« そして姉妹になる 吉田秋生・是枝裕和 『海街diary』(劇場版) | Main | 宇宙からかもしれないメッセージ ウィリアム・ユーバンク 『シグナル』 »

July 10, 2015

黒い帽子が舞い降りた マイケル・マン 『ブラックハット』

Yjimage5始まりは台湾の原子力発電所のメルトダウンだった。間を置かずして起きた作物の価格の異常な高騰。それらはハッキングを得意とする犯罪者「ブラックハット」の仕業だった。彼のねらいは何か。次なる犯行を防ぐため、中国当局のチェンは旧友でアメリカに収監されているハッカー、ニコラスの助けを借りようとする。身柄の釈放と引き換えに米中の捜査に協力することを承諾するニコラス。だが敵の正体はなかなかつかめない。その最中、ニコラスはチェンの妹といつしか惹かれあうようになっていく。

現代にもし魔法使いというものがあるのなら、それは「ハッカー」ではないかと思います。ついさっきも米国で膨大な量の個人情報がダダ漏れしたというニュースをやっていましたが、えらく遠く離れた場所からいくつもの網をかいくぐり、でかいものを動かしたり機密情報を盗み出したりするわけですから。PCを扱うのに一苦労してる身からすれば魔法としか思えません。んで、漫画なんかにはかわいい魔法使いもいますが、基本的にはおどろおどろしくて不気味なもんですよね。顔も企みも明らかにせず地球のどこかでほくそえんでるハッカーのことを考えると、ますますそんな妄想がつのるのでした。

で、魔法使いに対抗するには魔法使いを…ということで連れてこられるのがニコラス(演じるは『マイティ・ソー』などでおなじみのクリス・ヘムズワース)。彼も別に正義感に駆られて悪事を暴こうとするわけではなく、当局に協力するのはシャバに出たいからです。友人のチェンはともかく、CIAの捜査員はニコラスのそんな動機がわかってるから、あんまり感じよく接しません。主人公は好感度が低く、チームのムードもギスギスしてて序盤は観ていて気持ちよくありませんでした。が、不思議なものでひとつの目標に向かって共に行動していると、いつの間にかそれなりの連帯感が生まれたりするものです。ワルを気取っていたニコラスも、徐々に打算以上の動機で任務に打ち込むようになります。そういえば監督は『ヒート』などで知られるマイケル・マン。男たちのたぎるような熱い戦いを描くことには定評のある方です(チームには女性もいましたが… でもこの女性もなかなか男気のある人だったりして)。
そんな浪速節がたかまるにつれて、インターネットの要素はだんだんと薄まっていきます(笑)。ハッキングが得意だったはずのニコラスもガンアクションと格闘戦の方がメインになったりしましてね… わたしとしてはそっちの方が好みの展開ではありますが。マン監督ももしかしたら「PCがどんなに便利でも、最後にものを言うのは男の鉄拳だ!!」ということが言いたかったのかもしれません。

というわけで後半はなかなかの盛り上がりを見せてくれました『ブラックハット』。わたしがこの地味っぽい映画をなぜ観に行ったかというと、「レジェンダリー・ピクチャーズ」の製作だったからです。
レジェンダリーは投機家だったトーマス・タル氏が好きなボンクラ映画を作りたいがために立ち上げた会社。これまでの代表作は『ダークナイト』『パシフィック・リム』といったところでしょうか。最近だと昨年暮れの『インターステラー』などが記憶に新しいところ。「客の観たいものではなく、俺たちの観たいものを作る!」のがモットーだってんだから大したものです。
ただそういう方針だからかたまに盛大にコケたりもするんですよね(^_^; この『ブラックハット』も本国では製作費の1/10しか儲からず、日本でもごく小規模の公開と相当な大赤字となってしまいました。ほぼ同時期に作られた『セブンス・サン』(日本未公開)も同じく惨憺たる結果でファンとしては「レジェンダリー大丈夫かなあ…」と気をもみもみしておりました。
ところが先日米国で公開された最新作『ジュラシック・ワールド』は歴代興行成績で第3位に届くのでは…というくらいの大当たり。これで当分はレジェンダリーも安泰…かな? まったくもってハラハラさせてくれる会社です。

20110717_782781『ブラックハット』は気が付いたらもう3館くらいしか上映館が残ってませんでした。私が観た駿東郡清水町でも今日で終了なはず。ていうかもうDVD出てるじゃん! 今見てみたらアマゾンで「在庫なし」となってましたが、気になる方、『ヒート』が好きな人はそちらを探してごらんください。


|

« そして姉妹になる 吉田秋生・是枝裕和 『海街diary』(劇場版) | Main | 宇宙からかもしれないメッセージ ウィリアム・ユーバンク 『シグナル』 »

Comments

レジェンダリーなんすかあ。

でもまあ、これが本当にお前の作りたかった物なのか、と胸倉掴んで聞いてやりたい気がする映画でもありました。

Posted by: ふじき78 | February 23, 2016 at 08:37 AM

>ふじき78さん

自分はマン監督そんなになじみがないので楽しんで観ました。
最近だとジョブズやストレイト・アウタ・コンプトンもレジェンダリーでしたね。意外

Posted by: SGA屋伍一 | February 23, 2016 at 10:22 AM

Post a comment



(Not displayed with comment.)


Comments are moderated, and will not appear on this weblog until the author has approved them.



TrackBack

TrackBack URL for this entry:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/70832/61869054

Listed below are links to weblogs that reference 黒い帽子が舞い降りた マイケル・マン 『ブラックハット』:

» 映画:ブラックハット Blackhat アクション巨匠 マイケル・マンの新基軸は何と、デジタル + ASEAN ! [日々 是 変化ナリ 〜 DAYS OF STRUGGLE 〜]
男っぽいアクション映画の巨匠 マイケル・マン 久々の新作リリース。 ところが作品のベースは、過去には考えられないような展開。 オープニング、映画史上最大のクローズアップ?から始まる。 地球 → コンピューターの内部まで、ワンカットでがぶり寄り、犯罪が始ま...... [Read More]

Tracked on July 11, 2015 at 06:58 PM

» ブラックハット [いやいやえん]
【概略】 ハッキングの罪で投獄されていた天才プログラマー・ハサウェイは、香港の原子炉やアメリカの金融市場を攻撃する凶悪ハッカーの捜査協力を要請される。 サスペンス 何者かのネットワーク不法侵入によって、香港の原子炉は爆破され、アメリカの金融市場も大打撃を受けるが、アメリカ・中国の合同捜査チームは事件解決の糸口をつかむことができずにいた。一縷の望みを託され、捜査協力を要請されたのは、ハッキングの罪で投獄中の天才プログラマーのニコラスだった。実は、犯人が使用しているシステムは、彼がか... [Read More]

Tracked on October 13, 2015 at 01:36 PM

» 『ピエロがお前を嘲笑う』『ブラックハット』をキネカ大森1で観て、両者ともよくぞふじきをたばかった★★★★,★★ [ふじき78の死屍累々映画日記]
「犯人は誰か? 天才ハッカーサスペンス2本立て」 ◆『ピエロがお前を嘲笑う』 五つ星評価で【★★★★ようもこの俺をたばかった】 という訳で、主人公のハッカーの独白から始ま ... [Read More]

Tracked on February 23, 2016 at 10:33 PM

« そして姉妹になる 吉田秋生・是枝裕和 『海街diary』(劇場版) | Main | 宇宙からかもしれないメッセージ ウィリアム・ユーバンク 『シグナル』 »