愛とブラックホール ジェームズ・マーシュ 『博士と彼女のセオリー』
長々続いたアカデミー賞関連の感想もこれでようやく終わり…かな? 天文学者として名高いホーキング博士の半生を描き、エディ・レッドメインがアカデミー主演男優賞に輝いた『博士と彼女のセオリー』、ご紹介します。
1960年代の英国。オックスフォード大学で天文学の天才と噂されていたジム・ホーキングは、カフェで同じ学内で学ぶジェーン・ワイルドと知り合う。お互いひかれるものを感じた二人は急速に絆を深めるが、その矢先、ジムは難病のALSにかかっていることが判明。全身の筋肉が徐々に衰え、二年後には死に至ると宣告される。自暴自棄になったジムはジェーンを遠ざけようとするが…
原題は「The Theory of Everything」。直訳しますと「万物の理論」ってことです。「万物の理論」とはなんぞや。それは「自然界に存在する4つの力、すなわち電磁気力(電磁力とも言う)・弱い力・強い力・重力を統一的に記述する理論(統一場理論)の試み」のことです。ちょっと… 頭が… くらくらしてきましたね… 足りない頭でわかりやすく説明させていただくと、「世の中のひっぱりあう力はすべて本質的に同じものである」ということを証明する試みとでも申しましょうか。詳しい人、あってますか!? 教えていただければすぐ訂正します!
ま、ともかく、この理論がホーキング博士の研究しているブラックホールの解明に欠かせないものなのですね。
すべてのものに等しく働いている法則といえば、引き合う力のほかにもうひとつ「時間」というものがあります。どんなものも程度の差こそあれ、時間と共に変化していきます。光の速さで動くとか、そういった極めて異常な状況を除き、この法則を逃れられるものはありません。
わたしたちは「そんなのあたりめーだろー」とのほほんと思いますが、余命二年と宣告された若きホーキング博士にしてみたらどうでしょう。一分一秒が貴重なものに思え、時の流れがなんとも早くて無情なものに感じられたに違いありません。しかし彼はあきらめずに研究にうちこみ、ついにはその道で革新的な学説を確立するまでに至ります。その支えとなったのは難病であると知りつつも迷わず博士と結婚した、ホーキング夫人の愛にほかならないでしょう。
ただよくわからないのは、余命が二年だったはずのホーキング博士がえんえんと生きながらえ、2015年現在もまだご健在だということです(^_^; 映画ではその点についてなんの説明もありません。
そういえば昨年末の『インターステラー』でもありましたが、ブラックホールの付近のような高重力にさらされると、時間の流れというのは限りなく遅くなるそうです。もしかしてブラックホールについて真剣に研究し、その権化となることには病気の進行を遅らせる効果があるのでしょうか…!(んなわきゃーない) ともかくお医者さんの見立てが間違っていて本当にようございました。
といっても、ホーキング博士がALSなのは間違いなく、車いすから離れられない彼の世話をするのは、夫人にとって想像をはるかに上回る苦労であったに違いありません。
物質の状況が時間とともに変化していくように、人の心も年とともに変わっていくことがあります。永遠と思えた天体の運行も、外からやってきた惑星の影響で乱れが生じることがあります。
永遠不滅と思われたホーキング夫妻の愛も、幾人かの人々との接触により次第に前とは違うものになっていきます。大抵のフィクションや『プロジェクトX』などは、サクセスが成し遂げられたら「めでたしめでたし」とそこで幕を閉じるものです。しかし前に紹介した『イミテーション・ゲーム』やこの『博士と彼女のセオリー』は、「ひとつのプロジェクトが成功しても、そのあとにはまだ大変なことがたくさん待っている」ということを教えてくれます。ふう… 明日からまた一週間仕事だってのに、なんだかぐったり来ちゃいましたねえ… まあ映画を観終わった時の後味は、決して悪いものではなく、むしろさわやかなくらいでありましたが。
冒頭でも述べましたが、そのホーキング博士を演じてオスカーを見事手にしたのはエディ・レッドメイン氏。わたしのこれまでの印象は「『レ・ミゼラブル』に出てきた甘っちょろいイケメン」というものでした。しかしこの度体に不自由がある博士の役を、本物としか思えないような見事な演技でやりきっていて、そのイメージがだいぶ変わりました。そもそもアカデミー賞って若い男には冷たく、若い女とジジイにはめちゃくちゃ甘い傾向があります(そのあおりをもろに食らってるのがレオ君)。その逆風に打ち勝っての受賞は本当に大したもの。審査員のじじいたちでさえ認めざるをえなかった演技力とでも申しましょうか。
そういえば彼、ついこないだの『ジュピター』にも出てましたが、あちらでは実力の1/10も出してないように見えました。バイトしてたんですかね。
『博士と彼女のセオリー』はまだちょぼちょぼと公開が残ってる劇場がありますね… 小難しい宇宙論とかよくわからなくても十分に理解できる内容ですので、夫婦の擦れ違いなどに興味のある方はぜひごらんください。
Comments
伍一くん☆
そうなんです。夫婦のすれ違いについて興味が・・・・(笑)
はじめは永遠と思っていたものも時間と共に変化していくものなのですね~~~
さて!ひらたく優しく説明してもらったけど、やっぱり良く判らないブラックホールですが。
すべてのひとに平等にはたらいているはずの「時間」が、彼に与えられた最初の2年がどんなにか早く感じられたことでしょう。、
そして2年と思っていた時間が、永遠とも思えるくらい長く続いているという、なんとも不思議なものですよね。
Posted by: ノルウェーまだ~む | May 31, 2015 11:26 PM
>ノルウェーまだ~むさん
>はじめは永遠と思っていたものも時間と共に変化していくものなのですね~~~
おお… まだ~むさんがおっしゃると説得力ありますね! 変わらず夫婦円満でいらっしゃるとは思いますが(^_^;
難病でもなんでもありませんが、最近年月が流れるのが早く感じられてなりません。もうじき公開されるアベンジャーズ2はすごく楽しみですが、前作からもう3年も経ったかと思うと愕然とします。まるでついこの間のことのよう…
Posted by: SGA屋伍一 | June 02, 2015 10:06 PM
診断した時点では2年間だったのだけど、医学が進んだために延命したのかもしれない(そっち方面は書かれてなかったけど)。
もしくはホーキング博士が実は死んでいるのだけど、ゾンビに噛まれた為にまだ動いているか、だ。
Posted by: ふじき78 | August 30, 2015 07:39 AM
>ふじき78さん
実はサイボーグ…だったら面白いんですけどねえ
あるいはプロフェッサーXよろしくミュータント能力に覚醒したとか
Posted by: SGA屋伍一 | August 31, 2015 10:14 PM
ホーキンス博士が……禿げるのはそこまでしなくてもいいじゃん、神様。その神様の逆鱗に触れてジョナサンが常に目から殺人光線をダダモレするようになったりしたら、夫人が可哀想すぎる。
Posted by: ふじき78 | August 31, 2015 10:44 PM
>ふじき78さん
そうか。波紋法の習得で寿命を延ばしたか、石仮面の力で不死を会得した…ということも考えられるな。第一部はイギリスの話だったし
Posted by: SGA屋伍一 | September 02, 2015 11:11 PM