« February 2015 | Main | April 2015 »

March 31, 2015

三代目は黒井さん 『スーパーヒーロー大戦GP 仮面ライダー3号』

Mainいつの間にやら春の恒例となってしまった「東映ヒーロー大集合シリーズ」。本日はその最新作である『スーパーヒーロー大戦GP 仮面ライダー3号』、ご紹介いたします。

1973年(オレが生まれた年じゃねーか)、仮面ライダー1号2号の戦いによりショッカーは全滅。世界には平和が訪れたはず…だった。突如として発生した時空の歪みにより、ダブルライダーの前に現われたのは、彼らを上回る性能を持った「仮面ライダー3号」。そしてこの時空改変は2015年の仮面ライダードライブの戦いにも重大な影響を及ぼす。

夏の単品映画も冬の「MOVIE大戦」も最近は足が遠のきがちなわたくし。だのになぜ最もファンからの評判が悪い春映画を観続けているかというと、「なつかしのあの人・あのキャラ」を大画面で観られるからにほかなりません。今回も仮面ライダーブラックの倉田てつを氏や、同555の半田健人氏、同ギャレンの天野浩成氏といった面々が「ライダー」として出演してくれています。それに加えて謎の新ライダー「3号」まで登場するという。
情報を漁ったところによると、この1号2号に近いデザインで「V3」とはまた別の「3号」(上画像参照)は、本当は新ヒーローとしてTVに登場するはずだったものの、企画変更により設定から抹消。辛うじて幼年誌に一度登場したのみの不憫なキャラクターであります。ウルトラセブンの夢の中にだけ出てきて、以後完全に忘れられてた「セブン上司」を彷彿とさせますが、あちらは一応映像に出てきましたからねえ… 
ともかくこのものめずらしいヒーローの勇姿が観たくて今回も足を運んでまいりました。以下、中バレ気味で

それ以外に個人的に盛り上がったのは石ノ森章太郎氏の漫画版『仮面ライダー』へのオマージュが幾つか見受けられたこと。喫茶店のマスターでなく、執事姿の立花藤兵衛や、巨大なコンピューターと化した本郷猛とか。
あとこんな映画ではありますが、「歴史の縮図」というものがそれなりに表現されていたと思います。仮面ライダーにしてもショッカーにしても、何度滅ぼされてもその都度復活してくるんですよ(笑) 健全な社会も恐ろしい独裁政府も永遠に続くものではなく、歴史を通じて繰り返し繰り返し出現するものなんではないでしょうか。
そしてその正義と悪も、はっきり二つに分かたれているというよりかは、境界線が非常にあやふやだったりして。ことに仮面ライダーは善悪の狭間でふらついているような人が多いのですが、今回の映画ではタイトルの「3号」を筆頭にそれが顕著でした。

さて、いい加減褒めたので次は困った点を…

プロデューサー白倉伸一郎氏の見上げたところは、「同じものは二度とやらない」ことを心がけていることです。傍からはほとんど同じように見えたとしても、毎回何かしら新しい要素や試みを盛り込んできます。この「スーパーヒーロー大戦」シリーズで申しますと 

スーパーヒーロー大戦→ライダーと戦隊を戦わせてみました
同 Z→その戦いに宇宙刑事も混ぜてみました
仮面ライダー大戦→今度はライダーたちを昭和世代・平成世代に分けて戦わせてみました
今作→幻の「3号」を登場させてみました。そんでライダーたちにレースをやらせてみました 

こんな感じかと。こうしたマンネリズムを嫌う姿勢はまことに天晴れです。ただ問題はこの実験精神が作品の完成度や「燃える展開」を著しく低下させてるということですね(^_^; 今回も「そこはおかしいだろ」「それはあまりに無茶だろ」「あなたはいったいなにがしたいの!?」というところいっぱいありましたw
スケジュールが押し迫ってる中、ビックリするような設定をつめこんで、しかも感動させるお話を作る… 確かにそれは至難の業かもしれません。でも『アギト』~『555』の映画の時はそれなりに出来てたんだから、決して不可能ではないと思うのですが。

まあ面倒くさいオタクとしてはそんな風に感じましたが、もっと重要なのは子供たちがこういうのをどれほど楽しんでいるのか、ということですね。自分が子供のころにこれを観たら、そこそこ楽しめるような気はします。ただ今回は平日の20時からの鑑賞ということもあって、お客さんがわたし一人だったのでお子様たちの反応は確認のしようがありませんでした。子供たちからの支持があれば来年も再来年も続くでしょうけど、彼らが置いてけぼりになっているのであればそろそろこの春の大集合シリーズも終了するんではないでしょうか。その辺は少し時間が経ってみないとわかりませんね。
Img00161『スーパーヒーロー大戦GP 仮面ライダー3号』は現在全国の映画館で上映中です。そしてビデオ配信による『仮面ライダー4号』に続いてしまうとか…

| | Comments (0) | TrackBack (1)

March 23, 2015

アベンジャーズの縁の下で 『エージェント・オブ・シールド』シーズン1全22話完全覚え書き

Aos1
映画『アヴェンジャーズ』シリーズと世界を共有する海外ドラマ『エージェント・オブ・シールド』のレンタルが今年初めから解禁。「シーズン1だけだったらまだ追いつける!」とばかりに、一生懸命鑑賞にいそしんでおりました。先日早くも全話観終わったので、今日はその覚書を記しておきます。感想というより、あくまでメモ程度のものです。あと完全ネタバレなのでくれぐれもこれから観ようかという人は先に本編をご覧になってから読んでください!

#1 シールド精鋭チーム誕生(Pilot)
ピーターソンがビルに穴を開けてえっちらおっちらのぼっていく冒頭からグーンとひきこまれていく第1話。チームのレギュラーメンバーがこのエピソードで一気に集まります。『アヴェンジャーズ』で壮絶な最期を遂げたコールソンはどうやって復活したのか? この謎はシーズン1中盤まで引っ張られることになります。
ちなみにラストでピーターソンは気絶したのか死んだのかよくわからなかったので、ウィキで確認したらこの時点で重大なネタバレにぶつかってしまいました。泣ける…

#2 084(0-8-4)
大きな穴の開いた飛行機にしがみつきながら「問題ありませーん!」と叫ぶコールソン氏のシーンから始まる2話目。すげえ問題あるじゃねえか!とつっこみたくなりました。コールソン・チームは6名中3名がインドア派で、銃撃戦や肉弾戦になるとすごく心配なんですけど、頭脳派が知恵とチームプレイでピンチを脱するストーリーが痛快でした。フューリー長官ゲスト出演

#3 グラヴィトニウム(The Asset)
重力を狂わせる「グラヴィトニウム」という物質を巡るエピソード。AOSは全体的に「怖くない『怪奇大作戦』」みたいなテイストがあるんですが、これもそれが濃い回でした。上下が逆になる特撮(VFX?)シーンがなかなか愉快です。この回からすごくいけすかない悪の大富豪クイン氏が登場。

#4 裏切り者を救え(Eye Spy)
かつてのコールソンの愛弟子が、謎の組織の手先となって登場。実は彼女は目の奥に追跡装置を組み込まれていて…というストーリー。部下を決して見捨てないコールソンのあったかさがじんわり胸をうちます。敵を出し抜くヒヤヒヤものの作戦遂行のくだりはまんまミッション・インポッシブルでした。この回から正体不明の敵の親玉「クレアボヤント」が名前だけ登場。

#5 花のドレスの女(Girl in the Flower Dress)
謎の発火人間を悪の組織から救おう…とするのはどっちかというと脇筋で、一話からひっぱってたスカイちゃんのオイタがばれて大人たちから怒られまくるのが本筋。コールソンがスカちゃんを父親のように思いやるところにほっこりしましたが、ちょっとえこひいきが露骨だなあ、と思わないでもありません。この回から登場の花柄ドレス敵の女幹部は杏さんに似てる気がします。

#6 宙に浮く死体(FZZT)
『アヴェンジャーズ』における「NY決戦」において宇宙人たちが置いてった物品にたたりがあって…という話。才色兼備の生物化学者シモンズちゃんが重大なピンチに陥るのですが、シーズン1中最も彼女にスポットがあたった回だったかも。見所はエアバスから迷いなくスカイダイビングしてシモンズを救出するウォード氏。そのあとの照れ隠しみたいなセリフも手伝って彼に惚れた女子は多いんじゃないでしょうか。

#7 バーサーカー(The Hub)
『マイティ・ソー/ダークワールド』との連動エピソード。はるか古代から地球にひっそりと暮らしていたアスガルド人がいて…というのはなかなかに面白いアイデア。このスケベなアスガルド人の庶民のおっさん、味のあるキャラでしたがシーズン1では出番ここだけでした。ウォードの暗黒面がこのあたりからチラチラ見え隠れし始めます。

#8 決死の潜入(The Well)
内戦地帯に潜入するウォードとフィッツ。しかしシールド本部は彼らを見殺しにすることを決定。本部に残されたコールソン・チームは二人を救出すべく独自の作戦を展開。シールド高官のビクトリア・ハンドさんはこの辺から登場でしたか。名前といい見かけといいいかにも悪役っぽいですが果たして… ピンチの中友情を深めていくフィッツとウォードのくだりは薄い本が出そう。というかもう出てるかもしれない

#9 テレキネシス(Repairs)
AOSきってのホラー回。おばさん版『キャリー』みたいな話か?と思いきやストーリーは二転三転。一方でチームメイトをひっかけようとする若手メンバーのオチャラケが楽しい。氷の女のようだったメイさんの会心の微笑も必見です

#10 取引(The Bridge) #11 魔法の国(The Magical Place)
AOS初の前後編回にしてシリーズ中盤の山場。宿敵クレアボヤントを確保すべくシールドは改造人間ピーターソンを投入するが逆にわなにかかりコールソンを誘拐される。果てしないSMプレイの果てにコールソンは禁断の記憶を思い出し… コールソン復活にまつわる謎はこの辺でひとまず決着。どんよりと落ち込む彼がスカイちゃんの励ましで立ち直るというくだりに涙ちょちょ切れます。あと脚本陣はピーターソンに何か恨みでもあるのでしょうか。

#12 シールド・アカデミー(Seeds)
シールドの養成所というかホグワーツというか専門学校が舞台の話。人を凍殺?させようとする事件が相次ぎフィッツ・シモンズが母校に赴く。若さゆえ~の暴走が悲劇と台風を招く辛いエピソード。フィッツが後輩に自分の学生時代を語るくだりは「だろうね~」と納得することしきり

#13 謎の荷物(T.R.A.C.K.S.) #14 タヒチ(T.A.H.I.T.I.)
悪の金持ちクインを捕獲すべく作戦を実行するコールソンチームだったがまたしても裏をかかれスカちゃんはお腹に二発銃弾を食らうという大ピンチに。コールソンは鼻血を噴出すほどの勢いで彼女を蘇生させる方法を捜し求めるが… このあたりからいかにもベテランのエージェント・ギャレットと、いかにも体育会系なエージェント・トリプレッドが参戦。ギャレットの得意技は「おねだり」(…)。微妙に感じ悪かったトリプレッドは後にけっこういいやつであることが判明。コールソンとスカちゃんを生き返らせた物質はどうも宇宙人の死体から摂取したものである模様。「G.H.」という表記にはどういう意味が?

#15 ローレライの罠(Yes Men)
「なんでも欲しがる女神様」ローレライがアスガルドを脱走。彼女を追ってソーの盟友シフも地球にやってくる。シーズン1ではこの回が一番笑えました。「男をとりこにできる」ローレライの能力に翻弄される男性メンバーの姿がおかしゅうておかしゅうて

#16 始まりの終わり(End of the Beginning) #17 疑いの連鎖(Turn, Turn, Turn)
今度こそ(笑)クレアボヤントの尻尾をつかもうと複数のチームで容疑者を追うシールド。その前に完全に人間兵器と化したピーターソン=デスロックが立ちはだかる。そして『キャプテン・アメリカ/ウィンターソルジャー』で語られたあの事件がついに『AOS』とシンクロする。
シーズン1最大の転換点と言える二話。クレアボヤントの正体とは誰なのか? チームの中に潜む裏切り者とは? 前にも書いたようにわたしは先にウィキでネタバレを踏んじゃったのですがそれでも十分ショックでしたよ… だってウォードって普通にいいやつにしか見えなかったから。そしてシーズン1はここから最後までずっと連続もの、というか区切り悪く続いていきます。

#18 逃亡(Providence)
ウォードはヒドラのエージェントだった…が、そんなことはまだ全然知らないコールソンたち。身をささげてきたシールドが崩壊して茫然自失のコールソンはいまだかつてなく駄々をこねまくる。まったく頼りにならないフューリー長官を信じようとするコールソンがいじらしいエピソード。

#19 ひと筋の光(The Only Light in the Darkness)
シーズン1のマイベスト・エピソード。「弱い人々を守るため!」と言いながら完全に公私混同してるコールソンですが、愛する人から姿を隠しながら必死で守ろうとするあたりがかっこよかったので良しです。『アヴェンジャーズ』から語られていたチェロ奏者の彼女をついに拝めたのもよかったし。しかしその公私混同が元で秘密基地の管理人さんはあっけなくウォードに… 基地サイドのストーリーは胃が痛くなるほどの緊張感でした。嘘発見器のくだりは笑えましたがね

#20 任務と悪意(Nothing Personal)
さらわれたスカイを救出すべくまたしてもはげるほどの必死感でウォードを追うコールソン。まあ割りとそのあたりはすいすいっとことが運んで一安心。コールソンの愛車の大活躍とスカちゃんの爆発頭が最高にスカッとした回でした。あと『アヴェンジャーズ』『ウィンターソルジャー』のマリア・ヒルがゲスト出演(ここ重要)。

#21 反撃開始(Ragtag) #22 終わりの始まり(Beginning of the End)
ついにクレアボヤントとの最終決戦に挑むコールソン・チーム。お願いだから切りよく終わってくれ!と念じていたらその通りになって胸をなでおろしました。#21ではウォードの辛い過去が語られひどいやつだと思いつつも同情したくなります。クレアボヤント=ギャレットはあっけなく退場。とどめのコールソンの「おーい! ここにあったよーん!」には腹が張り裂けるほど笑わせてもらいました。

Aos2すでに海の向こうではシーズン2が始まってけっこう経ってるようですが、追いかけるの本当に大変なので早めに終わって欲しいです。せめてシーズン3あたりで… 日本でのMCU作品が次に観られるのは7月の『アヴェンジャーズ2』。それまでこの飢えをどうやって満たせばいいんでしょうかあああ

| | Comments (0) | TrackBack (0)

March 16, 2015

中傷の多い料理長 ジョン・ファブロー 『シェフ 三ツ星フードトラック始めました』

Shef1『アイアンマン』で名をはせたジョン・ファブロー監督が、今度はぐっと低予算の人間ドラマに挑戦。しかしこれがなんと全米で大ヒットしたという。『シェフ 三ツ星フードトラック始めました』ご紹介します。

主人公はLAのフレンチレストランのシェフ、カール・キャスパー。妻と離婚したため息子とは離れて暮らしているが、実力と実績でそれなりの名声を得ていた。だが著名な評論家が彼の料理をブログでコテンパンに酷評したため、カールは激怒。思い切って新メニューで再度評論家に勝負を挑もうとするが、定番を好むオーナーはそれを許可せず…

まあ、あとはどうなるかわかりますよね。だってタイトルに「フードトラック(屋台)始めました」って書いてあるもん(^_^;
非常にいい作品だと思います。おおまかなストーリーが『リアル・スティール』に酷似していることを差し引いても。まず出てくる食べ物が本当にうまそう。ついで登場人物が大体みんないいやつ。「まわりにいたらいいなあ」と思えるようなあったかい人たちばっかりです。そして中盤以降はキャスパー親子と一緒にアメリカの各地を旅行しているような気分を味わえます。くわしくはここの町山さんの解説を読んでいただきたいのですが、フロリダとかルイジアナにはそういう特色があったんだな~ということを料理を通じて教えてくれます。

というわけで多くの人におすすめできる良作なのですが、なんかわたし二つばかしモヤモヤしてしまった点がありまして…
一つ目はキャスパーさんがオーナーから「定番を出し続けろ」と言われてカチンと来るわけなんですが、どっちかってえとわたしこの点はオーナーの方に賛成だったりするんですよね… みなさんは好きな食べ物屋さんに行く時って、「いつものあの味」が食べたいとは思いませんか? わたしなんてひいきのラーメン屋さんに行くときはほぼ定番のメニューしか頼みませんし!
もしもキャスパーがファブロー監督の分身であるとするのなら、正直わたしは彼に斬新なメニューとかハートウォーミングな人情ドラマとかを期待してはいません。今までどおり『アイアンマン』みたいにメカメカしいボンクラ映画を作ってりゃいいんですよ。まあ、たまには気分転換にこういう地味な人情喜劇を撮ることもいいかもしれませんが、次は必ず本流に戻って現実離れしたSF映画を作ってください。

もうひとつモヤモヤ思ったのはこの映画に対する不満ではなく、ネットに溢れている映画批評について。キャスパー氏はいけすかないブロガー評論家に辛らつな意見を書かれて「傷ついたよ!」と叫びます。そりゃそうですよね。結果的に相手を満足させられなかったとしても、心血注いで作ったものをそんな風に言われたら。
ネットが普及して誰も彼も手軽に映画についての意見・感想が言えるようになった現代。別に作品を批判するなとは申しません。健全な批判はそのメディアを成長させるのに有用なものだと思います。
ただ批判するにしても、最低限の思いやりってもんは必要なんじゃないかと。嫌味タップリに罵詈雑言を投げつけたり、「こんな映画ウンコだ」とか「だれそれのケツの穴でもなめてろ」とか言う心無い感想も時折目にしますが、そういうのは批判以前にヒューマンとしてどうかと思います。
まあわたしみたいになまぬる~いファンばっかりでもそのメディアはダメになると思いますけどね… だからね… オレがダメにしてやる!!!!

Shef2酔いにまかせて最後はなんだかよくわからなくなってしまいました。とりあえず『シェフ 三ツ星フードトラック始めました』は現在全国の映画館で上映中です。おいしいよッ!(ミスター味っ子風に) 

| | Comments (2) | TrackBack (1)

March 11, 2015

世にも奇妙なコマ撮りアニメ 「シュヴァンクマイエル映画祭2015」E・Fプログラム

Photoそのあまりにも独創的で変態的な作風から、世界中にファンを持つチェコアニメの大御所、ヤン・シュバイクマイエル。前々からその短編作品をまとめて見たいな、と願っていましたが、このほど渋谷のイメージフォーラムで「シュヴァンクマイエル映画祭2015」が開催されたので張り切って観て参りました。わたしが観たのは全6プログラム中のEとFプログラム。順を追って感想を述べます。ちなみに以前行われた特集上映の長編中心のレビューはコチラ

『シュヴァルツェヴァルト氏とエドガル氏の最後のトリック』(1964)
向かい合う奇術師と思しき二体の人形。彼らは競って互いに技を披露するが、芸の後の握手が次第にエスカレートしていき…
なんて舌をかみそうなタイトルだ。この二人?の名前はシュヴァンクマイエルと、彼がよくオマージュを捧げているエドガー・アラン・ポーから取られているのか。8割は子供が見ても楽しい内容かと思うのですが、最後のあたりで泣き出すかもしれません。
わけわからない度(以下WWN度)10点満点で5点。

『J.S.バッハーG線上の幻想』(1965)
バッハの名曲と共に映し出される町の壁や路地。ストーリーらしいものはなく、限りなくPVに近いような作品。でもそれなりに意味が込められているのか… WWN度9点。

『庭園』(1968)
久しぶりに再会した旧友に誘われるまま、その邸宅に向かう男。その家の周りには手をつないだ人々で出来た奇妙な生垣があった…
実写作品。一応主人公が異常を異常と感じてるあたりは、まだこちらに寄り添ってくれてるというか、吉田戦車的なわけわからなさ。一見感情のなさそうな「生垣」たちが賭け事に興じてる描写は、全体主義にも生じる腐敗を表しているのか(安直な解釈だなあ)。WWN度7点。

『家での静かな一週間』(1969)
ぽつんとはなれた一軒家を訪ねた男。彼が各部屋の鍵穴をのぞくと、奇妙な風景が広がっていて… 
実写とアニメのコラボレート作品。シュヴァンクマイエルにありがちな、密室の中で意味不明な遊びに興じる人間を描いたお話でもあり。脈絡のない夢のような筋運びはつげ義春の『ねじ式』にも通じるような。WWN度8点。

『オトラントの城』(1973-1979)
…ってこの短編に6年もかかってんのか! とある学者のドキュメンタリー風の映像と、紙芝居のようなアニメで作られた作品。名作『オトラント城奇譚』はボヘミアで起きた実話だと主張する学者。彼の仮説と城の伝説が平行して語られていく。
「虚構が現実に入り込んでくる」これまたシュヴァンクマイエルが好んで用いるコンセプトのひとつ。Eプロの中ではこれが一番気に入りました。アニメも他と違って上品だったし(笑)。WWN度5点。

『ジャヴァウォッキー』(1971)
『不思議の国のアリス』をモチーフとしている…らしいのだが、とにかく素っ頓狂で意味不明な映像が続く14分。意味とか考えず、ひたすらヤンさんの遊び心に身をゆだねるのが正解かもしれません。WWN度10点。


ここまでがEプログラム。以下はFプログラムです。

『自然の歴史(組曲)』(1967)
原始的な生き物から始まり、爬虫類、哺乳類を経てやがて人類に至る生物の歴史。それなりに自然科学好きとしては見てるだけで楽しい一本。間に頻繁に入るお肉を咀嚼する口元の映像だけが意味不明。WWN度3点。

『部屋』(1968)
誘われるようにある家の部屋に入っていく一人の男。だがその部屋では卵を割ろうとしてもスープをすすろうとしてもことごとく思うようにいかない。「密室の中でいたぶられる・苦労する」というお話、このプログラムの中だけで3本ありました。こういう夢、わりとみんな見たことあるんじゃないでしょうか。キートンやチャップリンをめっちゃシュールにアレンジしたらこんな風になりそう。WWN度7点。

『対話の可能性』(1982)
クレイで出来た二人の人物。お互いを食い合ったり、ちぐはぐなものをぐちゃぐちゃに混ぜたり…
つきあってくださった方が聞いたところによると、後半はコミュニケーションがうまくいかない様子を表現してるんだとか。だから『対話の可能性』なんですかね。見終わるとわかりあえる可能性は限りなく低いように思えてなりません(笑) WWN度7点。

『地下室の怪』(1982)
実写作品。地下室へジャガイモを取りに行くいたいけな女の子。しかしそこに挙動不審なお年寄りがいたり、じゃがいももいう事をきかなかったり…
ホラーなようで笑えるようで、やっぱりちょっと不気味な一本。ヒロインの幼女ながらの美しさが印象深かったです。WWN度6点。

『陥し穴と振り子』(1983)
E・A・ポーの名作を映像化した実写作品。異端審問の拷問にあわされる一人の男。果たして彼の運命は…
この特集の中でもっとも見たかった一本。ストーリーを知っていても十分こわい。原作とは微妙に違うラストがまた怖いです。WWN度3点。

『男のゲーム』(1988)
部屋で酒を飲みながらサッカー中継に興じる男。だがそのサッカーはボールに関係なく互いに殺しあう殺人ゲームだった!? …と書くとホラーのようですが、サッカー選手は切り絵や粘土なので恐ろしくはありません。ただめちゃくちゃ残酷で悪趣味(笑) バックに流れるさわやかな音楽がまたわけわかりません。WWN度9点。

『闇・光・闇』(1989年)
ある部屋につどってくる目や手や鼻といった人体のパーツたち。試行錯誤をくりかえしながら次第に完成体に近づいていき… 手だけがフラフラしてるのは同じくチェコアニメ作家のトルンカの作品にもありましたね。また手の先っちょにめん玉だけがくっついている図は『寄生獣』そっくりで笑っちゃいました。能力が増えていけばそれだけ行動範囲も広がるはずなのに、どんどん不自由になっていく姿は実に皮肉でした。WWN度8点。

091030_061050いやあ… やっぱりわけがわかりません(笑) あとで解説探そう… でも楽しい! そんな作品群でした。「シュヴァンクマイエル映画祭2015」は渋谷では13日まで開催。あ、もうあさってまでだわ… その後大阪、京都、神戸などをまわるようです。くわしくはこちらを。

| | Comments (0) | TrackBack (0)

March 09, 2015

そげキングの光と影 クリント・イーストウッド 『アメリカン・スナイパー』

Asn1そげきの島で~ 生まれたオレは~
本日は先日行われた第87回アカデミー賞において6部門にノミネートされたクリント・イーストウッド最新作『アメリカン・スナイパー』について語ります。

9.11のアメリカ同時多発テロに端を発したイラク戦争。米国最強とうたわれる特殊部隊シールズもその戦いに投入された。戦いが続くにつれ、敵味方の間で二人の狙撃手の名が尊敬と恐怖をもって噂されるようになっていく。一人はイラク側の元五輪選手ムスタファ。もう一人はシールズのエリート、クリス・カイル。幼少のころから狙撃の並外れた才能を持っていたクリスは、戦場においてその才能をフルに発揮させる。だが引き金をひき、友を失うたびにクリスの精神は徐々に消耗していく。しかし彼は国のため、友のためと自分に言い聞かせて4度に渡ってイラクに赴くのだった。

原作はクリス・カイル自身が著した自伝であります。今回はわたしの駄文を読むより映画秘宝最新号の特集を読んだ方がよほど理解が深まるかと思います(^_^;
冒頭でクリスのお父さんはこんな印象深い言葉を言います。「人間には三種類ある。羊(守られるもの)、狼(ならず者)、番犬(守る者)だ。わたしはお前たちを羊にも狼にもするつもりはない」と。実にカウボーイ的であります。きっと今もアメリカ南部ではこういう「強気をくじき、弱きを助く」カウボーイの姿が男の理想像なんでしょうね。
その言葉に忠実に育ったクリスはカウボーイとなり、次いで祖国を守る男たちの頂点とも言えるシールズに入隊します。
しかしとうとうやってきた戦いの場において、クリスは皮肉な現実をつきつけられます。彼が最初に殺さねばならなかったのは、武器を持っていたとはいえ「狼」には程遠い女子供だったからです。「番犬」としてやってきたつもりだったのに、イラクの人たちから見れば彼らこそは「羊」を脅かす「狼」だったわけで。
そういえば先の秘宝の記事によれば『ローン・サバイバー』の語り手であるマーカスとクリスは訓練生のころからの親友だったそうです。二人は奇しくも戦場において同じ選択を迫られます。「仲間の命を守るために子供を殺すべきか」という。敵国に攻め込むということはそういう事態もよくあることなんでしょうけど、もうじき「父となる」クリスにとってそれがどれほどのストレスになったか… 想像しただけで胃が痛くなります。

もっとも自伝においてクリス・カイルは自分の果たしてきた仕事について「蛮族を殺したことはまったく後悔していない」と発言しているとのこと。立場上そう述べなければならなかったのか、そう思わなければ精神を安定できなかったのか、心の底からそう思っていたのか… それはクリスさんにしかわかりません。ただ除隊するころのクリスさんはかなりのストレスから飛蚊症や異常な高血圧に悩まされていたとのことです。

ちなみにイーストウッド御大ははっきりと「イラク戦争には反対だった」「国がろくに調べもしないで戦争を始めたから、多くの犠牲が出た」と述べておられます。ですが御大はその主張を声高に作品の中で語るタイプではないので、例によって「アメリカ万歳映画」「プロパガンダ」と見る人も多くいるようです。戦場で苦悩するシールズ若者たち、葬儀で息子の手紙を読む母親、イラクで米軍と地元の武装勢力の板ばさみになる人たち、そしてエンドロールの一文… そういう描写を見ていくと、決して「好戦的な」映画ではないと思うんですが。一方でクリスさんがエンターテイメントのヒーローよろしく目のさめるような活躍を見せたりもするので、アクション映画としても面白く見られたりするのが困ったところです。

以下は映画の結末に触れてますのでご了承ください。

impact
impact
impact
impact
impact

この映画、クリス・カイルが生存中に製作が進められ脚本まで出来ていたそうですが、映画を観た方はご存知のように彼は完成前にある退役軍人の手により射殺されるという最期を迎えました。戦場で何度も銃弾の雨を潜り抜けてきたのに、はるかに安全な米国で銃により命を奪われるとは… 恐ろしいまでの皮肉と言わざるを得ません。映画はそれを「運命から逃れられなかった」と表現しています。安っぽい例えですがホラー映画で命からがら逃げて来た主人公が、「もう安全だ」と一息ついた途端怪物の手にかけられる、そんなパターンを思い出しました。クリスが肌身離さず持ち歩いていた聖書には「剣に生きる者は剣に死す」という一節がありますが、「銃(ガン)に生きる者は銃に死す」ということなのかもしれません。

この事件、日本ではそんなに知られてなかったために『アメリカン・スナイパー』は偶然にも「衝撃の結末!」を伴った映画となってしまいました。まあアメリカでは誰でも知ってる話ゆえ、監督はまったくそんな効果は狙ってなかったと思いますが。
ただ日本での公開中にカイル氏を射殺した犯人の判決が出てしまったことにより、一般のニュースが映画のネタバレになってしまうという事態まで引き起こしてしまいました。恐らく映画が注目を集めていなければ、日本ではこのニュースもっとひっそりと扱われたのでは… わたしもそれなりに長いこと映画観てますが、こんな例はちょっと記憶にありません。そんな風に何から何まで異例の作品です。

Asn2先ごろイラクで邦人人質事件があった余波か、『アメリカン・スナイパー』は現在二週連続で興行収入第一位となっています。最近ではおおよそヒットしないような要素ばかりのこの作品が、これほどの成績を残していることもまた異例です。
ちなみに隣のへたくそな骸骨はカイル氏が愛用していたマーベルのキャラクター「パニッシャー」のマーク。パニッシャーは「凶悪犯はその場で射殺」というキャラで、アメコミの中では割と異端なほうだったりします。映画ではこういうキャラ、珍しくもありませんけどね。


| | Comments (4) | TrackBack (7)

March 03, 2015

エジプト大脱出 リドリー・スコット 『エクソダス 神と王』

P5183_lこれまでも何度か映画化されている「モーゼ」の伝説を、ワイルドな作風で知られるベテランのリドリー・スコットが新たに映画化。『エクソダス 神と王』、ご紹介します。

時ははるか古代。エジプトに移住してきたイスラエル人たちは奴隷として虐げられ、神が導き入れると約束した「カナン」へ旅立つ日を心待ちにしていた。
そのころエジプトは王子ラムセスと、その弟モーゼの活躍によりますます勢いを増していた。しかしモーゼは調査のため派遣されたある都市で奇妙な噂を耳にする。彼の親は実はイスラエル人で、とある事情により王家の子息として育てられることになったのだと…

モーゼの物語はこれまで『続・天地創造』『十戒』『プリンス・オブ・エジプト』といった映画で観た事がありました。だもんで今回はまたわざわざ観にいかなくてもいいかな…とも思ったんですが、去年の古代史ものは一通り制覇したのにこれだけスルーというのもなんだし、この時他に見たい物もなかったので鑑賞することにしました。そしたら意外と楽しかったんですね~
というのは、古代エジプトの風景がすごくよく再現されていたから。考えてみれば近年古代エジプトをこんなにクローズアップした映画は記憶にありません。アニメ映画の『ミスター・ピーボディ&シャーマン』では良く出てくるようですが、現在日本未公開だし… 強いて言うなら4年前の『アレクサンドリア』くらいかと(あれは古代だったか?)。さらにさかのぼれば『ハムナプトラ』もありましたが、あれは古代の場面がそんなにあったわけでもなかったし。
そんなわけでエジプト文明好きとしては「コテコテだなあw」とは思いつつもピラミッドやスフィンクスやなじみ深いあのメイクにワクワクさせられました。

ただお話の方はというとそんなに楽しいものではなかったりして。昨年の『ノア』もそうでしたが、旧約聖書の神の裁きの話というのは、現代の人にとっては「残酷だ」と感じられるようです。リドスコ監督や脚本スティーヴン・ザイリアン氏もそれは同様のようで、聖書の「神」の見方にアンチテーゼを述べながらも、元のお話を完全に否定するわけにもいかない。そんな堂々巡りっぷりがにえきらないストーリーとなってよく表れてましたw

「神」といえばこの映画で斬新だったのは旧約聖書の神が子供の姿を借りて現われることですね。なぜ子供なのか。ひとつには子供というのは「未来」の象徴ゆえ、イスラエル民族の将来のシンボルとしてこんな描き方をしたのかと思われます。もうひとつは子供の際立った特性に「純粋さ」「残酷さ」があるからではなかろうかと。わたしは吹き替えで観たのですが、神様の声を演じているのが『名探偵コナン』の高山みなみさんで、例の「クールな子供声」がなかなかよくマッチしておりました。

あとこの映画の特長をもうひとつあげるなら、モーゼとラムセスが「兄弟」として描かれているところ。聖書原典や『十戒』では不倶戴天の敵の関係にある二人ですが、アニメ『プリンス・オブ・エジプト』やこの映画では最初は共に育った家族という設定になっています。それゆえ、モーゼはどんなひどいめにあわされてもラムセスを心から憎むことができません。彼への災いを食い止めようと危険を犯して説得に行ったりもします。もちろんそれははねつけられてしまうわけですが…
このあたり、自分の思いも知らずに一人で命を絶ってしまったトニー・スコットへの、兄弟としての感情も表れているような… 考えすぎですかね。ただ最後の「弟トニーに捧ぐ」という献辞を見るとそんな風に思えてならないのでした。

Exds1ちなみにモーゼさんの苦労はエジプトから出たあともえんえんと続きます。しかし3時間弱ではそこまで描くことは不可能だったようで。気になる方は図書館がどこかで聖書の「出エジプト記」から続く部分を探して読んでみてください。
『エクソダス 神と王』はまだ全国で公開中ですが、初動があまりよくなかったので、そろそろ危ういかもしれません。
今後の古代エジプト映画としてはアンジェリーナ・ジョリー主演の『クレオパトラ』などが企画されていますが、予定されていたデビッド・フィンチャー監督が降板したりと、こちらも危うい空気が漂っています(^_^;


| | Comments (2) | TrackBack (2)

« February 2015 | Main | April 2015 »