中傷の多い料理長 ジョン・ファブロー 『シェフ 三ツ星フードトラック始めました』
『アイアンマン』で名をはせたジョン・ファブロー監督が、今度はぐっと低予算の人間ドラマに挑戦。しかしこれがなんと全米で大ヒットしたという。『シェフ 三ツ星フードトラック始めました』ご紹介します。
主人公はLAのフレンチレストランのシェフ、カール・キャスパー。妻と離婚したため息子とは離れて暮らしているが、実力と実績でそれなりの名声を得ていた。だが著名な評論家が彼の料理をブログでコテンパンに酷評したため、カールは激怒。思い切って新メニューで再度評論家に勝負を挑もうとするが、定番を好むオーナーはそれを許可せず…
まあ、あとはどうなるかわかりますよね。だってタイトルに「フードトラック(屋台)始めました」って書いてあるもん(^_^;
非常にいい作品だと思います。おおまかなストーリーが『リアル・スティール』に酷似していることを差し引いても。まず出てくる食べ物が本当にうまそう。ついで登場人物が大体みんないいやつ。「まわりにいたらいいなあ」と思えるようなあったかい人たちばっかりです。そして中盤以降はキャスパー親子と一緒にアメリカの各地を旅行しているような気分を味わえます。くわしくはここの町山さんの解説を読んでいただきたいのですが、フロリダとかルイジアナにはそういう特色があったんだな~ということを料理を通じて教えてくれます。
というわけで多くの人におすすめできる良作なのですが、なんかわたし二つばかしモヤモヤしてしまった点がありまして…
一つ目はキャスパーさんがオーナーから「定番を出し続けろ」と言われてカチンと来るわけなんですが、どっちかってえとわたしこの点はオーナーの方に賛成だったりするんですよね… みなさんは好きな食べ物屋さんに行く時って、「いつものあの味」が食べたいとは思いませんか? わたしなんてひいきのラーメン屋さんに行くときはほぼ定番のメニューしか頼みませんし!
もしもキャスパーがファブロー監督の分身であるとするのなら、正直わたしは彼に斬新なメニューとかハートウォーミングな人情ドラマとかを期待してはいません。今までどおり『アイアンマン』みたいにメカメカしいボンクラ映画を作ってりゃいいんですよ。まあ、たまには気分転換にこういう地味な人情喜劇を撮ることもいいかもしれませんが、次は必ず本流に戻って現実離れしたSF映画を作ってください。
もうひとつモヤモヤ思ったのはこの映画に対する不満ではなく、ネットに溢れている映画批評について。キャスパー氏はいけすかないブロガー評論家に辛らつな意見を書かれて「傷ついたよ!」と叫びます。そりゃそうですよね。結果的に相手を満足させられなかったとしても、心血注いで作ったものをそんな風に言われたら。
ネットが普及して誰も彼も手軽に映画についての意見・感想が言えるようになった現代。別に作品を批判するなとは申しません。健全な批判はそのメディアを成長させるのに有用なものだと思います。
ただ批判するにしても、最低限の思いやりってもんは必要なんじゃないかと。嫌味タップリに罵詈雑言を投げつけたり、「こんな映画ウンコだ」とか「だれそれのケツの穴でもなめてろ」とか言う心無い感想も時折目にしますが、そういうのは批判以前にヒューマンとしてどうかと思います。
まあわたしみたいになまぬる~いファンばっかりでもそのメディアはダメになると思いますけどね… だからね… オレがダメにしてやる!!!!
酔いにまかせて最後はなんだかよくわからなくなってしまいました。とりあえず『シェフ 三ツ星フードトラック始めました』は現在全国の映画館で上映中です。おいしいよッ!(ミスター味っ子風に)
Comments
物凄く美味い「ガリガリくん梨」を作ったのに、ラインが確保できないから定番のソーダとコーラ味しか作らんと言われたアカギの開発スタッフの気持ちを考えてくれ(いや、俺も知らんけど)
Posted by: ふじき78 | May 05, 2015 07:30 AM
>ふじき78さん
アカギって書くと麻雀漫画のあの人みたいですが… 自分は生まれてこの方ソーダ味一筋です
Posted by: SGA屋伍一 | May 07, 2015 10:30 PM