ではピクサーの監督陣ではとりわけ作風がはっきりしてる人とも言えます。ラセターがディズニー本家も統括しなければならず、アンドリュー・スタントン、ブラッド・バードが余所でも仕事をしている今、ピクサーの中心となるのはもしかしてこの人かも。問題は製作ペースがかなりゆっくりってとこでしょうか…

4904810835479『インサイド・ヘッド』は夏の超大作に押されがちではありますが、現在全国で公開中。次はCGアニメとして最大のライバルとなっている『ミニオンズ』を紹介する予定です。


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August 01, 2015

終わりなきネタを探し求めて アラン・テイラー 。『ターミネーター:新起動/ジェニシス』

O0350023513126998559_2デデンデン! 妙に中途半端で終わった『ターミネーター4』から6年。あのシリーズがシュワちゃんとと共に久方ぶりに帰ってきました。『ターミネーター:新起動/ジェニシス』、ご紹介します。

遠くない未来、人類は意識を持つ大型コンピューター「スカイネット」に征服され、存亡の危機に直面していた。だがカリスマ的指導者、ジョン・コナーの活躍により、人類は劣勢から逆転。スカイネットをほぼ壊滅にまで追い込む。だがスカイネットはコナーが生まれる前にその母サラを抹殺することで、彼の存在を抹消しようと企てる。そしてタイムマシンにより殺人マシン「ターミネーター」を1980年代に送り込むのだった。それを察知したコナーはサラを守るため、腹心のカイル・リースを後から同じ時代へと転送する。だがカイルがその時代で見たものは、コナーの話とはまるで別人のタフなサラと、敵のはずなのに彼女を守るターミネーターの姿だった…

今回は全体の半ばくらいまでネタバレしちゃってるのでご了承ください… まず前作までの出来事をさっとまとめてみます。

①ターミネーター1~4の出来事が順番に起きる

②スカイネット、T-800を80年代に転送。企てを阻止すべくジョンもカイルを同じ時代に転送

③どうも失敗したっぽいので、今度は90年代にT-1000を送り込むスカイネット。負けじとジョンもT-800を(略)

④やっぱり失敗したようなので、今度は00年代にT-Xを送り込むスカイネット。負けじと(略)

こんな感じでしょうか。で、新作ではカイルを送り込んだ直後にジョンがああなっちゃったので、もうおっかけでT-800を送ることは不可能でしょう。ですからこんなふうな流れに変わってると思います。

①ターミネーター1の出来事が起きる

②スカイネット、T-800を80年代に転送。企てを阻止すべくジョンもカイルを同じ時代に転送

③その前後に少女時代のサラを襲わせたり、80年代にビョンホン型のT-1000を追加で転送したりするスカイネット。そして正体不明の何者かが少女時代のサラを守るためT-800を送る

④スカイネット、自身が起動する2015年に改造型ジョンを送る

…どう考えても矛盾点があちこちでてきますね(^_^;
わたくしこの映画を観る前に、一作目を二十年ぶりくらいに観かえしてみたんですね。そしてそのシンプルさに、あらためて心打たれました。あんなにわかりやすかったターミネーターが、どうしてこんなに複雑怪奇でわかりにくい話になってしまったんでしょう。

思うに、ターミネーターシリーズというのは「建て増しを続けてきたおうち」に似ています。一作目はシンプルながらも無駄のない完成度の高い建築で好評を呼びました。そしてそれをそのままバージョンアップさせて、豪華な造りにしたのが二作目です。世間の評価はこの時最高潮に達しました。
で、時が流れてそのままでもよかったのに、別の建築家がさらに増築しようとして、工事半ばで終わってしまったのが三作目。また別の建築家が再挑戦して、やっぱり中途半端で終わってしまったのが四作目。
そして今回は二~四作目で建て増しした部分を全部とっぱずし、あらたに増築しなおそうという試みがなされています。しかし結局全部を撤去できず、強引に工事を進めた結果どこが入り口でどこが出口かもわからないおうちが出来てしまいましたw

わたくし四作目を観てる時に、「今まで話でしか語られなかった部分…人類軍がスカイネットを倒し、ジョンがカイルを過去へ送り込むところを映像で見せて、ようやっと『ターミネーター』シリーズはきれいに終われるのではないか」と考えていました。
今回の「新起動」でようやく待望のその部分を観ることができましたが、きれいに終わる気配など全くありませんでしたね~ たぶん会社はきれいに終わらせることなんてあんまり考えてないのでしょう。そういえばこのシリーズは、整合性とか完成度よりも、「意外性」をいつも重視してきた気がします。
1…未来から送られてきた男が実は救世主の父だった!?
2…前作で敵だったシュワちゃんが味方に!?
3…滅ぼしたスカイネットが健在で審判の日も来ちゃった!?
4…よくわからない半分生身・半分機械のターミネーターが出てきた!?
という具合に。そして今回の「新起動」ではT-800が少女のころからサラを世話してたり、救世主のジョン・コナーがあんなことになっちゃったり前にも増して意外性というかハッタリを連発しておりましたw もうこうなると辻褄合わせと考えずに、ド派手なアクションとメカ描写のみを楽しんだ方が勝ちなような気がします。実際途中からそうやって割り切って観たらそれなりに面白かったですしね。

Img_1『ターミネーター:新起動/ジェニシス』は現在全国の映画館で上映中です。2~3の間以外は6年周期で作られている『ターミネーター』ですが、(またしても)三部作を予定しているために会社としてはもっと早く作りたいところでしょう。
それもこれも、すべては売上しだい。現在なんとか製作費の二倍くらいを稼いでいるので、あとは中国で宣伝費の分をカバーできれば…というところでしょうか。がんばってください(^_^;


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