エジプト大脱出 リドリー・スコット 『エクソダス 神と王』
これまでも何度か映画化されている「モーゼ」の伝説を、ワイルドな作風で知られるベテランのリドリー・スコットが新たに映画化。『エクソダス 神と王』、ご紹介します。
時ははるか古代。エジプトに移住してきたイスラエル人たちは奴隷として虐げられ、神が導き入れると約束した「カナン」へ旅立つ日を心待ちにしていた。
そのころエジプトは王子ラムセスと、その弟モーゼの活躍によりますます勢いを増していた。しかしモーゼは調査のため派遣されたある都市で奇妙な噂を耳にする。彼の親は実はイスラエル人で、とある事情により王家の子息として育てられることになったのだと…
モーゼの物語はこれまで『続・天地創造』『十戒』『プリンス・オブ・エジプト』といった映画で観た事がありました。だもんで今回はまたわざわざ観にいかなくてもいいかな…とも思ったんですが、去年の古代史ものは一通り制覇したのにこれだけスルーというのもなんだし、この時他に見たい物もなかったので鑑賞することにしました。そしたら意外と楽しかったんですね~
というのは、古代エジプトの風景がすごくよく再現されていたから。考えてみれば近年古代エジプトをこんなにクローズアップした映画は記憶にありません。アニメ映画の『ミスター・ピーボディ&シャーマン』では良く出てくるようですが、現在日本未公開だし… 強いて言うなら4年前の『アレクサンドリア』くらいかと(あれは古代だったか?)。さらにさかのぼれば『ハムナプトラ』もありましたが、あれは古代の場面がそんなにあったわけでもなかったし。
そんなわけでエジプト文明好きとしては「コテコテだなあw」とは思いつつもピラミッドやスフィンクスやなじみ深いあのメイクにワクワクさせられました。
ただお話の方はというとそんなに楽しいものではなかったりして。昨年の『ノア』もそうでしたが、旧約聖書の神の裁きの話というのは、現代の人にとっては「残酷だ」と感じられるようです。リドスコ監督や脚本スティーヴン・ザイリアン氏もそれは同様のようで、聖書の「神」の見方にアンチテーゼを述べながらも、元のお話を完全に否定するわけにもいかない。そんな堂々巡りっぷりがにえきらないストーリーとなってよく表れてましたw
「神」といえばこの映画で斬新だったのは旧約聖書の神が子供の姿を借りて現われることですね。なぜ子供なのか。ひとつには子供というのは「未来」の象徴ゆえ、イスラエル民族の将来のシンボルとしてこんな描き方をしたのかと思われます。もうひとつは子供の際立った特性に「純粋さ」「残酷さ」があるからではなかろうかと。わたしは吹き替えで観たのですが、神様の声を演じているのが『名探偵コナン』の高山みなみさんで、例の「クールな子供声」がなかなかよくマッチしておりました。
あとこの映画の特長をもうひとつあげるなら、モーゼとラムセスが「兄弟」として描かれているところ。聖書原典や『十戒』では不倶戴天の敵の関係にある二人ですが、アニメ『プリンス・オブ・エジプト』やこの映画では最初は共に育った家族という設定になっています。それゆえ、モーゼはどんなひどいめにあわされてもラムセスを心から憎むことができません。彼への災いを食い止めようと危険を犯して説得に行ったりもします。もちろんそれははねつけられてしまうわけですが…
このあたり、自分の思いも知らずに一人で命を絶ってしまったトニー・スコットへの、兄弟としての感情も表れているような… 考えすぎですかね。ただ最後の「弟トニーに捧ぐ」という献辞を見るとそんな風に思えてならないのでした。
ちなみにモーゼさんの苦労はエジプトから出たあともえんえんと続きます。しかし3時間弱ではそこまで描くことは不可能だったようで。気になる方は図書館がどこかで聖書の「出エジプト記」から続く部分を探して読んでみてください。
『エクソダス 神と王』はまだ全国で公開中ですが、初動があまりよくなかったので、そろそろ危ういかもしれません。
今後の古代エジプト映画としてはアンジェリーナ・ジョリー主演の『クレオパトラ』などが企画されていますが、予定されていたデビッド・フィンチャー監督が降板したりと、こちらも危うい空気が漂っています(^_^;
Comments
SGAさんこんばんわ♪TB&コメント有難うございました♪
SGAさんが観たモーゼの3作品など未見でしたし、そのモーゼに関してもかなりアバウトな知識しか持ち合わせていなかったので、若モーゼが活躍する本作は個人的にモーゼ作品の入門みたいな形としてはちょうど良かったかな~?なんて思っちゃいました^^;
当時の古代エジプトを可能な限り再現した映像も確かに圧巻でしたし、各種災いのシーンもディザスタームービーさながらのインパクトがあって好きでしたね。エンタメ性結構詰まってる感じがして悪くは無いんですけどね。
子供神様は高山さんですか。『体は子供、中身は○○』って理由の起用じゃないですよねぇ(笑
Posted by: メビウス | March 06, 2015 08:20 PM
>メビウスさん
こんにちは。こちらにもコメントありがとうございます!
リドリー・スコットが聖書の話を作ると聞いて、どんなのができるんだろう…と思いましたが、彼らしいわかりやすい暴力・残酷映画でしたね(^_^;
そういえばラムセスの声は現・毛利小五郎の小山力也氏でした。コナンと毛利氏が戦ったら勝つのは明らかに…
Posted by: SGA屋伍一 | March 09, 2015 03:29 PM