あしたのジョージ ブラッド・バード 『トゥモローランド』
マイ・オールタイム・フェイバリット・ディレクターの一人ブラッド・バード。またしてもSF魂あふれる神秘的な予告編を観て、「今回もまちがいない!」と期待に胸をときめかせていたんですがその結果は… ディズニーが送る『トゥモローランド』ご紹介します。
1964年、NY万国博。空を飛べるランドセル「ジェットパック」をかついで、意気揚々と発明コンテストにやってきた少年がいた。彼の発明は審査で落とされてしまうが、一部始終を見ていた謎の少女アテナに誘われて、少年は驚愕すべき世界へと導かれる。
時は流れ近未来。NASAの宇宙施設解体を妨害していた血気盛んな少女ケイシーは、補導された先の警察署で奇妙なバッジを拾う。彼女がそれに触れると世界は一変し、あたり一面の麦畑と、遠くにそびえる塔のビジョンをケイシーは見る。彼女が拾ったそのバッジは、数十年前万国博で配られ、少年が身に着けたものと同じデザインだった…
今回はほぼネタバレ、観た人向けで(^_^;
まず最初に異世界に渡った少年が、ジェットパックでぐいーんと空を飛ぶところ。ここですごくテンションが上がります。さらに舞台が変わって、ケイシーがバッジの謎を探って不思議な映像を見たり、不気味な集団と激しいチェイスを繰り広げるくだり。この辺も不可思議なストーリーにひきずられてハラハラドキドキのしっぱなしでした。ブラッドさんお得意のへんてこなガジェットも次から次へと登場します。
そして意外な方法でもって再び異世界に突入するあたりで、テンションは再び最高潮に達します。
ところがさらに盛り上げてくれるであろうと期待したクライマックスの部分で、お話はやや迷走を始めます。そうなると面白かった時には気づかなかったアラや強引な部分が気になり始めます。
「ブラッドなら、きっと最後には壮大なカタルシスを用意してくれてるさ!」と自分に言い聞かせて観てましたが、結局は若干もやもやしたまま終了。
ものすごいひどいというわけではないんです。ちょっぴりホロリとさせてくれる部分さえある。ですが、あの『Mr.インクレディブル』や『アイアン・ジャイアント』のブラッド・バードだから…と胸パンパンに膨らませた期待に応えてくれたかというと、残念ながらそうではありませんでした。
娯楽映画とは難しいものです。途中までがどんなによくても、着地に失敗してしまうとなんだか微妙な印象が残ってしまう。これ、多少アレンジしてでももし最初のパートを最後に持ってきたなら、評価はかなり上がったと思うのです。「さすがはやっぱりブラッド・バード!」と。 しかしブラッドさんといえど人の子。これまでほぼ傑作しか撮ってきませんでしたが、彼とてこけることもあるということでしょうか。
で、テンションを下げてくれるもののひとつが、終盤で語られるある社会的なメッセージ。「このままじゃ遠からず地球は滅亡する」ということをある登場人物が語ります。ついでにディザスタームービーも叩かれます。この映画、タイトルが似てるからってわけじゃないのですが、アルフォンソ・キュアロンの『トゥモローワールド』と似たところがありました。破滅に向かう世界の中で、かすかな希望を求めて奮闘するというストーリーが。一方で『デイ・アフター・トゥモロー』みたいなわかりやすい災害映画はけちょんけちょんに言われてました(^_^;
もともとバード監督は、映画の中でそんなに深刻なメッセージ訴えるタイプではありません。「自分のものなりたいものになれ」とか、「家族を尊重し大切に扱え」とか、ごくシンプルで普遍的な教訓しかこめない人。『ミッション・インポッシブル/ゴースト・プロトコル』にいたってはメッセージなどなにひとつありませんでした(面白いからいいんですが)。しかしブラッドさんもさすがにいいおっさんになられ、「おれ、そろそろもっと社会の役に立つ、問題提起をするような映画も作らなきゃいかんな~」と思われたのでしょうか。だとしたらそれはあんまりむいてないんじゃないかな、という気がしますw
まあ、それでもわたしはブラッドさんが大好きなので、これからもがんばっていただきたいです。そしてこの映画も肩スカッシュな部分もあるとはいえ、やっぱり好きな方であります。
ツイッターでもちょこちょこ言われてましたが、この映画手塚治虫っぽいテイストがあちこちにあふれてるんですよね。特にわたしが思い出したのは美少女のロボットが出てくる『メトロポリス』。あれは2001年のアニメ映画版もよかった… 観るとすげえ切ない気分になるので、あんまり観かえしたくない一本です(笑)
『トゥモローランド』は現在全国の映画館で公開中。ディズニー人気ゆえか、日本でも一週目で一位を取ったのには驚きました。ただこの映画、そんなにディズニーランド関係ないんですよね…
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【ネタバレ注意】
「誰も作ってくれないから、僕が作った。」
なんと凛々しく潔い言葉だろう。冒頭の少年のセリフに、私は感極まった。ここに映画の作り手たちの思いが集約されていよう。
『トゥモローランド』はすべての子供たちに、かつて子供だった人たちに、ぜひとも観て欲しい映画なのだ。
それにしても、よりによってトゥモローランドが題材とは!
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【概略】
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SF
美少女ロボットのアテナ(ラフィー・キャシディちゃん)に尽きる。
ディズニーだから安心のファミリークォリティだと思っていたら、ぎょっとするでしょう。かなり観客を選ぶ作品。
説明不足、ご都合性、テーマの説教くささなどの問題は確かにあります。
結局の所は簡素に、ディズニーランドにいって「トゥ... [Read More]
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TOMORROWLAND
2015年
アメリカ
130分
ミステリー/アドベンチャー/SF
劇場公開(2015/06/06)
監督:
ブラッド・バード
『ミッション:インポッシブル/ゴースト・プロトコル』
製作:
ブラッド・バード
原案:
ブラッド・バード
脚本:
ブラッド・バード
...... [Read More]
Tracked on October 23, 2015 10:17 PM
Comments
初恋の相手を忘れられないのだけど、同窓会で会ったらハゲでデブになってて大ショック。
みたいなレビューだ。
Posted by: ふじき78 | July 09, 2015 10:37 PM
>ふじき78さん
少年はそうやって成長していくのです。わたしもう40代ですが
Posted by: SGA屋伍一 | July 10, 2015 11:06 PM