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April 13, 2015

ゴミの山のヒーローたち アンディ・ムリガン スティーブン・ダルドリー 『トラッシュ! この街が輝く日まで』

Tskk1『リトル・ダンサー』『ものすごくうるさくて、ありえないほど近い』などで知られるスティーブン・ダルドリー監督の最新作は、ブラジルの底辺で懸命に生きる少年たちの胸のすく冒険物語。『トラッシュ! この街が輝く日まで』、ご紹介します。

リオデジャネイロ郊外のゴミ山に住む孤児のラファエロとガルドは、ある日ゴミの中からひとつの財布を見つける。財布には札のほかに、少女の写真や暗号めいたものが書かれた紙片が入っていた。それを拾ったことがきっかけで、ラファエロたちは市の上層部の関わる大きな陰謀に巻き込まれ、ついには命さえ狙われ始める。だが少年たちは勇気と機転で巨悪たちに必死に立ち向かっていくのだった。

原作は『アバウト・ア・タイム』などでも知られるアンディ・ムリガン。スラムに生きる少年を描いた作品というと、『ツォツィ』『シティ・オブ・ゴッド』『スラムドッグ$ミリオネア』などが思い浮かびます。どれも過酷な社会の中で、子供なのに子供であることを許されず、辛い選択を迫られる痛切な作品でありました。
で、これもそういう悲しいお話かというと確かにシビアなストーリーではあるんですけど、主人公たちの明るさゆえか不思議とこちらに元気を与えてくれる映画となっています。
貧困や政治の腐敗といった社会問題もモチーフのひとつではありますが、メインとなっているのはラファエロと仲間たちの冒険物語なんですね。彼らが何度も悪漢たちの追跡をかわし、仲間のために協力しあって自分たちの正義を貫こうとするその姿は、『ハックルベリー・フィンの冒険』『少年探偵団』『十五少年漂流記』『黒い兄弟』といった少年たちのための手に汗握る名作児童文学を彷彿とさせます。

だからその分「現実的でない」と感じる方もおられるかもしれません。大金ゲットよりも「正しいことを行う」ことを選び、殺されそうになっても節を曲げないラファエロ君はある意味大人が望む子供の理想像です。(そんな子供おるかいな~)とは思いますが、(こういう子供が後に社会を変えていくリーダーになるのかな… そうなったら嬉しいな… )ともくたびれたおじさんは思うわけです。
ラファエロがなぜ顔も見たこともない男(財布の持ち主)の願いをかなえてあげようと思ったのか、劇中では「正しいことをしたいと思ったから」という言葉以外、あまりはっきりとは語られません。マーティン・シーン演じる牧師の教えが心に届いていたから、というのも確かにあると思います。しかしわたしはそれよりも何よりも、財布に入っていた男の娘の写真を見たからでは…と考えます。これまた見ず知らずのその少女を笑顔にするために、ラファエロは小さな体で途方もなく巨大な敵と戦うことを選んだのではなかろうかと。こうなるともう大人も子供も関係なく、一人の立派な騎士であり、ハードボイルドの実践者であります。こんなにもかっこいい「男」の姿に年の差も関係なく憧れずにはいられませんでした。またラファエロを支えるガルドやラットといった少年たちも見ていてにまにまさせられる、実に気持ちのいいやつらです。

常識的に考えてスラムの子供たちが警察をも牛耳る権力者にかなうわけはありません。ラファエロも冒頭の映像で「これを誰かが見るころ、ぼくは生きていないだろう」と語ります。果たして奇跡の一発逆転はあるのか。その答えはぜひこの映画を実際に観て確かめてほしいところです
Tskk2…がもう大体公開終わっちゃってますね… ご興味おありの方はDVDを待つか名画座をチェックされてみてください。そんなに話題になりませんでしたが、今年に入って公開された中ではかなり気に入った1本です!


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Comments

伍一くん☆ぷちおひさ~
『胸のすく映画』まさにその通りね!上手い表現☆
子供なのに出来過ぎた子たち・・・と思うかもしれないけれど、子供だからこそ「奴らの怖さ」をあまり考えず、何か助けたい~~という衝動に素直に従えたってことなのでしょうね。
これぞ少年の冒険心とも言えます☆私もとっても気に入りました!

Posted by: ノルウェーまだ~む | April 14, 2015 at 05:57 PM

>ノルウェーまだ~むさん

ご無沙汰しててすみませぬ~
そしておほめいただき恐縮です。ちなみに『シェフ』は「おなかのすく映画」でしたw
そうですね。わたしは子供のころから引っ込み思案でしたが(^_^; 彼らの持つ行動力の10分の1でも発揮できるようがんばりたいと思います。とりあえず心は永遠の中学二年生

Posted by: SGA屋伍一 | April 16, 2015 at 10:57 AM

関係あるような、ないような事を書きますけど、この映画に出てくる子供たちを見て、なんか「あしたのジョー」のドヤ街に住む子供たちを思い出しました。貧乏だけど、金を持っているという以外の所に誇りを持って生きてるみたいな。

Posted by: ふじき78 | May 26, 2015 at 09:43 PM

>ふじき78さん

あの子供たち、いいですよね。殺伐とした『ジョー』の物語の一服の清涼剤ともいうべきか
きっといまごろ、みんなもういいオヤジ・おばちゃんになってるんだろうなあ

Posted by: SGA屋伍一 | May 28, 2015 at 10:40 PM

こちらにもお邪魔します♪

遅れ馳せながら鑑賞しましたけど、自分も最初はリオのスラム街が舞台でもあったので『シティ・オブ・ゴッド』のようなバイオレンス色が少し入ってるんじゃないかと想像しましたね。でもフタを開けたらその想像とは真逆でかなり明るい雰囲気があって驚きました。
もちろん汚職まみれの警官の不正や腐敗っぷりも滲み出てはいましたが、そういうやや暗い部分はラファエルたちが奔走する冒険物語によってあんまり嫌な気分にもさせてくれなかったのも良かったかなーと。
ラファエルたちの正しい事をするという純粋な思いも殆ど邪念がなく清々しくて、観てて微笑ましかったですね♪・・でも動機が本当は娘のピアの笑顔が見たいとか、そういう一個人の願望からなるものだったら・・・それもまた純粋で男の子らしくて良いかもしれませんね。

Posted by: メビウス | June 13, 2015 at 08:46 PM

>メビウスさん

こちらにもありがとうございます!
そういえば『シティ・オブ・ゴッド』の子供たちは怖かったですね… あれもまた子供の本質を確かにとらえた映画ではありましたが、観終わってどっと疲れたのを覚えています
腐敗と言えばついこないだFIFAで大々的な汚職が発覚して、まさにこの映画の通りだなあ、と思いましたよ~ ブラジルのW杯もきっと金まみれだったのでしょうね。子供たちにはそういう大人を見習ってほしくないもんです
そろそろ上半期も終わりですが、今年観た「子供映画」ではいまのところこちらと『たまこちゃんとコックボー』がワンツートップです

Posted by: SGA屋伍一 | June 15, 2015 at 09:49 PM

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