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July 24, 2015

羊がかけめぐる冒険 マーク・バートン リチャード・スターザック 『ひつじのショーン バック・トゥ・ザ・ホーム』

Sos1『ウォレスとグルミット ベーカリー街の悪夢』から6年。ようやくアードマンのクレイアニメが劇場で観られる日がやってきました(CGアニメならば2011年の『アーサー・クリスマスの大冒険』がありましたが…)。大人気テレビシリーズを映画化した『ひつじのショーン バック・トゥ・ザ・ホーム』ご紹介します。

来る日も来る日も牧場主にせかされて、納屋と牧場を往復するひつじたち。そんな毎日に嫌気がさしたひつじのショーンは牧場主をぐっすり眠らせて、その間に好き放題に遊びまくろうという計画を立てる。計画は無事成功したが、牧場主が休んでるキャンピングカーがふとしたはずみで坂道を転がり落ちてしまう。キャンピングカーはそのまま大都会まで突き進んでしまい、牧場主は行方知れずに。責任を感じたショーンたちは都会へ彼を探しに行くが…

主な登場人物・動物は次の通り。
まず主人公のショーン。もともと『ウォレスとグルミット 危機一髪!』に登場したキャラクターで、大抵のことは機転と工夫で解決してしまうヒーローというにふさわしい男の子ひつじです。
ほかのひつじで見分けがつきやすいのが並はずれて大きいシャーリー。三倍の厚みはあろうかという羊毛でなんでも吸収してしまいます。あとマスコット的な赤ちゃんひつじのティミーと、そのお母さんがいます。
これらのひつじを束ねるのが牧羊犬のピッツァ。牧場主からはこき使われ、ひつじたちは言うことを聞かず、中間管理職の悲哀を漂わせているキャラクターです。まあ彼も隙を見つけては仕事をさぼったりしてますが… ちなみに監督によると牧場主はお父さん、ピッツァは長男、ひつじたちは弟たち…というポジションなんだそうです。
そしてお父さんたる牧場主。映画になっても名前がつかず「牧場主」のままです(;_;) 。それなりに自由気ままに牧場を経営しているようですが、この人まだ若そうなのにTVシリーズでもあんまり人と会話をしてるところを見たことがありません。もしかして動物としかコミュニケーションが取れないかわいそうな人なんでは… と心配になったり親近感が増したり。

さて、先にも述べたように『ひつじのショーン』は『ウォレスとグルミット』のスピンオフとして始まりました(いまではさらなるスピンオフの『こひつじのティミー』というのまであります…)。だもんでテレビシリーズもそれなりに楽しんではおりましたが、「『ウォレス~』のオマケ」という感は否めませんでした。でも今回の劇場版を観て考えを改めました。これはある意味『ウォレス~』を越えたと言ってもいい。その理由は、なんと約100分セリフなしで最初から最後まで突っ走ってるから。TV版の約数分ならともかく、長編映画の尺でそれをやりきるとは近年のアニメでは他に『ミニスキュル 森の小さな仲間たち』くらいしか思い当りません。あのピクサーでさえ『WALL・E』では途中でそれを諦めましたからね… まさに至難の業というほかありません。しかも他の形式よりさらに手間暇と根気のいるクレイアニメでそれをやってんですから。いくら「すげえ!すげえ!すげえ!」と言っても言い足りません。

で、この「無言のスタイル」が映画を本当に深いものにしてるんです。基本的にうっかりちゃっかりしたムードですすむ本作品ですが、途中でいくつか悲しくなるシーン、胸に迫るシーンがあります。普通ならそこで「嬉しい」とか「哀しい」とか言うものですが、ショーンたちは何も言わないので(動物ですし)、彼らの喜び、悲しみがどれほどのものかは観客が想像するしかないんです。それがかえってこちらの感情を極限までゆさぶるという。違う意味ながら「沈黙は金」という言葉がありますが、そんな「無言の強さ」が特に光る映画でありました。
「『WALL・E』はあきらめた」と書きましたが、このスタイルはハリウッドほど「ヒット第一!」ではない欧州のスタジオだからこそできたのかもしれません。ギャグセンスもアメリカのとにかくにぎやかで騒々しいそれとくらべると、のんきなムードがあふれた作りになっております。

あと個人的にやられたのが都会に出てきたショーンたちを助けてくれるブス犬。先の『マッドマックス』のマックスや『ミニスキュル』の昆虫たちもそうでしたが、決して押しつけがましくなく、ごく自然体で「そういうもんだろ」と言うように無償で善意を示す… そういう話にわたし弱いんです(;_;) ほんで去る時も何も言わずに気が付いたらいなくなってたりとかね… あ~ も~ あああああ~~~

いろんなパロディが詰め込まれてるのもこの作品の楽しいところ。無駄にホラーのテイストを混ぜ込んでくるのは『ウォレス~』からの伝統ですかねw どこかの劇場ではお子さんが泣いてたとのことですが…

Sos2『ひつじのショーン バック・トゥ・ザ・ホーム』は夏休み映画と比べても互角のヒットを飛ばし(予想外でした(^_^;))現在まだまだ全国の映画館で上映中。クレイアニメがこれほど拡大公開されて、そして十分の成功を収めていることがこれまた嬉しい。この余波をかってアードマンの未公開の作品『ザ・パイレーツ! バンド・オブ・ミスフィッツ』もなんとかならんもんでしょうか。こんなに! こんなに面白そうなのに!→(予告編


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Comments

こんばんわです
先日はどーも、お世話になりました

ほんとクレイアニメで長編でセリフなしでってよくやりましたよね
あっぱれ!! ですw
とらねこさんのとこにも書きましたが、野良クンとの別れのくだりではボロボロ泣いてしまいました(笑)
ゴキゲンな作品でしたなぁ

ところで、伍一さんてジョジョ好きなんすか?
ボクもジョジョ好き、というか荒木飛呂彦マニアですw
今度はジョジョトークとかもしたいでんなぁ、へへへ♪

Posted by: サイ5150 | August 17, 2015 at 02:00 AM

>サイ5150さん

返事が遅れてすいません! 先日はこちらこそ仲良くしていただいてありがとうございました!
まさしくクレイアニメの底力を見せてもらった作品でした。作るの大変そうだけど、これからもがんばってほしいジャンルです

ジョジョは5部まででしかも4部の後半をいまだに読んでないという中途半端なはまり方をしています(^_^; それでもよければぜひ~

Posted by: SGA屋伍一 | August 19, 2015 at 10:22 PM

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