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June 29, 2015

君よ、憤怒の道を奔れ ジョージ・ミラー 『マッドマックス 怒りのデス・ロード』

Mxfd1あれは小学校1年か2年のころ。親につれられて映画館で『ブッシュマン』を観に行ったことがありました。大喜びで観終わったのもつかの間、その直後大音響とともに生きるか死ぬかの壮絶なサバイバル映画が始まり、顔面蒼白になったわたしは開始五分で劇場を出たのでした。その映画とはそう、『マッドマックス2』! それから30年(笑)。大絶賛と共にシリーズの新作が公開されることになりました。はたしてわたしは今度こそ最後まで観ることができるでしょうか。あらすじからご紹介します。

西暦20XX年。人類は核の炎に包まれた… だが人類はまだ滅びてはいなかった。
荒野をさすらう一匹狼マックス。彼は旅の途中、あたり一帯を支配する「イモータン・ジョー」の一団に襲われ、「生きた輸血袋」として砦に拉致されてしまう。
そんな折、ジョーの片腕の女将軍フュリオサが反乱を起こす。鎮圧軍の車両に携行パックとしてくくりつけられたマックスは、否応なく炎と銃弾が飛び交う激戦地に身をさらすことに。果たしてマックスは生きながらえ、自由を取り戻すことができるのか。

幼少時のトラウマとはなったものの、その後一応TVで全作観た本シリーズ。タイトルに「マッド」と付いてはいますが、意外なことにマックスが狂っていたのは1作目ラストくらい。マックスは暴力と狂気が蔓延する世界にあって、誰よりも理性的で冷静で禁欲的な男です。しかしそれはあくまで我々の目から見た場合で、弱肉強食・自分第一の環境の中では、「自分より弱い者を助ける」ことの方がよほど酔狂なこととも言えます。マックスも最初は自分が生き残ることしか考えてませんが、非力ながらも懸命に奮闘する者たちの姿を見てるとなくしたはずの「警官魂」がふつふつとよみがえってしまうのでしょうね。そんな彼の酔狂が、無法の世で罪を贖おうとするフュリオサの精神といつしか呼応していきます。

マックスを演じるのは『インセプション』や『ダークナイト・ライジング』などで知られるトム・ハーディ。メル・ギブソン演じるマックスは家族を失って以降、笑顔を全く見せないほとんど無表情なイメージがありました。新作のマックスも基本的には仏頂面ですが、ごくごくまれに笑顔ややさしい表情を見せたりして、トム氏のちょいソフトな風貌と相まって新たなマックス像を作り上げていました。
今一人の主人公フュリオサを演じるのはハリウッドでも有数の美貌を誇るシャーリーズ・セロンですが、今回は女らしさを封印した丸坊主&ゴスメイクで登場。マックスとの間に恋愛感情が芽生えることも一切なく、ほとんど男同士の熱い友情とぶつかりあいがえんえんと描かれます。
今回の映画撮影も相当大変だったようで、ストレスのたまった主演二人は現場でも相当やりあったようです。だからこそ困難を乗り越えた単なる馴れ合いではない深い友情が、スクリーンから伝わってきた気がします(余談ですがそれぞれのスタントを演じた二人はなぐり合ってるうちに愛が芽生えて結婚してしまったとか。あれ?)。

そのマックス&フュリオサに負けないくらい存在感を放っているのが、イモータン・ジョーの崇拝者であるニュークスという青年。見かけもキャラもすごくショッカーの戦闘員みたいで、普通の映画だったら開始10分で死んでると思います。しかしこれが「さすがにもう死んだろ~」という場面でもなかなか死なない。口では「死ぬ死ぬ」と言いながらゴキブリなみのしぶとさを見せる(そして肝心なところで失敗ばかりしている)彼に、いつしか拳を握ってエールを送っている自分がおりました。

というわけで「此処(ここ)には希望も法も慈悲もない」が謳い文句の『怒りのデス・ロード』、そう言いながら明らかに物語の端々に監督の優しさというか、弱き者への応援歌が見てとれるのですね。1や2にあふれていたニヒリズムはもうあまり感じられません。ここにあるのは紛れもなく『ベイブ 都会へ行く』や『ハッピー・フィート』を通ってきたあとのジョージ・ミラーです。 大人になってもどこかで「むなしい、怖い」という思いがあった『マッドマックス』ですが、ラストシーンにおける壮大なカタルシスの前に30年の時を経てようやく和解できた気がしました。ありがとう、マッドマックス! おれたちもうマブダチだよな!(ガッキと固い握手)。

Mxfd2実はもう次回作のタイトルが決まっている(Mad Max:The Wasteland)本シリーズですが、40ヶ国で初登場第1位の成績を収めたにも関わらず、製作にお金と時間をかけすぎたために赤字は必至の状況だそうです(^_^; それを思うと5作目の実現はかなり厳しいものがありますが、15年越しで執念の企画を形にしたジョージ・ミラーならばなんとかしてくれると信じましょう(でも次はもう少し早く! 寿命のこともあるし!)

夏季のシリーズ大作群の先陣を切る形になった『マッドマックス 怒りのデス・ロード』は現在全国で上映中。3日前から水分を一切断ってカラカラの状態で臨み、鑑賞後に樽いっぱいのビールを飲み干す… そんなMADなチャレンジがしてみたくなる映画です!


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Comments

伍一くん☆
チャンレジ頑張って!!(爆)
そして和解が出来て良かったね☆
私はシリーズを通してその壮大なカタルシスを感じていたので、このシリーズが大好きでした♪
次回作がまだあるのね!!?殴り合って結婚したスタントさんが、次の撮影で殴り合って別れるかも・・・・?

Posted by: ノルウェーまだ~む | July 02, 2015 at 09:49 AM

>ノルウェーまだ~むさん

昨日二回目観てきました。残念ながら半日のみの水断ちでギブアップしましたw
わたしはシリーズがすすむにつれ予算がどんどん爆上がりしてるところにもカタルシスを感じます(デスロードの予算で「1」が2百数十本作れるそうですw)

>殴り合って結婚したスタントさんが、次の撮影で殴り合って別れるかも・・・・?

そう考えるとここで終わっておいた方がスタントカップルのためなのかw ちなみにシャーリーズさんは「マッドマックスはもういいわ~」とか言ってるらしいです

Posted by: SGA屋伍一 | July 02, 2015 at 10:54 PM

私はマッドマックスシリーズはあまり好きじゃなくて…
北斗の拳のすごいファンだったので、その後に見たマッドマックスシリーズは、全然誰も超能力使えないし、弱そうにしか見えなくて…つまらなかったのでした。
続編の方は、フュリオサじゃなくて、今度こそマックスが主人公になることを期待されそう。
今回のも、ある種マックスのビギニングストーリーだったしね。

Posted by: とらねこ | July 08, 2015 at 01:22 PM

>とらねこさん

うん、北斗の拳が好きだったのは知ってたw
わたしも海外版のポスターで巨大車両の群れの前で仁王立ちするマックスを見て「北斗神拳でも使えなけりゃ普通に轢かれてお陀仏だよな…」と思いましたよー その場面、結局劇中にはなかったけれど
うわさで聞いたところでは、今度のシリーズではマックスが無秩序の世界に秩序をもたらす救世主となるまでを描くんだとか。う~ん、なんか違うな

Posted by: SGA屋伍一 | July 08, 2015 at 10:01 PM

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