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June 29, 2015

君よ、憤怒の道を奔れ ジョージ・ミラー 『マッドマックス 怒りのデス・ロード』

Mxfd1あれは小学校1年か2年のころ。親につれられて映画館で『ブッシュマン』を観に行ったことがありました。大喜びで観終わったのもつかの間、その直後大音響とともに生きるか死ぬかの壮絶なサバイバル映画が始まり、顔面蒼白になったわたしは開始五分で劇場を出たのでした。その映画とはそう、『マッドマックス2』! それから30年(笑)。大絶賛と共にシリーズの新作が公開されることになりました。はたしてわたしは今度こそ最後まで観ることができるでしょうか。あらすじからご紹介します。

西暦20XX年。人類は核の炎に包まれた… だが人類はまだ滅びてはいなかった。
荒野をさすらう一匹狼マックス。彼は旅の途中、あたり一帯を支配する「イモータン・ジョー」の一団に襲われ、「生きた輸血袋」として砦に拉致されてしまう。
そんな折、ジョーの片腕の女将軍フュリオサが反乱を起こす。鎮圧軍の車両に携行パックとしてくくりつけられたマックスは、否応なく炎と銃弾が飛び交う激戦地に身をさらすことに。果たしてマックスは生きながらえ、自由を取り戻すことができるのか。

幼少時のトラウマとはなったものの、その後一応TVで全作観た本シリーズ。タイトルに「マッド」と付いてはいますが、意外なことにマックスが狂っていたのは1作目ラストくらい。マックスは暴力と狂気が蔓延する世界にあって、誰よりも理性的で冷静で禁欲的な男です。しかしそれはあくまで我々の目から見た場合で、弱肉強食・自分第一の環境の中では、「自分より弱い者を助ける」ことの方がよほど酔狂なこととも言えます。マックスも最初は自分が生き残ることしか考えてませんが、非力ながらも懸命に奮闘する者たちの姿を見てるとなくしたはずの「警官魂」がふつふつとよみがえってしまうのでしょうね。そんな彼の酔狂が、無法の世で罪を贖おうとするフュリオサの精神といつしか呼応していきます。

マックスを演じるのは『インセプション』や『ダークナイト・ライジング』などで知られるトム・ハーディ。メル・ギブソン演じるマックスは家族を失って以降、笑顔を全く見せないほとんど無表情なイメージがありました。新作のマックスも基本的には仏頂面ですが、ごくごくまれに笑顔ややさしい表情を見せたりして、トム氏のちょいソフトな風貌と相まって新たなマックス像を作り上げていました。
今一人の主人公フュリオサを演じるのはハリウッドでも有数の美貌を誇るシャーリーズ・セロンですが、今回は女らしさを封印した丸坊主&ゴスメイクで登場。マックスとの間に恋愛感情が芽生えることも一切なく、ほとんど男同士の熱い友情とぶつかりあいがえんえんと描かれます。
今回の映画撮影も相当大変だったようで、ストレスのたまった主演二人は現場でも相当やりあったようです。だからこそ困難を乗り越えた単なる馴れ合いではない深い友情が、スクリーンから伝わってきた気がします(余談ですがそれぞれのスタントを演じた二人はなぐり合ってるうちに愛が芽生えて結婚してしまったとか。あれ?)。

そのマックス&フュリオサに負けないくらい存在感を放っているのが、イモータン・ジョーの崇拝者であるニュークスという青年。見かけもキャラもすごくショッカーの戦闘員みたいで、普通の映画だったら開始10分で死んでると思います。しかしこれが「さすがにもう死んだろ~」という場面でもなかなか死なない。口では「死ぬ死ぬ」と言いながらゴキブリなみのしぶとさを見せる(そして肝心なところで失敗ばかりしている)彼に、いつしか拳を握ってエールを送っている自分がおりました。

というわけで「此処(ここ)には希望も法も慈悲もない」が謳い文句の『怒りのデス・ロード』、そう言いながら明らかに物語の端々に監督の優しさというか、弱き者への応援歌が見てとれるのですね。1や2にあふれていたニヒリズムはもうあまり感じられません。ここにあるのは紛れもなく『ベイブ 都会へ行く』や『ハッピー・フィート』を通ってきたあとのジョージ・ミラーです。 大人になってもどこかで「むなしい、怖い」という思いがあった『マッドマックス』ですが、ラストシーンにおける壮大なカタルシスの前に30年の時を経てようやく和解できた気がしました。ありがとう、マッドマックス! おれたちもうマブダチだよな!(ガッキと固い握手)。

Mxfd2実はもう次回作のタイトルが決まっている(Mad Max:The Wasteland)本シリーズですが、40ヶ国で初登場第1位の成績を収めたにも関わらず、製作にお金と時間をかけすぎたために赤字は必至の状況だそうです(^_^; それを思うと5作目の実現はかなり厳しいものがありますが、15年越しで執念の企画を形にしたジョージ・ミラーならばなんとかしてくれると信じましょう(でも次はもう少し早く! 寿命のこともあるし!)

夏季のシリーズ大作群の先陣を切る形になった『マッドマックス 怒りのデス・ロード』は現在全国で上映中。3日前から水分を一切断ってカラカラの状態で臨み、鑑賞後に樽いっぱいのビールを飲み干す… そんなMADなチャレンジがしてみたくなる映画です!


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June 25, 2015

探偵はBARを去る ローレンス・ブロック スコット・フランク 『誘拐の掟』

Photo今年上半期だけで、3本もの主演作品が公開されたリーアム・ニーソン。その最後を飾るのは、人気ハードボイルド小説を原作とした『誘拐の掟』であります。ご紹介します。

1991年。アルコールに溺れる刑事スカダーは、偶然殺人の現場に居合わせ、犯人たちと激しい銃撃戦になる。なんとか凶悪犯たちを全滅させ、事件を解決したかに思えたが…
1999年。アル中を克服しいまでは探偵となったスカダーは、禁酒協会の仲間から「兄の妻が誘拐されたのでその犯人をつきとめてほしい」という依頼を受ける。警察に頼むようにと言うスカダーだったが、依頼者には当局に頼めないある事情があった…

原作は米国で長い歴史と人気を誇る「マット・スカダー」シリーズの一編。80年代にジェフ・ブリッジス主演で『800万の死にざま』という作品が映画化されたこともあります。このシリーズの初期の特色は、主人公のスカダーがアル中でベロンベロンになりながら事件と取っ組み合うところにあります。ですが途中の作品からスカダーはなんとか禁酒に成功します。ちなみに『800万~』は脱アルコールする前の作品で、『誘拐の掟』原作である『獣たちの墓』(原題はA Walk Among the Tombstones)は脱アルコールした後の作品です。

そんな設定からもわかるように、スカダーさんは多少腕っ節が強くても、我々と同じナイーブな一面も持つ等身大の人間であります。この映画でもそれなりに格闘・銃撃シーンはありますが、『96時間』のように人間離れしたものではなく、地味で必死さの伝わるアクションとなっております。スカダーさんが本当に必要な時まで銃をクローゼットの奥にしまっているところにもそれが表れています。そんな風に暴力が主題のひとつでありながら、暴力の恐ろしさをじっくり描いているあたりはイーストウッドの作風とも通じるものがあります。

あと最近のリーアムさんの敵というとマフィアやCIA、テロ組織、動物などがありましたが、どれもその動機はそれなりに理解できるものでありました。金銭欲とか復讐・保身のため、あるいは食欲とかね。
しかし今回の敵はお金目的もありますが、主な動機は生きた人間を解体してもてあそびたいというところにあるので、常人からはとても理解できない人たち…というか、人でなしです。権力的にはどうということありませんが、その内面を想像すると底知れぬ恐ろしさを感じます。そんな人間の暗黒面を描いた作品であるがゆえに、これまでのリーアム・アクションと比べるとえぐくて重苦しい印象を受けました。

そうした凶悪犯とはやや異なるものの、スカダーもかつて酒に溺れて理性を失っていた時期がありました。その結果取り返しのつかない過ちを犯してしまい、苦悩を引きずりつづけています。また1999年という年は世紀末のピークであり、2000年問題の心配もあって、みな大なり小なり将来に不安を抱えていた時期であります。多くの人が精神的に参ったり狂ったりしてる社会にあって、それでも理性を保とうと戦い続けるスカダー。それを象徴的に表しているのがクライマックスに朗読される「禁酒協会12のステップ」です。

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激しいアクションシーンの中でこういったお説教くさい文章が読み上げられると一見場違いのようにも思えますが、スカダーの背景を考えるとひとつひとつがビシビシと胸に突き刺さるのです。

この映画、あるシーンでリーアム・ニーソン氏の顔が大アップでうつります。その祈るかのような表情が様々な感情を包含してて、なんともいえない深みを感じさせるのですね。世に多くの俳優さんがおられますけど、ここまで大写しにする意味がある顔を持つ方はそうはおられないと思います。言うまでもありませんが、本当にアクションだけではない、演技面でも遥かな深みを持たれるアクターであります。

そういった褒めちぎりと逆行するようですが、これまで彼が演じてきたキャラクターの「強さランキング」みたいなものを思いついてしまったので、オマケに発表します。

アスラン王>>>ゼウス神>96時間>クワイ=ガン・ジン>ダークマン>Aチーム>ラーズ・アル・グール>荒野はつらいよ>アンノウン>ラン・オールナイト>THE GREY>誘拐の掟>フライトゲーム>バッドコップ>>グッドコップ

51c10ztm26l__sy344_bo1204203200_キャラ名と作品名がちゃんぽんですいません。

『誘拐の掟』はまだ全国の映画館で公開中ですが、多くのところが今週末から来週末で終わりそう… ご興味おありの方は急いでいかれてください。
リーアムさんの次回作はマーティン・スコセッシが20年映画化を切望していたという遠藤周作の『沈黙』だそうです。アクションシーンはなさそうですが、こちらもまた大いに楽しみであります。


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June 22, 2015

あしたのジョージ ブラッド・バード 『トゥモローランド』

Photoマイ・オールタイム・フェイバリット・ディレクターの一人ブラッド・バード。またしてもSF魂あふれる神秘的な予告編を観て、「今回もまちがいない!」と期待に胸をときめかせていたんですがその結果は… ディズニーが送る『トゥモローランド』ご紹介します。

1964年、NY万国博。空を飛べるランドセル「ジェットパック」をかついで、意気揚々と発明コンテストにやってきた少年がいた。彼の発明は審査で落とされてしまうが、一部始終を見ていた謎の少女アテナに誘われて、少年は驚愕すべき世界へと導かれる。
時は流れ近未来。NASAの宇宙施設解体を妨害していた血気盛んな少女ケイシーは、補導された先の警察署で奇妙なバッジを拾う。彼女がそれに触れると世界は一変し、あたり一面の麦畑と、遠くにそびえる塔のビジョンをケイシーは見る。彼女が拾ったそのバッジは、数十年前万国博で配られ、少年が身に着けたものと同じデザインだった…

今回はほぼネタバレ、観た人向けで(^_^;

まず最初に異世界に渡った少年が、ジェットパックでぐいーんと空を飛ぶところ。ここですごくテンションが上がります。さらに舞台が変わって、ケイシーがバッジの謎を探って不思議な映像を見たり、不気味な集団と激しいチェイスを繰り広げるくだり。この辺も不可思議なストーリーにひきずられてハラハラドキドキのしっぱなしでした。ブラッドさんお得意のへんてこなガジェットも次から次へと登場します。
そして意外な方法でもって再び異世界に突入するあたりで、テンションは再び最高潮に達します。
ところがさらに盛り上げてくれるであろうと期待したクライマックスの部分で、お話はやや迷走を始めます。そうなると面白かった時には気づかなかったアラや強引な部分が気になり始めます。
「ブラッドなら、きっと最後には壮大なカタルシスを用意してくれてるさ!」と自分に言い聞かせて観てましたが、結局は若干もやもやしたまま終了。
ものすごいひどいというわけではないんです。ちょっぴりホロリとさせてくれる部分さえある。ですが、あの『Mr.インクレディブル』や『アイアン・ジャイアント』のブラッド・バードだから…と胸パンパンに膨らませた期待に応えてくれたかというと、残念ながらそうではありませんでした。
娯楽映画とは難しいものです。途中までがどんなによくても、着地に失敗してしまうとなんだか微妙な印象が残ってしまう。これ、多少アレンジしてでももし最初のパートを最後に持ってきたなら、評価はかなり上がったと思うのです。「さすがはやっぱりブラッド・バード!」と。 しかしブラッドさんといえど人の子。これまでほぼ傑作しか撮ってきませんでしたが、彼とてこけることもあるということでしょうか。

で、テンションを下げてくれるもののひとつが、終盤で語られるある社会的なメッセージ。「このままじゃ遠からず地球は滅亡する」ということをある登場人物が語ります。ついでにディザスタームービーも叩かれます。この映画、タイトルが似てるからってわけじゃないのですが、アルフォンソ・キュアロンの『トゥモローワールド』と似たところがありました。破滅に向かう世界の中で、かすかな希望を求めて奮闘するというストーリーが。一方で『デイ・アフター・トゥモロー』みたいなわかりやすい災害映画はけちょんけちょんに言われてました(^_^;
もともとバード監督は、映画の中でそんなに深刻なメッセージ訴えるタイプではありません。「自分のものなりたいものになれ」とか、「家族を尊重し大切に扱え」とか、ごくシンプルで普遍的な教訓しかこめない人。『ミッション・インポッシブル/ゴースト・プロトコル』にいたってはメッセージなどなにひとつありませんでした(面白いからいいんですが)。しかしブラッドさんもさすがにいいおっさんになられ、「おれ、そろそろもっと社会の役に立つ、問題提起をするような映画も作らなきゃいかんな~」と思われたのでしょうか。だとしたらそれはあんまりむいてないんじゃないかな、という気がしますw

まあ、それでもわたしはブラッドさんが大好きなので、これからもがんばっていただきたいです。そしてこの映画も肩スカッシュな部分もあるとはいえ、やっぱり好きな方であります。
ツイッターでもちょこちょこ言われてましたが、この映画手塚治虫っぽいテイストがあちこちにあふれてるんですよね。特にわたしが思い出したのは美少女のロボットが出てくる『メトロポリス』。あれは2001年のアニメ映画版もよかった… 観るとすげえ切ない気分になるので、あんまり観かえしたくない一本です(笑)

Photo_2『トゥモローランド』は現在全国の映画館で公開中。ディズニー人気ゆえか、日本でも一週目で一位を取ったのには驚きました。ただこの映画、そんなにディズニーランド関係ないんですよね…


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June 17, 2015

異端者トーマス ジェームズ・ダシュナー ウェス・ボール 『メイズ・ランナー』

Mzrn1『トワイライト』『ハンガー・ゲーム』『ダイバージェント』… 次々と映画化されていく米国のヤングアダルト小説。まあ、全部観てないんですけど(^_^; 女の子が主人公で熱いロマンスが絡む話って、おっさんにはなかなかハードル高いんですよ。しかし今回のこれはビジュアルから何から一風変わってて面白そう…ということで観てきました。『メイズ・ランナー』、ご紹介します。

気がついたとき、「彼」は地上へと上昇するリフトに乗せられていた。日の下に出た途端、「彼」は同年代らしき少年たちの一群に取り囲まれる。記憶を失っていたこともありパニックになった「彼」だったが、少年たちのリーダー・アルビーに事情を説明されてようやく冷静になる。アルビーの話によると、彼らはみな記憶のない状態で、リフトにより巨大な壁に囲まれたその場所に連れてこられたのだという。壁には門らしきものもあるのだが、中は複雑な迷路になっていて、少年たちが外界へ出ることを阻んでいた。謎だらけの状態で戸惑う「彼」は、やがて自分の名が「トーマス」であることを思い出す。

異常な状況でなんとか協力し合い、コミュニティを作って生き抜こうとする少年たち…というと名作『十五少年漂流記』や『漂流教室』を彷彿とさせます。不条理的でややSFがかってる点では、どっちかといえば『漂流教室』の方に近いかもしれません。壁の向こうに潜んでいる不気味な怪物が、少年たちを襲ってくる描写などもよく似ています。
で、こういう冒険もの・群像ものには大事なことですが、主要キャラたちがみな覚えやすくて見分けがつきやすい風貌なのはありがたかったです。性格的にもそれぞれ役割分担のようなところがありまして。
まず主人公のトーマス。彼は地味なイケメンといった見かけですが、性格はちょっと頭のネジがゆるんでいるというか、危険も省みずにすぐ体が動いてしまうタイプ。「なんでもやってみよう!」という理科の実験のキャッチフレーズが良く似合う男です。
そんなトーマスを暖かく見守るのが『スラムダンク』でいうと「ゴリ」的な少年たちのリーダー、アルビー。一番最初にメイズ内にやってきたというだけあって、色々苦労してきたためか、若いのにおっさんくさい落ち着きぶりでありました(でも頼もしい)。
さらに主人公の脇を固めるイケメンキャラクターが二名。『聖闘士星矢』でいうと紫龍と氷河的なポジションでしょうか。やや幼い風貌ながらもしっかりした判断力で集団のNo.2となっているニュートと、コリアン系で脚力自慢の切り込み隊長ミンホ君。
あと何かにつけてトーマスにつっかかるジャイアン的なギャリーや、ポッチャリ系のマスコット的キャラ・チャックなどがいます。他にもうじゃうじゃ男の子たちが出てきますが、とりあえずこの6人だけ覚えておけば話はわかるでしょう。
女子たちには特にニュートとミンホが人気なようですけど、わたしが注目してたのはギャリーとチャック。ギャリーは先にも書いたようになかなか意地悪なやつなんですが、演じるウィル・ポーターが『リトル・ランボーズ』や『なんちゃって家族』などで愛着があったものですから、なんか憎めないところがありまして。
あとチャック君はお調子者のようで時々すごくいじらしいことを言うもので、おじさんの涙腺をいたく刺激してくれました。

少年たちを迷路に送り込んだのは誰なのか? それにはどういう目的があるのか? トーマスの過去になにがあったのか? そして少年たちは数々の試練を乗り越え、壁の向こうへと逃れることが出来るのか… たくさんの謎とピンチの連続、意外な展開に翻弄されていくうちに、あっという間に約2時間経ってしまいました。

ここから先はちょっとラストに触れます(核心の部分には触れません)。

この『メイズ・ランナー』、なんというかかなり不条理的な設定ですよね。もしこれが誰かの妄想、あるいはヴァーチャルリアリティなのかも?ということを匂わせて終わらせたり、『エヴァ』最終回のように意味不明な心象風景を連発して謎のまま幕を閉じたら、けっこう高尚な話になったと思うのです。ただ理にかなったオチを期待してるティーンエイジャーの皆さんは「ふざけんなああ!」と怒り狂うでしょう(^_^;
幸いこの映画はそういう方向にはいきませんでした。強引ながらも一応現実的な決着を見せてENDとなります。ただ謎がすべて明らかになるわけではなく、「残った謎は続編を待て!」というベッタベタな幕引きでありました。ずりいなあ… まあ原作ももともと三部作らしいのでそれは仕方ありませんかね。

Mzrn2『メイズ・ランナー』はまだ全国の映画館で上映中なはずです。日本公開が遅れたため、幸か不幸か続編がもう10月には観られます。今度は巨大なクロひげ危機一髪か人生ゲームに挑む話になるかと思うのですがどうでしょう!


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June 15, 2015

そんなスミスにだまされて グレン・フィカーラ&ジョン・クレア 『フォーカス』

Thumb1一時期えらい羽振りがよかったものの、最近少しおとなしめのウィル・スミス。そのウィルさんの最新作は、宇宙人とか出てこないえらいスタイリッシュな「だましあい」映画。『フォーカス』、ご紹介します。

スーパーボウル開催が近づいて華やぐ町。駆け出しの詐欺師ジェスはホテルで目についた男ニッキーをひっかけようとするが、あっさりたくらみを見抜かれてしまう。実はニッキーはその道では何年も経験を積んでいる一流のプロだったのだ。だがニッキーはジェスのきっぷが気に入ったのか、彼女を自分のチームに引き入れ、詐欺のテクニックを次々と手ほどきしていく。何から何までスマートなニッキーに教えられていくうちに、ジェスは次第に彼にひかれていく。

「詐欺師」というとせこいというかこすっからいというか、あまりかっこいいイメージのない職業?ですが、この映画はすべてが「おしゃれ」で埋め尽くされております。ファッションも音楽もセリフも背景も完璧なまでにおしゃれ。おしゃれカースト的にはかなり下の方にいるわたしとしてはあまりに自分と縁のない世界で、おいてけぼりをくいそうになった感もなきにしもあらずでしたが、作品のいたるところに遊びめいた仕掛けが施されていてなんとか楽しむことができました。
その「遊びめいた仕掛け」の一つは独特なカメラワーク。人物ではなく、狙われた財布に焦点をあてて次から次へと人手に渡っていく様子を巧妙に追って行ったりとか。あと突然さもないわき役が画面の中心になって、えんえんと長回しが始まってどこにつながっていくのかと思ったら、ちょっとしたサプライズが待っていたりとか。
映像だけでなくストーリーや脚本にもいろいろ仕掛けが練りこまれておりました。なんせ詐欺師が主題の映画なんで、その道のプロであるニッキーが何を考えているのかさっぱりわかりません。セリフも感情も本心なのか演技なのかまるで雲をつかむようです。またニッキーが序盤で話す「父と祖父の話」が伏線となっていて、忘れたころにひょこっと再登場したりします。

監督のグレン・フィカーラ&ジョン・クレアのコンビは『フィリップ、君を愛してる』でも実在の天才詐欺師を題材にした作品を撮っております。また二作目の『ラブ・アゲイン』では「どうやったら女子のハートを虜にできるか」ということがテーマのひとつになっています。そういった「人の心を操る術」というものに深い興味を抱いているようですね。『フィリップ~』と『ラブ・アゲイン』はどっちかというとバカバカしいムードに包まれていて、わたしとしては監督コンビのそういうところが好きだったんですけど、先も述べましたように『フォーカス』はめっちゃシャレオツなムードに様変わりして少々面喰いました。MIBではベタなギャグを連発してるウィル・スミスもほとんどシリアスなことしか言わないしね… まあたまにはこういう映画も観て「わたしもたまにはおしゃれしなきゃ!」と発奮した方がいいのかもしれません。いまトランクスいっちょでうちわで煽ぎながらこの記事書いてますけど。

C552b8211a5394afffabbd6bf340ef3c400そんな『フォーカス』は先ほど公式観たらもうほとんど上映が終わってました(^_^; まー、内容的にも宣伝的にも地味だったしね… 興味抱かれた方は二番館を探すか、DVDを待つかしてみてください。
フィカーラ&クレアさんちの次回作はタリバンを題材にした実話となる模様。これまたえらい深刻なネタを選びましたね…
スミスとジェスを演じたマーゴット・ロビーさんは悪役をメインに据えたDCコミックスの『スーサイド・スカッド』でまた共演することが決まってます。やっぱりウィルさんはそういうボンクラっぽい映画の方が本道だと思います!

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June 11, 2015

ジャウム・コレット=セラによる「かわいそうなニーソン」三部作を語る 『ラン・オールナイト』ほか

423857937_mあの『フライト・ゲーム』からわずか数ヶ月。ジャウム・コレット=セラ、三度目のリーアム・ニーソンとのタッグは、NYを舞台とした男たちの切なくも激しいハードボイルド作品。『ラン・オールナイト』、ご紹介します。

眠らない町ニューヨーク。かつて凄腕の殺し屋としてならしたジミーは、今ではすっかり老いぼれ、犯した罪の意識にさいなまれる日々をおくっていた。息子のマイクからも絶縁されていたジミーを心配するのは、彼のボスで親友でもあるショーンただひとりであった。だがショーンの息子のダニーが人を殺すところを偶然マイクが目撃してしまったため、マイクは組織から狙われることに。なんとか戦いを避けようとするジミーだったが、息子の命を守るために、ついに親友とことを構える決意をくだす。

かわいそうなアクションヒーローをやらせたら右に出る者はいない、と言われている(というかわたしが勝手にそう言ってる)リーアム・ニーソン。ジャウム・コレット=セラ作品ではどれも大概かわいそうなんですけど、今回は特に序盤の「かわいそう描写」が容赦ありません。
まず冒頭で泥酔してみんなから嘲笑されてるところから始まり、アパートでは暖房が壊れて寒さに震え、ストーブを買うためにプライドを捨ててサンタの衣装を着なければならないという… ああ! なんてかわいそうなんだリーアム・ニーソン!
さらにたった一人の息子からは「接触すらもちたくない」とケチョンケチョンに言われる始末。ゴラア! 何があったか知らんが親に向かってその態度はなんだあ!と坊主頭をふん捕まえてヘッドロックをかましたくなります。
親友のショーンもねえ、優しい言葉をかけてはいますが、ジミーのおかげで暗黒街で成り上がったんだから自分ばっかりいいとこに住んでないでちゃんとした住居準備してやれよ、と思いました。そもそもあんたの教育がなってないから息子がバカやらかしてみんな大変な目にあうことになったんじゃねえか… ハアハア。ついリーアム父さんに同情して息が荒くなりました。

ともかく息子を守るために老骨に鞭打ち、かつての仲間たちを敵に回すジミー。べろべろに飲んだくれてた割には火事場のバカ力なのか急に「96時間モード」に入って、次々とマフィアを返り討ちにしていきます。ただむずかしいのはこれが「守りながらの戦い」だということ。自分ひとりが生き残るのもけっこう大変なのに、その脇で息子も銃弾からかばわなくてはなりません。さらにマイクはことあるごとにジミーに逆らうし、その妻や娘たちまで命を狙われだして「ああ… もう少しミッションの難易度下げてあげてくださいよ…」と思わずにはいられません。

そのハードアクションの裏に流れているのが、ジミーとショーンの奇妙な友情。「お前の息子を殺す」と言いながら、おしゃれなレストランで昔語りなんかしちゃったりする。親友なんだから和解すればいいのに…とぬるま湯人間のわたしは思いますけど、お互い深く認めあった親友だからこそどうしても譲れない、とことんやりあわねばならないというのがハードボイルドの世界。ジャンルは違いますがファンタジーコミック『ベルセルク』のガッツとグリフィスを思い出します。
他にサム・メンデスが『子連れ狼』を脚色した『ロード・オブ・パーディション』や、アニメ『ガングレイヴ』なども連想したりもしました。戦う男たちの友情というのは切なく、熱く、そしてかなり面倒くさいものですね…

ついでなのでジャウム・コレット=セラによる他の二作も簡単に紹介します。前作『フライト・ゲーム』に関してはこちらの感想をごらんください。
一作目『アンノウン』(2011)はパリを訪れた科学者が事故にあい、意識を回復して妻に会いにいったら「あんたなんか知らん」と言われる話です。おまけに自分と同じ名前の男をさして「これが夫」とまで言われてしまう… やっぱりとってもかわいそうじゃないですか! それはともかくアクションもありますが、どちらかというと謎解きの方に重点が置かれた作品。そしてこれのみ原作付です。

三作品並べてみると、学者→航空保安官→犯罪者とどんどん社会的地位が低くなっていっております。もし4作目があるとしたら今度はホームレスに身をやつしているかもしれません。
ちなみにわたしが好きな順番は『フライト・ゲーム』>『ラン・オールナイト』>『アンノウン』です。『アンノウン』も面白いですけどやっぱり自分、幼児がらみの泣ける話に弱いのでこの順番となりました。

Ran1『ラン・オール・ナイト』は現在全国の映画館で公開中。そしていまはもう一本、リーアムさんの主演作がかかっております。ハードボイルドの雄、ローレンス・ブロック原作の『誘拐の掟』です。こちらは明日観てくる予定~


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June 08, 2015

鉄人22号 ニール・ブロムカンプ 『チャッピー』

405516w300『第9地区』で脚光を浴びたニール・ブロムカンプ氏の第三作は、南アフリカを舞台とした近未来SF(またかよっ)。『チャッピー』、ご紹介します。

犯罪が多発する南アフリカ。警察はドローンのロボット警官を多数導入することでそれに対抗し、かなりの成果をあげる。その開発者である若きエンジニア・ディオンは功績をたたえられるが、実は彼が本当に望んでいるのは高性能なドローンを作り出すことではなく、人間と同じ知性・自我を持つロボットを創造することであった。上司から提案を却下されるも彼はめげず、ひそかに廃棄されたロボットを持ち出して悲願を達成しようとする。

で、見事ディオンは知性を持ったロボットを作り上げ、そのロボットが「チャッピー」と名付けられるわけです。
自我を持ってしまった機械の話といえば古くは『鉄腕アトム』や『キカイダー』、最近では『A.I.』などを思い出しますが、わたしが思い出したのはロボットとか出てこないディケンズの名作『オリバー・ツイスト』。突然社会に放り出された孤児のオリバー君が、悪い大人に捕まって犯罪の片棒をかつがされそうになる話です。
人並み以上の腕力と耐久性を持つチャッピー君ですが、メンタル面ではせいぜい小学校中学年程度。まだまだちゃんとした親の保護や義務教育が大事な年齢なのに、弱肉強食的な世界に放り出されて深く傷つくわけです。本当に親たちは何をやってるんだ!とむかむかせずにはいられませんでした。
まず生みの親のキテレツ…じゃなくてディオンは、ことあるごとに「わたしがお前の創造主だ!」とえらぶるのですが、彼がチャッピーを大事に思うのは愛してるからではなく、研究材料として不可欠だからです。また、育ての親のチンピラ夫婦・ニンジャとヨーランディも、チャッピーを引き取った?動機は強盗の役に立つと考えたからです。
どいつもこいつも大人のくせに子供を食い物にしおって… しかし紛争地域や貧富の差が激しい国ではこういうことってよくあるんでしょうね。やるせない限りであります。

あとこの映画はブロムカンプ氏お得意の「差別」をテーマにした作品でもあります。『第9地区』では「人種が違うからといって迫害してもいいのか?」ということを訴え、『エリジウム』では「人を財産の有無で区分けしてもいいのか?」という疑問を投げかけてきました。
で、『チャッピー』では「ロボットだからといって差別してもいいのか?」という議題を掲げております。いや… さすがにロボットは人間じゃないから差別してもいいんじゃないの?と思う人もおられましょうが、ブロムカンプ氏の考えはそうじゃないみたいです。この辺は『第9地区』でも共通してますが、「人間」とは単に外見や生物学的な問題ではなく、「そのうちに人間性や知性があるならばそれはもう人間として認めよう」というのが彼の主張のようです。
人間の心を持った機械… そんなものが登場するのはまだ少し先のことかと思われますが、機械にさえ感情移入でき、その個性を尊重できるなら、同じホモ・サピエンスにはもっとそうできるはずですよね。そんなやさしい社会をなるたけ築いていきたいものです。

そういった社会性豊かな面もある一方、『チャッピー』は変態暴力監督ポール・バーホーベンの『ロボコップ』に深いオマージュをささげている部分もあります。登場メカ「ムース」はどう見てもロボコップの好敵手ED-209ですし、犯罪に手を焼く市警がロボットを導入するという発想も似てます。そもそも「ロボコップ」って正確にはロボットじゃなくてサイボーグなんですよね。そういう意味ではチャッピーこそ本当の意味でのロボコップと言え…ないか。どっちかというとコップじゃなくてギャングだったし(^_^;
ブロムカンプ監督のオール・タイム・ベストって『エイリアン』『ロボコップ』『ターミネーター』とかそんなのばっかしで、わたしとしてはすっごく親近感感じるんですけど、それだったらもっと爽快でヒャッハーしそうな映画作りそうなもんじゃないですか。だのにストーリー的にはいつもカタルシス薄めというか、「これでよかったのかなあ…」と思わせられるものばかり。そういうところがブロムカンプという作家の興味深いところだと思っております。

個性という点ではチャッピーを拾うニンジャとヨーランディというギャング夫婦もめちゃくちゃキャラが立っております。「いかにもチンピラみたいな二人だなあ」と思いながら観てましたが、彼ら本当に「ニンジャ」「ヨーランディ」という名前で活動してるミュージシャンだそうで… これ、日本だったらデーモン小暮や綾小路翔がそのまんまの名前で映画のキャラを演じてるようなもんですよね。ブロムカンプ監督も思い切ったことをなさる。よっぽど二人のキャラが気に入ったんでしょうね。Chapy1『チャッピー』は現在全国の映画館で上映中ですが、あまり興行が振るわないようなので興味のある方は早めにいかれた方がよいかと。そんな状況がますますチャッピーの悲哀を際立たせているような?


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