異端者トーマス ジェームズ・ダシュナー ウェス・ボール 『メイズ・ランナー』
『トワイライト』『ハンガー・ゲーム』『ダイバージェント』… 次々と映画化されていく米国のヤングアダルト小説。まあ、全部観てないんですけど(^_^; 女の子が主人公で熱いロマンスが絡む話って、おっさんにはなかなかハードル高いんですよ。しかし今回のこれはビジュアルから何から一風変わってて面白そう…ということで観てきました。『メイズ・ランナー』、ご紹介します。
気がついたとき、「彼」は地上へと上昇するリフトに乗せられていた。日の下に出た途端、「彼」は同年代らしき少年たちの一群に取り囲まれる。記憶を失っていたこともありパニックになった「彼」だったが、少年たちのリーダー・アルビーに事情を説明されてようやく冷静になる。アルビーの話によると、彼らはみな記憶のない状態で、リフトにより巨大な壁に囲まれたその場所に連れてこられたのだという。壁には門らしきものもあるのだが、中は複雑な迷路になっていて、少年たちが外界へ出ることを阻んでいた。謎だらけの状態で戸惑う「彼」は、やがて自分の名が「トーマス」であることを思い出す。
異常な状況でなんとか協力し合い、コミュニティを作って生き抜こうとする少年たち…というと名作『十五少年漂流記』や『漂流教室』を彷彿とさせます。不条理的でややSFがかってる点では、どっちかといえば『漂流教室』の方に近いかもしれません。壁の向こうに潜んでいる不気味な怪物が、少年たちを襲ってくる描写などもよく似ています。
で、こういう冒険もの・群像ものには大事なことですが、主要キャラたちがみな覚えやすくて見分けがつきやすい風貌なのはありがたかったです。性格的にもそれぞれ役割分担のようなところがありまして。
まず主人公のトーマス。彼は地味なイケメンといった見かけですが、性格はちょっと頭のネジがゆるんでいるというか、危険も省みずにすぐ体が動いてしまうタイプ。「なんでもやってみよう!」という理科の実験のキャッチフレーズが良く似合う男です。
そんなトーマスを暖かく見守るのが『スラムダンク』でいうと「ゴリ」的な少年たちのリーダー、アルビー。一番最初にメイズ内にやってきたというだけあって、色々苦労してきたためか、若いのにおっさんくさい落ち着きぶりでありました(でも頼もしい)。
さらに主人公の脇を固めるイケメンキャラクターが二名。『聖闘士星矢』でいうと紫龍と氷河的なポジションでしょうか。やや幼い風貌ながらもしっかりした判断力で集団のNo.2となっているニュートと、コリアン系で脚力自慢の切り込み隊長ミンホ君。
あと何かにつけてトーマスにつっかかるジャイアン的なギャリーや、ポッチャリ系のマスコット的キャラ・チャックなどがいます。他にもうじゃうじゃ男の子たちが出てきますが、とりあえずこの6人だけ覚えておけば話はわかるでしょう。
女子たちには特にニュートとミンホが人気なようですけど、わたしが注目してたのはギャリーとチャック。ギャリーは先にも書いたようになかなか意地悪なやつなんですが、演じるウィル・ポーターが『リトル・ランボーズ』や『なんちゃって家族』などで愛着があったものですから、なんか憎めないところがありまして。
あとチャック君はお調子者のようで時々すごくいじらしいことを言うもので、おじさんの涙腺をいたく刺激してくれました。
少年たちを迷路に送り込んだのは誰なのか? それにはどういう目的があるのか? トーマスの過去になにがあったのか? そして少年たちは数々の試練を乗り越え、壁の向こうへと逃れることが出来るのか… たくさんの謎とピンチの連続、意外な展開に翻弄されていくうちに、あっという間に約2時間経ってしまいました。
ここから先はちょっとラストに触れます(核心の部分には触れません)。
この『メイズ・ランナー』、なんというかかなり不条理的な設定ですよね。もしこれが誰かの妄想、あるいはヴァーチャルリアリティなのかも?ということを匂わせて終わらせたり、『エヴァ』最終回のように意味不明な心象風景を連発して謎のまま幕を閉じたら、けっこう高尚な話になったと思うのです。ただ理にかなったオチを期待してるティーンエイジャーの皆さんは「ふざけんなああ!」と怒り狂うでしょう(^_^;
幸いこの映画はそういう方向にはいきませんでした。強引ながらも一応現実的な決着を見せてENDとなります。ただ謎がすべて明らかになるわけではなく、「残った謎は続編を待て!」というベッタベタな幕引きでありました。ずりいなあ… まあ原作ももともと三部作らしいのでそれは仕方ありませんかね。
『メイズ・ランナー』はまだ全国の映画館で上映中なはずです。日本公開が遅れたため、幸か不幸か続編がもう10月には観られます。今度は巨大なクロひげ危機一髪か人生ゲームに挑む話になるかと思うのですがどうでしょう!
Comments
『メイズ・ランナー』が大当たりしていたなら、『イミテーション・ゲーム』も『クロスワードパズル・ランナー』という邦題で公開して、柳の下の2匹目の泥鰌を狙えたのに・・・どっちもそこそこしか入ってないですよね。
Posted by: ふじき78 | June 21, 2015 07:13 AM
>ふじき78さん
たしかに。ただメイズランナーの方は全国で一斉にやってたのでイミゲーよりは儲かってるかと。軍人将棋の映画とかも観てみたいです
Posted by: SGA屋伍一 | June 22, 2015 11:01 PM
おそらく原作者は『漂流教室』は知らないと思うので、『蝿の王』かな。
『蝿の王』は、『十五少年漂流記』の理想的な物語に憤慨したゴールディングが、少年の残酷さを描いたディストピア・冒険物語なんですよ。
ちなみにこちらの作品は…続編も見るかどうかは考え中だなあw ハハハ
Posted by: とらねこ | July 08, 2015 01:37 PM
>とらねこさん
そうそう! 『蠅の王』ね! 読んだことないんだけど! 今度読んでみようかな… なんか気の滅入りそうな話なんでいまいち食指が動かないのよね(^_^;
んで、確か蠅の王って悪魔のベルゼバブのことだよね。『パタリロ!』にも出てきた
まああえてここで鑑賞をやめてあとのストーリーは自分で想像するのもありかもね。わたしは観る…かな? 秋にはもうやるし
Posted by: SGA屋伍一 | July 08, 2015 10:06 PM