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May 20, 2015

ムチをふりふりチャーリー・パーカー デミアン・チャゼル 『セッション』

20100320092339661チャーリー・パーカー 見つけたよ ぼくを わすれたかな(森田童子「ぼくたちの失敗」) 3月、4月と立て続けに公開されたアカデミー賞関連作品。その中でも作品賞『バードマン』に匹敵するほどの熱風を巻き起こしたのがこの作品。新鋭デミアン・チャゼルの手による暴力ジャズ映画『セッション』、ご紹介します。

ジャズドラマーとして名をはせることを夢見る若者アンドリューは、努力の甲斐あって音大の最高峰シャッファーへと入学。ある日彼はシャッファーきっての鬼指導者フレッチャーに目をとめられ、大学の精鋭が集まるスタジオ・バンドにスカウトされる。実力が認められたと思ったアンドリューは有頂天になるが、それもつかの間、フレッチャーの指導は噂以上にヒステリックなものだった。彼の容赦ないしごきに疲弊していくアンドリュー。だがフレッチャーへの怒りは、いつしかアンドリューに激しい闘志を湧き立たせていくのだった。

公開されるやいなや、あちこちで大絶賛。さらに某ジャズミュージシャンが「こんなの漫画だ」とdisったところ、名物評論家町山智浩氏の怒りを買い大炎上(笑)。最初「鬼教官に気弱な学生がゴリゴリといじめられる話」と聞いた時には、「そんな気が滅入りそうな映画、だれが観に行くかあああ!」と思っていたのですが、そういった記事を目にしてるうちにどんどん気になってしまい、連休中に東京まで行って観てきました(^_^;

で、予想したほどに不快な映画ではなかったですね。むしろすがすがしいくらいでした。それは主人公アンドリューが理不尽とも思える師のしごきに、途中から立派にはむかっていったから。みなさんは乱暴な上司や威圧的な先輩から恫喝されて、「こんちくしょー」と思ったことはありませんか? ありますよね? でもそういう時なかなか面と向かって「やんのかゴラアアア!!」とは言えないものです。だから鬼コーチに堂々と「このクソ野郎!」と言えるアンドリューが実に爽快だったのでした。「そうそう、俺も本当はあの時そう言いたかったんだよ!」と思った人も少なくないのでは。
この映画は実は監督のデミアン・チャゼルが学生時代の実体験を膨らませて作ったものなんだそうです。フレッチャーほどひどくはなかったでしょうけど、チャゼルさんも先生から「このへたくそが!」とこっぴどく怒られて、「ちくしょおおお。有無を言わさぬようなすげえ演奏をして、このハゲ頭をだまらせてやりてえええ」と願ったんでしょうね。その時の恨みつらみがこんなパワフルな映画となって昇華され、世界中の人びとを感動させているわけですから、パワハラも時にはいい場合があるってことでしょうか? いや、やっぱりよくないと思います(^_^;

そのパワハラ魔人フレッチャーですが、果たして彼は根っからのサディストなのか? それとも次世代のアーティストを育てるために仕方なく鬼コーチの役を演じているのか? 観ていて疑問を感じずにはいられません。
わたしはやっぱり普通にサドなのではと思ってますw ただジャズ界のレベル向上のこともちゃんと考えはているんでしょうね。「しごいてしごいてしごきぬいて、そこで潰れてしまったら仕方ない。でも与えた試練に耐え切って、ずば抜けた実力を身につけてくれたらめっけもん。残れるやつだけ残ればいい」というスタンスなんではなかろうかと。趣味と実益を兼ねたサド行為と言うべきか。そういう先生に目をつけられた生徒はたまったもんじゃないでしょうけどね(^_^; ただ困ったことに現実にシゴキが名プレイヤーを生み出すこともありますし、才能に秀でてる人が他者の感情を全く考えない人格破綻者だったりすることもよくある話なのでございます…

さて、最近少し気になっているのが、米映画界で「スキンヘッドのムーブメント」が起きていることです。ワイルドスピード新作のお三方に、この映画のJ・K・シモンズ。さらにジェームズ・マカボイやジェシー・アイゼンバーグも新作でスキンヘッドになった写真が公開され話題を呼びました。日本代表では我らが浅野忠信氏が遠藤周作×スコセッシの『沈黙』でツルピカ頭を披露してくれるそうです。
なぜいまこんな風にスキンヘッドがもてはやされているのか。まあ坊主頭というのは本来僧侶のヘアスタイルですよね。「坊主頭」って言うくらいだから。そして僧侶というのは迷い無く信じる道を歩み続ける人たちであります。そういうわき目もふらずに自分の道を邁進するヒーローが、今の時代に求められてるってことなんじゃないですかねえ。こじつけにもほどがありますねえ。

Ssn1以上、芸術とか音楽とかあんまりよくわかってない立場から感想書かせていただきました。そんなわたしでもクライマックスの演奏シーンは「圧倒された」の一言でした。ちなみに音こそプロの演奏をかぶせてあるものの、目にも止まらぬ超人的なスティックさばきはマイルズ・テラー君本人が演じているそうです。『嵐を呼ぶ男』の石原裕次郎を超えたことは間違いないでしょう。
『セッション』は話題が話題を呼んで、当初ちょびっとしかなかったのにかなりスクリーン数が増えてまいりました。さっきのぞいてみたら近場の沼津でも7月から公開されるそうです。わざわざ東京まで見てきたのに… ははは… これまたよくあることでございます。

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Comments

「趣味と実益を兼ねたサド行為」
ほんと、冗談じゃねえわいな。そういえば「カッコーの巣の上で」という映画で、ルイーズ・フレッチャー女史演じる看護婦がワルくってねー。それに捧げる「フレッチャー」か、と思いました。いや、単なる偶然でしょう。

Posted by: ボー | May 20, 2015 at 06:50 PM

海坊主「ついに我々の時代が!」

Posted by: ふじき78 | May 20, 2015 at 11:29 PM

>ボーさん

『カッコー~』は原作だけ読みました。えぐい話でしたね(^_^;
フレッチャー… サドに多い名前なのかしら(全国のフレッチャーさんごめんなさい)

Posted by: SGA屋伍一 | May 24, 2015 at 04:40 PM

>ふじき78さん

毛羽毛現「ちょっとまったあ!!」

Posted by: SGA屋伍一 | May 24, 2015 at 04:41 PM

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