« 三代目は黒井さん 『スーパーヒーロー大戦GP 仮面ライダー3号』 | Main | ゴミの山のヒーローたち アンディ・ムリガン スティーブン・ダルドリー 『トラッシュ! この街が輝く日まで』 »

April 06, 2015

穴とクッキングの女王 片岡翔 『たまこちゃんとコックボー』

Tkkb1当ブログでおいかけてきた片岡翔監督の新作が、とうとうホームグラウンドの小田原でも上映。いやー、めでたい! というわけでその『たまこちゃんとコックボー』、ご紹介します。

広島に住むひよこちゃんは、中三になっても「お菓子の国のプリンセス」になることを夢見ているちょっと変わった女の子。当然学校ではあまり居場所がなく、そんな彼女の親友といえるのは優しい幼馴染のイソップ君だけだった。ある日、お気に入りのアニメ『たまこちゃんとコックボー』を観ていたひよこは、その世界に入りたいと願っている内に本当にアニメの中に入り込んでしまう。

『たまこちゃんとコックボー』、これは本作品のタイトルでありますが、何年も前から広島で放映されていた天気予報のアニメシリーズでもあります。くわしくはこちらを見ていただきたいのですが、「突然始まるアニメーションの内容があまりにも衝撃的かつ天気予報は画面の隅に小さく表示されるだけであるために、視聴者は肝心の天気情報を得ることを忘れがちになる傾向にある。」とのこと。そのアニメはこちら。ふっきれてますね… 最後に入る食べ物たちの一言がなかなかに秀逸です。
これをyoutubeで見た秋田のTV関係者の方がほれ込んで、「ぜひうちでも!」ということで遠く離れた秋田放送でも放映されることになったんだとか。いい話ですね。

さて、映画のほう。天真爛漫なひよこちゃんはまことにかわいらしい。ちょうどこないだ家に来てた4歳のめいっこがこんな感じでした(彼女の夢はプリンセスになることではなくプリキュアになることでしたが)。
ただ幼稚園のころならまだ微笑ましいけど、15歳になってもまだそんな感じだと周囲はさすがにひきます。心配もします。進路も決めなくてはなりません。ひよこちゃんもそういった周りの視線を感じてブルーになったりするわけです。そのひよこちゃんの切ない思いがヘンテコな奇跡を呼び起こします。

実写とアニメのコラボというと、ちょうど先日観たシュヴァンクマイエルの一連の作品を思い出します。シュヴァンクマイエルの作品では実写で現実の世界を、アニメで幻想・妄想の世界が描かれますが、その二つの間でひょいひょい行ったり来たりしてしまうところも似ていました。穴の中からのぞき見る構図もよく使われていたような。
ただシュヴァンクマイエルのグロくて毒気に溢れた世界に比べると、片岡監督の世界はとてもキュートでやさしい。夢の中に逃げたがる少女を「現実を見ろよ! オラア!」としばくのではなく、「うんうん、そういうこともあるよね。つらいよね」と傍らで語りかけるように穏やかに成長に導いていきます。

片岡ファンとして今回も「キタキタ!」と思ったのは印象的な公園が出てくるところ。氏の作品には本当によく公園が登場します。あてずっぽうかもしれませんが、それは公園には人を童心に返らせてくれる、そんな力があるからじゃないでしょうかね。40のおっさんのわたしでさえ、公園のそばを通ると(周りに誰もいなければ)ブランコに乗りたくなりますし。
もうひとつ嬉しかったのは以前観た短編『ヒゲとりぼん』を思い出させるところが色々あったこと。そちらではやはり不思議な雰囲気を持つ不登校の女の子を演じていた椎名琴音さんが、こちらではちょっと大人びたお姉さんを演じておられました。また機会があったら『ヒゲとりぼん』も見直してみたいですねい。

Tkkb2『たまこちゃんとコックボー』は現在こちらの劇場で上映中。えらいよコロナワールド。そういえば片岡監督と時々タッグを組む今泉力哉監督の『たまの映画』も小田原コロナワールドで観たのでした。「たま」つながり。


|

« 三代目は黒井さん 『スーパーヒーロー大戦GP 仮面ライダー3号』 | Main | ゴミの山のヒーローたち アンディ・ムリガン スティーブン・ダルドリー 『トラッシュ! この街が輝く日まで』 »

Comments

いつも応援ありがとう!!今回は祝、小田原上映!しかもまだやってるよね 笑
うん、確かに公園でてくるの多いわ翔の。公開してない短編でもほかにもあるな。
あのオープニングでもうあの世界だよね。
共通のキャラとか出てくるリンクとかも楽しい。
コックボーが思いのほか可愛くてやられちゃった。
伍一の絵、今まででいちばん似てる!コックボー💗

Posted by: mig | April 07, 2015 01:21 AM

>migちゃん

どういたしまして(^_^)/ これからもこの辺の映画館で普通にかかるようになるとありがたいね-
わたしは最初に見た翔監督の映画が『Mr.バブルガム』だったから、とりわけ「片岡ワールド…公園」というイメージが強かったりして
例のネコメ映画のネコちゃんの登場も嬉しかった!
コックボーもいいよね。そういえば映画館でコックボーのグッズ売ってたような。買っときゃよかった…

Posted by: SGA屋伍一 | April 07, 2015 09:52 PM

あ、私はiPhoneジャック買ったよ✌️
たまこちゃんANDコックボーの。
香織ちゃん制作のコックボーは家に今度持ってきて
くれるらしい
ぬいぐるみも作ってもらう予定!
色んなバージョンのあの天気予報、ハマるわ〜
公園、翔に言ったら自主映画には
よく出てくるらしく、
今泉氏のでもほんと公園良く出るんだって。
翔のは可愛い公園だからインパクト強いのかもね

Posted by: mig | April 10, 2015 08:54 PM

>migちゃん

アマゾンで探したらアイホンジャックあった。あとクリアファイル、ビジュアルブックなどなど
イヤホンジャックの画像見てふと思ったけど、アニメ版のひよこちゃんってなんかmigちゃんに似てるね…

自主映画によく出てくるというのはもしかしたら公道に比べてロケしやすいというのがあるのかもね。でも今回の公園もあんな面白いとこ本当によく見つけてきたなあと。これからも「公園の美学」を追求していただきたく思います

Posted by: SGA屋伍一 | April 12, 2015 09:52 PM

Post a comment



(Not displayed with comment.)


Comments are moderated, and will not appear on this weblog until the author has approved them.



TrackBack


Listed below are links to weblogs that reference 穴とクッキングの女王 片岡翔 『たまこちゃんとコックボー』:

» たまこちゃんとコックボー [単館系]
たまこちゃんとコックボー シネプレックス新座 2015/3/28公開 空想好きなお菓子大好き少女の星野ひよ子(廣田あいか)は、 本気でお菓子の国のプリンセスになることを夢見ていた。 ある日、彼女はいきなりドーナツ穴に吸収され、何とアニメの世界に たどり着く。 その不思議な場所にはたまこちゃんという女の子とコックボーという正体不明の 生き物がいて、ひよ子はすぐに彼らと意気投合し...... [Read More]

Tracked on April 06, 2015 11:34 PM

» たまこちゃんとコックボー [我想一個人映画美的女人blog]
ついに、公開となりました 片岡翔 監督&脚本劇場公開ムービーの第二弾 オトナも子供も、いやむしろオトナ向け ファンタジックミラクルちょこっとコメディ 渋谷TOHOシネマズのみで初日に2回で行われた主演、共演、監督の舞台挨拶つき上映。 ももクロ妹分、...... [Read More]

Tracked on April 07, 2015 01:19 AM

» たまこちゃんとコックボー [こんな映画見ました〜]
『たまこちゃんとコックボー』2015年(日本) 監督: 片岡翔 脚本: 片岡翔 出演: 廣田あいか 、阿久圭介、椎名琴音、堀内敬子 、津田寛治 星野ひよ子(廣田あいか)の夢はお菓子の国のプリンセスになること。 お菓子と想像ごっこが大好きな、ちょっと変わ...... [Read More]

Tracked on July 17, 2015 12:08 PM

» たまこちゃんとコックボー [いやいやえん]
【概略】 星野ひよ子はお菓子と想像ごっこが大好きな、ちょっと変わった女の子。ある日、ドーナツの穴に吸い込まれてアニメの世界に迷い込んだ彼女は、たまこちゃんという女の子に出会う。 ファンタジー 実はこれが「我想一個人映画美的女人blog」のmigさんの弟さん、片岡翔監督作品の(私にとっては)お初の作品になります。評判が良かったので、気になっていました。 世間一般では、「独特な世界観を持つ映画監督」ということになっているらしいのですが、確かに、この映画の世界観は…可愛い。可愛い髪型... [Read More]

Tracked on July 30, 2015 08:18 AM

« 三代目は黒井さん 『スーパーヒーロー大戦GP 仮面ライダー3号』 | Main | ゴミの山のヒーローたち アンディ・ムリガン スティーブン・ダルドリー 『トラッシュ! この街が輝く日まで』 »